術後感染症に対するCefmenoxime (CMX, SCE-1365) の有用性を客観的に評価するため, Cefotiam (CTM) を対照薬として二重盲検比較試験を行ない以下の結果を得た。
1. 術後創感染 (試験A) での臨床効果は, CMX群92.3%(48/52), CTM群73.6%(39/53) の有効率でCMX群が有意に優れていた。
一方, 術後腹膜炎・死腔感染 (試験B) の有効率はCMX群78.7%(37/47), CTM群73.6%(42/57) で両剤間に差を認めなかった。
2. 最終全般的改善度の改善率は, 試験AでCMX群76.9%, CTM群71.7%, 試験BではCMX群76.6%, CTM群71.9%であり, CMX群の改善率が高かったが, 有意差は認められなかった。
3. 全般的改善度を経日的にみた場合, 試験Aでの3日後, 5日後でCMX群の著明改善率が高く, CMXの効果発現がCTMに比べ, より速やかであった。
4. 各症状の残存率の推移をみると, 試験AではCMX群が, 排膿, 発熱白血球数の項で消失がより早く, また試験Bでは腹部所見でCTM群の方がより早かったが, いずれも有意の差は認められなかった。
5. 副作用ではCMX群1例 (0.9%), CTM群4例 (3.3%) ですべて発疹であった。また臨床検査値異常化例ではCMX群4例 (3.5%), CTM群5例 (4.1%) でいずれも肝機能の異常であり, 副作用の種類, 発現頻度および臨床検査値異常化の内容, 頻度とも両薬剤群間に差はみられなかった。
以上の結果, CMXは試験Aにおいて臨床効果がCTMより有意に優れ, 試験Bにおいても臨床効果に差は認められなかったが, 有意に優れた症状所見が認められたこと, また副作用については同等であったことから, 術後感染症に対する治療薬としてCMXは明らかに有用性の高い薬剤であると結論される。
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