CHEMOTHERAPY
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31 巻, 2 号
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  • 原 耕平他
    1983 年 31 巻 2 号 p. 149-195
    発行日: 1983/02/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しいアミノ配糖体系抗生物質Astromicin (ASTM) の呼吸器感染症に対する有効性と安全性を客観的に評価する目的で, Amikacin (AMK) を対照薬としてwell controlled studyにより比較検討を行なった。
    投与法は両薬剤とも1回200mg (力価) を1日2回, 14日間筋注とし, 以下の成績を得た。
    1. 小委員会判定による総合臨床効果は, ASTM群で70.5%(78例中55例), AMK群で75.7%(74例中56例) の有効率を示し, 両薬剤群間に有意な差は認められなかった。一方, 主治医判定においても, ASTM群で66.3%(83例中55例), AMK群で67.5%(77例中52例) の有効率で, 両薬剤群間に有意な差は認められなかった。
    2. 細菌学的効果を小委員会判定による起炎菌別消失率でみると, グラム陽性球菌においてはASTM群で66.7%(6例中4例), AMK群で70.0%(10例中7例) で, 有意な差は認められなかったが, グラム陰性桿菌においては, ASTM群で76.5%(17例中13例), AMK群で31.6%(19例中6例) と有意な差が認められた (P<0.01)。
    3. 副作用あるいは臨床検査値異常の発現率には両薬剤群間に有意な差は認められなかった。
    4. 臨床的有用性は, 小委員会判定ではASTM群で70.5%(78例中55例), AMK群で74.3%(74例中55例), 主治医判定ではASTM群で66.3%(83例中55例), AMK群で67.5%(77例中52例) の症例で認められ, いずれの判定においても両薬剤群間に有意な差は認められなかった。
    以上のように呼吸器感染症に対するASTMの有効性と安全性を総合的に評価すると, 本剤はAMKと同用量で同等の成績を示し, 有用性の高い薬剤であると考えられた。
  • β-lactamase産生量とMICの関係
    逵 彦二, 武藤 弓子, 五島 瑳智子
    1983 年 31 巻 2 号 p. 196-201
    発行日: 1983/02/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Disk-agardiffusion法を用いた基質特異性同定試験により, 臨床分離株100株をβ-lactamase群に分類し, そのうち特にTEM型 (35株) およびChromosomal型 (56株) のβ-lactamase産生株のMIC値を次の直線回帰式により算出した。
    Y=aX+a'X'+b'
    Y: MIC
    X: TEM型β-lactamase活性
    X': Chromosomal型β-lactamase活性
    a, a', b': TEM型, Chromosomal型に対する各抗生物質の定数値
    β-lactamase活性より算出したMIC値は実験で求めたβ-lactam抗生物質 (Cefuroxime, Cefoxitin, Cefamandole, Cephalexin, Cephalothin, Cephaloridine, Cefazolin, AmpicillinおよびCarbenicillin) のMIC値とよく相関した。
  • 松前 昭廣, 豊田 小夜子
    1983 年 31 巻 2 号 p. 202-206
    発行日: 1983/02/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    マウスにNA8 72 (Ambroxol hydrochloride) を経口投与後抗生物質ABPC, CER, TC, EM, KM, RFPをi. p. またはora1で投与した。その血中および肺中濃度を経時的に測定したところ, 抗生物質単独に比べ高い濃度を示し, 残留時間が延長される傾向が認められた。またNA 872投与時間との関係において, ほとんどの抗生物質については短時間後投与がより効果が大きいことが認められた。特にRFPにこの傾向は顕著に現われた。
  • 今井 章浩
    1983 年 31 巻 2 号 p. 207-211
    発行日: 1983/02/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Germ free miceにSPF miceの糞便から分離したEscherichia coli, Staphylococcus epidermidis, Streptococcus faecalis, Bacteroides fragilis および Lactobacillus sp. をそれぞれ1菌種ずつ連続経口投与し, 盲腸内細菌数および盲腸内容の揮発性脂肪酸組成の変化を調べた。
    (1) 5菌種を単一または連続投与したマウスの盲腸内: のE. coli, S. faecalis, B. fragilis および Lactobacillus sp.の菌数はいずれも109~1010cfu/gであったが, S. epidermidis の菌数は107cfu/gであった。
    (2) Germ free miceの盲腸内容には少量のAcetic acidとFurfuralが検出されたが, 単一菌または5菌種投与によっても, Acetic acidおよびFurfuralの濃度には多少の変動がみられたにすぎなかった。また, Propionic acidはB. frogilisを投与後にのみ検出された。
  • 宇塚 良夫, 松本 慶蔵, 力富 直人, 永武 毅, 原田 知行, 野口 行雄, 宍戸 春美, 渡辺 貴和雄
    1983 年 31 巻 2 号 p. 212-220
    発行日: 1983/02/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    1981年, 1年間の当科入院または外来患者339名の全喀痰2, 009検体について, 定量培養法を施行し, 同一喀痰から同時に≧107/ml以上に2種以上の有意菌が得られた複数菌感染に関し, その頻度と臨床的意義について検討した。これに該当する患者は38名全60感染エピソードで, 慢性気管支炎16名, 気管支拡張症7名, 慢性細気管支炎3名など慢性気道感染症が中心で, 基礎疾患として脳卒中による植物状態や癌をもつ例もみられた。単一菌を含み臨床的意味をもつ全感染277エピソード中, 複数菌感染の占める割合は60 (21.7%) で, その関与菌種は22種延べ124菌株で, 多いものからインフルエンザ菌34 (27.4%), 肺炎球菌23 (18.5%), 緑膿菌14 (11.3%), 黄色ブドウ球菌9 (7.3%), 肺炎桿菌7 (5.6%) であった。インフルエンザ菌と肺炎球菌の組合せが20エピソードと全体の113を占めいずれも起炎性が明確であった。次に緑膿菌とインフルエンザ菌の6エピソード (10%) であり, うち5例が緑膿菌からインフルエンザ菌への逆戻り菌交代であった。その他のグラム陰性桿菌は, グラム陰性桿菌間の組合せが多く, 化学療法下で菌交代現象として現われ, 自然消失する場合も多くみられた。複数菌の消長を病原性, 化学療法との関連性, 菌相互の関係から分類すると7群に分類可能であった。肺炎球菌とインフルエンザ菌が主体の1群を除く複数菌感染は, 菌交代としての一時期複数の交代菌が出現したものが多いことが知られた。
  • Cefazolin, Carbenicillin, Gentamicin投与における感染防御効果の血中菌の推移による解析
    小川 正俊, 辻 明良, 川崎 賢二, 吉田 勇, 金子 康子, 五島 瑳智子
    1983 年 31 巻 2 号 p. 221-230
    発行日: 1983/02/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    複数菌感染における化学療法施行時の菌交代症を実験的に解析するため, 大腸菌, 緑膿菌を混合感染させたマウスにCefazolinおよび抗緑膿菌作用のあるCarbenicillin, Gentamicinを皮下投与し, 感染防御効果とマウスの死亡原因を調べ, 抗菌薬投与による菌交代現象の検討を行なった。
    MLD (最小致死量) 以上のE. coli単独腹腔内感染では, マウスは100%死亡し, 死亡マウス心血からはすべてE. coliが検出された。E. coli感染1時間後Cefazolinを適量 (感染菌量によって異なるが, 本実験では6mg/mouse) 投与するとマウスはすべて生残した。
    E.coliのMLD以上とP.aeruginosaのMLD以下の菌量の混合感染では, 当然マウスは100%死亡した。死亡マウスの血中から検出されるのはほとんどE. coliであった。
    この混合感染マウスに抗緑膿菌作用のないCefazolinを投与すると, マウス血中から, E.coliは消失するが, 代わってP. aeruginosaが増殖し, P.aeruginosaによる敗血症でマウスは高率に死亡した。
    同じ混合感染系に抗緑膿菌作用のあるCarbenicillinまたは, Gentamicinを投与すると, いずれも投与量が不充分な場合には, マウス血中からE.coliのみが消失し, P. aeruginosaが増殖して緑膿菌による菌交代性の敗血症が惹起された。死亡マウスからは緑膿菌のみが検出された。
    以上の成績から, 大腸菌と緑膿菌の混合感染では, 各種抗菌薬に対する感受性の低い緑膿菌を目標とした充分な投与を行なう必要性が実証された。
  • Midecamycinとの二重盲検比較試験
    酒井 克治, 藤本 幹夫, 上田 隆美, 由良 二郎, 石川 周, 澤田 晃, 土居 進, 川畑 徳幸, 佐々木 武也, 前田 貞邦, 政田 ...
    1983 年 31 巻 2 号 p. 231-253
    発行日: 1983/02/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    皮膚軟部組織感染症に対する9, 3'-diacetyl-midecamycin (以下MOMと略記) とMidecamycin (以下MDMと略記) の治療効果, 副作用, 有用性について両薬剤間での比較を二重盲検法により実施した結果, 以下の結論を得た。
    1. 皮膚軟部組織感染症215例に対するMOM1日量600mgの治療効果とMDM1日量
    1, 200mgの治療効果の間には, 推計学的な有意差を認めなかった。
    2. 重症度別臨床効果および細菌学的効果においては, 両薬剤間に有意差を認めなかった。
    3. 有用性においても両薬剤間に有意差を認めなかった。
    4. ただし, 外科的処置の有無別臨床効果において, 外科的処置群では両薬剤間の治療効果には推計学的有意差を認めなかったが, 外科的無処置群ではMOM群が有意に優れていた。
    5. 副作用はMOM群に2例, MDM群に3例認められたが, 両薬剤間における有意差は認められなかった。以上より, MOMは皮膚軟部組織感染症に対して, 1日量600mgでMDMの1, 200mgと同等, もしくはそれ以上の臨床効果が期待でき, しかも副作用が少なく, 安全かつ有用な薬剤であると考えられる。
  • 長期大量投与例を中心として
    三木 文雄, 河野 雅和, 高松 健次, 別府 敬三, 塩田 憲三, 久保 研二
    1983 年 31 巻 2 号 p. 254-261
    発行日: 1983/02/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    緑膿菌性慢性呼吸器感染症に対して, Cefsulodin (CFS) による治療を行ない次の結果を得た。
    慢性気管支炎2例, びまん性汎細気管支炎2例, 感染を伴った気管支拡張症6例, 肺炎1例, 計11例の延べ17感染エピソードにCFSを1日0.75~49, 筋注または点滴静注により投与し, 著効3, 有効9 (有効率70.6%), 無効5の臨床効果が認められた。
    なお1回2g宛1日2回継続投与中の2症例で4.0~5-3μg/mlの喀痰内濃度が得られた。
    副作用として, 1例がCFS1回1gの点滴時に軽度の頭痛を訴え, GOT, GPTの軽度上昇が2例に認められた。
    上記症例のうち, 他の抗緑膿菌剤がすべて無効で極めて重症のびまん性汎細気管支炎では, CFSを延ベ198日間, 計681gと長期大量に投与し, 緑膿菌を消失せしめ, 特に副作用も認められなかった。
  • 尾花 芳樹, 西野 武志, 谷野 輝雄
    1983 年 31 巻 2 号 p. 262-269
    発行日: 1983/02/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    マウス実験的大腸菌性腹腔内感染症および尿路感染症に対するCefaclsr (CCL) の効果について, Cephalexin (CEX) と比較検討を行なった。
    腹腔内感染症において, CCLの効果は正常およびCyclophosphamide処理による白血球減少マウスにおいて, CEXに比べ非常に優れていることが認められた。
    尿路感染症においても, CCLは腎内濃度の高さや持続性がCEXより劣っているにもかかわらず, その治療効果は非常に優れており, これらは, CCLがCEXに比べ, 薬物投与後短時間に, 腎内菌数の減少を認めたことと一致した。また白血球減少マウスにおける本感染症モデルにおいて, CCLの効果はCEXよりも優れていた。また治療効果に及ぼす接種菌量の影響では, いずれの薬物も若干影響を受けることがわかった。さらに頻回投与の効果について検討したところ, 1回投与と頻回投与での効果の差はほとんど認められず, これらの薬物の効果発現は, 有効濃度以上の腎内濃度の高さではなく, 有効濃度の維持時間が重要であると考えられた。
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