今回私たちが検討を行なったCMXは3位にチオメチルテトラゾール基を有するため, ピタミンKの異常消費によるビタミンK依存性の凝固因子の欠乏を来し, 凝固時間の延長が予想された。
結果は, 第2群においてPT, TTが軽微で正常範囲内ではあるが有意に延長しており, HPTは有意な変化が認められなかった。第3群ではPT, TT, HPT, いずれも有意な変化が認められなかった。これらの所見, すなわちCMX投与により, PT, TTの延長があり, しかもそれがビタミンK2投与により防止できることから, ビタミンK依存性の凝固因子との関連が強く疑われた。しかし今回は, ビタミンK依存性凝固因子の定量についてはプロトロンビンについてのみ行なったが, これには有意な減少はみられず, 他のVII, IX, X因子のいずれかが有意に減少するのか, あるいは各因子の少しずつの抑制の総和として現われてくるものかは不明であった。第2群でPT, TTの延長がみられHPTの延長がみられなかったことから, 今回は測定しなかったがPIVKAの出現を疑わせる結果となった。
一方, 血小板凝集能に対しては, 第2群, 第3群で出血時間が有意に延長していたが, ADP, コラーゲン, エピネフリンによる血小板凝集試験ではいずれも有意の差は認められず, トロンボエラストグラムのr値, ma値にも血小板機能の抑制を疑わせる変動はなかった。出血時間の延長は, いずれも正常範囲内に止まり, またDUKE法を採用したため手技的影響も考えられ, 臨床的に通常の投与量では血小板に対する影響は特にないものと思われた。
今回の検討ではトロンボエラストグラム, 血小板数, フィブリノーゲンで出血傾向とは逆, つまり凝固亢進の結果が認められたが, これらはいずれも手術例を対象としたため, 手術の影響と思われた。
以上のことから, CMXは検査値としては血液凝固時間に若干の影響を与えるが軽微であり, 臨床上, 出血傾向として特に問題となる程度ではないと考えられた。また, ビタミンK
2併用は1回の投与のみでも凝固時間のわずかな変動をも防止するものと考えられた。
臨床上本剤を用いる場合, ビタミンKの欠乏が考えられないような全身状態の良好な場合は, 1日491週間程度の投与には特に問題はないと思われた。一方, 経口摂取の不良な患者, 高齢者など, 全身状態の悪い患者では, 安全のためにビタミンKの併用を考慮すべきものと考えられた
抄録全体を表示