CHEMOTHERAPY
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38 巻, 11 号
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  • 臨床分離大腸菌に対する併用効果
    高橋 勝雄
    1990 年 38 巻 11 号 p. 1077-1083
    発行日: 1990/11/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    シソマイシン (SISO) と6種のセフェム系抗生物質との組み合わせで, 臨床分離大腸菌に対する併用効果をCheckerboard dilution methodで検討した。どの組み合わせにおいても併用効果は認められ, 特にSISOとセファゾリン (CEZ) との併用ではFIC indexが0.63と最も小さく, 部分的相乗作用を示した、そこで, この組み合わせを用いて, No.540の菌株に対し菌の増殖への影響を検討した。SISO1/2MICとCEZ1/8MICの併用で最も著明な菌数の減少が認められ, 4時間後においては菌の増殖はほとんど見られなかった。さらに同じ組み合わせで, MICが12.5μg/ml以上の低感受性菌3株に対する併用効果も検討した。併用効果は3株すべてに対し認められ, SISOのMICは12.5μg/mlあるいは25.0μg/mlから3.13μg/ml以下に減少した。以上の結果より, SISOは低感受性株に対してもCEZを併用することにより, 副作用の懸念されない低用量で効果を期待できることが示唆された。
  • 栗山 純一, 竹内 良夫, 本間 義春, 川角 浩, 西村 葉子, 横室 公三
    1990 年 38 巻 11 号 p. 1084-1091
    発行日: 1990/11/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Cephem系抗生上物質の免疫学的研究において, それに対する抗体は実験動物においては薬剤構造に特異的な反応を示すが, ヒトにおいては他剤と免疫学的交叉反応性を示すことが知られている。この矛盾を解析し, 以下の結論が得られた。
    1) 10種類のcephem-Ase coupling抗原+alum混合液を用いてモルモットを免疫し, IgE抗体richな抗血清を得た。これらの抗血清はIgE-mediated PCAで400倍以上で, 他剤とは交叉反応を示さない薬剤特異的な性状を示した。
    2) 同じ抗血清を用いてIgG-mediated PCAでIgG抗体の検出をしたが, それらは低力価であるにもかかわらず, 類似構造を有する薬剤との交叉反応性は高かった。
    以上の結果からIgE抗体の産生に伴って生じるIgG抗体が薬剤の免疫学的交叉反応の一因子になる可能性が推測された。
  • 吉村 輝夫, 上田 孝典, 岩崎 博道, 神谷 健一, 津谷 寛, 内田 千彦, 中村 徹
    1990 年 38 巻 11 号 p. 1092-1096
    発行日: 1990/11/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    当科に入院した19名の造血器悪性疾患に伴った21例の感染症につき, endotoxin (Et) に特異性の高いendotoxin specific assay (endospecy) を行い, Et値を経時的に測定した。造血器感染症の52%の症例がEt値陽性 (>3pg/ml) を示した。経時的測定では, Et値は抗生剤投与前, すでに高値を示し, 投与後4時間で最高値に達し, 以後漸減した.また, Et値10pg/ml以上の強陽性例ではグラム陰性菌感染症が強く示唆された, したがって, Et値の測定は, グラム陰性菌感染症の診断および, 使用抗生剤の有効性を判定する上で有用な方法であり, 経時的測定には抗生剤投与前, 4時間後と解熱後の3回測定が適当であると考えられた。
  • 本間 義春, 竹内 良夫, 川角 浩, 西村 葉子, 栗山 純一, 横室 公三
    1990 年 38 巻 11 号 p. 1097-1103
    発行日: 1990/11/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Cephalosporin (cephem) 系抗生物質が誘発するアレルギー症状について, その機作を解析する目的で10種類のcephemに対するIgE抗体を作製して好塩基球と血小板に対する反応を比較した。
    1. Cephem系抗生物質に対するIgE抗体で全身性に感作されたモルモットにcefaclor (CCL)-HSA, cephalexin (CEX)-HSA, cefmetazole (CMZ)-HSAをchallengeした場合, モルモットの血中histamine値は変化が認められないにもかかわらず, ショック死した。一方, 対照の抗penicillin G (PCG) 抗体の反応系では有意に上昇し, ショック死した。
    2. In vitroにおいて, IgE抗体で被動性に感作された好塩基球はcephem系抗原の添加によってhistamine遊離が観察された。
    3. この結果の矛盾を解析するために血小板からのhistamine量を測定したが上記3薬剤はhistamine, およびserotoninの遊離を抑制することが観察された。
    以上の結果から, CCLとCEXの抗原抗体系による反応はショックの発現にhistamineは主たるshocking agentにはなりえない可能性が示唆された。
  • 浅田 高広, 柳原 太, 山中 吉隆, 吉岡 宗, 間瀬 勘史, 安永 幸二郎
    1990 年 38 巻 11 号 p. 1104-1109
    発行日: 1990/11/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    近年抗生物質の副作用として出血傾向がむ目されてきており, 今回我々は初のモノパクタム系抗生物質であるaztreonam (AZT) の血小板凝集能と凝固能におよぼす影饗を家兎を用いて検討した。AZT 40mg/kg/dayまたは200mg/kg/day (n 10) を1日1回7日間家兎の静脈内に投与し, その前後でプロトロンピン時間 (PT), 活性化部分トロンボプラスチン時間 (APTT), フィプリノーゲン, PIVKA II, および血小板凝集能を測定した。血小板凝集能では, 凝集惹起物質としてadenosine-diphosphate (ADP) 4, 6, 8, 10μM, collagen 4, 8, 16, 24μg/mlの各濃度を用い, ADP凝集では最大凝集率maximal aggregation (MA), collagen凝集ではMAと最大傾斜率maximal slope (MS) にて検討した。200mg/kg/day投与群では, ADP凝集のMAとcollagen凝集のMSで各濃度において有意な抑制が見られたが, 40mg/kg/day投与群ではほとんど有意な凝集抑制は見られなかった。血液凝固指標 (PT, APTT, フィプリノーゲン, PIVKA II) に関しては, 40mg/kg/dayおよび200mg/kg/day投与群ともに有意な変化を認めなかった。今回の検討より, AZTは常用雛の範囲内では血小板凝集能と血液凝固能におよぼす影響はほとんど認められず, 常用量の約3倍濃度を投与した場合でも血液凝固能への影響は少なく, ADP凝集, collagen凝集を軽度抑制したのみであった。
  • 井上 文之, 上川 康明, 川真田 修, 淵本 定儀, 阪上 賢一, 折田 薫
    1990 年 38 巻 11 号 p. 1110-1115
    発行日: 1990/11/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    Carumonam 1g点滴静注後の経時的な血液, 肺組織移行性に関して検討した。対象は主として術前化学療法を施行していない肺癌患者で肺切除を行ったものとした。方法は手術開始前に生理食塩100mlに溶解したcarumonam 1gを30分で点滴静注し, 血液は投与前, 投与後30分, 1時間, 2時間, 3時間に採取し, 血液分離後凍結し, agar well法にて, Escherichia coli NIHJ株とDAIGO No.4培地を用いて測定した。また, 肺組織は投与後, 30分, 1時間, 2時間, 3時間にautosutureにて採取後凍結し, 同上のagar well法にて測定した。末梢血液中のcarumonamの濃度は点滴開始後30分で59.3μg/ml, 1時間33.3μg/ml, 2時間で18.1μg/ml, 3時間で11.2μg/mlとなり, 肺組織では, 点滴開始後30分で21.7μg/ml, 1時間で11.3μg/ml, 2時間で4.9μg/ml, 3時間で1.8μg/mlであった。これら血液中および肺組織中のcarumonam濃度は, ほとんどのグラム陰性桿菌のMIC80を上回るものであり, これらの菌による呼吸器感染症に対して有用性が期待される。
  • 藤田 公生, 宗像 昭夫, 松島 常
    1990 年 38 巻 11 号 p. 1116-1118
    発行日: 1990/11/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    経尿道的前立腺切除術に伴う感染症に対してカテーテル留置の4日間を, 手術当日に19のセフェム系抗4物質を1回投与したのみで管理した症例と, 当日と翌日に2回, 続く2日間に1回, 投与した症例を, 術前感染例各群7例, 非感染例各群23例について比較検討した。術後感染は術前感染例で6g群2例に対し1g群4例, 術前非感染例で1例に対し3例あり, 発熱例も1g群に増加の傾向がみられた。問題となるような合併症の発生はなかったが, 投与抗生物質の減量は感染の危険性を増大するので, 厳密な経過親察が必要である。
  • 野原 望他
    1990 年 38 巻 11 号 p. 1119-1146
    発行日: 1990/11/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    浅在性皮膚化膿性疾患に対する新しいセフェム系経口抗生物質BMY-28100の有効性, 安全性および有用性を客観的に評価するため, cefaclor (以下CCL) を比較対照薬とした二重盲検比較試験を実施した。1日投与量は両薬剤群とも750mg (分3) とし, 第I-IVおよび第VI群は7日間, 第V群は10日間連続投与とした。総投与例数は252例 (両薬剤群共126例) であったが, そのうち解析対象症例数は, 臨床効果については227例 (BMY-28100群116例, CCL群111例), 概括安全度については245例 (BMY-28100群121例, CCL群124例), 有用性については227例 (BMY-28100群116例, CCL群111例) であり, 以下の成績を得た.
    1. 臨床効果はBMY-28100群81.9%(95/116), CCL群82.9%(92/111) の有効率を (有効以上) 示し, 両薬剤群間に有意差は認められなかった。また, 疾患群別臨床効果では, 第1群でBMY-28100群が著効率において有意に優れていた。
    2. 細菌学的効果は全体ではBMY-28100群86.3%(63/73), CCL群79.3%(46/58) の菌消失率を示し, 両薬剤群間に有意差は認められなかったが, Staphylococcus aureus 感染例においてBMY-28100群は95.8%(23/24) とCCL群66.7%(8/12) に比し, 有意に優れていた。
    3. 副作用はBMY-28100群121例中4例 (3.3%), CCL群124例中3例 (2.4%) に見られたが, 発現率には両薬剤群間に有意差は認められなかった。臨床検査値の異常はBNIY-28100群2.9%(3/105), CCL群8.6%(9/105) に見られたが両薬剤群間に有意差は認められなかった。また, 副作用および臨床検査値の異常を考慮した概括安全度はBMY28100群90.1%(109/121), CCL群89.5%(111/124) の安全率 (安全のみ) を示し, 両薬剤群間に有意差は認められなかった。
    4. 臨床効果および安全性を考慮して判定した有用性はBMY-28100群81.9%(95/116), CCL群80.2%(89/111) の有用率 (有用以上) を示し, 両薬剤群間に有意差は認められなかった。
    以上の成績より, BMY-28100はCCLと同等の効果が期待でき, 浅在性皮膚化膿性疾患の治療薬として安全性の高い有用性のある薬剤と考えられた。
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