MRSA感染症およびMRSA感染症と疑われる症例66例を対象とし, imipenem/cilastatin sodium (IPM/CS): cefotiam hydrochloride (CTM)=1g (IPMとして): 4g (1日投与量, 分2) の両剤同時または時間差による点滴静注投与を行い, 有効性と安全性の検討を行った。
1) 併用投与直前に分離されたMRSA 48株のIPM, CTM単独および併用時のMICはそれぞれ, 単独時1.56~200μg/ml, 12.5~1, 600μg/ml, 併用時0.025~25μg/ml, 3.13~800μg/mlで, min. FIC indexは平均0, 217であった。
2) 細菌学的効果は, 消失23例, 減少10例。不変12例, 菌交代6例, 不明2例で, 消失率は56.9% (29/51) であった。
3) 複数菌感染例におけるMRSA以外の分離菌の消長は, 19株中15株消失で, 消失率は78.9%であった。また緑膿菌では10株中7株消失で, 消失率は70.0%であった。
4) 臨床効果は, 肺炎25例を含む呼吸器感染症29例, 創感染15例, 熱傷感染2例, 腹腔内感染2例, 皮下膿瘍2例, 骨盤内感染, 尿路感染症, 敗血症各1例で検討し, 著効13例, 有効28例, やや有効10例, 無効2例で, 有効率は77.4% (41/53) であった。
5) 総合臨床効果は, 著効11例, 有効28例, 無効12例で, 有効率は76.5% (39/51) であった。
6) 投与法別の総合臨床効果は, 両剤同時投与および時間差投与で有効に差はなかった。
7) MRSAのコアグラーゼ型別はII型23株, III型16株, I V型3株, VII型6株で, 施設地域による型別の片寄りはみられなかった。コアグラーゼ型別の総合臨床効果は, 統計学的に有為な差が認められなかった。
8) 副作用は, 悪心, 悪心・嘔吐, 嘔気, 下痢, 各1例で, 発現率は6.1% (4/66), 臨床検査値異常は, 肝機能検査値異常8例で, 発現率は12.1% (8/66) であった。これらはすべて一過性で重篤なものはなかった。
以上の成績から, 単独で有効な薬剤が少ないMRSA感染症に対して, IPM/CSとCTMの併用療法は, 臨床的に有用性が高いことが示された。
抄録全体を表示