園芸学会雑誌
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22 巻, 2 号
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  • 八朔果の蕚部分離層に関する組織学的研究
    黒上 泰治, 曾我部 哲
    1953 年 22 巻 2 号 p. 65-71
    発行日: 1953年
    公開日: 2007/05/31
    ジャーナル フリー
    1. 晩生柑橘八朔種の成熟果における蕚部脱離の機構に関し, 蕚部分離層の形成位置, 分離の過程, 2, 4-D及び低温の処理効果等について組織学的観察を行い, 併せて上記処理効果を外部形態的に観察した。
    2. 蕚部分離層は分離帯の酪中央線あるいは下側部附近において3, 4~7, 8層の細胞より構成されている。しかして分離層の細胞は分離前, その中に沃度•沃度加里液に好染して青色を呈する顆粒を著しく沈積し, 二次の分裂増殖を行うのが認められる。分離帯は果梗における髄組織の末端より稍離れた中果皮組織の側において, 10数層~20数層の比較的扁平, 小形な細胞の層により形成せられている。しかしこれ等の組織は維管束より外方においてはさほど明確に見ることが出来ない。
    3. 分離層細胞内における顆粒の沈積現象は12月中旬頃には殆どの果実中において完了しているものと思われる。
    4. 蕚部の脱離は分離層(顆粒)細胞の二次的分裂, 肥大生長の後, それらの細胞の中層中に含有される Pectine化合物が溶解することに基くものと思われる。但しその場合, 導管は比較的分離し難く, 軽微な衝撃により機械的に破切する場合が多い。
    5. 樹上着生果では分離の過程は進行し難いものであるが, 採収貯蔵果では逐次進展し, 結局分離細胞が遊離崩壊する。
    6. 2, 4-D水溶液の蕚部に対する塗布 (又は撒布) は分離過程の進行を抑制する傾向がある。-1°C~1°Cの低温は逆に促進的に作用するものと思われる。
    7. 上の事実は蕚部脱離率の調査によつて裏書きされている。即ち2, 4-D水溶液または低温処理後90日目(3月下旬)に, 標準, 2, 4-D処理, 低温処理各区間にそれぞれ蕚部脱離率に関して有意の差が認められ, 2, 4-D区は標準区の約1/8程度の脱離を見たのに対し, 低温区ては約1.6倍の脱離を見た。
  • 堀 裕, 杉山 直儀
    1953 年 22 巻 2 号 p. 72-80
    発行日: 1953年
    公開日: 2007/05/31
    ジャーナル フリー
    1. ガス組成を終始一定に近く保ち得る連続通気法によつて, 19種類に及ぶ蔬菜類種子の発芽に対する酸素及び炭酸ガス濃度の影響を実験した。
    2. 標準のガス条件下に近い発芽を得るためには, 一般に10%以上の酸素濃度を必要とし, 発芽可能な限界の酸素濃度は5%以下にあつた。酸素濃度の減少に伴う発芽率の減少及び平均発芽日数の増大の割合は, 種類によつてかなりの相異があつたが, 温度によつては予想されたほど影響されなかつた。
    3. 最も低い酸素濃度で発芽し得た種類はキウリ, シロウリ, ネギ等で, 酸素1%で標準の20%以上, 2%で50%以上の発芽率を示した。セルリー, ダイコンは酸素5%でも殆ど或は20%以下しか発芽せず, 前者と著るしい対照を示し, 他の類種は両者の中間に位置した。
    4. 炭酸ガスの発芽抑制効果は, 酸素が15%も共存する場合は40%で始めて顕著に現れた。共存酸素5%の場合は, 酸素濃度が不十分なことと相俟つて, 発芽は著るしく不良となり, 高濃度に於いては根端の褐変腐敗等の生理的障害を多発した。
    5. 炭酸ガスの高濃度下で発芽し得る性質にも種類によつてかなりの相異があり, ネギ, ハクサイは強く, ニンジン, ダイコン, カボチヤは弱かつたが, この順序は酸素の低濃度で発芽し得る順序とは必ずしも一致しないようである。
    6. 十字科作物を主どして, 適当に酸素を減じ, 或は炭酸ガスを加えることによつて, 人工的に休眠状態を誘起することができた。誘起された休眠種子は自然休眠種子と同様, 低温処理によく反応して発芽した。
  • 傾斜地りんご園の土壤侵蝕調査 その2
    渋川 潤一, 相馬 盛雄, 外川 鉄男
    1953 年 22 巻 2 号 p. 81-86
    発行日: 1953年
    公開日: 2007/05/31
    ジャーナル フリー
    1951年4月より1952年8月にわたり青森県南津軽郡六郷村長坂山に於て傾斜地りんご園の土壤侵蝕調査を行つた。調査地の総面積は約88町歩, 中りんご園は約75町歩に及び開墾, 栽植は1909~1913年の間に行われた。土壤型は Ando Soil 及び Brown Podzolic Soil に大別され, 傾斜の約89%は8~25度であり, 最長傾斜長は500mに達する。調査結果を要約すれば次の通りである。
    1. 長坂山全面積の61%は表土の75%以上心土の一部を, 12%は心土の25~75%を失い, 更にりんご園全面積の約72%が表土の75%以上心土の一部及び心土の大部を失つておつた。
    2. 土壤侵蝕によつてりんご園土壤の腐植, 全窒素, 置換性石灰含量及び非毛管孔隙量, 土壤団粒化率は減少し, その結果りんご園の生産力は非常に減退した。
  • 結球白菜, 特に春播を中心とした生態について
    岩間 誠造, 芹沢 暢明
    1953 年 22 巻 2 号 p. 87-94
    発行日: 1953年
    公開日: 2007/05/31
    ジャーナル フリー
    1. 結球白菜松島純2号及び野崎春播1号を用い, 1950年には標高 (長野: 360m, 菅平: 1390m), 播種期を変えて栽培し, 1952年には幼苗期を15°C以上のフレーム内で育苗し, 定植期を変えて, 温度と花芽分化•抽苔, 栄養生長条件, 病害進展等を追及し, 異つた温度の現れる標高別に, 結球白菜をどう栽培すれば良いかを知らんとした。
    2. 花芽の分化は最低12~13°C以下で, 抽苔は8~9°C以下で播種若しくは定植された場合に起きる。比較的低温感応性の敏感な松島純2号でも, 花芽分化まで播種後30日, 抽苔にその後30日位を要する。従つて感応性の鈍感な野崎春播1号では, 低温期に播種しても, 其の他の条件が良ければ抽苔前に完全結球する。しかし出来たら幼苗期10°C以上のフレーム内で育てて, 外温が最低8~9°Cで定植すれば完全である。
    3. 葉の生長条件は, 播種後30~40日の比較的生長量の少い, 温度等に鈍感な幼苗期と, その後30~40日の, 生長量が急増する結球期に分けられる。後者は温度に敏感で, 耐病性の弱るときである。
    4. 結球期, 生育に都合の良い最適温度は平均気温18~21°Cの間で, 23°C附近以上になると, 生長も悪く, 病害に侵され易い。又15°C以下の低温も生長を抑える。従つて標高1,000m以上の, 夏も20°C附近のところでは夏栽培が, 標高700~800m以下の夏に23°C以上になるところでは, 春又は秋の18~21°Cで結球期に当るような栽培を行う。
  • 日長, 温度を異にしたときの玉葱の生態
    岩間 誠造, 浜島 直己
    1953 年 22 巻 2 号 p. 95-99
    発行日: 1953年
    公開日: 2007/05/31
    ジャーナル フリー
    1. 1950~1951年愛知白, 泉州黄, 札幌黄を用い平暖地長野 (360m) で秋播, 高冷地の菅平, 稲子 (1200m) で春播し, 温度, 日長, 栽培時期を変え, 肥大始時の気温, 日長, 苗齢並びに倒伏時期等を明らかにし, 異なる標高での栽培方法を知ろうとした。
    2. 秋播の早春上昇気温期における生長再開気温は, 平均気温10°C以上で, 植物体の最も旺盛な生長を行う気温は秋播春播共に平均気温18~20°Cであつた。
    3. 秋播で球の肥大始期となる時期は何れも, 球の肥大に必要な日長の時期が過ぎてからである。このことは寒地では日長に気温が伴わないためであろう。
    4. 春直播の肥大始期が, 日長, 気温は充分与えられているにもかかわらず, 著るしく秋播よりおくれるのは, 植物体の大きさが小さいことによるもので, 日長, 気温以外に苗齢は肥大の制限因子である。
    5. 春播で肥大始となる苗齢は, 愛知白4枚, 泉州黄5枚, 札幌黄6枚内外のときであつた。
    6. 春播栽培では, 早春育苗した苗を定植することによつて, 球の形成は早まり, 肥大期間も長くなるため収量を著るしく増加することが出来る。
    7. 充分日長が与えられれば, 完全倒伏が行われるが, 春直播のように下降日長温度条件下の栽培では完全倒伏は行われなかつた。
  • 花芽分化時及び開花期の温度が, 菜豆の開花結実に及ぼす影響
    渡辺 齊
    1953 年 22 巻 2 号 p. 100-106
    発行日: 1953年
    公開日: 2007/05/31
    ジャーナル フリー
    1. この実験は, 菜豆品種「金時」を使用し, 温度とその不結実性の関係を明らかにせんとして行われたものである。
    2. 花芽分化期前後~雌蕋形成期頃から連続して高温に遭遇すると, 花芽の発育が不完全になつて, 開花迄到達しないか, 到達しても不稔花粉率高く, 不結実となり易い。花粉形成期以後は連続高温に遭遇しても, 直接障害を受けることは少い。
    3. 花芽分化並びに発育期の夜温の高いこと (25~26°C以上) は(2) と同結果をまねく。
    4. 夜温の低いこと (15°C)は, 花芽の分化並びに発育には好都合であるが, 節位の分化数が少なく, 総開花数も少い。
  • 岡山県英田郡に於ける調査成績
    本多 昇, 岡崎 光良, 大塚 純夫
    1953 年 22 巻 2 号 p. 107-112
    発行日: 1953年
    公開日: 2007/05/31
    ジャーナル フリー
    (1) 岡山県英田郡に於て不透水盤層所謂“トッコ”に対する栗及びコナラ又はクヌギの根群の適応性に就いて比較調査した。栗は不透水盤層により著しく根の垂直的発達を阻害される.
    (2)“トッコ”は土居町片伏影にては洪積土層に基因する。吉野村志越に於いては“トッコ”は凝灰岩の残積土層であり, 又大聖寺にては海成土壤に基因する膠質粘土層である。
    (3) 筆者等の提案する“根群型”特に“直根型”は栗の根群の垂直的発達の簡明な指標となる。
    (4) 崖錐地又は押出し地にては, 小出氏の謂う砂礫地又は砂礫岩塊地である処では栗の生育が良好である。
    (5) 面積約117平方粁に過ぎぬ一村内にても地質, 基岩, 地形等に由来する土壤形態により栗の生育良好地或は不良地等種々な土地柄が存在することは極めて興味がある
  • 球茎甘藍, 葉牡丹, 及び子持甘藍
    建部 民雄
    1953 年 22 巻 2 号 p. 113-114
    発行日: 1953年
    公開日: 2007/05/31
    ジャーナル フリー
    球茎甘藍, 葉牡丹, 及び子持甘藍共に, 其の隣花及び異株授粉の成績は, 前に報告した甘藍のそれとほぼ同じである。之等3種類に於ける自家不和合性の機構は, 主として柱頭上に於ける自家の花粉の発芽減少と, 花粉管の柱頭組織内への侵入困難に帰し得ると考えられる。
  • 西沢 正洋, 水田 隼人
    1953 年 22 巻 2 号 p. 115-118
    発行日: 1953年
    公開日: 2007/05/31
    ジャーナル フリー
    1. 1951年落花生黒渋病に対する抵抗性品種を選出するため16品種を供試し, 格子方格法にて各品種を圃場に配置し自然発病による病斑数を調査した。
    2. 供試16品種中登丸1号, ジャバ種, 白油種は本病の発病少く, 支那落花生 (支那種) 及び肝付在来は発病多く, 立茎小粒種に発病少く, 匐茎大, 中粒種に発病多き傾向を示し, 品種の性状と発病との関係が明らかとなつた。
  • 岡田 正順, 山田 富造
    1953 年 22 巻 2 号 p. 119-122
    発行日: 1953年
    公開日: 2007/05/31
    ジャーナル フリー
    1. アマリリスの球根50球を用いて5月上旬より10月下旬に亙る問2,3球ずつ10日おきに掘上げその生長点及び花芽の状態を調査した。
    2. アマリリスの花芽は通常生長点が葉4枚を作る毎に形成される。しかしその中少数のものは花芽の転位, 欠除等によつて葉1枚より11枚の間に変化した。
    3. アマリリスの生長点は花芽の基部に線状の葉 (生長点或は花芽を取巻かい) 1枚を隔てゝ形成され葉4枚を形成した後花芽となる。即ちアマリリスは仮軸分枝で花芽と花芽の間は葉4枚を隔てゝいる。
    4. アマリリスの花芽は先ず大小1対の苞(外苞)を作り中心部は二分して第1花及び第2花を形成する。次いで第1花の基部及び第2花の基部にそれぞれ内側の苞を作り, その内側にそれぞれ第3花及び第4花が形成される。その頃第1花は外花被を形成し次いで, 内花被, 雌芯, 雌芯の順で形成される。花芽の発達段階をわけると未分化期を1として雌芯形成に至る迄10段階に分ける事が出来る。
    5. 第1花が雄芯形成期に達するとその花芽の内側には既に葉4枚が形成されるので次の花芽が分化する。更に第3花が雌芯形成期に入るとその花芽と生長点との間に葉8枚が形成される。従つて次の花芽が2個形成される事となる。
  • サルビアの種子の成熟に就いて
    明道 博, 奥村 実義
    1953 年 22 巻 2 号 p. 123-128
    発行日: 1953年
    公開日: 2007/05/31
    ジャーナル フリー
    1) サルビア採種の基礎的研究として1951~52年に結実種子成熟過程に就いてその果実の外観的観察並に種子発達殊に胚及び胚乳発育の解剖的観察を関連的に行い併せて各成熟程度の種子の粒重並に発芽能力を調べた。
    2) 果実は受精後先ずその長さに於て次いで幅に於て急激に発育して開綻時子房の凡そ2.4倍に達した後稍縮小するが, 厚さは徐々に増加し着色終了時には開綻時の約2倍となる (第1図参照)。而してその色彩は最初白色であるが長さが最大となる頃に光沢を増して稍半透明にみえ, 次いで灰白色を経て頂部附近から臍部に向つて褐色斑を現わし3~4日間で着色を終了して全面褐色乃至黒褐色となる (第1表参照)。
    3) 一方果実内に蔵せられる種子は受精すると最初胚乳が急激に発達し, 次いで胚の発達が進められて果実の着色終了と時を同じくして形態的に完成されその後は専ら肥大する。 而して胚乳組織は胚の完成後には破壊乃至圧縮されて胚と子房壁面との間隙に僅かに存在するにすぎない (第2図参照)。
    4) 種子成熟は早期開綻花に於て早く, 3月下旬開綻のものでは開綻後14日, 9月上旬開綻のものでは開綻後20日, 中旬開綻のものでは開綻後23日で胚は形態的に完成されるが, 下旬及び10月上旬開綻のものでは降霜迄に完成されない (第1表参照)。
    5) 成熟過程の各時期に収穫した種子の粒重並に発芽能力は, その果実が灰白色期に収穫したものは千粒重2.2~2.6gで平均7.4%発芽し着色開始時収穫のものば千粒重2.78gで21%発芽するが, 着色開始後その過半部分が既に着色し尚着色進行中のものでは千粒重3.9~4.0gで63.8%発芽し, 着色終了時収穫のものでは千粒重3.9gで72%発芽した。更に着色終了後5日を経て収穫したものは千粒重4.33gで88%発芽した(第2, 3, 4表参照)。
    6) これ等の結果からサルビアの種子はその果実の着色終了と同時に胚の形態は完成され, 従つてこの時期を以て種子成熟の標徴となすべきであるが尚発芽率を優良ならしめんがためには更に数日間充分完熟せしめることが望ましい。
    7) 且つ9月下旬以後に開綻する花はその胚が完成されず発芽が期待されないから採種から除外しなければならない。
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