1. 晩生柑橘八朔種の成熟果における蕚部脱離の機構に関し, 蕚部分離層の形成位置, 分離の過程, 2, 4-D及び低温の処理効果等について組織学的観察を行い, 併せて上記処理効果を外部形態的に観察した。
2. 蕚部分離層は分離帯の酪中央線あるいは下側部附近において3, 4~7, 8層の細胞より構成されている。しかして分離層の細胞は分離前, その中に沃度•沃度加里液に好染して青色を呈する顆粒を著しく沈積し, 二次の分裂増殖を行うのが認められる。分離帯は果梗における髄組織の末端より稍離れた中果皮組織の側において, 10数層~20数層の比較的扁平, 小形な細胞の層により形成せられている。しかしこれ等の組織は維管束より外方においてはさほど明確に見ることが出来ない。
3. 分離層細胞内における顆粒の沈積現象は12月中旬頃には殆どの果実中において完了しているものと思われる。
4. 蕚部の脱離は分離層(顆粒)細胞の二次的分裂, 肥大生長の後, それらの細胞の中層中に含有される Pectine化合物が溶解することに基くものと思われる。但しその場合, 導管は比較的分離し難く, 軽微な衝撃により機械的に破切する場合が多い。
5. 樹上着生果では分離の過程は進行し難いものであるが, 採収貯蔵果では逐次進展し, 結局分離細胞が遊離崩壊する。
6. 2, 4-D水溶液の蕚部に対する塗布 (又は撒布) は分離過程の進行を抑制する傾向がある。-1°C~1°Cの低温は逆に促進的に作用するものと思われる。
7. 上の事実は蕚部脱離率の調査によつて裏書きされている。即ち2, 4-D水溶液または低温処理後90日目(3月下旬)に, 標準, 2, 4-D処理, 低温処理各区間にそれぞれ蕚部脱離率に関して有意の差が認められ, 2, 4-D区は標準区の約1/8程度の脱離を見たのに対し, 低温区ては約1.6倍の脱離を見た。
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