ビワ根の内皮側の皮層細胞にみられる細胞壁の内部成長 (
phi 肥厚)と内皮のカスパリー線の形成過程を検討した.
phi 肥厚は根端から約10 mm の部位から出現し,30 mm 付近でほぼ最大に達した.内皮側の皮層の第 1 層目に出現した
Phi 肥厚は中心柱を取り囲むようにほぼ一斉にみられ始め,根の齡が進むとともに第 2~3 層目にも出現した.
Phi 肥厚が内皮を囲むようにリング状に発達した段階でも,カスパリー線の発達はその初期段階であり,内皮の細胞壁に点状に観察された.カスパリー線の発達は師部に面した部位の細胞壁から出現し,根の齡が進むにつれて,すべての内皮にみられるようになった.
phi 肥厚とカスパリー線の形成過程の時間的な差異からみて,ビワ根ではカスパリー線の発達する前に
phi 肥厚がみられた.カスパリー線が内皮全体に発現する段階になると,
phi 肥厚をともなった皮層組織と内皮との間に離脱帯が形成され,次第に皮層が脱落した.根の齡が進むにつれて,内しょうの細胞層数が同心円方向に増加し,スベリンの蓄積と考えられる自家蛍光が観察できるようになった.カスパリー線の形成は褐色根においては白色根よりも根の先端に近い部位から発達した.
phi 肥厚は土壌を乾燥させて生育させた根において,乾燥させていない根に比べて顕著であった.ビワ根にとって
phi 肥厚の増大は土壌乾燥に対する防御機構の一つと考えられる.
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