園芸学会雑誌
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54 巻, 3 号
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  • 福井 博一, 今河 茂, 田村 勉
    1985 年 54 巻 3 号 p. 287-292
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ‘旭’2樹を用い, 早期落果を促すために満開後10日目から30日間夜間温度を25°Cとする夜間加温処理を行った. すべての短果枝の中心果, 計1200個の同一部位の果径を2日ごとに測定し, 落果が予想される果実 (落果判定果) を同定した. 正常な発育を示す果実 (正常果) と落果判定果を採取し, 常法に従い酸性エーテル画分とn-ブタノール可溶性画分を得た. 各画分の物質は生物検定法により定量した. 種子中にはサイトカイニン類として, ゼアチン及びゼアチンリボシド類似物質が認められた. また, 果肉組織中には先の両類似物質の他に未同定のサイトカイニン様物質が存在した. 種子中のサイトカイニン活性は, 果肉組織中の40~170倍高く, 種子には高濃度でサイトカイニンが存在することから, サイトカイニンは種子で合成されていると考えた. 落果判定果の種子サイトカイニン活性は正常果のそれの約1/15~1/40で, 早期落果と種子中のサイトカイニン活性の低下は密接な関係があることが認められた. 種子中のジベレリン類としてGA3, GA4+7が認められた. 落果判定果の種子ジベレリン活性は正常果のそれより低かった. したがって, 早期落果は種子中のサイトカイニン及びジベレリン活性の低下と密接な関係を持つものと考えられた.
  • 高橋 国昭
    1985 年 54 巻 3 号 p. 293-300
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    平棚栽培におけるブドウの最適LAIを明らかにするため, 無加温ハウス栽培5年生‘デラウェア’園の棚下に鉢植えの3年生‘デラウェア’を持ち込んで, 果実肥大第1期から成熟期までのNARを測定した. また, ガラス室において鉢植えの4年生‘デラウェア’の密度(LAI)と着果量を変えて, 果実の諸形質に及ぼす影響を調べるとともに, NARとCGRを測定した.
    1. 各供試樹を庇陰しているブドウ樹のLAI(X)と庇陰された供試樹のNAR(Y)との間にはY=0.126X2-1.33X+3.01の関係が見られた. この式からNARが0になる庇陰樹のLAIを計算すると3.2になるが,LAIの測定値が実験終了直後のものであったところから, 無加温ハウス平棚栽培の‘デラウェア’における物質生産の見地からの最適LAIは3よりやや低いところにあると考えられた.
    2. LAIが2.08と2.82とではNARに大きな差は見られなかった. したがって, CGRはLAIの高いLAI-2.82区のほうが高かった. 樹単位のNARはその着果量が多くなるにつれ大きくなる傾向が強かった.LAI-2.08区では, 着果量が2kg/m2を越えると着色不良果が発生したが, 2.82区では着果量が2.8kg/m2であってもほとんどが正常に成熟した.
    3. 以上の結果から, 平棚栽培の無加温ハウス‘デラウェア’における最適LAIは, 収量や品質の点を考慮に入れたとしても2より大きく, むしろ3に近いと考えられた.
  • 黒井 伊作
    1985 年 54 巻 3 号 p. 301-306
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ブドウ‘巨峰’のガラス室栽植樹並びに1芽挿しを用い, 石灰窒素 (CaCN2として55%含有) の20%温水浸出液及びH2CN2塗布処理が芽の休眠打破に及ぼす効果を試験した.
    CaCN2をカラス室栽植樹に塗布した春先の発芽状況は12月, 1月, 2月の各処理区で, それぞれ16日, 9日, 5日の発芽促進となり, 休眠の深い時期の処理で発芽促進効果が高く, これまでの実験結果と一致した. 3% H2CN2処理区では同じ時期の処理で, それぞれ15日, 7日, 4日の発芽促進となり, CaCN2区と同じ傾向の休眠打破効果が認められた.
    一方, 切り枝の挿し木実験では, 12月中の置床でCaCN2並びに0.5%及び1% H2CN2処理区は2~4日の発芽促進であった. 挿し木における発芽促進程度は栽植樹に比較してはるかに低く, また, 挿し木では2% H2CN2以上の濃度では薬害による枯死芽がみられ, 有効濃度は栽植樹の1/3~1/6でよかった. これらのことは, 切り枝による強い創傷効果が休眠を浅くしたためと考えられた.切り枝の休眠を完了した2月下旬では, CaCN2及び1%H2CN2処理区においても薬害が発生した.
    本実験の結果からH2CN2はブドウ‘巨峰’の休眠打破にCaCN2と同様な効果があった. このことは石灰窒素水浸出液の休眠打破作用の主体が, CaCN2の部分的加水分解によって活性型のH2NCNを生じ, cyanide ion(CN-)として作用することを示唆する.
  • 高木 信雄, 赤松 聡, 清水 真寿美
    1985 年 54 巻 3 号 p. 307-314
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    草生カンキツ園における春草が, カンキツの春肥施用窒素の吸収に及ぼす影響を知るために, 8年生温州ミカンを供試し, 15N標識硫安を用いて試験を行った.
    1. 春草の根は大部分が表層(0~5cm)に分布し,ミカン根は5cm以下の層に分布していた. 春先の軽い中耕と除草剤による裸地化によって, 10cmの層の地温は草生区よりも約20日早く12°Cに達したが, 表層の地温の両区の差は10cm以下の層に比較してはるかに大きかった.
    2. 5月12日の刈り取り時の春草生育量は10a当たり3.23tとなり, その吸収窒素量は10.5kgで, 春肥窒素(15N)の38.6%を吸収していた. 刈り取り後敷草された春草中の15Nは9月下旬までに約75%が消失し, その窒素は夏~秋季にミカン樹に再吸収された. そのため, 草生区では9月以後の葉中及び果実中の15N濃度が高まったのに対して, 裸地区では花器及び初夏の葉中の濃度が高かった.
    3. 土壌の炭素及び全窒素含量は, 5月中旬に裸地区ではすでにかなり低下したが, 20cmの層の15Nは草生区よりやや高かった. 7月下旬には裸地区では15Nは顕著に低下したが, 草生区では相当量15Nは維持されていた.
    4. 処理13か月後におするミカン樹の15N吸収量は,土壌残存量に比較して著しく少なく, また, 両区に差異はなかった. 土壌中の15Nは両区とも約90%が表層の腐植層に残存し, 残存率は裸地区で29.7%, 草生区で63.6%であった.
    以上のように, 春草の有無によって, 春肥施用窒素のミカン樹の吸収過程及び土壌への残存量には著しい差異が生じた.
  • 岩崎 直人, 大垣 智昭
    1985 年 54 巻 3 号 p. 315-322
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    7種の2年生カンキツの着生個葉, 及び8種のカンキツ実生の地上部全体を供試して, 光合成速度及び蒸散速度を測定し, その特性から気象反応の解析を試みた.個葉における光補償点は1.5~3.5klxにあり, 種間に差は少なかったが, 光飽和点は興津早生温州, 青島温州, ハッサク, ‘川野’ナツダイダイ, 及び‘太田系’ポンカンでは30~40klxの間にあった. ‘森田’ネーブルオレンジでは, 10~20klxの間にあり, イヨでは50klx以上の点にあると思われた. 光合成の最も盛んな温度は, 青島温州, 興津早生温州では25°C前後にあり, 20~35°Cの温度範囲では光合成速度の変化は, 比較的小さかった. しかし, ‘太田’ポンカン及び‘川野’ナツダイダイでは光合成適温は, 30°C前後と高かった.
    実生全体で測定した結果, 光補償点がわずかに低くなったこと, 光飽和点が高くなったこと以外は, 個葉の結果と大差はなかった.
    蒸散速度は, 温度が高くなるにつれて増加したが, 35°Cではわずかに低下する傾向にあった. ‘森田’ネーブルオレンジの個葉における蒸散速度は, 温度が変化してもその値に大きな差はみられず, 他種とは異なった傾向を示した.
  • 加藤 忠司, 山県 真人, 塚原 貞雄
    1985 年 54 巻 3 号 p. 323-326
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    晩秋, 4年生ウンシュウミカン樹の葉に30時間連続して取り込まれた14C-プロリンの各器官への移動の状況を調べた. 春葉の中央切断部より取り込まれた14C-プロリンの一部は, その大半がそのままの形態で他の器官へ移動した. 吸収30時間目における主な移動先は枝の皮質部及び木質部であった. 葉への移動量も多く, また少なからず根にも移動が認められた. 枝及び根に移動した14C-ブロリンの大半はそのままの形態で存在したが, 中酸性成分への変化も少なくなかった. これらの結果より, 冬期における枝の耐寒性に対する葉の役割について論じた.
  • 水谷 房雄, 山田 昌彦, 谷口 俊哉, 小泉 京子, 杉浦 明, 苫名 孝, 門屋 一臣
    1985 年 54 巻 3 号 p. 327-335
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    野生モモ, ニワウメ, ユスラウメ台にモモ‘大久保’を接ぎ, 樹形をスレンダースピンドル形として4年間生育調査を行った.
    1. 共台に比べて, ニワウメ及びユスラウメ台は樹高, 総新梢長, 幹径などでみた栄養生長が抑えられた.
    2. 3年目までは, 共台に比べてニワウメ, ユスラウメ台で花芽着生率が高かった.
    3. 共台に比べて, ニワウメ, ユスラウメ台では成熟が促進された. 収穫果実の一果平均重は3, 4年目には野生モモ台>ユスラウメ台>ニワウメ台の順であったが, これはニワウメ及びユスラウメ台の一樹当たりの着果負担量が大きかったためと思われた.
    4. 冬期のせん定枝量は, 共台に比べてニワウメ, ユスラウメ台樹で少なく, またせん定作業は地面から脚立なしで, しかもほとんどハサミだけでできた.
    5. 根群分布は, 共台に比べて, ニワウメ, ユスラウメ台で小さかった. ニワウメ台とユスラウメ台の比較では, ユスラウメ台の根の方が水平方向への分布割合が多いようであった.
    6. 用いた台木のうちでは, ニワウメ台が最もひこばえが発生しやすかった.
  • 杉山 信男, 志立 潔, 岡田 邦彦
    1985 年 54 巻 3 号 p. 336-343
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    乾物重または体内水分当たりで表した葉中の限界カリ濃度が栽培の季節や生育段階によって変化するか否かを明らかにするため, 初夏と晩秋にカリ施肥量を変えてホウレンソウを栽培し, 葉分析を行った.
    地上部乾物重と最も若い展開葉のカリ濃度との関係は, 多くの場合2次式または3次式によくあてはまった.
    6葉期には, 最も若い展開葉における乾物重当たりの限界カリ濃度は最低で4.3%, 最高で6.7%であった.これに対して, 体内水分当たりの限界カリ濃度は約0.7%とほぼ一定であったが, 低温遭遇後には0.75%以上となった.
    初夏に行った生育段階に関する実験では, 最も若い展開葉における体内水分当たりの限界カリ濃度は5葉期から7葉期までは約0.7%で, 比較的一定に保たれた.一方, 乾物重当たりの限界カリ濃度はこの間に低下した.
  • Chairerg SAGWANSUPYAKORN, 篠原 温, 鈴木 芳夫
    1985 年 54 巻 3 号 p. 344-350
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ‘みの早生’ダイコンの花芽分化段階を走査型電子顕微鏡によって観察した. 48時間催芽後, 5°C下で30日間春化処理した後, 水耕装置に定植し, 生育させた. 催芽後, 室温下のバーミキュライト培地で30日間生育させたものを対照区とし, 低温処理区と同様, 水耕栽培した. 生育した植物体は3日ごとに茎頂部をサンプリングして花芽分化段階を調べた. 実験終了時 (定植後72日), 対照区では抽だいを見なかったが, 春化処理区のものは定植後, 平均抽だい日数は12日, 平均開花日数は29日であった. 開花節位は12.4節で, その内で第1花の下の腋芽に生ずる異形葉数 (複葉が少数かつ小形となり, 先端がとがっている葉) は3.2枚であった. この異形葉は植物学的には苞葉と考えられる.
    花芽の発育段階は形態的には, 栄養生長期から花芽原基分化期まで4段階に分けられた.
    1) 栄養生長期 (生長点は小さく, 円形で, 平滑の状態で直径は約250μmである).
    2) 分化初期 (ドーム状期, 生長点が肥大肥厚し, 直径が増加し, 300μm以上となる).
    3) 側枝分化期 (最新の葉腋に側枝原基を分化する).
    4) 花芽原基分化期 (茎頂部の最新節が伸び始め, 各花牙を分化する).
    なお, 側枝原基の発育段階は茎頂部と同様に経過する.
    従来, 花芽分化には, 茎頂部が肥大するドーム状期で決めることが多かったが, 茎頂部がドーム状になっても, その後の状態が良好でないと花芽分化まで至らない場合がしばしば観察された. しかし, いったん側枝分化期に達したものは必ず花芽分化に至るので, この時期を花芽分化の決定に用いるのが適切だと思われた.
  • 細木 高志, 太田 勝己, 浅平 端, 太田 清
    1985 年 54 巻 3 号 p. 351-356
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    低温及び高温下で育苗されたトマトについて, 茎頂部の内生植物生長調節物質及び栄養状態を比較検討した.低温下で育苗した苗の茎頂部の全糖含量, 全窒素含量及びたんばく態窒素含量は, 高温下で育苗したものに比べて多かった. また低温条件下では茎頂部のオーキシンレベルが低く, ジベレリンレベルが高かった. 栄養制限処理は長円果•三角果を少なくするよりむしろ子房の横裂•頂裂を減少させた. オーキシン散布と栄養制限の組み合わせ処理は長円•三角果と子房の横裂•頂裂果の両タイプを減少させた.
  • 金浜 耕基, 斎藤 隆
    1985 年 54 巻 3 号 p. 357-363
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1節上に雌花が2花着生した節を選び, 雌花第2番花や巻きひげ, 側枝, 上部主茎の摘除が雌花第1番花の開花時の曲がりに及ぼす影響を調べた. さらに, 二つの雌花の開花日の間隔と曲がりの発生及び回復との関係を調べた.
    1. 曲がり子房花の発生は子房長4.5mm, 開花前12日ころから観察された.
    2. 雌花着生節の巻きひげなどを摘除すると, 子房の伸長が早まるとともに, 子房の曲がりも軽減された. 巻きひげなどの摘除の影響は摘除時期が早いほど大きかった.
    3. 開花後の果実における曲がりの発生機構は曲がり子房花の場合と同じで, 開花後の早い時期に果実の伸長が停滞した後に発生した. 果実の曲がり角度は1番花の果実よりも2番花の果実で大きく, 特に二つの雌花の開花日の差が4日のときに著しかった.
    4. 曲がりの現れ方を果実の発育段階で分けると, 曲がりの増大期, 曲がりの最大期, 曲がりの減少期の三つの段階に区別された. 曲がりの減少, すなわち回復は青果としての収穫期以後も生長を継続させる段階で認められ, この性質を曲がりの回復性と呼んだ. 曲がりが回復した後はほとんど正常果に近い果形となった.
    5. 曲がりの最大期は果実長15.0±2.1cm, 開花後5.9±0.2日の収穫直前の時期であることが多かつた. 曲がりの最大期の角度は開花時の子房の長さや曲がり角度との間に相関は認められなかったが, 開花後の曲がり角度増加度や開花から収穫までの日数との間に高い正の相関関係が認められた.
    6. 以上の結果, 開花前の子房の曲がりも開花後の果実の曲がりも, それらの伸長が抑制される過程で細胞肥大の部分的不均衡がもたらされることによって発生するものと考察された.
  • 徳増 智, 金田 泉, 加藤 正弘
    1985 年 54 巻 3 号 p. 364-370
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    アブラナ属作物11種類の種子を用いて, 5, 15, 25,35及び45°Cの5段階の温度で発芽試験を行い, 置床後2時間ごとに発芽種子数を調べ, 種類による発芽のバターンを比較した. 累積発芽率の経時的推移を見ると, 種類によってのバターンは異なるが, 共通した傾向も認められる.
    各作物種子ともに, 最も早く発芽を開始したのは35°Cで, 次いで25, 15, 5°Cと温度が低下するにつれて発芽は遅くなり, また, 種類による発芽開始時期の変異幅が大となった. 45°Cでは35°Cと同時期に発芽を開始するか, またそれより遅く, 種類によって異なった.
    平均発芽期間は35°Cが最も短く, 25°Cがこれに次いだ. さらに, 作物の種類により15°Cまたは45°Cが続き, 5°Cはいずれの作物でも発芽に最長の時間を要した.
    実験終了時における最終発芽率を見ると, 35, 25及び15°Cではいずれの場合も85%以上の良好な発芽率を示した. その他の温度区では作物の種類により発芽率が45°Cのみで低いもの, 5°Cのみで低いもの, また45°C及び5°Cの両方で低いものに分けられた.
    以上の結果から, 休眠の覚醒した種子の最適発芽温度は25°Cから35°Cで, これは休眠覚醒途上種子の最適発芽温度が15°C以下であるのに比べて明らかに高い.
  • 金 鎮漢, 堀 裕
    1985 年 54 巻 3 号 p. 371-378
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ナスの第一花の下の葉数が8枚の苗を選び, 第一花直上の1枚を含む9枚の葉について, 発育に伴う外, 内部形態と光合成速度の変化を明らかにした.
    1. 葉長に対する葉重の増加割合はL5で最大で, その上, 下の葉で低く, 葉面積のそれは上位葉で大きかった.
    2. 比葉重 (SLW) は展開時上位葉ほど高く, その後上位葉では低下し, 下位葉では若干増大•低下して, 移植35日後にはほぼ一定値となり, 葉位間の差もほとんどなくなった. この傾向はSLW/葉厚で特に顕著にみられ, かつ一定となった時点でも上位葉がわずかながら高かった.
    3. 単位葉面積当たりさく状柔細胞数, ないし葉肉細胞数はいずれの葉位でも展開期に多く, その後減少してほぼ一定値となった. また常に基部>中央部>先端部の順に多かったが, 一定値となる時点ではそれぞれの差はわずかとなった. ほぼ一定値となった時点での細胞数は上位葉ほど多かった. また, さく状柔細胞の大きさは葉の発育とともに増加したが, L3は7葉期に, L5は8葉期に, L8は11葉期にその増加を停止した.
    4. さく状柔細胞の含有葉緑体数はわずかながら先端部>中央部>基部の順に多く, 葉の発育とともに増加したが, L3は7葉期, L5は8葉期, L8は11葉期にその増加を停止した.
    5. 葉緑素含有率は葉の発育とともに増加し, L3, L5は8葉期に, L8は11葉期に最大値に達した後低下した. また各葉の最大値は上位葉ほど高かった. 全窒素含有率は葉の発育とともに低下し, その低下は上位葉で大きかった.
    6. 光合成速度は葉の展開に伴って高まり, 最大値はL3で8葉期の21.2, L5で10葉期の23.3, L8で11葉期の23.7mg CO2 dm-2h-1であった. 1葉当たりの光合成量も光合成速度と同様, 葉の発育とともに増大して,最大値に達した後低下した. また, 14葉期までの測定期間を通じて光合成速度と高い相関を示したのは葉緑素含有率のみであった.
  • 本間 義之, 浅平 端
    1985 年 54 巻 3 号 p. 379-387
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    栄養繁殖を目的として Phalaenopsis 花茎先端部の節間切片を培養したところ, 50~80%の外植体が約100日後に下端にPLB (プロトコーム状球体) を形成した.
    この不定芽的に形成されたPLBは継代培養を繰り返すことにより増殖した. また, PLBから分化したシュートはその後根を分化して幼植物体となった.
    PLBの形成には Thomale GD (1954) の主要塩類, Ringe and Nitsch (1968) の微量塩類と有機塩類を用いた基本培地への, 10%ココナッツミルク, 5mg/lα-ナフタレン酢酸, 20mg/l6-ベンジルアミノプリンの添加が効果的であった.
    PLBの原基は, 花茎の内側の皮層細胞を起源としているようであった.
    この方法を用いると, 培養開始から1年間で1本の花茎から, 少なくとも400以上のPLB+シュートが得られるであろう.
  • 金子 英一, 今西 英雄
    1985 年 54 巻 3 号 p. 388-392
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    無加温ハウスの慣行栽培における球茎の生育中, 及び室温乾燥貯蔵中に最上腋芽の分化葉数, 発芽率, 並びに球茎の炭水化物含量を調べ, 球茎の休眠の様相を明らかにした.
    球茎は母株の開花期以前から徐々に休眠に入り, 4月中旬の開花時には球茎及び最上腋芽の発芽は極めて低率となり, 最上腋芽における葉原基の分化も停止し, 深い休眠状態にあることが認められ, この状態は5月下旬の収穫時まで続いた. 収穫後室温貯蔵中に発芽は次第に高率でしかも速かとなり, 球茎の休眠は徐々に破れて8月下旬には葉原基の分化再開と急速な発芽がみられ, 完全に破れたとみなせた. なお, これと前後して球茎の糖含量の高まりがみられた.
  • 三浦 周行, 岩田 正利
    1985 年 54 巻 3 号 p. 393-400
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    水のみを与えて砂耕したベニタデ芽生えについて,光, 温度などの環境要因を種々に変えた場合の体内アントシアニン濃度と炭水化物濃度との関係を調べた.
    1. 野外で遮光処理を子葉展開後から7日間行ったところ, 遮光率が低い区ほどアントシアニン濃度は高く,それと共に還元糖及びデンプン濃度も高かった.室内で青色, 緑色及び赤色蛍光管による光周的照射(10.8~11.9J/m2sec, 1日12時間照射) を出芽前から出芽開始5日後まで行った結果, 赤色光区においてアントシアニン濃度が還元糖及びデンプン濃度と共に高かった.
    2. 自然光小型チャンバーを用いて温度処理実験を子葉展開後9~10日間行った. 昼夜5, 15あるいは25°C恒温とした実験においては, アントシアニン及び還元糖濃度は15°C区で最も高く, 次いで25°C区であったが, デンプン濃度は25°C区で最も高かった.夜温を5°C一定として, 昼温を15, 20, 25あるいは30°Cとした実験では, 昼温が低い区ほどアントシアニン,還元糖及びデンプン濃度が高かった.昼温を15°C一定として夜温を5, 10, 15あるいは20°Cとした実験では, 夜温が低い区ほどアントシアニン及び還元糖濃度は高かったが, デンプン濃度は5~15°C区で高かった.
    3. 本実験では培地に窒素を与えなかったので, 各処理区の体内窒素濃度は一般に低く, アントシアニン濃度との関連はみられなかった.
    4. 以上の諸実験の結果に前報の窒素施用実験の結果を加えて, 各処理区の還元糖あるいはデンプン濃度をアントシアニン濃度に対してプロットしたところ, 共に著しく高い正の相関が見られた. 一方, 還元糖濃度は芽生え新鮮重と負の相関があった.
    5. ベニタデ芽生えにグルコース, フラクトース及びスクロース (0.01, 0.05, 0.1M) を散布したところ, いずれも0.1M液でアントシアニン濃度が高まった.
    以上の結果から, ベニタデ芽生えにおいてアントシアニン生成が促進されるのは, 新鮮重増加が抑制され, 体内に糖, デンプンなどの炭水化物が蓄積することと関連があると推定された.
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