水のみを与えて砂耕したベニタデ芽生えについて,光, 温度などの環境要因を種々に変えた場合の体内アントシアニン濃度と炭水化物濃度との関係を調べた.
1. 野外で遮光処理を子葉展開後から7日間行ったところ, 遮光率が低い区ほどアントシアニン濃度は高く,それと共に還元糖及びデンプン濃度も高かった.室内で青色, 緑色及び赤色蛍光管による光周的照射(10.8~11.9J/m
2sec, 1日12時間照射) を出芽前から出芽開始5日後まで行った結果, 赤色光区においてアントシアニン濃度が還元糖及びデンプン濃度と共に高かった.
2. 自然光小型チャンバーを用いて温度処理実験を子葉展開後9~10日間行った. 昼夜5, 15あるいは25°C恒温とした実験においては, アントシアニン及び還元糖濃度は15°C区で最も高く, 次いで25°C区であったが, デンプン濃度は25°C区で最も高かった.夜温を5°C一定として, 昼温を15, 20, 25あるいは30°Cとした実験では, 昼温が低い区ほどアントシアニン,還元糖及びデンプン濃度が高かった.昼温を15°C一定として夜温を5, 10, 15あるいは20°Cとした実験では, 夜温が低い区ほどアントシアニン及び還元糖濃度は高かったが, デンプン濃度は5~15°C区で高かった.
3. 本実験では培地に窒素を与えなかったので, 各処理区の体内窒素濃度は一般に低く, アントシアニン濃度との関連はみられなかった.
4. 以上の諸実験の結果に前報の窒素施用実験の結果を加えて, 各処理区の還元糖あるいはデンプン濃度をアントシアニン濃度に対してプロットしたところ, 共に著しく高い正の相関が見られた. 一方, 還元糖濃度は芽生え新鮮重と負の相関があった.
5. ベニタデ芽生えにグルコース, フラクトース及びスクロース (0.01, 0.05, 0.1M) を散布したところ, いずれも0.1M液でアントシアニン濃度が高まった.
以上の結果から, ベニタデ芽生えにおいてアントシアニン生成が促進されるのは, 新鮮重増加が抑制され, 体内に糖, デンプンなどの炭水化物が蓄積することと関連があると推定された.
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