園芸学会雑誌
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72 巻, 6 号
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  • 山口 正己, 佐藤 功, 渡部 昭, 石黒 亮
    2003 年72 巻6 号 p. 465-472
    発行日: 2003/11/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    裂果感受性の低い'Vale','Schwartze Venus' および'Mazzard',裂果の著しい'Satonishiki','Napoleon'および'Van'などの甘果オウトウ6品種の果実肥大に伴う果頂部,赤道部,梗あ部および縫合線部の外果皮細胞径の推移を調査した.果実重や果実側径は二重S字曲線を描き,各ステージの長さや測定数値には品種による差異が認められた.外果皮細胞径には部位による差異が認められ,赤道部横径,果頂部縦径および横経,縫合線部縦径などが大きな値を示した.品種による差異が大きかった部位は,梗あ部縦径,果頂部横径および縦経,赤道部縦径などであった.'Valera','SchwartzeVenus'および'Mazzard'の成熟果てはこれらの部位の外果皮細胞径が小さくなる傾向が認められた.果実重,果実側経,中果皮細胞横径と各部位の外果皮細胞経とは一部を除き有意な高い相関を示し,外果皮細胞の大きさが果実の肥大と密接に関係していることが明らかになった.外果皮の細胞は中果皮細胞とほぼ同調して分裂を行っていると推定されたが,果頂部においては,他の3つの部位とは異なり,中果皮細胞分裂停止時期以降も外果皮細胞の分裂が継続していると推定された.その期間は品種により異なり,分裂期間の長かった'Schwartze Venus','Valera'および'Mazzard'は,幼果期の果頂部外果皮細胞縦径が'Satonishiki','Napoleon'および'van'に比べて小さく,この差異は成熟に至るまで継続した.果実重および果実側経が小さいこと,および果頂部外果皮の細胞分裂停止時期が遅いことは,成熟果の果頂部外果皮の細胞径が小さくなることにつながり,裂果感受性の低下をもたらすと考えられた.
  • 菊池 卓郎, 塩崎 雄之輔, 安達 敏幸, 安中 フェルナンド節夫, 大竹 康友, 西出 勉
    2003 年72 巻6 号 p. 473-481
    発行日: 2003/11/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    リンゴの同一樹上における一部の1年生枝(前年の新梢)の切り返しせん定が,頂端新梢長に及ぼす影響を明らかにするため,主として'ふじ'と'紅玉',一部'北斗'のさまざまな樹齢の樹のさまざまな状態の1年生枝を用いて,1年単位の一連の実験を5年間にわたって行った.'ふじ'と'北斗'においては頂端新梢長は,せん定区と無せん定区の間で差が見られなかった.一方,'紅玉'においては頂端新梢はせん定によって長くなった.'ふじ'では無せん定1年生母枝上の新梢数は少なく,せん定によって新梢数と総新梢長は減少しなかった.'紅玉'の無せん定枝は比較的多くの新柄を発生し,せん定は新梢数と総新梢長の減少をもたらした.'ふじ'と'紅玉'の間に見られた上記の違いは,徒長枝を用いた実験でも同様に認められた.一連の実験の結果を総合して下記の推論に達した.(1)1年生母枝からの新梢の生長の強さは,かなりの程度まで母枝の長さと太さ,樹上における位置,樹の基部からの距離等,母校自体の状態と樹上において母枝のおかれた条件によって決定される.(2)頂端新梢の生長は,このような母校に固有の生長の可能性と,母枝上の芽の間の相互の影響の結果としてもたらされる.(3)'ふじ'のような側生新梢を発生しにくい品種では,頂端新梢の側生新梢に対する優位性が確立される傾向が強い.このような品種ではせん定は頂端新梢長にほとんど影響しない.それは頂端新梢の優位性に加え,せん定によって母校上の新梢数の変化が少なく,頂端新梢と側生新梢の相互間の関係に変化がないためである.(4)'紅玉'のような側生新梢を発生しやすい品種では,頂端新梢の側生新梢に対する優位性は強くない.このような品種ではせん定は頂端新梢の長さを増大させる.それはせん定によって側芽の数を減少させることにより,生長初期の段階において頂端新梢の生長に有利な状態をもたらすとともに,その後の側生新梢の頂端新梢に対する抑制を減少させるためである.
  • 中村 正博
    2003 年72 巻6 号 p. 482-487
    発行日: 2003/11/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    7月中旬から8月上旬にかけて子房から胚珠を取り出し,バイアルに移植して胚珠の培養を行った.その結果,中心子房で7月19日,側子房で同22日までに採取した胚珠では置床後9月上旬までにすべての胚珠が枯死したが,中心子房で7月22日以降,側子房で同26日以降に採取した胚珠ではいずれも子房当たりほぼ1個の胚珠が9月中旬まで生存し,内部に胚の生長・肥大が認められた.中心子房,側子房とも7月22日以降,子房当たり1個の最大胚珠とその他の胚珠とで重さに違いが生じ始め,7月29日以降その差は急速に拡大した.子房内に侵入した最長花粉管は,中心子房で7月19~22日,側子房で7月22~26日に胚珠の珠心位置に達した.胚珠珠心の位置する区分に達した花粉管は,中心子房,側子房それぞれ7月15日と19日に認められ,中心子房では7月15~19日にかけて,側子房では同19~22日にかけてその数は急増し,その後は徐々に減少した.7月22日,26日,29日に採取した中心子房において,珠孔内に侵入した花粉骨を持つ胚珠は子房当たりそれぞれ5,6,5個であった.珠孔内の花粉管は7月22~29日のいずれの子房においても一個の胚珠でのみ珠心に達していた.他の胚珠の珠孔内花粉管は珠孔内の侵入距離がおおむねそろっており,特に,7月29日のものではいずれも珠孔内の約1/2の距離で停止していた,以上のことから,子房内で一つの胚珠が受精すると,他のすでに花粉骨が侵入した胚珠では,花粉骨の伸長が停止するため,受精には至らないものと考えられた.
  • 千 種弼, 田村 文男, 田辺 賢二, 板井 章浩, 田淵 後人
    2003 年72 巻6 号 p. 488-496
    発行日: 2003/11/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    ニホンナシ'秋栄'と'豊水'果実のGAペースト処理によって誘導したみつ症発生組織における細胞壁の分解と光学顕微鏡観察による構造変化について検討した.両品種とも健全組織に比べ重度のみつ症組織では高分子CDTA可溶性ペクチンの脱重合化が起こったが,Na2C03可溶性両分には明らかな分子量の変化はみられなかった.4%KOH可溶性ヘミセルロース両分をSepharose CL-6B-100により分子量分両を行ったところ,両品種とも全糖検出で測定される多糖類にはみつ症発生に伴って一部低分子化がみられたものの,'豊水'の場合キシログルカンには分子量の変化は検出されなかった.両品種の24%KOH可溶性両分についてみると,金物,キシログルカンとも480kDのデキストランのマーカー付近に一つの広いピークとして溶出し,分子量の変化はごくわずかであった.全般的に見て,'秋栄は'豊水'より細胞壁結合型のポリガラクツロナーゼとグリコシダーゼ活性が高く,また'秋栄'ではみつ症の進行に伴いβ-ガラクトシダーゼおよびβ-グルコシダーゼ活性が高まった.両品種ともCMCによるセルラーゼ活性に組織間の違いはみられなかった.しかしながら'秋栄'ではキシログルカンを基質としたセルラーゼ活性は健全組織と比べてみつ症組織で高かった.両品種とも健全部位とみつ症発生部位には細胞壁構造の違いが観察され,みつ症発生部位では可溶化したペクチン質多糖類の増大とともに細胞間隙の拡大がみられたが,その傾向は'秋栄'で著しかった.
  • 渡辺 慎一, 中野 有加, 岡野 邦夫
    2003 年72 巻6 号 p. 497-503
    発行日: 2003/11/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    栽植密度が立体栽培スイカの果実重に及ぼす影響について,植物体の受光態勢と光合成速度の観点から調査した.ユウガオ台木に接ぎ木したスイカの植物体を,ガラス室内で52.9,68.0,95.2および158.7個体・a-1の栽植密度で土耕栽培した.仕立て法は一次側枝2本仕立てとし,いずれか一方の側枝に1果実を着生させた.果実肥大期における葉の受光量を葉位別に積算日射計測フィルムで,また光合成速度を葉位別に携帯用光合成・蒸散測定装置で測定し,植物体当たりの総受光量および光合成量を推定した.栽植密度の増加にともなって果実重は有意に減少したが,果実の糖度は栽植密度の影響をほとんど受けなかった.栽植密度にかかわらず,葉の受光量と光合成速度は葉位の低下にともなって徐々に低下したが,その低下程度は栽植密度が高いほど大きかった.植物体当たりの総受光量および光合成量は栽植密度によって異なり,いずれも果実重との間に密接な関係が生じた.これらの結果から,栽植密度の違いによる立体栽培スイカの果実重の差異は,主として植物体の総受光量によって決定される光合成量の違いによって生じるものと考えられた.
  • 名田 和義, 賀 利雄, 橘 昌司
    2003 年72 巻6 号 p. 504-510
    発行日: 2003/11/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    高地温によるキュウリ個葉の光合成阻害機構を明らかにするために,葉の水分状態,葉と根のABA含量,光合成および種々の光合成関連パラメータを調査した.人工気象室(昼/夜気温30/25℃,光強度250μmol・m-2・s-1,相対湿度70/80%;日長14時間)において,地温30℃で水耕栽培したキュウリ苗('四葉')が第1本葉を完全展開したとき,地温30℃と38℃の2処理区を設け,10日間処理を行った.生育は高地温(38℃)で著しく抑制されたが,葉の萎れや黄化はみられなかった.高地温区では,処理4日目以降に,拡散伝導度の低下とABA含量の増加が起こり,拡散伝導度の低下とABA含量の増加の間に高い相関(R2=0.946)が認められた.葉の水ポテンシャルは両処理区において処理6日目までに急激に低下したが,低下程度は高地温区の方が大きくその後も低く維持された.しかしながら,雨区の差は明確ではなかった.葉の光化学系活性は地温の影響を受けなかったが,CO2交換速度(CER)は処理4日目から8日目にかけて直線的に低下した.処理8日目に葉の背軸側表皮を剥離して気孔の影響を取り除くと,高地温区の拡散伝導度は常温区とほぼ同じ値に高まったが,CERは有意に増加したものの常温区の値より低く,完全には回復しなかった.このことから,高地温下では気孔閉鎖のほかに葉肉細胞の炭酸固定活性の低下が起こっていると考えられたので,Rubiscoの初期活性と全活性を調べた.その結果,高地温区では初期活性が低く,Rubiscoの活性化状態が低下していることが明らかとなった.以上の結果から,高地温による光合成阻害には,ABA含量の高まりによる気孔閉鎖とRubisco活性の低下が関係していると考えられる.
  • 入船 浩平, 森本 裕介, 内浜 正美
    2003 年72 巻6 号 p. 511-516
    発行日: 2003/11/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    シンテッポウユリ鱗茎由来のカルスを用いて,パーティクルガン法により遺伝子導入を行った.プラスミドPAct1-F(イネ由来アクチン1遺伝子プロモーターにβ-glucuronidase(uidA遺伝子)をもつ)を導入しGUS発現により導入条件の至適化を行った.この至適条件に基づきカルスヘプラスミドpDM302 (イネ由来アクチン1遺伝子プロモーターにPhosphinothricin acetyltransferase (PAT)(bar遺伝子)をもつ)を導入し,ビアラフォスによる耐性カルスの選抜をおこなった.得られた耐性カルスを再分化に導き,遺伝子導入約6か月後に耐性株165株を得た.この耐性株から67株についてDNAを抽出しPCRに供した.その結果,導入遺伝子を持つ株が15株において確認された.さらにこの内,3株を用いて導入遺伝子のPAT活性による除草剤耐性試験を行った.
  • 土田 靖久, 桜井 直樹, 森永 邦久, 児下 佳子, 朝倉 利員
    2003 年72 巻6 号 p. 517-524
    発行日: 2003/11/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    貯蔵湿度がカキ果実の品質劣化や果肉の細胞壁組成に及ぼす影響を調査した.低湿条件(温度20℃,湿度60%)で高湿条件(温度20℃, 湿度≧98.5%)に比べて水分損失量,エチレン生成量が多く,果実軟化が著しくなった.低湿条件で果肉細胞壁のペクチン画分中アラビノースとガラクトースが果実軟化と同時に大きく減少した.セルロース画分は低湿条件で高湿条件に比べて大きく減少した.熱水可溶性,ペクチンおよびヘミセルロースの各両分に含まれるアラビノースとがラクトース含量とセルロース含量は果肉硬度と相関が高かった.これらのことからアラビノース,ガラクトースおよびセルロース含量はカキの果肉細胞壁の健全性に大きく影響し,カキ果実の水分損失および水分損失により引き起こされたエチレンがペクチン中のアラビノースとガラクトース含量やセルロース含量の減少にともなう果実軟化の原因になると考えられた.
  • スリラオン ワリット, 辰巳 保夫
    2003 年72 巻6 号 p. 525-532
    発行日: 2003/11/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    酸素濃度を5,21(空気),100%で温度5,10,20℃にした修正空気貯蔵(CA)がキュウリ果実の呼吸と抗酸化要因に及ぼす影響を検討した.低温障害の発生は,CA区で抑制され特に100%区で5%区より少なかった.5℃貯蔵キュウリでは,呼吸およびエチレン生成が5%酸素区や空気区より100%酸素区で抑制され続けた.しかし,20℃では5%酸素区や空気区より100%酸素区で呼吸量は高くなった.10℃における100%区の呼吸は,空気区より低く5%区よりは高くなった.酵素的抗酸化要因としてスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)とカタラーゼおよび非酵素的抗酸化要因としてアスコルビン酸とグルタチオン音量の変化を5℃下に貯蔵した果実で検討した.SOD活性は5および100%区で貯蔵1日で一時的に急増した.その後,すべての区で貯蔵5日後に活性が増加した.カタラーゼ活性は空気区では貯蔵5日後に急増し,5および100%区では貯蔵中徐々に増加したが,空気区よりは活性が低かった.また,グルタチオン含量は,貯蔵中すべての区で当初よりやや高くなったが,処理区による差はわずかであった.アスコルビン酸含量は,すべての区で同じように貯蔵中減少し続けた.低温障害の発生は,CA区で抑制され特に100%区で5%より少なかった.
  • 土井 元章, 中川 友紀, 渡部 園子, 青江 健一, 稲本 勝彦, 今西 英雄
    2003 年72 巻6 号 p. 533-535
    発行日: 2003/11/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    キク12品種の切り花に1ppmのエチレン気浴処理を行い,葉色の変化を色彩色差計で計測した.'秀芳の力','精興の誠'を含む6品種では,エチレン気浴下で葉が完全に黄変したが,残りの6品種はエチレンに全く反応しなかった.吸枝や伸長中の栄養生長シュートでも,それぞれの品種は切り花とほとんど同じエチレンに対する反応性を示し,葉が黄変する品種があった.また,0.2mMのチオスルフォト銀陰イオン(STS)の前処理は,エチレン気浴下での葉の黄変を完全に抑制した.これらのことから,品種によってはキクの葉の黄変がエチレンにより誘導されていることが示された.
  • / 土井 元章, 稲本 勝彦, 今西 英雄, Hideo Imanishi
    2003 年72 巻6 号 p. 536-538
    発行日: 2003/11/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    桃色の花色を持つFreesia corymbosa (Burm. f.) N. E. Br.のゲノムDNAに特異的でOPG-12プライマーにより増幅されるRAPDマーカーは,837bPの塩基配列をもつDNA断片であり,これより637bpのSCARマーカーを増幅する1対のプライマーを設計した.これらのRAPDおよびSCARマーカーはf. corvmbosaの全系統で検出され,他の8種32系統では検出されなかった.また,花被か赤,桃,育,赤紫,紫の色調をもつ品種のほとんどで検出された.これらの結果は,フリージア品種の桃色系の花抜色が桃色の花色をもつF. corvmbosaに由来しているという仮説を支持している.しかし,黄色や白色の花色をもつ品種のいくつかで,SCARマーカーが検出された.得られた結果から,フリージア品種の育成の経緯について考察した.
  • 卓 小能, 塩崎 修志, 尾形 凡生, 堀内 昭作
    2003 年72 巻6 号 p. 539-545
    発行日: 2003/11/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    発育相との関連におけるエビヅルおよびブドウ実生の巻きひげおよび花房の出現様式,ならびに相転換を誘起する要因について調査した.エビヅル実生の主梢上の各節から発生させた副梢の巻きひげ初生節位は,その副梢が主梢の幼若相部分より生じている場合には,主梢の節位が高くなるにつれて副梢上の巻きひげ出現節位が低くなった.主梢の過渡相に達した部分より発生している場合には,巻きひげ出現節位は一定となった.'キャンベル・アーリー'および'巨峰'実生を1本仕立てで生育させ,主梢上に巻きひげおよび花房の出現を確認したものを母樹とし,翌年,母樹を基部から1芽に切り戻した苗,および母樹の主梢を切断して節位別に1芽押しした押し穂から萌出する新梢の発育相を調査したところ,巻きひげ初生節位は母樹に比べてはるかに低位となった.一方,花房初生節位は切り戻した苗および挿し木ともに母樹の花房初生節位と同等かさらに高位化した.また,節位別挿し木では,挿し穂が主梢の幼若相にあたる節から採取された場合には,成木相にあたる節から採取された場合に比べて,巻きひげ初生節位が高くなる傾向が見られた.また,母樹の節位が高くなるにつれて,花房を形成する個体の比率は高まった.当年生エビヅル実生に散布処理した液肥,BA,GA3およびBAとスペルミジンの混合溶液は,巻きひげの初生節位には影響を及ぼさないが,BAを含む処理では花房の初生節位が低位化し過渡相が明らかに短縮された.一方,ACCやGA3は花房の形成を抑制し,過渡相から成木相への移行を遅延させた.
  • 八重垣 英明, 土師 岳, 中村 ゆり, 三宅 正則, 西村 幸一, 京谷 英壽, 山口 正己
    2003 年72 巻6 号 p. 546-550
    発行日: 2003/11/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    ウメ品種の果実特性を明らかにするため,果樹試験場(現独立行政法人農業技術研究機構果樹研究所)で保存している実ウメ57品種について,5~13年にわたり収穫果の果実重,核重および核重率を調査した.果実重と核重には大きな品種間差異が認められた.核重は,果実重との間に正の相関を示した.核重率の全品種の平均は9.7%であった.しかし,アンズやスモモとの類縁性が高い'高田梅'および'李梅'のように極めて核重率の低い品種も存在した.年次変動は,果実重が最も大きく,核重が最も小さかった.果実重25~35gで核重率8%以下の'梅郷','剣先','紅サシ','月知梅',および'改良内田梅'の5品種は,核重率の低い梅干し用品種を育成する上で有望な交配親となると考えられた.
  • 田中 政信, 中島 寿亀, 森 欣也
    2003 年72 巻6 号 p. 551-556
    発行日: 2003/11/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    日本在来のサトイモ14品種群,37品種を供試して,葉柄内のシュウ酸カルシウム結晶細胞の密度および大きさを調査し,以下の結果を得た.供試したすべての品種の葉柄中には防御的束晶細胞および非防御的束晶細胞の2タイプの束晶細胞が観察された.品種群の間で束晶細胞の密度に差異が認められた.また,いくつかの品種群の間では束晶細胞の密度や形状は類似していた.各品種群内における品種間の束晶細胞密度の差異は,一部の品種群以外は認められなかった.いずれの品種も集晶細胞密度は束晶細胞密度より高く,品種群内におけるそれぞれの細胞密度の差もかなり大きかった.14品種群は葉柄の束晶細胞密度により2グループに分類された.低密度グループには,みがしき群,溝芋群,薑芋群,唐芋群,八ツ頭群,蓮芋群,えぐ芋群および赤芽芋幹の8群が区分され,高密度グループには黒軸群,蓮菊芋群,石川早生群,土垂群,筍芋群および檳榔芯群の6群が区分された.葉柄用および芋・葉柄兼用品種群の葉柄内の束晶細胞密度は,芋用品種群のそれより低かった.また,葉柄用品種群の束晶細胞の大きさは比較的小さかった.以上の結果から,束晶細胞の密度および大きさは,サトイモ葉柄用品種の育種において"えぐ味"が少ない個体を選抜するための指標として利用することが可能と考えられる.
  • 篠田 浩一, 村田 奈芳
    2003 年72 巻6 号 p. 557-561
    発行日: 2003/11/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    アルストロメリア野生種15種を供試し,正逆交配後胚珠培養を行い,交雑親和性を検討した.210組合せ中,196組合せで胚珠の発芽が認められた.A. angustifolia, A. ligtu, A. magentaおよびA. pelegrinaを子房親とした場合,チリ原産種ばかりでなくブラジル原産種との間でも発芽率は高く,幅広い交雑親和性が認められた.また,A. aurea, A. diluta, A. garaventおよびA. zoellneriでは一部に発芽率の低い組合せがあったが,全組合せで発芽が認められた.一方A. inodora, A. maginfica, A. psittacina, A. pulchraは,子房親とした時よりも花粉親として用いた場合に発芽率が高まる組合せが多く,一方向不親和性が認められた.
  • 杉浦 広幸, 藤田 政良
    2003 年72 巻6 号 p. 562-564
    発行日: 2003/11/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    夏秋ギクの切り花を露地圃場で早期に採花するため,アンシミドール散布が生育と開花に及ぼす影響を調査した.'精霊'と'サマーイエロー'の花芽分化は,アンシミドール1.0~10mg・liter-1散布区が0~0.1mg・liter-1散布区に比べ早かった.いずれの品種の発らいも,アンシミドールの0.1と1.0mg・liter-1散布区が地区に比べ早かった.いずれの品種の開花も,アンシミドールの0.1~1.0mg・liter-1散布区が無散布区に比べ3~10日早くなったが,切り花長が4~6cm短くなった.アンシミドール10mg・liter-1散布区では開花が抑制され,切り花長は大きく短縮された.以上より,夏秋ギクはアンシミドール0.1~1.0mg・liter-1の散布でややわい化するものの,開花を促進することが可能であった.
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