園芸学会雑誌
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29 巻, 1 号
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  • 栽培および野生ウドの主として形態的変異について
    今津 正, 大沢 孝也
    1960 年 29 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 1960/03/31
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    1. 本邦各地より蒐集した,ウド野生種および主要栽培品種の根株を,堺市における本学圃場において栽培し,1956年度に,主としてその形態的差異を調査し,栽培種と野生種の関連について考察を加えた。
    2. 野生種はきわめて変異に富むが,それには採集地の緯度や高度に関連する一定の地理的変異が見られた。
    3. 栽培品種間の変異は,野生種のそれに比べるとかなり小さく,しかも春ウド,寒ウドともに南方型野生種に似ていた。
  • 井上 頼数, 鈴木 芳夫
    1960 年 29 巻 1 号 p. 7-11
    発行日: 1960/03/31
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    1958年春に大阪一寸,陵西,九粒および埼玉早生の4品種を,秋には伊豆早生1品種だけを供試して,花粉の発芽試験を行なつた。
    1. 人工発芽床の組成は寒天1%,庶糖10%,pH7.0が最適であつた。しかしそれぞれ好適な範囲は相当の幅があるようである。
    2. 花粉の発芽率は春の4品種間に殆んど差異は認められなかつた。
    3. 花粉の発芽適温は大体10~20°Cくらいであつた。
    4. 花粉の採取時期即ち花蕾の老幼によつて発芽率に差異がみられた。
    5. 開花当日の花を水中に長く(約20分以上)浸けると,花粉の発芽に悪い影響を及ぼすようである。この際水温が高い(40°C)と短時間でも発芽しなくなる。
    6. 高温乾燥,低温高湿におけるより高温高湿下に置かれた花粉の発芽は著るしく阻害された。
    7.花粉の発芽力保持期間は相当長く,開花後室内放置で3〓4日はあるようである。
  • 窒素および燐酸について
    増井 正夫, 福島 与平, 野中 民雄, 小泉 満, 中沢 一郎
    1960 年 29 巻 1 号 p. 12-20
    発行日: 1960/03/31
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    1. メロン“Ear1's Favourite”系品種を木箱栽培し,1株当り窒素6, 12, 18g;燐酸5, 10, 18g(カリ10g一定)のそれぞれ3水準におけるfactorial combinationにより9処理区を設け,さらに当地方の標準慣行施用区を加え,これら肥料処理が植物体の生育,果実の品質ならびに植物体各部の養分吸収量におよぼす影響について調査した。
    2. 植物体の生育は燐酸の施用量に,比例して旺盛となり,葉,茎の乾物重,果重は増加し,果実の品質もすぐれていた。一方窒素は燐酸とほぼ逆な関係があつた。
    3. 植物体各部の窒素吸収量は明らかに窒素の施用量と比例して増加した。部分別の窒素吸収量は果肉が最も多く,以下葉,種子,茎,根の順序であつた。
    4. 植物体各部の燐酸吸収量は明らかに燐酸の施用量に比例して増加した。部分別の燐酸吸収量は果肉が最も多く,以下葉,種子,茎,根の順序であつた。
    5. 全植物体のカリ吸収量は窒素の施用量が増加するにつれて減少し,燐酸の施用量に比例して増加した。部分別のカリ吸収量は果肉が最も多く,葉,茎がこれにつぎ,根,種子はきわめて少なかつた。
    6. 葉,茎,果肉および全植物体の石灰吸収量は明らかに窒素の施用量が増加するにつれて減少した。また部分別の石灰吸収量は葉が最も多く,以下果肉,茎,種子,根の順序であつた。
    7. 葉および全植物体のマグネシウム吸収量は明らかに窒素の施用量の増加につれて減少した。部分別のマグネシウム吸収量は果肉が最も多く,以下葉,茎,種子,根の順序であつた。
    8. 本実験結果から植物体の生育,果実の品質および養分吸収量などから考慮して,最適の組合わせは窒素12g,燐酸18g区および標準慣行区で,前者の1株当りの5要素吸収量はN6.2g, P2O52.0g, K2O9.7g, CaO4.6g, MgO1.1g,後者のそれはN5.5g, P2O52.2g, K2O6.7g, CaO7.5g, MgO2.6gであつた。
    9. 果実の品質と養分吸収量とは密接な関係があるものと思われる。
  • 宮崎 義光
    1960 年 29 巻 1 号 p. 21-26
    発行日: 1960/03/31
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    1. サトイモ(鳥播)を6月1日圃場に定植し,親株の葉の生長ならびに同化量および体内生理条件についてしらべた。
    2. サトイモの葉はその抽出展開前にほとんど生長し展開後はわずかしか生長しない。葉位の上昇ないしは生育に伴なつて, 8月中旬までは著しく葉長が増大するが,その後はその増加度はやや低下する。
    3. 単位面積当りの乾物重はつねに葉令の進行に伴なつて増大するが,その増加度は13~15葉位(9月2日展開)以上の葉では著減している。
    4. 同化量は生育初期より8月下旬までは著しく大で以後漸減している。この変化は平均気温の変化とほとんど平行的で,平均気温が20°C以下になると同化量は著減している。一方個体当り総同化量も8月に最大を示し以後急減している。
    5. 組織粉末比重は9月中旬までは生育につれて減少し以後増加している。
    6. 組織粉末加水浸出液濃度は生育初期より9月上旬まで滅少し以後急増し,比電導度は生育初期に高く漸減して9月下旬に最低となり以後増加している。これらの変化から9月中旬は両者共に低く,この時期以後葉の生理的活性度が著しく低下することが窺われる。
    7. 以上の事項から,サトイモの葉においては9月中旬頃に体内生理条件の転換が起り,それ以前は地上部の生長が旺盛であり,9月中旬以降は地下部の生長が旺盛になるものと想像される。
  • トマト育苗用速成床土
    高橋 和彦, 吉田 雅夫, 平尾 陸郎
    1960 年 29 巻 1 号 p. 27-36
    発行日: 1960/03/31
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    温床々土は前年の夏頃から堆積し,数回切換えして使用するのが普通であるが,作製法に一定の規準がなく,また労力を多く要し,肥料養分の溶脱があるなど不都合が多い。もつと簡便に使用直前に調合できないかと考え,1955~59年にわたり,数多の速成配合土を作り,これにトマトを育苗して生育を調べた。
    1. 床土の原土としては火山灰土が優れ,川砂・荒木田はこれより劣つた。有機物は腐葉土がピート・堆肥に勝つた。原土と有機物の混用割合は容積で等量の場合が最も苗の生育が良かつた。有機物を細かく篩別しても効果なく,土壌調整剤の使用や,配合土に砂を加用した場合も大した効果がなかつた。
    2. 加用する肥料は種類が制限され,米糠・油粕・魚粕などや石灰窒素は使用できない。Nは尿素・硫安などが良いが適量の幅が狭く,多過ぎると生育は著しく阻害される。P2O5は過石・熔燐をある量以上加えると十分で多過ぎても別に支障はない、K2Oは硫加・塩加などが良く,多過ぎると生育不良になる。
    火山灰土と腐葉土が等量の配合土の施肥量が1立坪(約6000l)に対し,N430~870g,P2O5 4300g以上,K2O 430~870gの場合苗の生育が最も良かつた。
    3. この配合土で作つた速成床土で1958, 59の両年附属農場でトマトを育苗し,圃場試験を行なつたが,初期・総収量とも慣行床土に比べ全然差異がなく,トマトの育苗は速成床土でも何ら差支えないことが判つた。
    本研究は杉山教授の御懇篤な御指導の下に行なわれた。茲に厚く御礼を申し上げる。また岩田助教授を始め,千葉大渡辺助教授,東大農場主任川廷助教授には種々実験上御示唆や御援助を賜わつた。記して深謝の意を表する次第である。なお本研究費の一部は文部省科学研究費によるものである。
  • 冬季の環境処理が着花ならびに新梢の発生におよぼす影響
    岩崎 藤助, 大和田 厚
    1960 年 29 巻 1 号 p. 37-46
    発行日: 1960/03/31
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    1943年から1957年にわたつて,冬季の環境的処理が次年度の着花ならびに新梢の発生におよぼす影響を調査した。
    1. 12月から1月下旬または2月上旬までの乾燥は着花数を多くし, 2月下旬以後の乾燥は反対に着花数を減ずるようである。
    2. 冬季低温な場合よりも高温の方が着花数が多く,特に温州では12月から3月上旬まで,レモンでは12月から1月下旬までの温度の影響が大のようである。しかして,それらの影響は温州よりもレモンの方が顕著である。
    3. 冬季高温の方が開花期が早くなり,特に温州では3月以降の,レモンでは2~3月の温度が最も影響する。
    4. 冬季の高温は新梢の発生も良好なのが普通であるが,高温によつて着花数を著しく増加した場合にはかえつて新梢数は減ることがある。
    5. 冬季にコモをかけると寒風を防ぐと共に日照障害となり,普通の場合は着花ならびに新梢の発生を減らすが,寒冷な年にはこれをかけないものよりもかえつて着花が多い。
  • 冬季の昼温がモモおよびカキの春季の発芽におよぼす影響
    吉村 不二男, 川村 容三
    1960 年 29 巻 1 号 p. 47-54
    発行日: 1960/03/31
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    1. 1955年および1957年12月から翌年3月中旬までの間に一定期間ずつ順にモモ(岡山早生)の幼苗をガラス室に搬入し,或はモモ(岡山早生)およびカキ(平核無)の幼苗をビニールで覆い,人為的に昼間(午前8時30分~午後4時30分,8時間)のみ高温に遭わせ,春季の展芽,伸長,生育の状況を比較観察した。因みにその場合,気温は自然状態にくらベて日最高気温で10.0~13.3°C高かつた。なお別に日陰においた区(昼間の気温で自然状態より2.0~4.0°C低い)および1月上旬に5日或は7日間低温処理(-1~0°C)した区を設けた。
    2.冬季の昼温の高低はモモの自発休眠の完了を妨げ或は促がす,殊に昼高温の発生する時期が初冬であると,自発休眠が不完全になり易く,晩冬であると展芽,伸長が促がされ生育がよい。また1月に5日或は7日間低温処理するとその自発休眠の完了が促がされ,春季の生育が著しくよくなる。なお昼夜を通じて行なう温暖処理(8~16°C)は昼間のみ高温で温暖処理(22~26°C)するよりも自発休眠を不完全にする程度が著しい。
    3. カキでは冬季間の昼温の高低がその自発休眠の完了を妨げも促がしもしない。しかし昼温が高いと,頂部の1~2芽が枯死して春季にそれ以下の芽が展芽するが,発芽後の生育は至極旺盛である。また1月に7日間低温処理するとその生育が抑制される。
    4. 従つて高知ではモモにとつて12月, 1月の昼温はやや高過ぎ,夜温も常時低いことが望ましい。しかしカキにとつて冬季の気温は不適当とはいえない。
  • 内藤 隆次, 小塚 哲也, 飛谷 明弘
    1960 年 29 巻 1 号 p. 55-62
    発行日: 1960/03/31
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    1. 砂丘地におけるブドウの苦土欠乏症対策の基礎資料を得る目的で,砂丘未耕地の土壌を用い3年連続の砂耕試験を行なつた。最初の2年は苦土施用濃度の差異がブドウ樹の生育,収量などに及ぼす影響について調査し,第3年目には苦土欠乏樹に対する苦土施用の効果を検討した。
    2. 樹体の生育は第1年目(未結実樹)は苦土施用濃度20~80ppm,特に80ppmが優れ,第2年目(結実樹)は160ppmまで施肥濃度の:増加に伴なつて良好となつたが, 20ppmから160ppmまでの各区間の差異は.少なかつた。
    果実収量は20ppmが最高で,それ以上苦土施用濃度が高くなると漸減し,特に160ppm区の取量低下が顕著であつた。苦土無施用の場合は生育,収量ともに著しく劣つた。
    3. 苦土無施用区は両年ともに著しい欠乏症を示したが,未結実樹は20ppm以上(葉内Mg含量0.19~0.16%)では現われず,結実樹は80ppm(0.18~0.24%)でも僅かに欠乏症を示した。また未結実樹では葉内の苦土と加里含量,枝梢内の苦土と石灰含量に顕著な逆比例的関係が認められたが,結実樹ではそれほど明瞭でなかつた。
    4. 苦土施用濃度に比例してポット内の土壌中の置換性苦土含量は増加したが,施用濃度の等しい加里と石灰特に加里は苦土施用濃度と逆比例的に減少した。果実収量が欠乏症の相当発生していた20ppmで最高となつたのは,この加里の利用率の低下に起因すると思おれる。
    5. 第3年目に過去2年の処理で苦土欠乏症を示した各区に80ppmの苦土を施用した結果,欠乏症の発生は低下し,葉内苦土含量も増加したが,なお前年度の症状に応じた発生が見られた。
  • 32P使用による燐酸の移動分布について
    田中 諭一郎, 中間 和光, 小池 章, 石田 隆, 西垣 晋, 渋谷 政夫, 小山 雄生
    1960 年 29 巻 1 号 p. 63-69
    発行日: 1960/03/31
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    1. 温州ミカンに対する燐酸の効果を判定することは非常に困難であるので,32Pを用い施肥法の改善試験を行なつた。
    2. 当場圃場(礫質壌土)の20年生の普通の大きさの温州ミカンに対し,3カ月後測定する目的で夏肥に32Pを入れた場合,1本当り10mcは少なくとも必要である。
    3. 測定の結果投入燐は樹冠上位葉に多く下位葉に少なく,新旧葉間には差がなく,生長部位には必ずしも多く集積していなかつた。また果実中にも検出されなかつた。
    4. 根と対応関係のある枝は相関が高く,特殊の場合以外は処理側の葉に多量の32Pが検出された。
    5. 主枝の木質部に注入したものは殆んど他の主枝には検出されなかつた。
    6. 樹冠下施肥は輪状施肥に比べの32P吸収が多かつた。
  • 塚本 洋太郎, 小西 国義
    1960 年 29 巻 1 号 p. 70-76
    発行日: 1960/03/31
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    本葉10枚を展開したストックの苗を10°Cの冷室において一定期間のバーナリゼーションを行ない,バーナリゼーションの前および処理中の日長を変えて,開花におよぼす影響をしらべた。日長は8時間の短日と1,400〓uxの螢光燈と白色燈の混合光源を用いて24時間連続照明した長日とであつて,結果は次のとおりであつた。
    1. ボールス・ラベンダーおよび初雪を用いた実験では,いずれも連続照明区の発奮,開花は促進され,かつ高い開花率を示した。バーナリゼーションの期間は20日ならば十分であつたが,15および10日ではやや不足であつた。
    2. 20°Cの温室で育てた苗の育苗中の日長を変えて,後に同じ条件でバーナリゼーションを行なつたが,バーナリゼーション前の光は後まで影響をおよぼした。
    3. バーナリゼーション中の照明は草丈の伸長にも著しく影響している。
  • 肥料処理ガグラジオラスの開花におよぼす影響
    小杉 清
    1960 年 29 巻 1 号 p. 77-82
    発行日: 1960/03/31
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    1. グラジオラスの栄養とBlind発生との関係を明らかにするために,Spotlightの成球を用いて砂耕し,N, P, Kの施用割合を種々変えて実験した。
    2. Nの入らなかつた区およびその他に少数のB1indが発生したが,開花率はいずれも80%以上で,各区間の有意差は認められなかつた。また草丈,葉数,小花数,仔球生体重についても有意差は認められなかつた。
    3. 平均開花日はN200または100ppmとP 50ppmとが組合わされた場合に早く,Nの入らない場合に遅れた。
    4. N 50ppm区または-N区では,葉は帯黄緑色を呈し,花茎は細く,葉の幅は狭く,明らかにN欠乏の徴候が認められた。しかしN200ppm区では,葉は濃緑色を呈し,花茎太く,葉の幅も広かつたが,根は黒褐色となつて生気なく,仔球の着生数が極度に減少したことなどから,濃度が高過ぎたと思われる。
    5. 地上部生体重,球茎生体重は共にNの入らない区に小さく,Nの濃度の増加に伴なつて増加した。しかしN単独では濃度の増加と共に減少した。
    6. 仔球数はNの濃度があまり高くない区に多かつた。仔球重には処理の差異が認められなかつた。
    7. Nの吸収量はP, Kの濃度に拘わらず独立して与えられたNの濃度に比例した。しかしPおよびKの吸収量はNとの相互関係によつて,必ずしも一定の方向を示さなかつた。概してPの濃度が高まると,Pの吸収量ばかりでなく,Nの吸収量も増大した。
    8. 以上のことからグラジオラスの開花には,Nが強く関係するものと思われ,その濃度は100ppmが適当と考えられる。またPの効果は明らかであったが,Kの効果は明らかでなかつた。
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