1. 平塚にて桃實生幼樹を用い清耕, 敷藁, 被覆作物の3區を設け, 昭和25年には更に各無施肥, 施肥の2區として計6處理, 3聯の圃場試驗を行つた。昭和26年は3處理, 3聯の試驗であるが, 昨年度と異り下層土の比較的良好な圃場で, 此等土壤管理法による桃實生幼樹の根の分布及其發育時期に及ぼす影響について調査した。
2. 桃の根の伸長停止の温度は35°C, 適温24°C位である。又桃の地上部の伸長の停止する土壤水分含量(對乾土重%)は大略10%, 適濕は20~40%である。
昭和25年の試驗成績をみると敷藁は地温上昇防止に効果があつた。地表面は清耕區が最も乾燥したが, 深さ5~10cmでは被覆作物區が最も土壤水分が少く10%以下であつた。昭和26年の成績も略ゝ同樣で, 土壤水分及び地温の影響のあつたのは深さ約10cm迄であつて, 地濫は清耕區で8月10日に深さ10cmにて35°Cとなつたが, 敷藁區は土壤表面でも此温度迄上昇せず, 清耕區は5月1日以前に深さ5cm, 7月3日にけ深さ20cmぶ適湿24°Cとなつたが, 敷藁區の地表面は6月1日に始めて此温度に達した。土壤水分も高温乾燥時に處理差が大となり, 深さ5~10cmで被覆作物區10~14%, 清耕區16~18%, 敷藁區は深さによる差なく20%前後であつた。
3. 昭和26年の試驗にて地上部の伸長が7月上旬迄は清耕區が敷藁區より稍大であつたのは主として地温の影響と考えられる。其後8月下旬迄に敷藁區の地上部の伸長ぶ速で殆ど清耕區と等しくなつたのは敷藁直下に根が發達し, 深さ0~10cmの間の細根の生長が敷藁區の方が大であつた爲である。根の分布は昭和25年は深さ5cm迄は顯著に敷藁區が良く, 深さ5~20cmの間では敷藁施肥區が最も良く, 清耕施肥區が之に次ぎ, 被覆作物施肥區及び特に被覆作物無施肥區は地上部と同樣に地下部の生育が惡かつた。昭和26年でも殆ど同樣の傾向にあつて, 深さ30cm以下では地温, 土壤水分, 從つて根の伸長量に土壤管理による差がなかつた。
4. 敷藁によつて土壤表層 (深さ0, 10cm) の置換性の加里及葉中の加里が明に増加した。昭和25年度の各處理の施肥及無施肥區は深さ10cmに於ても有効燐酸が何れも痕跡であつて其間に差はなく, 土壤表面に與えた燐酸の下方への移動は殆んど見られなかつた。昭和26年度の分析結果も略同樣であるが, 葉中の窒素含量が被覆作物區に少く, 腐植含量の處理による差は地表面のみで見られ, 敷藁區が多く, 被覆作物區, 清耕區の順に少くなつていた。
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