園芸学会雑誌
Online ISSN : 1880-358X
Print ISSN : 0013-7626
ISSN-L : 0013-7626
21 巻, 3 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • I 果樹園土壤の諸調査 (第4報) 果樹園各種土壤管理法と根の發達との關係
    森田 義彦, 板倉 勉, 岩田 正利
    1952 年 21 巻 3 号 p. 129-145
    発行日: 1952年
    公開日: 2007/05/31
    ジャーナル フリー
    1. 平塚にて桃實生幼樹を用い清耕, 敷藁, 被覆作物の3區を設け, 昭和25年には更に各無施肥, 施肥の2區として計6處理, 3聯の圃場試驗を行つた。昭和26年は3處理, 3聯の試驗であるが, 昨年度と異り下層土の比較的良好な圃場で, 此等土壤管理法による桃實生幼樹の根の分布及其發育時期に及ぼす影響について調査した。
    2. 桃の根の伸長停止の温度は35°C, 適温24°C位である。又桃の地上部の伸長の停止する土壤水分含量(對乾土重%)は大略10%, 適濕は20~40%である。
    昭和25年の試驗成績をみると敷藁は地温上昇防止に効果があつた。地表面は清耕區が最も乾燥したが, 深さ5~10cmでは被覆作物區が最も土壤水分が少く10%以下であつた。昭和26年の成績も略ゝ同樣で, 土壤水分及び地温の影響のあつたのは深さ約10cm迄であつて, 地濫は清耕區で8月10日に深さ10cmにて35°Cとなつたが, 敷藁區は土壤表面でも此温度迄上昇せず, 清耕區は5月1日以前に深さ5cm, 7月3日にけ深さ20cmぶ適湿24°Cとなつたが, 敷藁區の地表面は6月1日に始めて此温度に達した。土壤水分も高温乾燥時に處理差が大となり, 深さ5~10cmで被覆作物區10~14%, 清耕區16~18%, 敷藁區は深さによる差なく20%前後であつた。
    3. 昭和26年の試驗にて地上部の伸長が7月上旬迄は清耕區が敷藁區より稍大であつたのは主として地温の影響と考えられる。其後8月下旬迄に敷藁區の地上部の伸長ぶ速で殆ど清耕區と等しくなつたのは敷藁直下に根が發達し, 深さ0~10cmの間の細根の生長が敷藁區の方が大であつた爲である。根の分布は昭和25年は深さ5cm迄は顯著に敷藁區が良く, 深さ5~20cmの間では敷藁施肥區が最も良く, 清耕施肥區が之に次ぎ, 被覆作物施肥區及び特に被覆作物無施肥區は地上部と同樣に地下部の生育が惡かつた。昭和26年でも殆ど同樣の傾向にあつて, 深さ30cm以下では地温, 土壤水分, 從つて根の伸長量に土壤管理による差がなかつた。
    4. 敷藁によつて土壤表層 (深さ0, 10cm) の置換性の加里及葉中の加里が明に増加した。昭和25年度の各處理の施肥及無施肥區は深さ10cmに於ても有効燐酸が何れも痕跡であつて其間に差はなく, 土壤表面に與えた燐酸の下方への移動は殆んど見られなかつた。昭和26年度の分析結果も略同樣であるが, 葉中の窒素含量が被覆作物區に少く, 腐植含量の處理による差は地表面のみで見られ, 敷藁區が多く, 被覆作物區, 清耕區の順に少くなつていた。
  • ON THE PROPERTIES OF SOILS UNDER GRASS SOD
    SHUJI MORITA, AKIRA AOKI
    1952 年 21 巻 3 号 p. 146-148
    発行日: 1952年
    公開日: 2007/05/31
    ジャーナル フリー
    For the apple orchards in Aomori Prefecture, clover sod has been extensively used recently. The culture system is beneficial not only to the yield and the quality of the fruit, but also to the protection of soil erosion. The experimental results conducted on the soils of grass sod and ordinary plot may be summarized as follows:
    The humus content and base exchange capacity are little higher in the sod plot soils than in the ordinary plot soils. But soil reaction is more acidic in the sod soils than in the ordinary plot soils, and on nitrogen, available phosphorus and potash contents no significant difference is found between the two soils.
    On the microbial action studied, ammonification, nitrification, nitrogen fixation and cellulose decomposition in the sod plot soils are distinctly superior to those in the ordinary plot soils. Nitrification is the most distinct of the four.
    On aggregate analysis the higher degree of aggregation is found in the sod plot soils than the ordinary plot soils.
    The favourable effect of clover sod will be partly attributed to the above results.
  • 澁川 潤一, 成田 浩
    1952 年 21 巻 3 号 p. 149-154
    発行日: 1952年
    公開日: 2007/05/31
    ジャーナル フリー
    1951年から1952年にわたり, 尿素が葉面撒布によつてりんご葉から吸收されるかどうかを檢するため, 青森縣りんご試驗場に於て2, 3の圃場及びポット試驗を行つた。試驗結果を要約すれば次の通りである。
    1. 尿素は葉面撒布によつてりんご葉から吸收され, 尿素5ポンドを水100ガロンに溶かした濃度では葉を燒かなかつたが, 10ポンド100ガロン濃度では葉縁に若干の葉燒を生じた。
    2. 尿素撒布はりんごの葉色, 葉中窒素含量 (全窒素及び蛋白態窒素), 新梢伸長を増加したが, 果色及び果實の大ぎさに對してはつきりした影響を及ぼさなかつた。
    3. 尿素撒布によつて極度に衰弱し, 數年間花芽をつけなかつた若木紅玉樹は非常に樹勢を恢復し, その結果無撒布區の花芽は頂芽の2.9%に過ぎなかつたにもかかわらず撒布區では頂芽の28.4%が花芽を形成した。
    4. 7月下旬から8月中旬にわたり尿素を石灰硫黄合劑及びボルドー液に混用撒布したが, 尿素は單用撒布同樣葉から吸收され, 藥劑混用による葉燒けは認められなかつた。
  • 本多 昇, 岡崎 光良, 岩田 一郎
    1952 年 21 巻 3 号 p. 155-160
    発行日: 1952年
    公開日: 2007/05/31
    ジャーナル フリー
    (1) 香川縣小豆郡西村及び四海村に於て地質, 母岩, 地形等より推定して押出し地及び崖錐地と豫想される地點, 及びそれと對比的な地形並に土壤形態を示す地點に於て土壤調査並に林木及び果樹の生育調査を行つた。
    (2) 沖島に於ては變質粘板岩に由來する第II層にて土性としては重粘に過ぎるぶ團塊状の土壤構造である爲にオリープの根ぶ深さ1米まで侵入している。小江の丘にては更に深く最も深いものは1.45米に達している。兩地に於てオリープの根の發達と土壤水分との關係が密接であると思われる。
    (3) 西村の高橋氏の園のオリープが淺根である事は所謂“Leachy Substrata”にょる現象であると思われる。
  • 杉山 直儀, 岩田 正利, 八代 仁夫
    1952 年 21 巻 3 号 p. 161-164
    発行日: 1952年
    公開日: 2007/05/31
    ジャーナル フリー
    1. 山梨縣下のブドウに發生する一種のクロローシスについて調査を行なつた。
    2. 症状は季節が進んでから現われ, 葉縁及び太い葉脈間の褪色及び褐變枯死を惹起すもので, 祝, 相興, 日川, 山梨, 春日井, 甲運の諸村に認められた。
    3. 8月下旬採取の材料について葉分析を行なつた結果, 異常葉のMg含量は殆ど0.25%以下で健全葉に比べて低かつた。但し2點はマグネシウム缺乏でなく, カリ缺乏のものがあつた。
    4. 土壤中の置換性マグネシウムの含量も一般に低いが, 健全な土壤との差は明かでなかつた。缺乏土壤では砂質で, 置換性カリの含量が相對的に高い所が多かつた。
    5. マグネシウ缺乏の原因及び對策について考察を行なつた。
  • 大根のすの發現に關係を有する形質の品種間差異に就て
    萩屋 薫
    1952 年 21 巻 3 号 p. 165-173
    発行日: 1952年
    公開日: 2007/05/31
    ジャーナル フリー
    1. すの發現機構を明かにするため大根の品種間に於けるすの發現の難易性を調査し, それに關連を有する形質を檢討したるに大要次の如き結果を得た。
    2. すの發現は一般に早生でT/R率の降下が早い品種ほど著しく, 晩生で根部の肥大がおそい品種にはすが入り難い。
    3. 内部形態的に見ると根肥大に伴う組織的變化が早く柔組織が發達しその細胞も大形であるような品種にはすが入り易く之と反對の傾向を持つた品種ではすが入りにくい。
    4. 根肥大の晩い品種は一般に根に澱粉を有し又可溶性物質の含量も高いが, すの入る早太りの品種は澱粉無く糖を有し, 可溶性物質の含量も低い。
    5. すの發現はいずれの品種に於てもT/R率が最低を示す時期にあたる。この時期には根の組織の充實度が最も低下する。
    6. すの分布状態は品種によつて異なるが, それは主として根身内の通導組織の分布状態が品種により異なるためと考えられる。
    7. すの發現は根の生長が旺盛で葉の同化能力以上に急激に根肥大が行われるため充實が之に伴わず起るものと考えられる。
    8. 根の肥大は早くてもその充實がよい時無のような品種はすが入り難い。之には地上部の同化能力が大なることが少くとも1原因となると考えられるが, 何れにしてもこの種の品種は耐鬆性大根の育種上に意義を持つものと考えられる。
  • 岡田 正順
    1952 年 21 巻 3 号 p. 174-178
    発行日: 1952年
    公開日: 2007/05/31
    ジャーナル フリー
    1. 菊の莖長及び葉數と花芽分化との關係を知る爲に短日性の菊を用いて1951年度は莖長を5cm, 10cm, 20cmの3種に分けて長日期間に短日處理を行い, 花芽分化の有無を調査した。又1951年度は莖長20cm以上の苗を用い, 葉數を1, 3, 5, 7葉に制限して同じく短日操作を行い, 花芽分化の有無を調査した。
    2. 莖長が短いと花芽分化が著しくおくれ, 短日20日に於ても短い莖のものは花芽分化しないものが多かつた。又此の傾向は晩生種程甚しく, 早生種は短いものでも花芽分化するものが多かつた。
    3. 菊が花芽分化し得ない苗の大きさは短日處理期間中にも生育しつつあるので知る事が困難であつたが, 短日15~20日に於ける花芽分化個體と未分化個體の莖長から大體18~22cm位が限度であろうと推察された。
    4. 葉數は1枚に制限したものは最も花芽分化數が少なかつた。3葉區は標準區に比して花芽分化がおくれるが, 短日20日では銀笛, 豐年は殆ど全部花芽分化した。又寒菊社の櫻を除いては5葉區, 7葉區は標準區と殆ど同樣であつた。
    5. 葉數制限の影響は豐年が1葉區で短日20日でも花芽分化したもの1個體で, 最も影響が大であつたが, 苗の大きさに依る影響に比較すると一般に少なかつた。 從つて苗の小さいものが花芽分化が著しくおくれるのは葉面積が少いためではなく, 植物體内の榮養條件に依るのではないかと考えられる。
  • 小杉 清
    1952 年 21 巻 3 号 p. 179-182
    発行日: 1952年
    公開日: 2007/05/31
    ジャーナル フリー
    1. 土壤濕度, 特に乾燥と低温とが, D. nobile の花芽分化に及ぼす影響を調べる爲に, 1951年10月20日より1952年3月末日に至る間, 横濱市保土ケ谷區に於いて本實驗を行つた。
    2. 實驗に使用した材料は, 1鉢に4~5本の開花用偽球莖を持つたもの60鉢を撰び, 之を高温•低温の2區に分け, 更に各區を乾•濕の2區に分けた。
    3. 低温區は乾•濕兩區共, 11月29日に花房の分化期にあるものが認められ, その後の發育も順調に行われて, 翌年の3月23日に開花し始めた。この場合, 花芽の分化期, 開花期, 1僞球莖上に於ける花芽を含んだ芽の數, 1芽から開花した花の數等について, 乾•濕兩區間の差異は殆んど認められなかつた。
    4. 高温區に於いては, 乾•濕兩區共, 花芽の分化は見られず, 遂に高芽となつた。
    5. 以上の結果より, 本實驗の範圍内に於いては, 乾燥の効果は直接認められず. 低温の効果は, 明らかに認められた。
  • 岩間 誠造, 岩井 茂松
    1952 年 21 巻 3 号 p. 183-188
    発行日: 1952年
    公開日: 2007/05/31
    ジャーナル フリー
    (1) 木子を利用しての切花栽培法を知らんとして, 標高差を利用して日長は同一で氣温の相異する長野及び菅平で, 植付期を4月30日より10日毎に6月10日までの6同に播種した。
    播種期を變えたことは日長時間を變えるためである。
    (2) 供試品種は Hector 及び Stop-light の2品種を用い, 木子の大きさを球徑によつての grade (1.6cm以上, 1.5~0.6cm, 0.5cm以下) に分けて使用した。
    (3) 生育には氣温の影響が大きく, 常に氣温の高い長野は低い菅平に比べて生育が勝つていた。その生育量の相異は後の花芽分化, 着蕾開花に影響するところが大きいようである。
    (4) 木子に於ける花芽分化は成球の場合と同樣に日長時間及び温度條件が直接の要因とはならず, 大凡苗齡100日内外で花芽分化する。葉枚數では2~3枚のときであるが, 氣温ぶ低く生育が遲れる菅平では遲延する。
    (5) 木子の大きさと花芽分化との關係は, 大きい程生育が早いので大きい順に10日内外早い。
    (6) 着蕾及び開花期は, その花芽分化期の早晩に大きく影響され, 苗齡で夫々130~140日, 160~170日で植付期には影響されない。
    (7) 以上の結果から木子を用いて抑制栽培を行うには生育中の環境如何にかかわらず, 收穫最終を降霜前170~180日に植付れば良いことになる。
feedback
Top