園芸学会雑誌
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38 巻, 3 号
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  • 岩崎 桂三, 萩本 宏, 上門 敏也, 三宅 英雄
    1969 年 38 巻 3 号 p. 207-213
    発行日: 1969年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1. NAAを azolide にしたTH-656の生物活性, およびジベレリンで誘起されたデラウェア無核果実の熟期遅延作用を, NAA, TH-564と比較検討した。
    2. TH-656はエンバク子葉鞘切片の伸長を, 低濃度においてNAAよりも促進した。
    3. TH-656はインタクトなイネの第2葉鞘の生長をNAAよりも強く阻害し, また, 子葉鞘の生長をNAAよりも著しく促進した。
    4. ジベレリンによるイネの生長促進作用の発現を, TH-656はNAAよりも顕著に阻害した。他方, NAAによる生長阻害作用はジベレリンで容易に回復したが, TH-656による阻害作用は回復しがたかつた。
    5. ジベレリンで誘起されたデラウェア無核果実の熟期は, TH-656を満開後30日に果房に散布することによつて, 30日程度遅延し, 実用的な効果を示したが, NAAの熟期遅延作用は, 果房間および果粒間でのバラツキが大きく, 実用的ではなかつた。
    6. TH-564はすべての実験において, ほとんど作用を示さなかった。
  • 徒長枝の発生部位と体内成分について
    黒田 喜佐雄, 岡本 五郎, 福島 忠昭, 福田 照
    1969 年 38 巻 3 号 p. 214-217
    発行日: 1969年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    徒長枝は, おもに太い枝の間引部や切り返した前年生徒長枝の先端部から発生したが, その部分はCa含量が低かつた。また, 徒長枝となる新梢は結果枝となる新梢に比べて, 発芽が早く, その生長期間を通じてリグニン含量が高く, Ca含量が低かつた。
  • stem pitting の解剖的研究
    川田 信一郎, 池田 富喜夫
    1969 年 38 巻 3 号 p. 218-225
    発行日: 1969年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    In Japan, the symptom of stem pitting of citrus has been found on trees suffered from dwarf virus disease of Hassaku (Citrus hassaku HORT. EX. TANAKA), Buntan (C. grandis OSBECK), Washington navel orange (C. sinensis OSBECK) and etc. In the present studies, stem pitting of one and two years old mexican lime (C. aurantifolia SWINGLE) seedlings, inoculated by bud graft infected with Hassaku dwarf virus taken from twenty five or twenty seven years old Hassaku trees suffering from Hassaku dwarf virus disease (at Wakayama prefecture), were observed anatomically and histochemically.
    Under the investigation of serial transverse sections of stem, hypertrophic and hyperplastic parenchymatous cells as previously noticed, were observed in the xylem and the phloem. These cells formed the disorganized abnormal tissue in the secondary vascular tissue (Fig. 1 and 2).
    In order to study the developmental change of this abnormal tissue, serial tangential sections of wood were made (Fig. 4 and 7). Examination of such material revealed that the ray initials in cambium reacted to virus initially, and these affected cells failed to differentiate into ray tissue, that is, elementary tissue of the xylem and the phloem. As the secondary thickening growth proceeded, these abnormal cells missed their normal organization, divisioned hyperplastically, and then formed abnormal tissue or lesions as previously described.
    Furthermore, as the thickness of wood increased, the walls of these abnormal tissue cells were delayed in lignification as compared with surrounding normal tissue cells (Fig. 2). Because of this delaying in lignification of cell wall, pitting was formed on the wood and remain in evidence if the bark was removed. However, in the case of abnormal tissues which composed only of lignified abnormal cells (Fig. 6 and 8), stem pitting were not shown even if the bark was peeled, and such examples were observed frequently in Hassaku trees growing in outdoor condition.
    Although annual rings in wood of Hassaku tree could not be identified surely, growth rings were recongnized. These rings were distinguished into two kinds. One was consisting mainly of fiber cells of fiberous tissues of vasicentric type (Fig. 5B and C). And the other was consisting mainly of parenchymatous cells or parenchymatous tissues of aliform type (Fig. 5D), diffused type (Fig. 5E), or terminal type (Fig. 5F). And lignified abnormal tissues in the wood of Hassaku trees, were recognized mostly lesions in growth rings of the latter kind.
    From the above anatomical observations the following hypothesis may put on: the abnormal initial cells in cambium underwent severe division by the time, when the cambium formed parenchymatous growth ring. On the other hand, at such time as the cambium separated fiberous cells, these abnormal initial cells in the cambium ceased their severe hyperplastic divisions. In other words, the formation of stem pitting of citrus trees might be under the control of the physiological situation of cambium.
  • 神吉 久遠, 今村 俊清
    1969 年 38 巻 3 号 p. 226-229
    発行日: 1969年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    温州ミカンのいわゆる異常落葉の原因を明らかにするために, 温州ミカン幼木を用い, 培養液中のマンガンと窒素の施用濃度をかえて砂耕試験を行ない, つぎのような結果を得た。
    1. マンガンの施用濃度の上昇に伴つて細根ならびに葉中のマンガン含量が増加した。
    この場合, ほとんど生育阻害, 根の腐敗, 落葉をおこすことなく, 葉中のマンガン含量を異常落葉園におけると同程度に高め, また少数ではあるが, 特有の褐色斑点を発現させることができた。
    2. 窒素の施用濃度の上昇に伴つて細根中のマンガン含量は増加したが, 葉中のマンガン含量には変化がなかつた。
    3. 以上のことから, マンガンの過剰吸収はおもに培地中の可給態マンガン濃度の上昇によつておこり, 褐色の斑点の発現がそのより初期的, あるいは, より本質的な症状であると考えられる。
  • 坂本 辰馬, 奥地 進, 三好 実成
    1969 年 38 巻 3 号 p. 230-238
    発行日: 1969年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1. P肥料に対する温州ミカンのレスポンスをあきらかにするため, 土層が浅い洪積層台地の11年生園について1960年から9年間 (試験1), 3年生園について1963年から6年間 (試験2), とくにP肥料施用の有無が, 樹の生長, 収量, 品質, 葉分析に及ぼす影響をしらべた。
    2. 試験1について, 9年間のP施用 (毎年1樹にP2O5 400gおよび200g相当の過石を樹冠内外の深さ40cmまでの土壌に30か所の径6~7cmの穴に施用)と無施用との間には, 樹勢, 収量, 冬季の耐寒性などにまつたく差がなく, また5年めまでの品質, 葉分析 (N, P, K, Ca, Mg) も同様であつた。
    3. 6年め, 8年め, 9年めの果汁の酸, 可溶性固形物は, 有意な差でP施用のほうが低く, とくに酸が減少して甘味比が高くなり, 同時に果皮の着色がやや遅れた。また6年め以降の葉分析は, P施用のほうで8年めと9年めの葉中Pが高く, 9年めのKが低くなる傾向を示した。
    4. 試験2についても, 6年間のP施用 (1樹にP2O5430g, 860g, 1,720g相当の過石を植付前に深さ40cmまでの土壌に一度に施用) と無施用との間で, 樹の生長, 開花葉色, 収量などに大差がなかつた。しかし, 4年め以降の果実は, P多施で果皮の着色が遅れ, 可溶性固形物および酸が減少し, 甘味比が高くなる傾向を示した。
    5. 4年めまでの葉分析にはP施用と無施用との間に差がなかつたが, P多施では5年めと6年めの葉中Pが高くなり, Nが低くなり, 6年めのKが減少した。
    6. 1967年は, 梅雨季を除くと, 5~10月の降水量がきわめて少なく (例年の6分の1), 土壌がはげしく乾燥したが, この年の試験1および2いずれにおいても, P無施用と施用または多施との間の果汁品質には顕著な相違があつた。この傾向は, 試験1について翌1968年におこなつた土壌の乾湿処理実験の結果にも認めることができた。
    7. ミカン果実の品質に及ぼすP施肥については, 施用量や施用法, 気象や土壌あるいは他の条件などのいかんによつては, K施肥などと同等またはそれ以上の影響を示す場合があるのを指摘できた。
  • 楊 緒壬, 中川 昌一
    1969 年 38 巻 3 号 p. 239-245
    発行日: 1969年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    温州ミカンの花粉退化の原因を追求するため, 葯および花粉の発育に伴う, 形態学的, 細胞組織学的な研究を行なつた。なお稔性種文旦および夏ミカンを用いてその差異を比較するとともに, 温州ミカンの温度処理およびIAA処理についても同様の調査をした。
    1. 葯発育の初期では, 花粉母細胞の減数分裂および小胞子形成のいずれにおいても, 稔性, 不稔性種の間に差異は認められなかった。
    2. 稔性種のタペート細胞は, 4分子から小胞子が遊離した直後より退化しはじめ, 小胞子の細胞質から液胞が消失する時期までに完全に退化してしまう。
    3. 不稔性の温州ミカンのタペート細胞は, 小胞子の液胞発現期に, 異常に拡大した液胞を生ずることがあり, その後, 小胞子の液胞拡大期には完全に崩壊した。しかし, 細胞状のままで大きな液胞をもたないタペート細胞は, 通常はそのままの状態で崩壊せず, 小胞子の液胞拡大期になつて始めて退化した。従つてこのような場合, タペート細胞は花粉発育のための栄養源としての働きをせず, また花粉に栄養を与えるとしても量的に少ないと思われる。
    4. このような温州ミカンのタペート細胞の異常は, 温度処理 (1969年3月10日より30日まで, 最低温度20°C), またはIAA処理 (露地, 花蕾の直径約3mm, 500pp) を行なうことにより, ある程度まで回復し, 花粉稔性を高めることができた。
  • 田中 征勝, 小餅 昭二
    1969 年 38 巻 3 号 p. 246-253
    発行日: 1969年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1. キュウリ栽培におけるCCCの実用化の検討を目的に, CCCに対する雌花誘起効果の品種間差異, ならびに季節的変異について調べた。
    2. キュウリ品種の性表現に対する栽培環境要因, CCCの影響は, 遺伝要因の影響より小さく, 品種の表現型を根本的に変える作用は認められなかつた。したがつて各作型においては品種の選定が第1であり, CCCはあくまでも補助手段として利用するのが適切と考えられた。
    3. CCCによる雌花誘起効果は, 各時期で認められ, 4回処理附近が最適値と考えられた。しかし効果の現われ方は品種により多少異なり, CCCに感受し易い品種とし難い品種が認められた。またこの感受性は, 環境感受性と必ずしも一致しなかつた。
    4. CCCに対する感受性は更に季節によつても異なつた。CCCの効果の現われ易い時期は, 一般に各品種とも雌花数の個体間変動の大きい時期, すなわち環境条件に対して性表現の不安定な時期に効果が大きかつた。
    5. CCCによる生育抑制効果は, 草丈, 展開葉数ともに各時期で認められた。この効果は品種により多少異なり, 環境変異の大きい品種にCCCの感受性の高い傾向が認められた。
    6. CCCによる生育抑制効果と雌花誘起効果との関係は明らかでなく, 生育の抑制が直接雌花誘起と結びつく結果はえられなかつた。またCCCの雌花誘起に対する感受性は, 草丈の伸長度, 節成性の高低と関係がなかつた。
  • 培養液中の各種陰イオンとの関係
    岩田 正利, 鈴木 芳夫
    1969 年 38 巻 3 号 p. 254-261
    発行日: 1969年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    数種のそ菜を砂耕し, 窒素として硝酸態窒素あるいはアンモニア態窒素を与え, 各窒素形態区ごとに培養液中の陰イオンの種類, 濃度を変え, 生育量, 葉中無機成分濃度に及ぼす影響を調べた。
    予備実験でタマネギに硝酸態窒素を与えた場合, 硫酸塩 (SO4) 0meでは硫黄欠乏症状が現われ, 生育量も劣つた。SO4 0.2meでも生育量はやや劣つたが, 0.5~10meでは正常な生育を示した。一方塩化物 (Cl) は0meでも乏症状は現われず, 0~10meの範囲で生育は正常であつた。硫酸塩, 塩化物とも25meを越えると生育量は低下し, 濃度が高くなるほどその程度は著しかつたが, 両イオンの間に差はみられなかつた。
    カンラン•コカブ•タマネギにNaNO3, NH4NO3あるいは (NH4)2SO4を与えた場合 (Nとして8me), そのおのおの区のK, Ca, Mgなどの陽イオンを硫酸塩で与えても, 塩化物で与えても ((NH4)2SO4区を除きSO4, Cl濃度それぞれ11me) 生育量に差はみられなかつた。 さらに (NH4)2SO4区とNH4-Nも塩化物で与えたNH4Cl区 (SO4, Clそれぞれ19me) との間にも生育程度に大差はなく, 両者とも他の窒素形態にくらべ著しく劣つた。SO4区はCl区にくらべ葉中S濃度が高く, Cl区はSO4区にくらべ葉中Cl濃度が高かつた。
    タマネギおよびコカブのNaNO3, (NH4)2SO4区にNa塩でSO4, Clを与え, これらのの濃度が12~48meになるようにし, 生育量を比較した。NaNO3区ではSO4, Cl濃度が高くなると生育量が低下したが, (NH4)2SO4 区ではその傾向はあまりはつきりしなかつた。ただし両窒素形態ともSO4, Cl区間には生育の差は認められなかつた。
    カンランで各窒素形態区ごとに培養液中のリン酸濃度を変えると, NaNO3, NH4NO3両区では0.6meで大体最高に近い生育量に達し, 3meにしても0.6meにおける生育量とあまり差がなかつた。(NH4)2SO4区ではリン酸濃度により生育量がほとんど影響されず, 他窒素形態区にくらべ著しく劣つた。葉中リン酸濃度はリン酸施用濃度の高い区ほど高く, 特に (NH4)2SO4区で高かつた。しかしながら0, 0.2meの低濃度では各窒素形態区ともリン酸欠乏症状があらわれた。
  • シュンランの rhizome-tip からの shoot 形成過程についての組織学的研究
    上田 博, 鳥潟 博高
    1969 年 38 巻 3 号 p. 262-266
    発行日: 1969年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    シュンラン Cymbidium goeringii REICHB. F. の無菌播種により得られた rhizome の先端部を基本培地 (KNUDSONC+NITSCH微量要素液) に暗培養した場合, rhizome のみを作り, shoot 形成に進まない。10mg/lhinetin を添加した培地では大部分が shoot を形成する。これらの材料を用い, rhizome-shoot 分化の現象を組織学的に比較検討した。観察結果を要約すると次の様である。
    A. rhizome 形成 (基本培地)
    (1) 生長点は培養期間が長くても原始的な構造を維持している。(2) 細胞分裂像は殆んど apical dome のみに見られその数も少ない。(3) 発生する葉原基は小型であり, かつその plastochron が極めて長い。(4) 葉原基の細胞は比較的早く vacuolation が進む。(5) subapical region の細胞は急激に容積拡大し, vacuolation が進み, また澱粉粒が認められる。
    B. shoot 形成 (kinetin 培地)
    (1) 生長点の構造は発生に伴い次第に整つて行く。(2) 細胞分裂像は apical dome のみでなくさらに下方の部分, および葉原基に見られ, その数も多い。(3) 短い plastochron で葉原基が発生する。(4) 葉原基は小型の若い細胞から成る。(5) subapical region の細胞は比較的小型で vacuolation が進行していない。また澱粉粒も認められない。
  • 栽培ギクの染色体数について (その1)
    遠藤 伸夫
    1969 年 38 巻 3 号 p. 267-274
    発行日: 1969年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1. 栽培ギクの品種分化の実態を染色体面から明らかにするために, 近年わが国で広く栽培されている各種栽培ギクのうち特に, 観賞用ギクの染色体数の広汎な調査を行なつた。
    2. 本研究に供試した系統および品種数は次のごとくである : 各種観賞用大輪ギク80品種, 同中輪ギク32品種, 同小輪ギク14品種。
    3. 染色体数の調査結果は第1表に示した。その結果, 次のごとき知見が明らかとなつた。1) 各種類の観賞用ギクはすべて, 2n=52~75+Bの範囲内で種々の異数体品種を包含しているが, おのおののひん度は種類によつて異なり, 染色体数の変異の幅にも広狭が認められた。2) 観賞用大輪ギクは概して染色体数が2n=54~75+Bと大幅な変異を示し, ほかの種類では比較的変異は小さい。3) 観賞用大輪ギクに属する広物ギク (広しおよび美濃ギクを含む) では, 21品種中18品種は2n=70~75+Bで, 極度に多い染色体数を有しており注目される。4) 観賞用中輪ギク (江戸ギク, 嵯峨ギク, 伊勢ギク, 肥後ギク) および観賞用小輪ギク (文人ギク) の染色体数の変異は比較的小さい (2n=52~56)。5)観賞用大輪ギク, 特に, 厚物ギクおよび管物ギクについて品種群の時代的変遷と染色体数の変化を調査した結果, 35年前のキク品種群には2n=60の染色体数をもつ品種が最も多く, これを境にして2n=53~59までと2n=60~67までおのおの同数ずつ存在したが, 今日の品種群は2n=54~73と変異の幅が明らかに拡大されているが, 全体的には2n=54あるいはそれに近い染色体数の出現ひん度が高い。一方, 2n=54±1を有していた観賞用小輪ギクの一種, 文人ギクについてはこのような染色体数の上での時代的変化はほとんど認められなかつた。
  • とくに, 貯蔵中のカロチン含有量, 重量, 水分, 色調, 復元性について (1)
    田尻 尚士, 松本 熊市
    1969 年 38 巻 3 号 p. 275-278
    発行日: 1969年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    凍結乾燥ニンジンのカロチンの含有量の貯蔵中の減少は, -30°Cおよび-20°C貯蔵することによつてかなり防止することが可能である。
    重量の増加, 水分含有量の増加は, 貯蔵日数の増加に伴つて増加する。-30および-20°C貯蔵が30°C, 20°Cおよび0°C貯蔵区よりすぐれ良好である。
    色調変化は, 全体的に退色現象が現れ,白つぽさが感じられ, 彩度が低下, 明度の上昇が著しく, 品質面から見て一般的にその低下は明白である。ただし, -30°Cおよび-20°C貯蔵区の場合, 多少ニンジン特有の色調を残すことが明らかとなつた。
    復元力は, 貯蔵日数が長いほど弱くなり, 低温で貯蔵を行なえば, かなりその差は少なくなる。また復元力を促進するには, 復元時に使用する温水を45°C前後にすれば最適であると思れる。
    すなわち, 本実験の場合, -30°C貯蔵区の試料を, 45°Cの温水で復元すれば最良の結果を得ることが可能となつた。
  • 収穫果実の呼吸型とその分類
    岩田 隆, 大亦 郁子, 緒方 邦安
    1969 年 38 巻 3 号 p. 279-286
    発行日: 1969年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    呼吸型が明確でないと思われたイチゴ (ダナー) およびモモ (白桃), ならびに典型的な climacteric class とされるトマト (福寿2号), non-climacteric class とされるミカン(温州)果実を材料とし, 収穫後の成熟とCO2排出量の関係, 組織 homogenate の活性度の変化などを測定し, 果実の成熟に関する呼吸型の意義を考究しようとした。
    (1) 果実収穫後の呼吸型は, 従来のように climacteric および non-climacteric class の2型に分類するのではなく, 下記の3型とするのが適当と思われた。
    i) 果実の成熟時に呼吸量が漸減するもの……漸減型
    ii) 呼吸量の一時的上昇後に完熟するもの……一時上昇型
    iii) 完熟時より過熟期にかけて呼吸量が最大となるもの……末期上昇型
    (2) 上記の分類に従うと, カンキツ類一般は漸減型に属する。一時上昇型が典型的な climacteric class とされるものであり, トマト•バナナ•洋ナシ•アボカドその他がこれに属する。末期上昇型には, カキ•イチゴ•モモなどが相当し, 一時上昇型と異なり, 呼吸量のピークの位置と熟度との関係, ピークの高さが個体によつて大きく変わりやすい。
    (3) 果実の成熟時においては, climacteric rise の有無にかかわらず, 呼吸機構のうえになんらかの質的変転があるものと思われた。イチゴ果肉 homogenate のO2吸収量に対するNAD, AMP, ATP, チトクロームcなどの cofactor 類, あるいは呼吸阻害剤の添加効果は, 収穫後の熟度の進展に伴つて著しい変化をみせた。温州ミカン果皮切片あるいは cell-free extracts に対する有機酸類の添加効果をみると, 未熟な果実から調製した場合は, リンゴ酸あるいはコハク酸によりO2吸収が非常に増大するが, クエン酸では効果がない。貯蔵により果皮が黄化すると, リンゴ酸あるいはコハク酸の効果は小さくなり, 逆にクエン酸の添加により増大率が著しく大となつた。
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