1. P肥料に対する温州ミカンのレスポンスをあきらかにするため, 土層が浅い洪積層台地の11年生園について1960年から9年間 (試験1), 3年生園について1963年から6年間 (試験2), とくにP肥料施用の有無が, 樹の生長, 収量, 品質, 葉分析に及ぼす影響をしらべた。
2. 試験1について, 9年間のP施用 (毎年1樹にP
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5 400gおよび200g相当の過石を樹冠内外の深さ40cmまでの土壌に30か所の径6~7cmの穴に施用)と無施用との間には, 樹勢, 収量, 冬季の耐寒性などにまつたく差がなく, また5年めまでの品質, 葉分析 (N, P, K, Ca, Mg) も同様であつた。
3. 6年め, 8年め, 9年めの果汁の酸, 可溶性固形物は, 有意な差でP施用のほうが低く, とくに酸が減少して甘味比が高くなり, 同時に果皮の着色がやや遅れた。また6年め以降の葉分析は, P施用のほうで8年めと9年めの葉中Pが高く, 9年めのKが低くなる傾向を示した。
4. 試験2についても, 6年間のP施用 (1樹にP
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5430g, 860g, 1,720g相当の過石を植付前に深さ40cmまでの土壌に一度に施用) と無施用との間で, 樹の生長, 開花葉色, 収量などに大差がなかつた。しかし, 4年め以降の果実は, P多施で果皮の着色が遅れ, 可溶性固形物および酸が減少し, 甘味比が高くなる傾向を示した。
5. 4年めまでの葉分析にはP施用と無施用との間に差がなかつたが, P多施では5年めと6年めの葉中Pが高くなり, Nが低くなり, 6年めのKが減少した。
6. 1967年は, 梅雨季を除くと, 5~10月の降水量がきわめて少なく (例年の6分の1), 土壌がはげしく乾燥したが, この年の試験1および2いずれにおいても, P無施用と施用または多施との間の果汁品質には顕著な相違があつた。この傾向は, 試験1について翌1968年におこなつた土壌の乾湿処理実験の結果にも認めることができた。
7. ミカン果実の品質に及ぼすP施肥については, 施用量や施用法, 気象や土壌あるいは他の条件などのいかんによつては, K施肥などと同等またはそれ以上の影響を示す場合があるのを指摘できた。
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