植物の生長とC,Nとの間に密接なる關係ありとするも, 種々の缺陷を包臓する恐れあるC,Nの實測値を以つて, 何等適正の考慮を拂ふ事無しに, 之れを以つて直ちに其等全實相を知らんとしても, 少なからざる困難の伴ふ場合が往々生じ其の爲めに多岐多樣の説が生じ居れり。
著者は之等諸説が根元を一にしながら, 而も單に雜然として, 混在する雜多の説なるか, 或は多種の内にも全面的に一貫せる關係を把握し得るものなりや否や, 換言すれば多樣の内にも整然たる, 統一的, 有機的關係を有するものなりや否やを知り, 之れより更に個々の場合を演釋して, 其等の應用的價値をより高めんが爲めに, 何等の缺陷をも含まざる, 理想的のC,Nを想設し, 之れを active C,Nと稱し“
C,N”を以つて表示し, 之等と植物體の生長量との關係を考究せり。
斯くする事に依り, 特定の觀點に立ち, 一完條件の下に於て,理想式
W=K〔
C+
N〕
m〔
C/
R〕
n〔A〕を設定し, 更に之れを實測値適用に資せんが爲めに,〔a〕條件の下に於て, W=k〔C+N±u〕
m〔C/N±v〕
n±wの如き關係式を誘導せり。本式は修正項u, v, wの零となるや否や, 即ち起生量Wと; C,Nの量C+N, 比率C/Nに各々修正を要するや否やに依りて, 理論的に8つの場合の生じ得る事を知れり。
而して之等の内の1つにして, u=0, v=0, w=0 なる場合, 即ち何れにも何等修正項を要せすして, 最も理想的に近き場合の關係式たる W=k〔C+N〕
m〔C/N〕
n〔B
8〕を先年他の目的の爲めに得たる, 眞黒茄子の實驗結果の内,1本當絶對重としての全炭水化物及全窒素並びに新鮮重に適用せり。
本式適用に當り, C,N被分析材料と, 新鮮重被測定材料が全く同一個體のみにして, 而も被分析材料採收日と, 新鮮重測定日の間に開きの存せざるときは極めて良く合致する事を知れり。
次にC,N被分析茄子と, 新鮮重被測定茄子とが別個體にして, 且つ被分析材料採收日と, 新鮮重測定日が異なる場合に於ても, 本式適用に依る計算値と實測値との間に可なりの合致度乃至相關度を示して居るものもあれど, 之れを前者に比すれば其等の度合は稍ゝ劣れり。此の點尚充分なる吟味を要する處なり。
抄録全体を表示