園芸学会雑誌
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46 巻, 1 号
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  • (第1報)ウンシュウミカンの葉内水蒸気拡散抵抗の測定方法ならびに測定に影響する要因
    間苧谷 徹, 町田 裕
    1977 年 46 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    Diffusive resistance meter を用い, ウンシュウミカンの葉内水蒸気拡散抵抗(RL)に影響する要因について検討した.
    1. 1樹内では, 節位間および着果枝葉と無着果枝葉の間にはRLの差は認められなかった. 葉令の間では, 二年生葉は春葉•夏葉(成葉)のRLより高い値を示したが, 春葉と夏葉の間には有意な差は認められなかった. 日なた葉と日陰葉の間では, 日の出前の葉の水ポテンシャル(ψmax)によって異なり, ψmaxが-3bar前後を示す時は日なた葉のRLは日陰葉のそれより低く, ψmaxが低下するとその関係は逆になった.
    2. RLとψとの関係は日射量によって異なるが, 日射量をそろえるとRLとψとの間には比較的密接な関係が認められた.
    3. 乾燥樹(ψmax -9.5bar) のRLの oscillation は個々の葉で厳密な同時性は欠いたが, ある程度平行した動きを示し, この oscillation はΔe (葉面水張差) の変化とよく似たパターンを示した. 適湿樹 (ψmax-3bar) のRLの oscillation の振幅は乾燥樹に比べ小さく, またΔeとの関係も余り明りょうでなかった.
    この diffusive resistance meter は取り扱いが簡単で, 短時間に多くの測定が可能な点は, 特に field work に適すものと思われる. しかし, RLは上述したような要因が影響するので, 測定値の検討には充分な考慮が必要である.
  • (第1報)耐水性といや地の関連性と根における Cyanogenesis について
    水谷 房雄, 杉浦 明, 苫名 孝
    1977 年 46 巻 1 号 p. 9-17
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    モモのいや地と耐水性の関連性を探るために, 根における青酸配糖体の分解 (cyanogenesis) に着目して2, 3の実験をおこなった.
    1. 根に含まれる青酸配糖体には amygdalin は認められず, もっぱら prunasin のみでその含量は4, 5月に高く, 8, 9月に低くなる傾向を示した.
    2. 湛水処理により, 根の prunasin 含量は低下し, それとともに根のサイトカイニン活性, 葉のクロロフィル含量も低下した.
    3. 嫌気条件で根は cyanogenesis を生じたが, 好気条件では認められなかった. 呼吸阻害剤 (NaN3) 処理によっても同様に根で cyanogenesis が認められ, 根の呼吸阻害と cyanogenesis との間には何らかの関係があるように思われた.
    4. 嫌気条件では cyanogenesis によって, prunasin の加水分解物やその派生物の根からの浸出が認められるばかりでなく, 根の内容物の浸出が全体的に促進され, それらのエーテル可溶中酸性分画はアベナ幼葉鞘切片の伸長を抑制した.
    5. これまで, モモのいや地に関係しているとされてきた物質の1つである benzoic acid はモモの根の呼吸を阻害するとともに cyanogenesis もひきおこした.
    以上のことから, モモの耐水性およびいや地現象の発現には, 根の呼吸阻害作用を通しての cyanogenesis が関与していることが示唆された.
  • 糠谷 明, 増井 正夫, 石田 明, 小倉 孝保
    1977 年 46 巻 1 号 p. 18-25
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    希釈した海水が, エダマメの発芽, 生育, 収量に及ぼす影響を明らかにするため実験を行なつた. 発芽率は, 発芽試験開始2日後には海水のCl濃度0から3,000ppmの間で有意な差がみられなかつた. エダマメを発芽後20日間砂耕栽培した. 地上部の乾物重は, 250と500ppm Clで最も大であつた. エダマメを土耕と砂耕で栽培した. 塩害は, 砂耕では0と100ppm Clでみられなかつたが, 250ppm Clではわずかにみられ, それ以上では, 海水のCl濃度が高くなるにつれて塩害は激しくなつた. エダマメの種子の新鮮重は, 砂耕では0から250ppm Cl, 土耕では0から500ppm Clで最も大であつた. 砂耕, 土耕とも海水のCl濃度が高い場合, 葉のNa, Cl含量は増加した. 土壌のCl, 置換性Na含量及びECは, 海水のCl濃度が高くなるにつれて増加した.
  • 原 徹夫, 田中 耕, 園田 洋次, 岩井 巌
    1977 年 46 巻 1 号 p. 26-31
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    長岡交配早秋カンランを, 4段階のCa濃度 (4, 20,100, 500ppm) とMg濃度 (0, 5, 25, 125ppm) の組合わせによる16種類の培養液で66日間水耕し, これら供給量がキャベツ成葉細胞内の両要素分布にいかに影響するかを調査した.
    細胞壁画分と細胞液画分の乾物は全乾物の, それぞれ, おおよそ45, 35%を占め, 細胞核画分とプラスチッド+ミトコンドリア画分のそれはいずれも少量であつた. 各画分への乾物分布割合は, 培養液中のCa濃度の増加にともない細胞壁画分で上昇し, 細胞液画分で低下し, また各画分のCa含有率は上昇し, その上昇は培養液中のMg濃度が低い場合に大きかった. 各画分へのCa分布割合は, 細胞壁画分と細胞液画分の両者で約90%であり. 培養液中のCa濃度の増加にともない前者で低下し, 後者で上昇した。各画分のMg含有率は, 培養液中のMg濃度の増加で上昇し, 各画分へのMg分布割合は細胞液>細胞壁>プラスチッド+ミトコンドリア>細胞核画分の順であり. 培養液中のMgおよびCa濃度の増加にともない前者で上昇し, 後3者で低下した.
    これらの結果より, Ca供給量の少い場合は, 植物に吸収されたMgの一部は細胞壁に結合するが, Ca供給量が多い場合には, ほとんど結合せず細胞液中に残るものと考えられた.
  • (第1報)ブラシカ類, ダイコンおよびカボチャ類
    中村 俊一郎
    1977 年 46 巻 1 号 p. 32-47
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ブラシカ類, ダイコンおよびカボチャ類の種子のタンパク質あるいは酵素をアクリルアミドゲルのディスクで電気泳動して, その泳動パターンによって種子の種, 品種または品種群を鑑別することについて研究を行なった. 結果を一括すると第1表のごとくである.
    1. ブラシカ類作物の種子鑑別に利用価値のあったのは, タンパク質, パーオキシダーゼ, LDH, エステラーゼ, 酸性ホスファターゼ, ADH, GDHおよびCAであった. しかしこれら1種類のみの泳動によっての完全な区別は不可能で, 完全な区別には少なくとも2ないし3種類の泳動を必要とした. B. nigra, B. juncea およびB. carinata のパーオキシダーゼ泳動像では相似の反応を現わし, これはこれらが共通に有するbゲノムによるものと推測された. いずれにおいても品種間差は区別できず, ハクサイ, カブ, ミズナ, タイナなどは電気泳動像による分類からも. B. campestris として一括するのが妥当であると考えられた.
    2. ダイコンでは泳動像における品種間差あるいは品種群間差は検出できなかった.
    3. カボチャ類ではわずかで C. pepo がタンパク質の, C. ficifolia がエステラーゼの泳動像で区別できたのみで, C. moschata, C. maxima およびそれらのF1の間の区別は不可能であった.
  • (第4報)自家不和合性におよぼす高温の効果
    建部 民雄
    1977 年 46 巻 1 号 p. 48-51
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    品種聖護院を供試し, 30°C, 25°Cおよび室温下において自家受粉を行い, 高温処理の自家不和合性消去の効果を調べた.
    室温区においては, 柱頭上の花粉の発芽歩合は低く, たとえ発芽しても花粉管はきわめて短小で, ほとんど柱頭乳頭細胞内く侵入していなかった.
    30°C区においては, 室温区に比し, 柱頭上の花粉粒数はやや多く, 発芽歩合もずっと高かった. 花粉管の一部は乳頭細胞内に侵入し, また少数空虚花粉粒もみられた.
    高温処理効果は, 25°Cよりも30°Cの方がより有効であった.
    この現象は, 高温によって花の老化が進んだためと考えられた.
    要するに, 聖護院ダイコンの, 高温 (30°C) 処理は, ある程度その自家不和合性を弱めるものと考えられる.
  • (第2報)焼成温度か素焼きばちの物理性に及ぼす影響
    田中 宏, 金沢 誠, 八重沢 勇一
    1977 年 46 巻 1 号 p. 52-58
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    市販の素焼きばちの焼成温度が各地の生産業者によってかなり異なる理由を検討するため, 7種類の素焼きばち用の杯土 (はいど) を取りよせて焼成を行い, その物理性の変化を調査した. 坏土を圧延, 型抜きをして自然乾燥後, さらに50°Cで1晩乾燥してから, 実験用マツフル炉内で250°Cから1,045°Cまで約200°C間隔の各温度で焼成した, 上昇温度は100°C/hとし, 所定温度に上昇後, 1時間その温度を持続させた.
    (1) 通気率は460°Cまでは各区ともほとんど変化しないが, それ以上の温度では各区とも増加し, また産地間の差が認められた. 875°C以上では愛知県三河地区産 (E, F区) および茨城県真壁産 (C区) のように, 1,045°Cまで著しく増加するもの, 東京産 (A, B両区, 原土は埼玉県八潮市) のように950°C前後をピークとして以後著しく減少するもの, または茨城県北茨城産 (D区) および愛知県常滑産 (G区) のように, 比較的低いが, 1,045°Cまであまり変化しないものの3種類のグループに大別された.
    (2) 透水率の焼成温度による変化は, 通気率の場合と極めてよく一致しており, 通気率と同様3種類のグループにわかれた. また通気率の1/300~1/500位の値を示す場合が多かった.
    (3) 吸水率と見掛気孔率の変化は極めてよく類似しており, 875°Cまでは焼成温度による相違はみられないが, 1,045°Cではどの地区産のものも著しく減少した.特に東京産の両区 (A, B) でその傾向が甚だしかった. 低温では東京産の値が大きく, 茨城県北茨城産 (D区) と愛知県常滑産 (G区) の両区が小さかった.
    (4) 見掛比重はどの温度でも茨城県真壁産 (C区)が大きく, 他区間にはあまり差がみられないが, 1,045°Cでは各区とも減少した. 嵩比重では東京産 (A, B両区)が小さく, 茨城県北茨城産 (D区) が大きかった. 1,045°Cでは各区とも急激に増加したが, 特に東京産 (A, B両区) で著しかった.
    (5) 本試験で作成した素焼き片と市販の素焼きばちとでは, 製造工程がかなり異なるにもかかわらず, 透過性の傾向はかなりよく一致していた.
  • (第1報)花柱切断授粉法による交配
    浅野 義人, 明道 博
    1977 年 46 巻 1 号 p. 59-65
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1) ユリの遠縁種間交雑による雑種育成をおしすすめるために, まず, 交配の方法として花柱切断授粉法を試み, また, 自家不和合性の強い種類についての自家授粉にも適用してみた.
    2) 通常の柱頭授粉では受精がおこらない遠縁種間の交配においても, 花柱切断授粉により雑種胚が得られる場合が認められた. しかし, 多くの場合, 得られた雑種胚は長さ1mm以下の小胚にとどまり, 胚乳は液状ないしほとんどこれを欠くような状態で, その異常がきわめて特微的であった.
    3) 自家不和合性の強い種類においても, 花柱切断授粉法による自家授粉が効果的である場合があり, あるていどの正常な成熟種子を得ることが出来た.
    4) 花柱切断授粉法による遠縁種間交雑において, 一般的には花粉管が花柱内をよく伸長し, しかもその本数が多い組合せの場合に比較的よく受精がおこり, 幼胚が形成された. しかし, そのようなときでも交雑胚を確認出来ない場合もあり, 従って, 花柱内における花粉管の伸長停止による不親和とは異なる機構による不親和の場合も存在すると考えられた.
  • (第1報)紫外域除去資材下における花色の変化
    柏木 征夫, 小林 泰生, 松川 時晴
    1977 年 46 巻 1 号 p. 66-71
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1. プリムラ•マラコイデス‘緋乙女’ほか7品種の花色の発現に及ぼす紫外線の影響を検討した.
    2. 全品種とも紫外域除去資材 (360nm以下カット)下より紫外域透過資材 (300nm以下カット) 下で花色が濃色となり, 色素抽出液の最大吸収波長域 (540nm)の吸光度が高くなった.
    3. 特に, 差が大きかった品種としては緋紅色系品種の‘桃小町’,‘緋乙女’および‘フリルド•クイーン’の
    3品種であり, ついで差のあったグループには‘紅’お美び‘ささがけ’があった.
    4. 紫外線の影響が少なかった品種としては青紫色系品種のニュー•エムトラル•パール, ‘ブリリアンシー•インプルーブド’および‘うぐいす’の3品種であった.
    5. プリムラ•マラコイデスの花弁中に含まれるアントシアニジンとしては3種類が認められ, それらはデルフィニジン, ペチュニジンおよびマルビジンと推定され, ‘緋乙女’および‘紅’には3種類が, ‘桃小町’,‘フリルド•クィーン’,‘さきがけ’,‘ニュー•エムトラル•パール’,‘ブリリアンシー•インプルーブド’および‘うぐいす’の各品種にはペチュニジンおよびマルビジンの2種類が認められた.
  • (第1報)花被中のアントシアニンについて
    杉山 晃, 木下 昌子, 加古 舜治, 大野 始, 榊原 孝平
    1977 年 46 巻 1 号 p. 72-80
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    シンビジウムのアントシアニンの性質を調べ, 13種の原種および交配種の色素構成を調査した.
    また, アントシアニンの研究方法に関して, その定量方法を検討した.
    1. シンビジウム (Cymbidium Sazanami var. Haru-no-umi)を用いて, その花被中のアントシアニンの特性を調べ, 2種類のアントシアニン (UとL) を確認した. Lはクリサンテミン (cyanidin 3-glucoside) で, Uはクリサンテミンの糖残基の異なるものである. そして, その糖残基はグルコースのみから構成されていると考えられるので, cyanidin 3-diglucoside である可能性が高い.
    2. 13種のシンビジウム (3種は原種, 10種は交配種) について, アントシアニンの構成を調べた.
    原種は3種ともUとLの両色素のみを含み, 交配種もすべてにわたってUとLの色素を含み, 量的に見て, それら両色素が主要なものであった. また, 10種の交配種のうちのいくつかのものには, UとL以外のシアニジン配糖体が少量認められた.
    3. 従来のMeOH-HClで抽出してアントシアニンを定量する方法と, 飽和食塩水で抽出してアントシアニンを定量する方法とを比較した.
    その結果, 定量性に関しては, 従来のMeOH-HCl法と, 飽和食塩水法ともによい結果を得た. また後者は, 色素抽出のしやすさ, 手順の簡便さにおいて前者よりすぐれており, さらに抽出液と花弁色のスペクトルがほぼ一致する点でも, 飽和食塩水による方法はすぐれているものと考えられる.
  • (第5報)チューリップの栽培地帯におけるホウ素欠乏の発生状況と耕地土壌の性状およびチューリップのホウ素栄養状態との関係について
    五十嵐 太郎, 馬場 昂
    1977 年 46 巻 1 号 p. 81-90
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    The relationships between the occurrence of boron deficiency of tulips, characters of cultivated soils and boron contents in tulip plants were investigated at tulip bulb growing areas in Niigata and Toyama prefectures, at the time of flowering.
    It became clear through our investigation in the tulip fields that characteristic symptoms of boron deficiency of tulips such as disappearance of flower pigment (“Ironuke”) and transverse break of stem (“Kubiore”) occurred widely and strikingly in the field tulips of Niigata and Toyama.
    At the same time, the basis of diagnosis on boron deficiency in field tulips was established by using soil testing and plant analysis. The main results are summarized as follows.
    1) Tulips raised on sand and sandy loam soils and on highly water-permeable loam soil were inclined to develop boron deficiency.
    2) On sand dunes tulips were inclined to develop boron deficiency on their tops and slopes.
    3) Tulip fields in which hot-water-soluble born in soils was lower than about 0.2ppm engendered tulip boron deficiency.
    4) Boron deficiency of tulips occured easily on strongly acid soils, though hot-water-soluble boron in soils was more than 0.2ppm.
    5) The critical concentrations of total boron in tulip plant tissues were considered as follows; flower: 14-15ppm, upper stem : 12-13ppm, new main bulb: about 5ppm. But it was difficult to accurately diagnose the boron deficiency of the tulip plant only on the basis of levels of total boron concentration in plant tissues.
    6) Calcium-boron molar ratio in boron deficient tulip flowers was more than 25, but the ratio in healthy ones was less than 20. Therefore boron deficiency in tulips may be effectively diagnosed by the level of calcium-boron molar ratio in flowers at the blooming time.
  • (第2報)一歳ザクラ“アサヒヤマ”について
    五井 正憲, 小西 国義
    1977 年 46 巻 1 号 p. 91-100
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    一歳ザクラ‘アサヒヤマ’の促成の基礎資料を得る目的で実験を行ない, 以下のような結果を得た.
    1. 自然条件下の花芽形成時期は調査年度により多少異なったが, 1973-1974年には, 花芽始発期は8月下旬で, 10月上旬にはがく片, 10月下旬には雌ずいが形成された. その後翌年3月中旬までは, 小花の大きさや雌ずい長は連続的に増加したが, 花芽ステージはそれ以上進まなかった. 3月下旬に胚珠と花粉が形成され, 4月上旬に開花した.
    2. 日長は一歳ザクラの花芽形成に影響しなかった.
    3. 花芽始発の適温は20°C, その後雌ずい完成までの花芽発達の適温は10°Cであった. 花芽が胚珠, 花粉形成期を経て開花するためには, ほぼ雌ずい形成期の段階で一定期間の低温を受け, その後約15°C以上の高温におかれる必要があった. 低温要求は, 花芽が雌ずい形成期であれば0°C4週間以下であると考えられた.
    4. 低温処理なしに促成するばあい, 花芽が雌ずい形成期に達して自然低温を受けた12月上旬以後に入室すれば, 正常に開花した.
    5. 一歳ザクラを12月上旬以前に促成するためには, 入室前に人為的に低温処理する必要があった. そのぼあい.
    (1) 花芽始発前の低温処理は開花を促進しなかった.
    (2) 花芽形成初期に処理すると, 花芽は低温処理中にも徐々に発達して, 4~6週間の低温処理中に雄ずい形成期に近づき, その後温室に移されると比較的容易に開花した.
    (3) 雌ずい形成期に処理すると, 低温中における花芽発達は観察されなかったが, 温室に移されるとより早く, よりそろって開花した.
    花芽の低温要求は花芽ステージによって異なり, 花芽ががく片形成期であれば0°C6週間, 花弁ないし雄ずい形成期であれば0°C4週間, 雌ずい形成期であれば0°C2週間程度であった.
    低温要求が満たされた花芽は, その後の温度が高いほど早く開花したが, 開花率や花の品質は20°C以上では低下した. 開花の早さ, 開花率, 品質などから考えて, 促成のための適温はほぼ15°Cであると考えられる.
  • (第1報)自家稔実率について
    河瀬 晃四郎, 塚本 洋太郎
    1977 年 46 巻 1 号 p. 101-112
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1. キクの遺伝, 育種学的研究を進めるための基礎資料を得る目的で, 栽培ギクおよび野生ギクの自家交配を行ない, それらの自家稔実率を調査した.
    2. 供試した品種および野生種はすべて自家不和合性を示した. しかし, いずれも完全な不和合性とはいえず, 生理的要因によると思われる自家稔性を示したり, 交配した年により稔実率に差のみられる品種や系統があった. また, 同一品種内でも個々の花序により稔実率に差がみられた.
    3. 自殖後代においても, そのほとんどが自家不和合性を示したが,‘交野桜’の自殖第1代 (KB系統) には生理的要因のみならず, 遺伝的要因によると思われるやや高い稔実率 (KB2; 52.32%, KB6; 37.59%) を示す個体がみられた.
    4. 自家稔実率の高い個体 (KB系統) について, アポミクシスの有無を調査したが, それらにアポミクシス現象は観察されなかった.
    5. ほ場に植えた状態, はちに植えた状態および切花にした状態で自家交配を行なったところ, 多くの品種は, はち植えあるいは地植えで交配した場合に比較的高い稔実率を示し, 切花では全体に稔実率は低かった. しかし, 切花でもほ場植えやはち植えの場合と同等もしくはそれ以上の稔実率を示す品種もあった.
    6. KB系統を用いて管状花と舌状花の自家稔実率を調査したところ, 舌状花より管状花の稔実率が高かった.
    7. 花粉活性をアセトカーミンによる染色率で調査し, 自家稔実率と比較検討した結果, 高い稔実率の得られた品種‘Aztec’, 小ギク (G) および自殖第1代であるKB2, KB6の花粉染色率は高かった. しかし, その他の品種や系統では両者の間に何んら関係は認められなかった.
    8. 高い稔実率を示す個体の得られたKB系統で, ニトロブルーテトラゾリウムによる花粉染色率および人工培地での花粉発芽率を調査し, 稔実率と比較したが, それら花粉活性と稔実率の間に明確な関係をみいだすことはできなかった.
  • V. 仔球の出葉形態に及ぼす低温期間の影響
    松尾 英輔
    1977 年 46 巻 1 号 p. 113-116
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    仔球の出葉には低温が必要であるが, 高温 scaling 仔球では普通葉, 低温 scaling 仔球では葉状りん片の発達をみる. 光は scaling 中のりん片あるいは仔球自体のりん片をとおして葉状りん片の発達を促し, この光の作用は低温ほど顕著である. 一方, 暗黒下においても, 低温の影響が大きくなると葉状りん片の発達が促されることが知られている.
    本実験では, 親りん片から切り離した仔球を用い, 仔球の出葉形態に及ぼす低温処理期間の影響を調べた.
    1973年8月15日, 宗像産テッポウユリ「ひのもと」(L球, 球周25cm以上) のりん片を15および25°Cでscaling し, 1974年4月4日, 球径10mm以上の未出葉仔球を選んでピートに植え込んだ (覆土15~20mm).低温 (5°C) に0 (無低温区), 1, 2, 3, 4および5か月間貯蔵したのち, 20°Cで出葉させてその出葉形態を調査した.
    低温処理期間が長くなるほど葉状りん片の発生 (地中型植物, HTP) が多くなつた. この地中型植物 (HTP)の増加は25°C scaling 仔球よりも15°C scaling 仔球に顕著であつた.
    抽台して普通葉を発生した仔球 (地上型植物, ETP)についてみると, 15°C scaling 仔球では, 低温期間のいかんにかかわらずほぼ一定で13~18%であり, これに対して25°C scaling 仔球では, 低温期間1~4か月のとき55~58%であつたが, 低温期間5か月の場合は43%に低下した.
    これらの結果から, scaling 温度のいかんにかかわらず, 低温期間の延長は仔球における葉状りん片の発生,すなわち, 地中型植物 (HTP) を増加させることが明らかである.
  • 小川 幸持
    1977 年 46 巻 1 号 p. 117-122
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    誘導暗期の直前に, 短日植物, アサガオの幼芽にアサガオ, ルーピンあるいはインゲンなどの種子のアセトン抽出物を与えると, 対照区に比して茎の伸長ならびに花芽の形成が促進される. 同じような促進作用がジベレリンA3を与えた場合でも得られることが知られている.本報文では, 上記の各種の種子から分離された炭素-20個のジベレリン (C20-)A18,A38,A23,A28 とA27, また炭素-19個のジベレリン(C19-)A1,A2,A3,A4,A5,A7,A8A9,A20,A21 と A22 の作用を, アサガオの茎の伸長ならびに花芽形成において比較調査した.
    アサガオの園芸品種, キダチをガラス室内で (28±2°C), 昼間は太陽光, 夜間は蛍光灯の連続照明下で育成し, その幼芽に上記の各種のジベレリン溶液を滴下し,直ちに1回の11時間の誘導暗期を与えた.
    0.05μgの供試量の各種C20-ジベレリンとGA3の茎の伸長における促進順位は, A3≫A38_??_A23_??_A18≫A28=対照区である. 同じ促進順位が花成においてもみられる.0.5μgの供試量の茎の伸長における促進順位は,0.05μgの場合とほとんど同じである. 花成においては, A38>A3=A23=A18≫A28=対照区の順位を示し, 茎の伸長順位と異なる.
    0.05μgの供試量の各種C19-ジベレリンとGA27の茎の伸長における促進順位は, A3>A1=A7>A5>A2=A4_??_A20>A22>A9_??_A8=A21=A27=対照区を示し,花成においても同じ促進順位である. 0.5μgの供試量の茎の伸長における促進順位は, 0.05μgの場合とほとんど同じであるが, 花成においては, A2=A4=A5>A1=A7_??_A3=A20>A21>A9=A8=A27=対照区の順位を示し, 茎の伸長順位と異なる.
    各種の供試量のGA3の作用は, 0.005μgのような少量では茎の伸長の促進はみられないが, 花成に対し明らかな促進がみられる. そしてその供試量が増すにつれて茎の伸長や花成の促進は両者ともに平行して強まる. しかし5μgのような多量では茎の伸長は著しく促進されるにもかかわらず花成に対する促進は減少する.
    アサガオの茎の伸長と花成において各種ジベレリンの作用を一般的にみて, 茎の伸長を促進するジベレリンは花芽形成をも促進する. あるいは逆に. 花芽形成を促進するジベレリンは茎の伸長をも促進する. しかし供試量の多い場合には, 各種ジベレリンの茎の伸長における促進順位と花芽形成における順位とは異なる. この両者の相異は, 活性の高いジベレリンは茎の伸長を著しく促進するにもかかわらず, 花芽形成をあまり促進しないためと思われる. これらの事は, ジベレリンの生理的機能が茎の伸長と花芽形成との間で, その濃度によって, 似ている場合と異なる場合があることを示唆している.
  • (第4報)果実発育期間中の果汁粘度の変化
    吉田 保治
    1977 年 46 巻 1 号 p. 123-130
    発行日: 1977年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    果汁粘度が果実の食味と密接な関係のあることから, 幼果期から成熟期までの変動について実験を行った. その結果, 次のような事がわかった.
    (1) 果汁粘度の変動には一定のパターンが認められ, 果実の発育中, 細胞肥大期の前半の増加期には果汁粘度は8月初旬までかなり急速に増加する果汁粘度上昇期, その後の細胞肥大期後半にはいると果汁粘度は早生種で9月中旬まで, 普通種で9月下旬~10月初旬まで減少する果汁糖度下降期, ついで成熟期には果汁粘度は徐々に上昇しはじめる果汁糖度再上昇期の3期に分けることができる. また果汁粘度の変換期は果実の形態学的, 組織学的変換時期とよくにていた.
    (2) 1974, 1975両年の果汁粘度の変動パターンを比較すると, 1974年の方が早生種, 普通種ともにやや,果汁粘度が高く, また同一品種でも系統によって相違がみられたが, その変動のパターンはよくにていた. このような年度別, 品種別の果汁粘度の相違は品種や, 園地の立地条件, 栽培条件, その年の気象条件などいろいろな条件により生じるものと考えられた.
    (2) 各採取日の前後間, および各生育期別に期末採取日とそれ以前の採取日間に正の相関関係が認められ,成熟期に果汁粘度の高いものは幼果期においても高く,食味に関する果実管理の上で有用な指標に利用できるのでないかと考えられた.
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