園芸学会雑誌
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35 巻, 1 号
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  • 平野 暁, 中井 滋郎
    1966 年 35 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 1966年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1. モモ樹について, 根より分泌する毒物質が, その樹自身および隣接する樹の生育を抑制することや, 果樹を小さな容積の土壌に植えると, 根から分泌する毒物質によつて, 生育が阻害されることが知られている。それゆえ, モモを密植すると, 根からの毒物質によつても, 生育が抑制されることが想像される。そこで, いろいろの密度に植えられた場合の生長を, すでに知られている生長法則と比較することにより, 根から分泌する毒物質の, 密植樹の生長におよぼす影響を知ろうとした。
    2. 根から毒物質を多く分泌するものとしてモモを, 少ないものとしてカキの実生を用い, これをガラス室内の埴壌土に, 1m2あたりおのおの6.25, 25, 44.4, 100および400本の割で植え, 生育期間を変えて2~4回掘り取り, 別に施肥量のちがう区およびガラス室外の砂土に植えた区をもつくつた。そして, おもに面積あたり全樹体乾物重をもつて生育を比較した。
    3. カキについては, 時期をかえて掘り取つた場合(a, d), 同じ土壌で肥料を施さなかつた場合 (e), および砂土に植えた場合 (g) のいずれにおいても, 全樹体重は吉良氏らの逆数式によくあてはまり, 比較的低密度においては, 全樹体重は密度とともに増大したが, 高密度においては, 密度に関係なくほぼ一定となつた。
    4. モモについては, 比較的早期に掘り上げた場合(a) や, 砂土に栽培した場合 (g) には, カキにおけると同様の結果を得たが, 後期に掘り取つた場合には, 施肥量の多少にかかわらず (c, d, e, f), 全樹体重は中密度 (初期密度25~44.4本/m2) において最も多く, 高密度においては明らかに減少し, 逆数式はあてはまらなかつた。
    5. この高密度における生育抑制は, モモは単位根量から多くの毒物質を分泌し, そのうえ, 高密度においては, 生育期間を通じての根の合計量が多いので, 分泌された毒物質の総量が特に多かつたためにおこつたと想像される。そして, 毒物質の蓄積の少ない初期や流去の多い砂土, あるいは分泌量の少ないカキにおいては, この障害が少なかつたものと思われる。
    6. 果樹を密植すると, 日光や養水分の不足のほかに, 根から分泌される毒物質によつても, 生育が阻害されることがあり, これは根から毒物質を多く分泌し, 忌地を強くあらわす種類において強くあらわれるようである。また, この作用は土性などの生育条件によつても影響されるものと想像される。
  • 窒素, リン酸および加里吸収量の季節的消長について
    大垣 智昭, 藤田 克治, 伊東 秀夫
    1966 年 35 巻 1 号 p. 8-18
    発行日: 1966年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1. カラタチ台尾張系普通温州ミカンの58年生樹を供試し, それまでの収量調査から, 隔年結果をしていて成り年, 不成り年にあたる樹, 連年結果をしている樹の結果型について, 1年生枝葉, 花~果実の発育とそれに伴う窒素, リン酸, 加里吸収量の季節的消長を調査した。
    2. 不着果枝と着果枝の数的割合は, 不成り年樹では7:1, 成り年樹では2:1, 連年結果樹では2.3:1であつた。着果数は不成り年樹が極端に少なかつたが, 落果率は結果型による相異が少なく, 69.1~66.4%であつた。
    3. いずれの結果型の樹も, 1年生枝の伸びや生体重の増加は6月末で停止したが, 生体重増大の山は不成り年樹では6月に, 成り年樹や連年結果樹では5月にあつた。果実重は8~10月にふえ, 8月に最も著しかつた。
    生体重での果実重対1年生枝葉の比は, 成り年樹で20:1, 連年結果樹で15:1, 不成り年樹では3:1であり, 全体としての生体重のふえ方は果実の量に支配され, その増加のピークは8~10月にあつた。
    しかし, 乾物重でみると, 果実重対1年生枝葉の比はいちじるしく低下し, 増重の最高の山は不成り年樹では5月に, 連年結果樹や成り年樹では7月以降にあらわれた。
    4. 窒素吸収量は, 不成り年樹では6月と9月に山があり, とくに6月の山が大きかつた。成り年樹では着果の影響が大きく, 8月に吸収の山があり, 連年結果樹では, 全体としては5~8月と10月に山を生じたが, 8月の山が最も大きかつた。
    5. リン酸吸収量は, 不成り年樹では5~6月, 8月, 10月に山がみられたが, 成り年樹では果実による吸収が支配的で8月と10月に山が現われた。
    6. 加里吸収量は着果量の多少に著しく影響され, 成り年樹では8月に最大の吸収の山がみられたが, 不成り年樹では6月に山がみられた。いずれの結果型の樹も9~10月には1年生枝葉中の加里含量が減少したが, その程度は着果量の多少と関係しなかつた。
  • チッ素とカリの肥料形態について
    湯田 英二, 岡本 茂
    1966 年 35 巻 1 号 p. 19-28
    発行日: 1966年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    前報に引き続き土壌pHが1年生温州ミカン幼木にどのような影響を及ぼすかについて調査を行なつた。今回はN形態のほかにK肥料形態を土壌pHと組み合わせて行なつた実験についての報告を行なう。
    新梢伸長や生体重増加からみた生長に対する好適土壌pHはNH4-N区では6.23~7.25(NH4-N+KCl), 6.23~7.18(NH4-N+K2SO4)であつた。一方NO3-N区ではK肥料の種類のいかんにかかわらず強酸性土でいちじるしく生長が劣つた以外は各土壌pHの間で生長の差異がほとんど認められなかつた。また, K肥料の形態の相違による影響はなかつた。
    樹体内のN, P2O5, K2O 総吸収量は樹体生長量の増大とともに増加した。しかし, MgOの総吸収量は樹体の生長量とは無関係にNH4-N区よりもNO3-N区において大であつた。また, 土壌pHが低くなるにつれてどの組み合わせの区においてもCaOの総吸収量は減少し, 逆にMnの総吸収量は著しく増大した。NH4-N区におけるN, P2O5の総吸収量はKClよりもK2SO4の施用によつて促進された。
    根組織の等電点と土壌pHの間には正の相関がみられその緩衝能は土壌pHが低くなるにつれて大となつた。
  • 沢山 善二郎, 下田 吉夫, 奥正 和, 松本 熊市
    1966 年 35 巻 1 号 p. 29-35
    発行日: 1966年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1. ヘスペリジナーゼをミカンかん詰の白濁防止に応用した。
    2. 浸漬法, 投入法ともに結果は良好であつたが実際の工場操作上からは投入法を採用するのが望ましいと考えられる。
    3. ヘスペリジナーゼによりヘスペリジンをヘスペレチン-7-グルコシッドに分解することによりじゆうぶんな白濁防止効果が得られた。そしてこの効果はMCの添加よりも大きかつた。
    4. 6か月目までの結果では未だヘスペレチンの生成量はきわめて少量であつた。しかしこの状態でもその透明度はじゆうぶんに保たれたものとみなされるので, ヘスペレチンまで完全に分解する必要性はないとも考えられるが, この点さらに今後の開かん結果によつて考慮したい。
  • 崎山 亮三
    1966 年 35 巻 1 号 p. 36-42
    発行日: 1966年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1. トマト「福寿2号」を1963, 1964年に栽培し, 果実内酸含量が果実の発育に伴つて示す変化を調査した。
    2. 果実全体についての酸含量の変化は3つの時期に分けられた。第1期 (開花より開花後1~2週): 全酸および結合酸がともに高く, 遊離酸は低い。第2期 (開花後2~3週より着色開始): 全酸および結合酸は第1期から第2期の初めにかけて急激に低下し, その後全酸は増加を続け, 着色開始の時に最大となる。一方結合酸は低いままで一定となるか, またはゆるやかに減少する。遊離酸は上昇を続ける。第3期 (着色以後): 全酸, 遊離酸は減少の傾向を示し, 結合酸の変化はない。
    遊離酸の全酸中の割合は第1, 第2期を一様に増加し第3期にはほぼ一定となる。
    3. ゼラチン状組織は子房壁にくらべて全酸, 結合酸, 遊離酸のいずれも高く, 遊離酸の全酸中の割合も大きかつた。発育中の変化は各組織とも果実全体の示すものと同じ傾向であつた。
    4. 全酸の50~70%はクエン酸, 10%前後はリンゴ酸であつた。その他, 酢酸, ギ酸, シュウ酸, 塩酸, 燐酸が発育を通して存在し, 着色後にピロリドンカルボン酸がわずか見い出された。クエン酸, リンゴ酸の果実発育中の変化は全酸と同じ傾向を示し, その他の酸はゆるやかに減少を続けた。
    5. 陽イオンの90%前後はカリウムで, 他にカルシウム, ナトリウム, マグネシウムが存在した。果実発育中カリウムは結合酸と同じように変化した。
    6. pHは発育にともない低下し, log[結合酸含量]/[遊離酸含量]と高い相関を示した。
  • すいりにともなう細胞膜ペクチン質の変動
    高野 泰吉
    1966 年 35 巻 1 号 p. 43-48
    発行日: 1966年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    根の肥大またはすいりの進行につれてペクチン含量は減少する。生組織では不溶性ペクチンが大部分を占めるが, そのうちプロトペクチンならびに中葉ペクチンのいずれの分画もすいりにともなつて少なくなる。
    解離剤による溶解性はペクチン酸分子の大ぎさや構造の相異を示すとともに, 細胞膜中における所在の相異も関係しているように思われる。中葉ペクチンはペクチンメチルエステルの形態で存在し, しかもプロトペクチン様の高分子であると推測された。すがはいると中葉にペクチン酸およびその塩の形態で存在する割合が多くなり, 解離剤に難溶で膜の硬化をともなつてくる。
    若い組織や正常組織ではペクチンのエステル化程度が高く, これはまた通道組織の分布密度の高いことを示している。これに対し, すいり組織ではペクチン質は脱エステル化され, 単位面積あたりの通道組織ないし分裂組織の数は少なくなつている。
    ペクチンメチルエステラーゼの活性は正常な組織において高くすいり組織では低い傾向がある。
  • 休眠過程に及ぼす環境要因および化学薬品の影響
    加藤 徹
    1966 年 35 巻 1 号 p. 49-56
    発行日: 1966年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    タマネギの休眠機構を明らかにする足がかりをうるために, 休眠期間および萠芽期について調査するとともに休眠期間に及ぼす環境要因および化学物質の影響について調査した。
    その結果は次のとおりであつた。
    1. タマネギの自発的休眠期間 (Rest period) は収穫後30日間, それにつづいて他発的休眠期間 (Dormant period) が約60日間あることがみとめられた。
    2. 萠芽•発根に最適の温度は17°C内外にあり, それよりも温度が高くなるにつれて萠芽発根が抑制された。
    3. 自発的休眠期間は球の外部肥厚葉除去によつて著しく短縮された。
    4. 球の萠芽期は球の大きさに影響されないが, 日照条件およびチッ素追肥の多少などにもとずく球の大小間には萠芽期の差異がみとめられた。
    また倒伏の早い球は倒伏の遅い球にくらべ萠芽が早かつた。
    5. 貯蔵中の温度と萠芽期との関係をみると, 17°Cがもつとも萠芽しやすく, それよりも高くても低くても萠芽は遅らされた。
    貯蔵中の乾燥, 酸素制限処理は無処理の球より著しく萠芽をおくらせた。
    6. Naphthalene acetic acid 処理は球の萠芽をおくらせた。この傾向は濃度が上昇するにつれて顕著となつたが, 球の外部肥厚葉除去した球では著しい差異はみとめられなかつた。
    Glutathion, Thiamin, Pyridoxin 100ppm溶液の浸積処理によつて球の萠芽が無処理球とくらべて促進されなかつた。
    Gibberellin 処理は自発的休眠中の球に対して効果がみとめられなかつたが, 他発的休眠期間中の球では萠芽が促進された。
    7. 以上から休眠の生理的機構には萠芽, 発根に不適の生理的条件があり, ジャガイモなどの休眠と異なる機構が考えられた。
  • 生育障害について
    増井 正夫, 正木 康夫
    1966 年 35 巻 1 号 p. 57-65
    発行日: 1966年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1. 静岡県磐田市中大原地区にみられたメロンの生育障害は果実の肥大開始期ごろから根がしだいに褐色に変じ, 葉縁が巻き込み, 葉焼けを生じ, しだいに下位葉の黄化, 枯死へと進むのが特徴である。この原因を明らかにする目的で, 中大原地区のメロン栽培業者によつて用いられている掘り抜き井戸の水質, 植物体, 床土の化学分析を行なつた。
    2. 中大原地区の掘り抜き井戸の水は635~2,393ppmの塩分を含み, そのうちNa2O, Clはそれぞれ243~913, 292~1,114ppmを占めている。一方当学部の水道水はわずか35ppmの塩分を含むのみで, そのうちCaOは12ppm, SO4は11ppm, MgOは9ppmを含んでいるにすぎない。中大原地区の掘抜りき井戸の水をかん水した植物体のNa2O, Clおよび床土の電気伝導度は掘り抜ぎ井戸に含まれているNa2O, Cl含量に比例していた。また中大原地区に近い豊浜地区の126の掘り抜き井戸のCl含量を調査した結果, 98点が300ppm以下, 113点が500ppm以下, 2点が1,000ppm以上であつた。以上の結果から本生育障害は海水が希釈された状態で混入している掘り抜き井戸の水をかん水するためにおこるものと思われた。
    3. メロンの生育障害はトウガン台の接木により著しく軽減され, また土壌の物理化学的性質の差異あるいは土壌病害によつてもおこるかもしれないと栽培業者によつていわれてぎた。そこでこの原因を確かめるため, NaClの濃度0, 500ppm, 土壌 (Aは土壌病菌に汚染されていないと思われる水田の未使用土 Bは生育障害が常にみられた中大原地区の水田の未使用土で, 土壌病菌に汚染されていないと考えられる土壌) および接木(トウガン台の接木と接木しないもの) のそれぞれ2種類で, それらの組み合わせにより要因実験を行なつた。
    4. 500ppmNaClのかん水は地上部, 地下部の乾物重, 果実の重量, 成熟日数, 5要素吸収量を減少させるとともに, 果実の外観を低下させ, 土壌の置換性Na, 電気伝導度, 植物体のNa2O吸収量を増加させた。ここでとくに注目すべきことは500-A-M, 500-B-M両区の植物体の生育障害が中大原地区にみられたものと似ていたことであり, 一方トウガン台に接木した500-A-G, 500-B-G両区にはなんら生育障害がみられなかつたことである。
    5. トウガンの接木は地上部, 地下部の乾物重, 果実の重量, 糖度, 成熟日数を著しく増加させ, 外観を良好にした。さらにまた5要素吸収量を著しく増加させたが, Na2Oについては減少させた。
    6. 本実験では, 床土の種類による差は地上部, 地下部の乾物重, 果実の重量, 糖度, 外観にほとんどみられなかつた。
    7. 500ppmNaClのかん水は葉のNa2O, Cl含量を増加させ, K2O, SiO2含量を拮抗的に減少させた。一方トウガン台の接木は葉のK2O, SiO2, Cl, N含量を増加させ, Na2O, CaO, MgO, P2O5含量を減少させたが, 各処理区のそれらの含量は苦土を除ぎ葉になんらそれらの過剰または欠乏症状を示さなかつた。
    8. これらの結果から, メロンの生育障害はNa, Cl の直接の害作用, あるいはそれらによつてひきおこされる植物体のカチオン, アニオン含量のアンバランスによるのではなく, 塩分増加によつてもたらされる高浸透圧によるものと思われる。したがつてメロンの生育障害に対しては塩害を軽減するような手段, たとえば塩害抵抗性のトウガン台を用いるとか, 塩分の少ない水道水を用いるとかの手段がとられるべきである。
  • 開花および草丈伸長に及ぼす温度, 日長, 調節物質散布の影響
    石田 明
    1966 年 35 巻 1 号 p. 66-72
    発行日: 1966年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ミヤコワスレに対する低温ならびにGA処理以前の温度, 日長処理が生育, 開花におよぼす影響を調べ, また花芽分化前後に散布した種々の調節物質が生育, 開花におよぼす影響も調べた。
    1. 低温処理前の10°C3週間処理は生育, 開花を促進した。しかし15°C3週間処理は効果が不じゅうぶんであつた。20°Cおよび25°C3週間処理区はまつたく発蕾しなかつた。日長処理が生育, 開花におよぼす影響は明らかでなかつた。
    2. 花芽分化のために, 9月中旬から10月上旬までの3週間, 10°Cにて処理した後, ロゼット打破の目的で, 10月中旬から11月上旬までの4週間, 1°Cないし2°Cにて処理をなし, ついで11月上旬から12月上旬の問に, 2週間間隔で, 40ppmのGAを, 3回散布すれば, 12月中旬出荷が出来る。
    3. 花芽分化に不適当な温度条件下で散布したNAA(10, 50ppm), TIBA (50, 100ppm), RNA (50, 100ppm) は花成を促進したが, 濃度および回数の影響は明ちかではかつた。一方GAは草丈伸長には顕著な効果を示したが, 花芽分化促進の効果はなかつた。
    4. 花芽分化後, ロゼット打破に不適当な温度条件下で散布したNAA (10, 50ppm), Ethylene chlorohydrin (10,000, 50,000ppm), Kinetin (50, 100ppm) はロゼット打破にはまつたく効果なく, ロゼット状で開花した。しかし, GA (50ppm) 6回散布によつて完全にロゼット打破が出来た。そして開花を促進した。
    5. 花芽分化と草丈伸長とは密接な関係があり, 花芽分化前ではGAも低温処理もロゼット打破には効果なく, GA散布は1時的な節間伸長をもたらすだけで, 散布中止後ふたたび頂部にロゼット葉を形成した。GAおよび低温処理は花芽分化後においてのみロゼット打破ができた。
  • 日長が花芽分化および発達に及ぼす影響
    小西 国義, 稲葉 久仁雄
    1966 年 35 巻 1 号 p. 73-79
    発行日: 1966年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ダリアの花芽形成過程を観察し, さらに, 花芽の分化とその発達とのそれぞれに対する最適日長, 最低限界日長をしらべた。
    1. 花芽形成過程は, 未分化も含めて, つぎの7段階に区分することができた。
    (1) 未分化
    (2) 生長点膨大期
    (3) 総包および小包形成前期 (総包形成期)
    (4) 総包および小包形成後期 (小包形成期)
    (5) 小花形成前期
    (6) 小花形成中期 (花弁形成期)
    (7) 小花形成後期 (花弁伸長期)
    2. 花芽分化は16時間日長でもみられたが, 短日ほど早く分化し, 10時間以下の日長では, 摘心後5日ですでに分化し始めていた。したがつて, ダリアは花芽分化に関して相対的短日植物と考えられる。
    3. 花芽分化後も相対的短日植物としての日長反応を示したが, 長日の抑制的効果は分化前よりも低かつた。
    4. 最適日長は, 分化始めまでは12時間以下であつたが, 花芽形成の段階が進むにしたがつて長日の方へ変わつていき, 結局は13時間日長になつた。
    5. 最低限界日長も, 分化が進むにしたがつて長くなり, 分化開始での8時間以下から, 最終的には12時間となつた。
    6. 好適日長に摘心後40日間おかれたものも, 最低限界以下の日長に移されると, 大部分が開花しなかつた。発蕾後15日以内に限界以下の短日に移されると, ブラインドになるのである。
  • 1•2年草類にあらわれた放射線感受性の差異と変異個体の出現
    斎藤 清
    1966 年 35 巻 1 号 p. 80-88
    発行日: 1966年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1. 放射線照射により変異物の生成をはかり, それらを素材として育種分野の展開を期待するために, 1959年以来1•2年生花卉49種 (100余系統) の乾燥種子を60Co-γ線照射 (21,000~79,000r) して, それらの当代あるいは種類によつては後代をも栽培してその反応を検定した。
    2. 被照射種子からえられる成苗率を無処理の正常な成苗率と対比して算出される相対生存率の多少をもつてそれぞれの材料の放射線感受性判定の基準としてみると, 植物種類のちがいによつてその程度に著しい相違のあることがわかつた(第1図)。その相違をあらわす原因究明に関して, 種子を構成する体内油分量, 染色体の形状, 胚構造の差異など, 種属特有の特徴について若干の考察を紹介した。
    3. まれにあらわれる生存可能な変異個体が示す特異形質の中で育種的利用性を蔵していると思われるものに, 帯化性の発現, 花色の変化, 葉片や花冠の奇形化などが指摘され, それらの概括的な方向について比較的詳細な論議をおこなつた。
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