園芸学会雑誌
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59 巻, 4 号
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  • 井上 弘明, 高橋 文次郎
    1991 年 59 巻 4 号 p. 703-710
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1. 静岡県沼津市西浦久連の山田寿太郎氏園に栽植の‘Zutano’, ‘Bacon’および‘Fuerte’を用い, 1981年から1983年まで3回にわたって, 走査型電子顕微鏡による異常花の形態観察と発生頻度について調査した.
    2. 走査型電子顕微鏡による花器の構造観察から,花器には花被が6片, 9本の雄ずいが外側から1, 2, 3輪に3本ずつ並び, 3輪上の雄ずいの3本に各々1対の蜜腺があり, 4輪には3本の仮雄ずいが認められた. 仮雄ずいを除く9本の雄ずいのやくには各々4個の開やく弁があった.
    3. 異常花における器官異常の発生は, 花被, 雄ずいよりも雌ずいに多く, それは花柱の欠如や短小, 裸の胚珠, および花柱の弯曲など形態的異常と花柱数の量的異常であった.
    4. 雌ずいの異常花発生率は, 各品種とも弯曲花柱の割合がとくに多く, ついで, 裸の胚珠, 花柱数であった. 品種別にみると‘Zutano’は弯曲した花柱をもった花の割合が87.8%, ‘Fuerte’は裸の胚珠のそれが35.6%, ‘Bacon’は花柱数の異常花が11.1%とそれぞれの比率が高かった.
    5. 雄ずい数は, 1-13本の範囲に分布し, 各品種とも8または10本の比率が高かった. 花被数は, 3-11片の範囲に分布し, 7-9片の比率が高かった.
    6. 異常花は, 花芽分化•発達過程における初期•中期に分化する花被, 雄ずいより, 後期に形成される雌ずいの異常によるものが多いので, 冬季の低温が異常花発生に関係あるように思われた.
  • 宇田川 雄二, 伊東 正, 五味 清
    1991 年 59 巻 4 号 p. 711-717
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    8°~23°Cの4水準の根温による養液栽培イチゴ‘麗紅’について, その経日的な養水分吸収の推移と器官別の無機成分含有量に及ぼす影響を検討した.
    1. みかけの吸水量は, 処理直後には高根温ほど多く, その後, 高根温ほど増加が低下した.
    2. 各養分の吸収量は, 根温処理直後には高根温ほど多かった. 8°C区の養分吸収量は, その後5日間に徐々に増加したのに対し, 23°および18°C区は減少した.
    3. 処理11日以降は, 全養分とも18°C区で最も吸収量が高かった. 低根温によってPの吸収が最も抑制さ礼次いでCa, Mg, NO3-N, Kの順で吸収が抑制され, 高根温によってNO3-Nの吸収が最も抑制され, 次いでMg, Ca, K, Pの順で吸収が抑制された.
    4. 植物体の無機成分含有量は18°Cで最も高く, 低根温によってCa, P, K, Mgの含有量が低かった. 23°C区ではNおよびMgの含有量が18°C区に比べて低かった.
  • 門馬 信二, 高田 勝也
    1991 年 59 巻 4 号 p. 719-726
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    5組合せのF1世代におけるイチゴ果実の糖度, 酸度の遺伝ならびに糖度, 酸度と他の形質との関係について検討した.
    1. 糖度の組合せにおける頻度分布では, 各組合せとも大部分のF1個体は両親の分布範囲内にあり, 高糖度間の組合せでは高糖度の個体が多かったが高糖度側で親の範囲を超えた個体は認められなかった.
    2. 糖度では組合せによって多少異なるが, 低糖度形質は部分または不完全優性と考えられた.
    3. 酸度の各組合せにおける頻度分布では, 高酸度×低酸度の組合せの場合は低酸度側に偏った分布を示し, 低酸度間の組合せでは高, 低両側で親の分布を超えた個体が認められた.
    4. 酸度の場合は, 組合せによっては高酸度形質にヘテロシスが認められたが, 低酸度形質が部分または不完全優性と考えられた.
    5. 糖度, 酸度ともに広義の遺伝力は高かった.
    6. 糖度と株当たり収量との間にはr=-0.33**--0.62**, 糖度と単位葉面積当たり収量との間にはr=-0.43**--0.70**の比較的高い相関関係が認められ, 組合せによってその程度は異なるが, 収量の高い個体または単位葉面積当たり収量の高い個体は糖度が低い傾向が認められた.
    7. 酸度の場合は糖酸比との間に高い負の相関関係が認められ, 酸度と株当たり収量および単位葉面積当たり収量との間には, 負の相関関係が認められたが糖度でみられたほど密接ではなかった.
    8. 糖度と収量等との関係からみて糖度が高く食味良好な品種の育成においては, 糖度, 酸度等の果実形質だけでなく, 葉面積, 草丈, 収量などの形質を考慮にいれて選抜する必要があると考えられた.
  • 吉田 裕一, 大井 美知男, 藤本 幸平
    1991 年 59 巻 4 号 p. 727-735
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    大果系イチゴ (Fragaria×ananassa L.)‘愛ベリー’について, 元肥窒素施肥量 (0,10kg/10a) と苗質が収量構成と果実の奇形果発生に及ぼす影響について検討した. 育苗方法はポット育苗 (標高1200, 20m) と無仮植育苗 (苗床窒素量: 0, 6kg/10a) とし, 無仮植育苗区については着地発根時期の異なる2種類の苗 (7月下旬, 8月下旬) を供試し, 合計6種の苗を用いた.
    多窒素施肥 (10kg/10a) によって頂花房の開花期は早くなり, 花数は増加した. しかし, 小果 (20g未満) の割合が増加し, 正常な大果収量と総収量は低下した. ポット苗と無仮植育苗の大苗 (7月下旬発根) では頂花房花数が多く, 小果の割合が高かった. 無仮植育苗の小苗 (8月下旬発根) では正常な大果 (30g以上) 収量が多く, 窒素施肥の影響も小さかった.
    頂花房の花数と30g以上の果実収量, 正常果収量との間に強い負の相関が認められ, 頂花房花数を少なくする条件, すなわち, 生育初期の低窒素栄養, 小苗定植によって正常な大果収量が増加した.
  • 柳 智博, 織田 弥三郎
    1991 年 59 巻 4 号 p. 737-743
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    イチゴの長日条件下における花芽分化特性の違いについて明らかにする目的で, アメリカ, ヨーロッパおよび日本で選抜された栽培イチゴ16品種と F. chiloensisF. virginiana の各2系統を材料に, 実験1では低温未遭遇株を9月から12月の期間に24時間日長条件下のビニルハウス内で栽培し, また実験2では低温遭遇後の株を3月から6月までの期間に24時間日長および自然日長条件のビニルハウス内で栽培し, それぞれ花房の発生を調査した.
    1. ‘Arapahoe’, ‘Ostara’, ‘Rabunda’, ‘Revada’の四季成り4品種は長日条件および低温遭遇の有無にかかわらず, 両実験の調査期間中を通して花房が発生した. したがって, 四季成り品種は24時間の長日条件下でも花芽分化するものと考えられる.
    2. ‘Lassen’, ‘Golerra’, ‘Senaga Sengana’, ‘福羽’, ‘宝交早生’, ‘盛岡16号’および‘秋香’と野生種系統である ‘chiloensis 1’と‘virginiana 2’は各実験の調査期間内において花房の発生が認められなかった.
    3. ‘Aiko’, ‘Kletter’および‘Tioga’と野生種系統の‘virgininana 1’は日長の長短にかかわらず花房が発生したが四季成り品種よりその発生時期が遅れていた. このことから一季成り品種の中に, 長日条件下で花芽分化しやすい特性を持つ品種の存在することが明らかである.
    4. ‘Redgauntlet’は調査期間内において, 自然日長条件下でのみ花房が発生し, 24時間日長条件下では1株も花房が発生しなかった.
    5. ‘chiloensis 2’は調査期間内において24時間日長条件下でのみ花房が発生し, 自然日長条件下では1株も花房が発生しなかった. このため本系統は長日植物である可能性が高い.
  • 田附 明夫, 崎山 亮三
    1991 年 59 巻 4 号 p. 745-750
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1. ガラス室で栽培したキュウリの果実長約9cmの幼果を植物体に付けたまま果実チェンバーに入れ, 果実周囲の温度を10°~35°Cの一定温度とする処理を行ったときの果実の体積生長と呼吸の関係を調べた. 果実体積の測定は1日2回行い, 果実の呼吸速度の測定には赤外線式ガス分析計を用いた.
    2. 果実の体積当たりの呼吸速度 (R/V) は果実の生長に伴って低下した. 果実温度一定の条件ではR/Vに明瞭な日変化は認められなかった. 処理開始1日目のR/Vの日平均値は果実温度に対して直線関係にあり, 果実温度が高いほど高い値をとった. 果実長が約20cmに達するまでの期間について, R/Vの日平均値は果実温度にかかわらず果実体積の相対生長率 (RGR) の日平均値と直線関係にあり (r=0.95), 回帰直線のRGR=0における切片は極めて小さかった.
    3. 果実体積測定時点間の果実の呼吸量 (ΔR) はその期間の体積増加量 (ΔV) と比例関係にあり, 比例定, 数 (13.2mgCO2cm-3) は果実温度にかかわらず一定だった (R2=0.95). これは, キュウリ果実の維持呼吸が相対的に小さいか, 維持呼吸と構成呼吸の相関が高いかのいずれかによると思われた. 果実の転換効率 (Y) をこの比例定数から推定すると86%という高い値が得られた. また, この値は温度によってあまり影響されなかった.
    4. ΔRとΔVの比例関係を用いて呼吸速度による果実の乾物生長の非破壊的な推定を行いうる可能性が示唆された. また, キュウリの果実生長のモデルを作る際には, 果実の呼吸を構成呼吸と維持呼吸に分離しなくともよいと思われた.
    5. 果実の体積生長と呼吸の関係は供試した2品種間で差が認められなかった.
  • 寺林 敏, 滝井 謙, 並木 隆和
    1991 年 59 巻 4 号 p. 751-755
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    トマト (品種: 大型福寿) を水耕栽培し, 8葉期, 第1花房開花期, 果実肥大期の生育段階の異なる植物体について, 昼間 (7時から19時) と夜間 (19時から翌朝7時) 各々の時間帯における養水分の吸収量を測定し, リン吸収を中心に, 各養水分の昼間と夜間の吸収の関係ならびに夜間吸収の意義について検討した.
    養水分の夜間吸収率 (1日の全吸収量に対する夜間の吸収量の割合) は, いずれの養分も第1花房開花期においていちばん高かった. 果実肥大期では, リン以外の養分ならびに水分の夜間吸収率の低下が顕著であった. いずれの生育段階においても, リンの夜間吸収率は他の養分ならびに水分の夜間吸収率よりも高かった. また, 果実肥大期のリンの夜間吸収率は, 水分の著しい夜間吸収率の低下にもかかわらず高い値を示した.
    以上の結果から, 養分の1日の総吸収量に対する夜間の吸収量の割合は, 生育段階の違いによって大きく変化することが明らかになり, 夜間吸収率の値が特定の養分に対する要求度の違いを反映しているものと思われた.
  • 松原 幸子, 木邨 一郎
    1991 年 59 巻 4 号 p. 757-762
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    タマネギの生長点, 葉, りん茎, 根のなかに存在するアブサイシン酸 (ABA) をECDガスクロマトグラフィーで同定した. さらに生育期間中および貯蔵中の, 各器官の内生ABAレベルを測定した. ABAは, いずれの器官にも存在し, 特に生長点部分に高濃度で局在し, 他の器官の約2倍見られた. 生長とともにABA濃度は変化し, 球形成とともに増加が始まり, 倒伏時に最高濃度になった. 貯蔵中に徐々に濃度が低下して, 1か月後に最低になった. その後ほう芽の開始とともに再び濃度の増加が見られた.
    タマネギの無菌小植物を, 植物ホルモンを添加したMS培地で培養したところ, NAAとBA添加により球形成が促進され, ABAやGA3添加では影響を受けないかむしろ抑制的であった.
    これらの結果から, タマネギに関してはABAは直接的な球形成ホルモンではなく, むしろ生長や休眠に深く関与するホルモンであると考えられる.
  • 郭 富常, 藤目 幸擴, 廣瀬 忠彦, 加藤 徹
    1991 年 59 巻 4 号 p. 763-770
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ピーマンの生育, 果実発育ならびに収量に及ぼす, 株当たりの仕立本数と育苗日数の影響を調査した. ビニルハウスへ定植後, 実験Iでは30日育苗と45日育苗の‘カリフォルニアワンダー’,‘新さきがけ’と‘ししとう’を用い, 仕立本数を2本あるいは4本と変えた. 実験IIでは33日育苗の‘栄光’苗を用い, 仕立本数を1, 2, 4本と変えた. いずれも栽植本数を変えることにより, 処理区(9m2)当たりの総主枝数を同じとした.
    仕立本数を少なくして栽植本数を増加するほど, すべての品種について処理区当たりの着果数と収量は増加した.‘カリフォルニアワンダー’と‘新さきがけ’では, 仕立本数の影響は‘ししとう’より顕著であった. 処理区当たりの主枝数が同じであれば,‘カリフォルニアワンダー’を除き, 30日育苗区の着果数と収量は45日育苗区より増加した.
    地上部ならびに地下部の乾物重は, どの品種についても仕立本数が少ないほど増加した. また仕立本数の少ないほど, 30日育苗区の全乾物重はどの品種についても45日育苗区より増加した.
    ‘カリフォルニアワンダー’の2本仕立区を除き, 30日育苗区の太根数は45日育苗区より増加した. どの品種についても収量と太根数あるいは総葉面積との間に, それぞれ高い正の相関が認められた.
    仕立本数が少ないほど, どの品種についても果実肥大は促進され, 正常果率と1果重はともにやや増加した. 各品種とも, 30日育苗区の正常果率と1果重は, 45日育苗区よりやや増加した.
    以上の結果から, 供試した4品種について仕立本数を少なくして栽植本数が増加するほど, 収穫果数が増加して増収になることが示された. これは仕立本数を制限して栽植本数を増加することにより, 光合成が促進されるとともに単位面積当たりの太根数, 乾物重と葉面積が増加したためと考えられる.
  • 宍戸 良洋, 尹 千鍾, 湯橋 勤, 施山 紀男, 今田 成雄
    1991 年 59 巻 4 号 p. 771-779
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    トマトにおける葉の光合成速度および転流•分配の経時的変化と葉の物質生産に対する寄与度について検討するため14CO2を用いて実験を行った.
    1). 第3葉と第7葉 (花房直下葉) の光合成速度は若い葉で高く, 発育するに従って低下した. しかしながら, 1葉当たりの光合成量は葉面積の増加度の高い間は増加し, 葉面積の増加が鈍化すると減少し, 葉の完全展開直前に最大になった.
    2). 各葉の基本的なソース•シンク関係はその葉の近くの非光合成器官 (根や果実) をメインのシンクとし, 作物の生育ステージごとに, シンク間の発育程度の違いによるシンク間の競合と位置関係によって光合成産物の分配パターンは決定されることが示唆された.
    3). 全葉の全光合成量からシンクにおける物質生産に対する各葉の寄与度を計算し, 果実では2~4枚の葉で果実の物質生産の60~80%を賄っていることならびに1枚の葉の最大限の寄与度は30%前後であるものと推定した.
    4). 葉はその葉齢や個体のステージによってその光合成能および各シンクに対する寄与度を変化させていくこと, その変化の最大の要因は果実の肥大量および速度とみられ, そのシンクのメインのソース葉の光合成量と転流率のピークもそのシンクの旺盛な生長時に一致するものと考えれる.
  • 月 徳, 楠本 晋一, 今西 英雄
    1991 年 59 巻 4 号 p. 781-785
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1.‘ブルー•マジック’の年末出荷をめざす促成栽培における切り花品質に及ぼす低温処理法について検討した.
    2. 花茎が長く, 葉の比較的短い切り花を得るためには, 慣行の9°C9週間の低温処理法に比べ, 15°C3週間に引き続き9°C7~8週間の処理を行うことがより適していた.
    3. 上述の方法で低温処理したりん茎を植え付けて, 4週前後に5mMのSTSを葉面散布処理すれば, 花茎が長く, 草姿のよい切り花が得られることが明らかになった.
  • 細木 高志, 瀬尾 光弘, 浜田 守彦, 伊藤 克浩, 稲葉 久仁雄
    1991 年 59 巻 4 号 p. 787-793
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    シャクヤク類の品種の新しい分類基準を作るため, 形態および生態的特徴13項目が計測された. 各項目の数値は5段階に分けられた後, 多変量解析により品種間の類似度が求められ, グループ分けがなされた. また各品種の花弁中のフラボン•フラボノール物質の分布パターンの類似度も求められグループ分けが行われた. Paeonia officinalis に属する品種はいずれの方法でも同一のグループに属した. P. lactiflora の品種は多変量解析の結果から他のグループに分けられ, 日本品種と洋種品種はさらに小グループに分けられた. 植物分類学上, 近縁の P. obovataP. japonica は多変量解析の結果からも, もっとも近い関係となった.
    以上の結果から, 形態および生態的データに基づいた多変量解析や花弁中のフラボン•フラボノール物質の類似度パターンは, 従来の花形だけの分類では不可能であった起源不明のシャクヤク品種の位置づけや近縁関係を知るうえの手がかりになるものと思われる.
  • 土井 元章, 森田 隆史, 武田 恭明, 浅平 端
    1991 年 59 巻 4 号 p. 795-801
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    シュッコンカスミソウの生育開花に関する低温要求性の異なる品種, 系統を用い, 冬期の低温に遭遇した後の株において, シュートの種々の生育段階における高温遭遇がロゼットの形成および奇形花の発生に及ぼす影響について検討した.
    その結果, シュートが栄養生長段階である3月31日から4月10日に昼温30°C (6:00~18:00) 夜温25°Cの高温処理を施すと, 低温要求性の大きい‘パーフェクタ’, ‘ブリストル•フェアリー’20系統では, その後生育, 開花に好適な条件下で栽培してもすべてのシュートがロゼットを形成した. これらの品種, 系統についで低温要求性の大きい‘ダイヤモンド’, ‘ブリストル•フェアリー’03系統においても高温遭遇後は半数のシュートがロゼットを形成した. 一方, 低温要求性の小さい‘フラミンゴ’, ‘レッド•シー’, ‘ブリストル•フェアリー’08系統では, ロゼットを形成することなく, 開花に至った.
    花芽形成開始直後に処理した高温は, 開花時の花茎を短くし, 主茎上の下位節での花芽形成を抑制した以外, 形態的な変化をもたらさなかった.
    頂花における雄ずい形成期である4月30日前後に高温を処理すると, 奇形花が発生した. 奇形花の形態的な観察を行ったところ, 奇形花は, 各小花が雄ずい形成期ごろに高温に遭遇することにより, その後雄ずい原基の細胞分裂活性が長期にわたり維持されるようになり, 雄ずいの花弁化が異常に進み, 花弁数が増加するとともに分裂部を中心に花弁塊が形成される結果, 発生するものと考えられた. また, 高温による奇形花の発生は, 低温要求性の大きい品種, 系統ほど著しい傾向にあった.
    以上の結果より, 低温遭遇後に高温に遭遇すると, 高温が低温の効果を打ち消し, 生理的にロゼット化を誘導する結果, 分裂組織における生育がより栄養生長的となり, 形態的にロゼットや奇形花を形成するようになることが考察された.
  • 江口 壽彦, 大久保 敬, 藤枝 國光, 上本 俊平
    1991 年 59 巻 4 号 p. 803-814
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    Camellia japonica L. 種内における亜種•変種の遺伝的相違を計るために分布全域にわたる12地区について8種類の酵素系のアイソザイム分析を行った.
    全12地区間における遺伝的同一性の平均は0.77で, 他の他家受粉植物の種内における値に比較すると低かった. これは ssp. rusticana が ssp. japonica とは非常に異なる遺伝的変異を有するためと考えられる. 一方, japonica に属する var. hozanensis と var. japonica の間にはわずかな違いしか認められず, 電気泳動的特徴から var. hozanensis は var. japonica からの派生型に当たると推察された. 他のツバキ属植物との比較から次の二つの可能性が示唆された. 1). ssp. rusticana はvar. hozanensis および var. japonica より非常に早い時期に生じた. 2). var. hozanensis および var. japonicaはカメリア節と他節との浸透交雑によって生じた.
  • 森 源治郎, 川畑 久美, 今西 英雄, 坂西 義洋
    1991 年 59 巻 4 号 p. 815-821
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    Leucojum 属のうち, 早春に開花する L. aestivum と8月に開花するL. autumnale について, りん茎の構造, 自然環境下における葉の分化と出葉および花芽の分化と発達の過程を調査した.
    1. りん茎は年1回仮軸分枝を繰り返し, 各仮軸分枝の単位は, L. aestivum では6~8枚, L. autumnaleでは9~10枚の同化葉と, さらにその上の最上位の舌状りん片, 茎頂の花芽で構成されており, 同化葉の葉しょう部は茎軸を全周し, 肥厚して貯蔵器官となっていた.
    2. 茎軸の頂端で総包が分化する頃, 最上同化葉の葉えきにえき芽の形成が認められ, このえき芽が新しい仮軸分枝の単位となった.
    3. 葉の分化は, 両種ともに冬期間停止し, 春から秋にかけてみられた. 展葉はL. aestivum では開花直前の2月上•中旬に, L. autumnale では開花後の9~10月に一斉にみられ, この時展葉してくる葉は, 花芽をもつ茎軸上の上位節の葉と新茎軸上に分化してきた下位節の葉からなっていた. これらの展葉した葉は下位のものから順次枯死し, L. aestivum では5月下旬, L. autumnale では7月中旬にはすべて枯死した.
    4. 花芽分化の開始は L. aestivum では5月中旬, L. autumnale では5月下旬にみられた. その後 L. aestivum では, 6月中•下旬に雌ずいを形成した後10月中旬まで発育の停止がみられ, 花粉形成期に達するのは12月中•下旬となり, 開花は翌年の3月であった. これに対し, L. autumnale では, その後の発達は速やかで, 6月上旬に雌ずい形成期, 7月中•下旬には花粉形成期に達し, 8月上旬には開花に至った. なお両種ともに, 前述の主花序に比べやや遅れて, 副花序が発達するのが認められた.
  • 藤岡 みどり, 加藤 正弘, 柿原 文香, 徳増 智
    1991 年 59 巻 4 号 p. 823-831
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    香料用ゼラニウムから種子稔性を導入し, 種子繁殖系のペラルゴニウムの開発を試みているが, 花色の変異が大きく, 花色の安定化を目標に, 花色発現に関する基礎的調査が必要とされる. 本論文では栽培品種ならびに雑種個体を用い, それらの構成色素を決定するとともに, 色素と花色(色相, 明度) との関係を明らかにした.
    1. Anthocyanidin 色素の分析の結果, pelargonidin (Pg), cyanidin (Cy), peonidin (Pn), delphinidin (Dp), petunidin (Pt), malvidin (Mv)の6種類が認められ, 栽培品種および雑種個体の色素構成は, 以下のような9タイプに分類できた.
    (I) Pg主体(80%以上)
    (II) Pg+Cy+Pn+Mv
    (III) Pg+Pn+Mv(Mv40%以下)
    (IV) Pg+Pn+Mv(Mv40%以上)
    (V) Pg+Cy+Pn+Dp+Pt+Mv(6種類共存型)
    (VI) Cy(微量)+Pn(微量)+Dp+Pt+Mv
    (VII) Dp+Pt+Mv
    (VIII) Mv主体(90%以上)
    (IX) anthocyanidin 未検出 (白色)
    2. Anthocyanidin 色素構成と花色の関係において, 花色に影響を及ぼす最も重要な色素はPgであり, Pg含有率と色相との関係においてr=0.900***の高い正の相関を得た. Dp含有率と色相においてもr=0.858の正の相関を得た. しかしながら, 両含有率のいずれも6種類共存型の系統を含めて計算すると, 色相との相関はくずれた. これに対し, Mv含有率と色相とでは, 6種類共存型の系統を含めてもr=-0.883***の高い負の相関を得ることができた.
    3. 色素量(A)と明度(L*)において, L*=70.38-7.40log Aの半対数式でr=-0.912***の相関指数を得た.
  • 森 源治郎, 川畑 久美, 今西 英雄, 坂西 義洋
    1991 年 59 巻 4 号 p. 833-838
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1. 早春に開花する Leucojum aestivum と8月に開花するL. autumnale について, 花芽の分化•発育に及ぼす温度の影響を, 発育段階ごとに詳しく調べた.
    2. 両種ともに, 花芽の分化開始は10°~30°Cの範囲で認められたが, 適温は20°~25°Cであった. また, 分化開始後雌ずい形成期までの発育適温も20°~25°Cであった.
    3. L. autumnale では, 雌ずい形成期から花粉形成期まで, および花粉形成期から開花期までの適温も20°~25°Cであり, 30°Cでは発育が遅れ, 15°C以下の温度では花芽が発育の途中で枯死した.
    4. L. aestivum では, 雌ずい形成期に達した後の発育適温は10°~15°Cと低くなり, この温度では開花に至るが, 20°C以上では雌ずい形成段階のままで, 発育の停止がみられた. なお, この10°~15°Cの温度は花芽の成熟と花茎の伸長に直接作用するとみなされた.
    5. これらの結果, 雌ずい形成期後開花に至るまでの発育はL. autumnale では20°~25°Cの高温で速やかに進むのに対し, L. aestivum では10°~15°Cの低温を必要とし, しかも緩やかに進むことから, この違いが両者の開花期における著しい差異をもたらしていることが明らかになった.
  • 林 孝洋, 若原 良基, 小西 国義
    1991 年 59 巻 4 号 p. 839-845
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ポインセチアの複合花序の構成と発達を花芽分化から開花まで経時的に調査した.
    1. 限界日長以下の短日になると, まず茎頂部に杯状花序が一つ分化し, その後茎上部の葉のえき芽が発達し杯状花序を構成単位とする複合花序が形成された. その一つ一つをここでは単位複合花序と呼び, 花序発達を調べる基本単位とした.
    2. 単位複合花序における杯状花序と包葉の分化は非常に規則的であった. すなわち, n次の花序軸の頂部にn次の杯状花序が形成されると, 二つのn次包葉のえき芽が発達し, n+1次の二つの杯状花序と四つの包葉を分化した.
    3. 平均的な株において, 分化した杯状花序と包葉の原基は, それぞれ3次目, 2次目から規則的に片方の原基がアボートした.
    4. 原基のアボーションは原基の分化位置と密接な関係があった. 原基は花序軸の頂部に二つずつ岐散花序型で分化するが, 3次前の原基と反発する側の原基が規則的にアボートした. その結果, 単位複合花序は互散花序型の発達をした.
    5. 株のソース/シンク比を変える処理を行った結果, 複合花序に相対的に多くの同化産物が分配されると考えられる条件下で, 複合花序の発達が速く, 花序軸の分岐本数が多くなった.
  • 森 源治郎, 今西 英雄, 坂西 義洋
    1991 年 59 巻 4 号 p. 847-853
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1. Cyrtanthus の自然環境下における生育開花習性を明らかにするとともに, 開花に必要な温度条件および栽培時の温度の効果について調べた.
    2. 1年間に仮軸分枝の繰り返しによって, 約2個の花序が形成された. 1単位の仮軸分枝は下位より1枚の薄膜状葉, 葉しょう部が茎軸を全周する2枚の同化葉, さらに葉しょう部が茎軸を半周する1枚の同化葉によって構成されている.
    3. 形成を開始した花芽は順次発育して雌ずい形成期に達したが, 夏の高温期にこの段階に達した花芽はその後発育を停止し, 11月中•下旬に花粉形成期, 1月上•中旬に開花期に達した.
    4. 雌ずい形成期に達した後, さらに発育して開花に至るためには低温経過を必要とする. この低温を自然低温にたよる場合, 堺市では12月上旬までの低温遭遇を必要とすることが分かった.
    5. 恒温室を用いた実験結果では20°Cでは4週間処理においてもまったく開花しなかった, 10°Cでは3週間, 15°Cでは4週間の処理ですべて開花することが認められた.
    6. 必要な低温条件が満たされた後開花までの発育は10°~25°Cの広い温度範囲で認められたが, 25°Cでは花茎長が短く, 小花数が少なくなる傾向が認められた.
  • 森 源治郎, 中野 圭子, 今西 英雄, 坂西 義洋
    1991 年 59 巻 4 号 p. 855-861
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1. りん茎は年1回仮軸分枝を繰り返し, 各仮軸分枝の単位は8枚の同化葉と茎頂の2~3花序で構成されていた. 同化葉の葉しょう部は茎軸を半周する最上位葉を除き, 他は茎軸を全周し, 肥厚して貯蔵器官となっていた.
    2. 花芽形成の開始は4月下旬~5月上旬にみられ, 主花序は7月上旬に雌ずい形成期, 9月上旬に花粉形成期に達し, 9月下旬に開花期に達した. なお, これらの主花序よりやや遅れて, 1~2の副花序が発達するのが認められた.
    3. 花芽形成開始は10°~30°Cの温度範囲で認められたが, 適温は20°~25°Cであった. また, 花芽形成開始から雌ずい形成期までの発育適温は25°~30°Cであった.
    4. 雌ずい形成期から花粉形成期まで, および花粉形成期から開花期までの発育はそれまでの発育を促した30°Cの高温で抑制され, 適温は20°~25°Cに低下した. 一方, 10°Cの低温では花芽が枯死に至った.
    5. 開花までみた実験において, 株当たり2~3花序を開花させるためには第1花序が雌ずい形成期に達した後も, さらに一定期間高温下におく必要があることが分かった.
    6. 8月中•下旬から30°Cで乾燥貯蔵したりん茎を11月下旬に植え付け, 最低夜温を20°Cに維持した加温室で栽培すると, クリスマス開花が可能になった. しかし, 5°Cでは4週貯蔵したりん茎においても不開花個体が生じた.
  • 水谷 房雄, 廣田 龍司, 天野 勝司, 日野 昭, 門屋 一臣
    1991 年 59 巻 4 号 p. 863-867
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    発育中の日本スモモにおける青酸配糖体の含量とβ-シアノアラニン合成酵素活性の変化を調査した. 発育初期の果肉では低レベルのプルナシンが検出されたが(0.6mg/g dw), 発育とともに検出されなくなった. 同様にβ-シアノアラニン合成酵素活性も最も早い採取日に0.3μmolH2S/g fw/hrであったが, 果実の発育とともに活性は次第に減少した. しかしながら, 成熟期の果肉ではわずかながら活性の上昇が見られた. いっぽう, 種子では生育期間を通じて全青酸配糖体(プルナシン+アミグダリン)含量は75~100mg/g dwと高かった. 幼果の種子にはプルナシンだけが存在し,含量は種子の発育とともに減少し, 7月初旬には検出されなくなった. いっぽう, アミグダリンは6月初旬頃から現れ, 含量はその後急激に増加して7月下旬に最大値に達した(100mg/g dw). プルナシン含量の減少に伴ってアミグダリン含量が増加することは, 前者から後者への転換が行われていることを示すものである. 種子は果肉に比べてβ-シアノアラニン合成酵素活性は高い値を示した. 種子中の活性は発育初期ではほぼ一定の値(5.6~7.6μmolH2S/g fw/hr)で推移したが, さらにアミグダリン含量の増加に伴って高まり, 最大100μmolH2S/g fw/hrに達した.
  • 山内 直樹, 橋永 文男, 伊藤 三郎
    1991 年 59 巻 4 号 p. 869-875
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    カボス(Citrus sphaerocarpa Hort.ex Tanaka)果実のクロロフィル分解経路を明らかにするため, 果実の発育(8月~9月)•貯蔵に伴うクロロフィルおよびクロロフィル分解物, ペルオキシダーゼならびにクロロフィラーゼ活性の変化について検討を行った.
    カボス果実の果皮色は, 発育に伴い徐々に黄化した. ペルオキシダーゼによるクロロフィル分解に関与するフェノール化合物含量は, 果実の発育に伴い増加し, またペルオキシダーゼ活性も同様に増大を示した.
    カボス果実を20°Cに貯蔵すると, 果皮の脱緑に伴いクロロフィル含量の急減が認められた. 高速液体クロマトグラフィーによりクロロフィル分解物を調べたところ, 貯蔵当日の果実において, フェオフィチンa, 10-ハイドロオキシクロロフィルaおよびb, クロロフィリッドaおよびbが検出された. しかしながら, これらの分解物は20°C貯蔵に伴い増加はみられず, 貯蔵50日の黄化した果実ではほとんど検出されなかった. クロロフィルの酸化分解に関与していると考えられるペルオキシダーゼ活性について調べたところ, 20°C貯蔵に伴い活性が増大し, 貯蔵20日で最高の活性を示し, その後減少した。一方, クロロフィラーゼ活性は, 4ならびに20°C貯蔵に伴い, わずかに活性の増大が認められ, その後減少を示した. このように, 20°C貯蔵におけるクロロフィラーゼ活性の変化は, ペルオキシダーゼとは異なり, 顕著な活性の増大は認められなかった.
    以上の結果から, カボスの脱緑に伴い, クロロフィルは, ポルフィリン構造の開環に基づく無色の物質にそのほとんどが直接分解されるものと思われ, その分解にペルオキシダーゼを含む系が関与しているものと推察された.
  • 沢村 正義, 宮崎 智子, 余 小林
    1991 年 59 巻 4 号 p. 877-883
    発行日: 1991年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    緑色ユズ果実の鮮度保持を目的にポリエチレンフィルムの密封包装貯蔵法について検討を行った.
    1. 5°C貯蔵では貯蔵開始後35日目で脱緑が始まっていたが低温障害の発生は110日目でも認められなかった. 一方, 0°C貯蔵では35日目ですべて障害が発生した. ポリエチレンフィルム(LLDPE)の厚さ20μmと30μmでは脱緑度と障害果発生率にほとんど差は認められなかった.
    2. 鮮度保持剤を使用した場合は, 使用しない場合に比べて障害果発生率100%までの到達期間が1~3か月間遅延した. 30°および40°C温水処理および温水無処理果実では3~4か月目で障害の発生が始まったが, 50°C, 2~5分温水浸漬しかつ鮮度保持剤を使用して貯蔵した果実は, 少なくとも6か月間障害の発生が認められなかった. さらに同様の条件での貯蔵果実のa値およびb値は貯蔵開始時の値と有意差がなかった.
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