園芸学会雑誌
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37 巻, 1 号
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  • 葉中カリ, カルシウムおよびマグネシウム含量の季節および年次推移について
    長井 晃四郎, 清藤 盛正, 桜田 哲, 鎌田 長一
    1968 年 37 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 1968年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    青森県りんご試験ほ場において, 毎年Mg欠乏の発生がみられる A Block と発生のみられない C Block の57年生国光を供試し, 同一樹について4年間にわたり葉中K, Ca およびMg含量の季節的消長を調査し, また, 9年間にわたつてこれら葉中成分の年次推移を調査した。これによつて, これら葉中成分の推移とMg欠乏の発生との関係を検討し, あわせて, 果実収量, 降雨量および気温などと葉中成分の関係について検討を行なつた。
    葉中成分の季節的消長をみると, 葉中Kは生育初期に高く次第に低下し, 葉中Caと total cation (K+Ca+Mg乾物100gあたりme) は初期に低く後期にかけて次第に増加する傾向がみられ, いずれもほとんど直線的な増減を示した。これに反し, 葉中Mgは初期に低く中期に増加し, 後期にまた低下する山型の消長を示す点が異なり, この後期の低下は, 健全樹より欠乏樹に早い時期からおきる傾向がみられた。
    1年間におけるこれら葉成分の変動はかなり大きく, その変動係数をみると変動の最も大きいものはCaであり, Kがこれに次ぎ, Mg と total cation の変動はこれらに比べ小さかつた。
    4年間の平均的な消長からすると, 満開80~90日後の期間はA, B両 Block とも葉中Mgの動きが小さくほぼ一定のレベルを維持し, また, 110~130日後の期間は両 Block のMg含量に最も大きな差が認められた。
    次に, 葉中成分の年次推移を1958年から1966年にわたり, 満開後約80日の葉試料について検討した。
    各成分の年次による変動はかなり大きいが, その変動係は一般に季節内のそれより小さく, わずかにMg欠乏のみられる A Block の葉中Mgが大きな年次変動を示したにすぎない。
    葉中Mgの年次変動はこのほ場にみられるMg欠乏の発生状況とかなりよく一致し, また, 県内にみられる欠乏発生状況をかなりよく反映するように思われた。
    果実収量の最大であつた1961年は葉中Kが低く, 葉中Mgは9年間の最高値を示し欠乏の発生も著しく緩和され, 反対に1963年はMgが最低を示し欠乏の発生も強く, 葉中Caは9年間の最高値を, また, Kもかなり高いレベルを示した。
    さらに, 葉中Mgと果実収量, 降雨量および日照時間との相関を検討したが, これらの間に有意性は認められず, いわゆる雨量とMg欠乏の関係は明らかでなかつた。これに反し, 葉中Caと9時気温との間には有意の正の相関がみられる例があり, Caの年次推移に気温が何らかの関係をもつと推察された。
    各年の葉中成分について成分相互の関係をみると, total cation あたりのパーセントで各成分含量を表示した場合, 葉中CaとKおよびCaとMgの間に有意の負の相関がみられ, 年による葉成分の変動には葉中Caが強い影響を与えるものと考えられた。
  • 中川 昌一, ブコバック M. J., 平田 尚美, 黒岡 浩
    1968 年 37 巻 1 号 p. 9-19
    発行日: 1968年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1. リンゴ Wealthy および日本ナシ新世紀の有種子果, ならびにGA7およびGA4処理による単為結実果について, その形態学的差異を調査した。
    ジベレリン処理果は有種子果にくらべて縦径は大きくなるが, 横径は変わりがないかあるいは小さかつた。
    有種子果における皮層組織の厚さは, 果実の基部が頂部および中央部より大きかつたが, ジベレリンによる単為結実果では逆に頂部が中央部および基部より大であつた。有種子果の基部における皮層の増加は, その組織の細胞数と関係があつた。
    リンゴの単為結実果の頂部組織には, 中央部および基部組織より細胞数が多く, また, 細胞も大きかつたが, 日本ナシの単為結実果では頂部組織により大きな細胞がみられた。
    有種子果とジベレリン処理による単為結実果の皮層組織における細胞分裂は, リンゴ果実では開花後3週から4週の間に, 日本ナシ果実では開花後4週から5週の間に停止した。
    2. リンゴと日本ナシの有種子果および単為結実果へ開花後2週間めに果実の側面にジベレリンを処理すると変形果を生じた。このリンゴおよび日本ナシの変形果では, ジベレリンを処理しない側の組織にくらべて処理した側の組織で細胞数は増加し, 細胞も大であつた。この傾向は, 有種子果より単為結実果において顕著であつた。
    日本ナシにおいては, 開花後4, 6および8週間めにGA7を処理したが, いずれの場合も処理しない側にくらべて細胞数も細胞の大きさも増加し, その結果, 皮層組織の厚さは著しく増大した。
    日本ナシにGA3を処理した場合は, 処理時期のいかんにかかわらず変形果を誘起することはできなかつた。
  • 脂肪酸の酸化生成物処理と果実の物質代謝
    平井 重三, 平田 尚美, 堀内 昭作
    1968 年 37 巻 1 号 p. 20-29
    発行日: 1968年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    油の処理適期にアセトアルデヒドおよびエチレンの500ppmをイチジク果実の果頂部に処理し, 成熟に伴う物質代謝の変化を追究した。
    1. アセトアルデヒド処理果実は処理後5日, エチレン処理果実は8日にそれぞれ成熟し, 著しい促進効果がみられた。なお, 成熟時の果実の品質は自然成熟果と大差はなかつた。
    2. アセトアルデヒド処理では果皮の着色10~20%ごろ, 呼吸は climacteric maximum に達し, 以後成熟に伴い低下したが, 成熟時にはふたたび増加した。エチレン処理果実では処理後4日で呼吸の climacteric maximum がみられたが, その後低下した。呼吸量はアセトアルデヒド処理において顕著に高かつた。なお, 呼吸の climacteric maximum 時には, いずれの処理果実も呼吸率が2.0以上の値を示した。
    3. アセトアルデヒド処理果実の還元糖含量は呼吸のclimacteric maximum ごろから急増し, リンゴ酸含量は呼吸の climacteric maximum の直前あるいはその時期から急減した。この傾向は, エチレン処理果実においてもよく類似していた。
    4. アセトアルデヒド処理果実のアセトアルデヒド含量は, 果皮の着色開始期, すなわち, 呼吸の pre-climacteric stage にピークに達し, 成熟時にもふたたび増加した。エチレン処理果実では, 呼吸の climacteric maximum 時にピークを示した。エチルアルコール含量の変化もアセトアルデヒドの場合とよく似ており, その含量は, アセトアルデヒド処理果実が高い傾向にあつた。
    5. アセトアルデヒド処理果実のエチレン含量は果肉が軟化を始める着色50~60%ごろ, すなわち, 呼吸の post-climacteric stage にピークに達し, 以後成熟に伴い減少した。エチレン処理果実では処理開始直後に顕著に高いが, その後減少し, 果実の軟化開始期ごろにふたたび増加した。
    6. アセトアルデヒドおよびエチレン処理果実にはIAA, IBA, IAN 様物質, GA3 様物質および未知の2物質が存在した。生長促進物質の活性は, 両処理区とも果皮の着色期に最高を示したが, 成熟時には低下した。
    7. 油処理によるイチジク果実の成熟促進には脂肪酸の酸化, および糖の無気代謝系から生成されたアセトアルデヒドおよびエチレンが重要な役割を演じていることが明らかにされた。
  • 坂本 辰馬, 奥地 進
    1968 年 37 巻 1 号 p. 30-36
    発行日: 1968年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    温州ミカンの樹体生長, 果実の品質, 葉中の窒素含量に及ぼす窒素の供給時期の影響を調べるため, 4年生の樹を用いて3年間礫耕試験をおこなつた。供試樹は, 最初の1年間は未結実で, つぎの2年間は結実させて栽培した。
    1. 5~10月の期間に窒素の供給量が違つた場合 (40~50, 80~100, 140~160の各 ppm), 供給量に応じて幹周の肥大および新梢の生長が盛んになり, 葉中窒素含量も増大した。また, 果実は1果平均重が大きくなり, 反対に果肉割合が減少し, 果皮の着色が遅れて不良になり, 果汁の可溶性固形物が少なく, 酸は多くなつて甘味比が低くなつた。
    2. 5~6月, 7~8月, 9~10月の各時期に窒素を多量 (200~250ppm) 供給したとき (供給期以外は40~50ppm), 幹周肥大は5~6月>7~8月>9~10月の優劣を示した。新梢の生長には, 未結実のときに影響が強くあらわれ, 5~6月および7~8月の供給がそれぞれの期間における枝葉の伸長を促進するとともに, 次季の枝梢の伸長にまで影響した。
    3. 7~8月の窒素多量供給のときに, 1果平均重が大きくなり, 果肉割合が減少する傾向がみられ, 果皮の着色は9~10月供給のときにとくに遅延した。
    4. 果汁の糖度 (Brix) および可溶性固形物には, 1年だけが5~6月>7~8月>9~10月のような影響を示し, 酸含量は窒素の多量供給が後期になるほど高くなつた。
    5. 葉中の窒素含量には, 多量供給時期の影響が鋭敏に反映したが, 9~10月の供給は5~6月あるいは7~8月に比べて春葉中の窒素含量を著しく高くすることはできなかつた。
    6. 以上の結果から, ミカンの樹体生長には春季から7月にかけての窒素栄養が強く影響するとみられた。果実への影響はどの時期の樹体の窒素栄養が最も密接に関係するか検討しえなかつたが, 9月以降の窒素の効き過ぎが果実の品質に著しく影響する場合があることを認めることができた。
  • 葉の飽和水分不足度より見た Water balance の変化
    鈴木 鉄男, 金子 衛, 鳥潟 博高, 八田 洋章
    1968 年 37 巻 1 号 p. 37-44
    発行日: 1968年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    温州ミカンの水分不足度をあらわす指標として, 葉の飽和水分不足度 (W.S.D.) をとりあげ, その日変化, 季節変化をほ場栽植と鉢植えミカンについて実測し, さらに気象要因, 土壌水分との関係について調査を行なつた。
    1. 夏期における葉のW.S.D.の日変化は, 日の出とともに上昇し, 12時にピークを示し, 以後下降して18時に最低となつた。冬期の日変化は夏期とほぼ同様の傾向を示したが, その動きは小さかつた。
    2. 葉のW.S.D.の季節変化は, 冬期は1月上旬以降の低温と寒風によつて急上昇し, 2月上旬にピークを作り, 以後3月下旬までは次第に下降した。春期は4月中は低い値で経過したが, 5月上旬は春先の乾燥と新しようほう出などの関係で急上昇して一つのピークを作り, その後は6月上旬にかけてやや下降した。夏期は高温, 乾燥とあいまつて7月上旬から8月下旬にかけて高い値を示し, とくに8月上旬は顕著で最高のピークを形成した。秋期は9月中は比較的高い値で経過したが, 10月上旬からは次第に下降した。
    3. 冬半期と夏半期における葉のW.S.D.と各気象要因との相関関係をみたところ, 冬半期のW.S.D.は気温, 地温, 降水量, 飽差とそれぞれ高い負の相関を示し, 夏半期のW.S.D.は気温, 地温, 飽差と高い正の相関を示した。
    4. 秋期から冬期にかけて, 風に当てた場合の葉のW.S.D.の変化をみたところ, 風速が増すにつれてW. S.D.は上昇し, また風に当てた時間が長いほどW.S.D. は上昇した。さらに枝しよう内の蒸騰流の速度は, 風に当てることによつて明らかに大となり, 土壌が乾燥するにつれて流速は低下した。
    5. 土壌含水量の変化と葉のW.S.D.の関係をみた結果, 夏期は両者の間に高い負の相関があり, 曲線回帰方程式によつて葉のW.S.D.から土壌含水量が推測できた。なお, 土壌水分がほ場容水量~水分当量の間にある時はW.S.D.の変化は緩慢であつたが, 水分当量以上に土壌が乾燥するとW.S.D.は次第に上昇し, その後は乾燥にともなつて急上昇した。W.S.D.が8%になると葉に干害徴候があらわれ, 10%に達すると果実の外観にも干害徴候が出始めた。冬期においては土壌含水量とW.S.D.の相関は認められず, 冬期に葉のW.S.D.が上昇するのはむしろ気象要因によるところが大きいようである。
  • リン酸の施用効果について
    湯田 英二, 岡本 茂
    1968 年 37 巻 1 号 p. 45-50
    発行日: 1968年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1. カンキツ幼樹の生長に対するリン酸の肥効を土壌反応との関係においてみるため, リン酸 (過石) の施用量を3段階, 土壌pH値を4段階とし,これらを組み合わせてその影響をみた。
    2. リン酸施用量の多少にかかわらず, 土壌 pH 4~7 の範囲内においては, pH6前後のときに, 新梢伸長および生体重からみた生長量は最もすぐれた。
    3. リン酸施用量の増加に伴い土壌中の有効態リン酸は増加し, その傾向はpH4~5の酸性土壌でとくに著しかつた。
    4. リン酸を施用しても新梢伸長量には影響が現われなかつたが, 全樹体の生体重はそれによつてわずかに増加した。
    5. ただし, リン酸施用量の増加につれて, 全樹体中の不溶性ならびに可溶性の有機態Pおよび無機態Pは増加し, また, 葉中の不溶性N (おもにタンパク態N) および可溶性N, とくに前者が著しく増加した。
    6. したがつて, リン酸施用の効果は, たとえ植物体の生長が外的に現われなくても, その内部でNやPの有機化合物が多量につくられる点にあるようである。
  • 神吉 久遠, 矢島 邦康, 浜口 克己
    1968 年 37 巻 1 号 p. 51-56
    発行日: 1968年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    温州ミカンの異常落葉の実態と原因を明らかにするため現地調査を行ない, つぎのような結果を得た。
    1. 異常落葉にかかつた樹では秋から冬にかけて特有の斑点が発現し, 冬から春にかけて落葉する。また, ほとんどの場合, 根の腐敗が認められる。
    2. 斑点ははじめ褐色斑点が発現し, のちに赤褐色斑点がみられるようになるが, 赤褐色斑点は褐色斑点を中心として, あるいはその周囲に形成されると考えられる。
    3. 異常落葉園では葉中のマンガン含量が高く, 100ppm (対乾物重) 程度のところに発現のレベルがあるようにみられる。
    4. 異常落葉園では土壌の酸性がつよく, 水溶性マンガンが多い。
    土壌の水溶性マンガンはpHと関連が深く, pHの低下がマンガン可給化のおもな要因と考えられる。
    易還元性マンガンについては健全園と異常落葉園との間に差は認められない。
    5. 葉中のマンガン含量は土壌の水溶性マンガン含量と関連があり, 水溶性マンガンが, およそ10ppm以上の園においては葉中のマンガンは100ppm以上となつている。
    6. 一般に施肥量は多いが, とくに異常落葉園においてはチッソとカリについて多肥で, その反面, 石灰質肥料の施用がなされていなかつた傾向がみられる。
    7. 以上のことから, 温州ミカンのこの異常落葉はマンガンの過剰吸収によつて生じたものであり, そのおもな原因としては土壌の酸性化によるマンガンの可給化があげられる。
    土壌の酸性化は施肥法に由来し, また, 多肥が落葉, 根の腐敗などの症状を助長したことと推察される。
  • 岩田 正利, 歌田 明子
    1968 年 37 巻 1 号 p. 57-66
    発行日: 1968年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    戸外での砂耕法によりエダマメ•カンラン•コカブ•ハナヤサイを栽培し, おのおのの生育期間をいくつかの段階に分け, その間の窒素の供給を調節し, 生育•収量に及ぼす影響を明らかにしようとした。
    1. エダマメでは生育前半期に窒素を切ると開花始め•収穫日などがおくれ, とくに開花前2~3週間窒素を切ると収量も低下した。開花後に窒素を切つても影響はみられなかつた。
    2. 秋まきカンランでは外葉が急速に生長する期間(4月上旬~6月上旬) に窒素を切つた各区は外葉の生長が十分でない中に葉球肥大期に入るため葉球の重量がかなり劣つた。葉球が急速に肥大する6月上旬以後ならびに冬期間窒素を切つた区は対照区にくらべ葉球重量に有意差はみられなかつた。
    3. コカブではどの生育段階に窒素を切つても葉•根部とも生育が抑制されたが, 収穫前2週間窒素を切つた区のみ根部の収量は対照区よりむしろ大であつた。
    4. ハナヤサイでは生育後期, とくに収穫前に窒素を切ると花らいの発育が抑制された。
  • 崎山 亮三
    1968 年 37 巻 1 号 p. 67-72
    発行日: 1968年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    灌水•温度•遮光がトマト「福寿2号」の果実の酸含量に及ぼす影響を調査した。植物体はすべてポットで土耕し, 各処理は調査に用いた花房の開花がほぼ終つたころから始め, 果実をすべて収穫するまで行なつた。果実はいずれも着色開始時に採取した。
    1. 1966年の実験では13lの火山灰土をつめたワグナーポットに十分灌水し, 一晩放置した後にその重さを測り, その後毎日この重さからの減少量を求めた。処理はこの減少量を毎日灌水して補う区, 減少量が1.5あるいは2.5kgに達した時に灌水して補う区の3区を設けた。果実の遊離酸•全酸•結合酸•カリの各含量とも2.5kgの減水量に達した時に灌水する区のほうが毎日灌水する区にくらべて高かつた。また遊離酸/全酸の割合には影響がみられなかつた。
    各酸含量ならびにカリ含量を乾物重あたりで示すとこれらの含量には灌水の影響が認められなくなり, したがつて, 灌水量の相違が新鮮重あたりの酸含量に及ぼした影響は果実の水分含有率の変動が関与して生じたものであつた。
    なお灌水量が少ないと果重は減少し, 屈折計示度は高まり, pHやゼラチン状組織重の割合には影響がみられなかつた。
    また1965年の予備試験の結果もほぼ同様であつた。
    2. 植物体をバイオトロン自然光室の20°Cと30°Cの部屋に入れて栽培した。ただし1964年には1日中入れておいたが, 1965年には昼間の8時間のみ入れた。両年の実験とも30°C区は20°C区にくらべて各酸含量ならびにカリ含量が高く, また遊離酸/全酸の割合も高かつた。
    また30°C区は20°C区にくらべて果重は小さく, pHは高かつた。ゼラチン状組織重の割合には温度処理の影響Lがみられなかつた。
    3. クレモナ寒冷しやを用いて無遮光区の水平照度の50%と25%の遮光区を設けた。1965年には遮光の程度と各酸含量あるいはカリ含量の間には一様な関係が認められなかつた。また1966年には遮光処理の影響がみられなかつた。
    果重は遮光の程度が強まると減少し, ゼラチン状組織重の割合は高まつた。またpHと屈折計示度には明らかな影響が認められなかつた。
    なおアルミニウム•フォイルで完全に遮光した果実の発育に伴う酸含量の変化は無遮光の果実の場合と同じパターンを示した。
  • 特に作用性について
    白川 憲夫, 富岡 博実, 須賀 幸雄, 富樫 邦彦
    1968 年 37 巻 1 号 p. 73-78
    発行日: 1968年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    トマト畑で実用化されている選択的除草剤CMMPの作用性を明らかにするため次の検討を行なつた。
    (1) トマト苗令とCMMP感受性との関係は, 苗令が大きくなるほど抵抗性が強く, 苗令が小さいほど感受性は大となるが, 一般に7~8葉期以上で使用すれば薬害を生ずることなく非常にすぐれた除草効力を示す。
    (2) トマトの品種別CMMP感受性は, 供試したひかり, 世界一, ポンデローザ, 福寿2号, ベストオブオール, 粟原間には, とくに感受性の差は認められない。
    (3) 開花期にあるトマトに対してCMMPを処理し経日的に花, 蕾, 果実におよぼす影響を調べたところ, CMMPを処理したいずれの区においても薬害は認められず, かつ収量, 品質においても手取り除草区と差を認めない。
    (4) CMMPの作用力と処理期間中の温度との関係は30°C, 20°Cの高, 低温条件下では明らかに高温条件下が作用力は高まる。
    (5) CMMP処理後の降雨の影響は, 雑草幼苗期での処理の場合は処理後3時間, 生育が進みやや抵抗性を有する雑草に対しては処理後6~24時間無降雨であれば除草効果は十分に期待できる。
    (6) CMMPの作用力と光の intensity との関係は密接で intensity が大なるほど除草効果の発現は強く, かつ早くなる。
    (7) 土壌処理効果および土壌中での残効性については実用的とはいえないが, 明らかにジュウジバナ科植物に対しては効力が認められた。また残効性も処理後20~30日程度認められるが, 本来の使用方法である茎葉処理のほうが, はるかに有効適切である。
  • 交配親和性と雑種育成について (2)
    立花 吉茂, 庵原 遜
    1968 年 37 巻 1 号 p. 79-82
    発行日: 1968年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1. 東洋原産で木本性のフヨウ (H. mutabilis L.) と同属の北米原産の宿根性草本種との交配により, 新しい観賞植物を育成する目的で, 着果率, 種子稔性, 発芽率などを調査した。
    2. 宿根性の草本種, ソコベニアオイ (H. militarisCav.), クサフヨウ (H. moscheutos L.), モミジアオイ(H. coccinens Walt.) などは, 相互交配により高率で着果した。得られた果実は充実した種子多数を含み, 発芽率も高かつた。しかし, フヨウとこれらの諸種との組合わせでは, フヨウを母本にした場合のみ交雑可能で, 着果率, 種子数, F1種子の発芽率も前者に比べて低かつた。
    3. 交配時期が異なるとその成功率に差を生じ, フヨウ×草本種の組合わせは, 開花後半にその成功率が高かつたが, フヨウや宿根性種の自殖および宿根性種相互の組合わせでは, 時期別にほとんど差がみられなかつた。
  • 長日葉で形成される抑制物質の作用
    田中 豊秀
    1968 年 37 巻 1 号 p. 83-88
    発行日: 1968年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1. 前報にひき続き, 秋ギク (銀波) の長日葉が花芽形成におよぼす抑制を調べる目的で, 長日葉の葉位と枚数を異にする部位的短日処理をおこなつた。草たけ約20cm, 展開葉数約22枚の苗を使用した。上位の7枚または3枚の展開葉に短日 (約10時間日長) または長日(約16時間日長) を与え, それらより下位のすべての葉には逆に長日または短日を与えた。
    2. 下位の長日葉の影響。短日葉が7枚の場合は,初期 (15日間) の茎の伸長と葉の分化が, 全葉短日区に比べて, やや小さかつた。発らいまでの日数については長日葉の影響がなかつた。短日葉が3枚の場合は, 長日葉の抑制作用が著しかつた。抑制が葉の分化に対してよりも茎の伸長に対して強かつたために, 程度の軽いロゼット状の生長が認められた。処理開始後82日に至るまで発らいしなかつた。一方, 長日葉を摘除し, 短日葉3枚だけとしたものは発らいした。
    下位の長日葉が生長と花芽形成との両面におよぼす抑制作用は, 長日葉で抑制物質が形成され, それが頂部に転流された結果あらわれたと考えられる。
    3. 上位の長日葉の影響。長日葉が3枚の場合, 初期15日間の茎の伸長と葉の分化が, 全葉短日区に比べて, やや抑制された。しかしそれ以後は逆に促進された。発らいが著しく遅れた。長日葉が7枚の場合は, 長日葉の抑制作用が茎の伸長に対して強くあらわれた。葉の分化に対しては, 初期だけやや抑制した。その結果, 程度の軽いロゼット状の生長が認められた。発らいは, 処理開始後82日に至るまで, 認められなかつた。
    上位の長日葉の花芽形成におよぼす抑制作用は, 長日葉が花成刺激の転流を抑制したためではなく, 長日葉で形成される抑制物質が頂部に転流し, そこで花成刺激の作用を抑制した結果, あらわれたと考えられる。
    4. 秋ギクの花芽形成と生長が, 短日葉で形成される花成刺激と長日葉で形成される抑制物質との, 頂部における量的割合によつて強く影響されると結論した。
  • 脱渋果中のタンニン細胞の顕微鏡的観察
    北川 博敏
    1968 年 37 巻 1 号 p. 89-94
    発行日: 1968年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    天然に樹上で脱渋した甘ガキ, および, 追熟, アルコール, 炭酸ガス, 温湯, はく皮乾燥, γ線照射, 凍結などの方法により脱渋した渋ガキの果実中のタンニン細胞を顕微鏡で観察し, 五つの型に分類した。
    褐変型: 細胞内容が褐変し, 凝固, 収縮しているもので, 褐斑を生ずる甘ガキおよび褐斑を生ずる渋ガキ中に認められた。
    収縮型: 細胞全体が収縮し, 細胞内容は凝固, 収縮したもので, はく皮乾燥した渋ガキ中に認められた。
    凝固型: 細胞内容が単に凝固しただけのもので, 炭酸ガス, 温湯, アルコールなどにより脱渋した渋ガキに多かつた。しかし, はく皮乾燥, 凍結した渋ガキ, 褐斑を生じない甘ガキおよび褐斑を生ずる甘ガキにも認められた。
    分離型: 細胞内容が凝固せずに, 原形質分離をおこしているもので, 追熟, γ線照射した渋ガキおよび褐斑を生じない甘ガキに多かつた。しかし, アルコールで脱渋した渋ガキおよび褐斑を生ずる甘ガキに認められる場合もあつた。
    破裂型: タンニン細胞は破裂し, 細胞内容の1部または全部が細胞外に吐出しているもので, 凍結貯蔵して脱渋した渋ガキ中に認められた。
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