青森県りんご試験ほ場において, 毎年Mg欠乏の発生がみられる A Block と発生のみられない C Block の57年生国光を供試し, 同一樹について4年間にわたり葉中K, Ca およびMg含量の季節的消長を調査し, また, 9年間にわたつてこれら葉中成分の年次推移を調査した。これによつて, これら葉中成分の推移とMg欠乏の発生との関係を検討し, あわせて, 果実収量, 降雨量および気温などと葉中成分の関係について検討を行なつた。
葉中成分の季節的消長をみると, 葉中Kは生育初期に高く次第に低下し, 葉中Caと total cation (K+Ca+Mg乾物100gあたりme) は初期に低く後期にかけて次第に増加する傾向がみられ, いずれもほとんど直線的な増減を示した。これに反し, 葉中Mgは初期に低く中期に増加し, 後期にまた低下する山型の消長を示す点が異なり, この後期の低下は, 健全樹より欠乏樹に早い時期からおきる傾向がみられた。
1年間におけるこれら葉成分の変動はかなり大きく, その変動係数をみると変動の最も大きいものはCaであり, Kがこれに次ぎ, Mg と total cation の変動はこれらに比べ小さかつた。
4年間の平均的な消長からすると, 満開80~90日後の期間はA, B両 Block とも葉中Mgの動きが小さくほぼ一定のレベルを維持し, また, 110~130日後の期間は両 Block のMg含量に最も大きな差が認められた。
次に, 葉中成分の年次推移を1958年から1966年にわたり, 満開後約80日の葉試料について検討した。
各成分の年次による変動はかなり大きいが, その変動係は一般に季節内のそれより小さく, わずかにMg欠乏のみられる A Block の葉中Mgが大きな年次変動を示したにすぎない。
葉中Mgの年次変動はこのほ場にみられるMg欠乏の発生状況とかなりよく一致し, また, 県内にみられる欠乏発生状況をかなりよく反映するように思われた。
果実収量の最大であつた1961年は葉中Kが低く, 葉中Mgは9年間の最高値を示し欠乏の発生も著しく緩和され, 反対に1963年はMgが最低を示し欠乏の発生も強く, 葉中Caは9年間の最高値を, また, Kもかなり高いレベルを示した。
さらに, 葉中Mgと果実収量, 降雨量および日照時間との相関を検討したが, これらの間に有意性は認められず, いわゆる雨量とMg欠乏の関係は明らかでなかつた。これに反し, 葉中Caと9時気温との間には有意の正の相関がみられる例があり, Caの年次推移に気温が何らかの関係をもつと推察された。
各年の葉中成分について成分相互の関係をみると, total cation あたりのパーセントで各成分含量を表示した場合, 葉中CaとKおよびCaとMgの間に有意の負の相関がみられ, 年による葉成分の変動には葉中Caが強い影響を与えるものと考えられた。
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