園芸学会雑誌
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75 巻, 4 号
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原著論文(英文)
  • ロバーニ マフブブ, 伴野 潔, 掛川 真弓
    2006 年 75 巻 4 号 p. 297-305
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/27
    ジャーナル フリー
    マンシュウマメナシ (PB) およびマメナシ(カレリアーナ)(PC) 実生群からそれぞれ選抜したナシわい性台木の 4 系統 (SPRB) と 6 系統 (SPRC) における耐水性の程度を,接ぎ木した‘幸水’と組み合わせて検討した.12週間にわたる長期間の湛水処理では,樹の生存,新梢生育,不定根形成および落葉程度のそれぞれの反応性に基づいて耐水性の程度を調査した.耐水性の程度は種間や系統間で異なっており,PB 種よりも PC 種の方が一般に強かった.しかし,その程度は SPRB の数系統で対照区の PC や SPRC 系統よりも強く,これらの系統では湛水面上部の幹から不定根が発生し,この形態的適応反応と耐水性の程度が密接に関係していた.長期間の 湛水処理実験により,各台木の系統間における耐水性の程度は 1)最も強い (SPRB22),2)極めて強い (SPRB13, SPRB15, PC1, PC2, SPRC15, SPRC20),3)比較的強い (SPRC3, SPRC8),4)弱い(PB 実生,PB4. SPRB1, SPRC5, SPRC13)の 4 つのタイプに分けることができた.30日間の短期間の湛水処理では,PC 種の方が PB 種に比べ,新梢生育,新根発生がともに著しく,細根の TTC 活性が高かった.SPRB 系統では,SPRB15 および SPRB22 の新梢生育と 新根発生が著しかった.短期間と長期間の湛水処理実験の結果から,SPRB15, SPRB22, SPRC15 および SPRC20 がそれぞれ耐水性が強いことが明らかになった.これらの結果から,SPRB 系統の耐水性の強弱には,湛水下での細根の活性が高いことや新根の発生に加え,不定根の発生とその程度が関係することが示唆された.
  • フオン ファム T. M., 一色 司郎, 田代 洋丞
    2006 年 75 巻 4 号 p. 306-311
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/27
    ジャーナル フリー
    ヴィエトナムおよび周辺諸国のシャロット系統の形態,生理および DNA 多型を比較し,系統間の関係を研究した.形態および生理的形質の調査結果から,台湾の系統はヴィエトナムの北部型と類似し,タイ,フィリピン,マレーシアおよびインドネシアの系統はヴィエトナムの南部型と類似していることが実証された.中国(昆明)の系統は,ヴィエトナムの両型の特性を合わせもっていたが,南部型より北部型に類似していた.RAPD 分析の結果,台湾および中国(昆明)の系統と北部型が一つのグループを形成し,タイ,フィリピン,マレーシアおよびインドネシアの系統と南部型がもう一つのグループを形成した.北部型は,独自な特性,限定された分布域およびヴィエトナム北部地域での長い栽培歴をもつことから,ヴィエトナム北部地域で分化したと推測される.さらに,南部型は東南アジアの熱帯圏に広く分布しているシャロット系統の一つの変異系統であると考えられる.
  • 久保 崇, 津呂 正人, 月森 敦之, 静川 幸明, 竹本 哲行, 稲葉 幸司, 塩崎 修志
    2006 年 75 巻 4 号 p. 312-317
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/27
    ジャーナル フリー
    rolC 遺伝子の導入が嵯峨ギク‘小倉錦’の形態形成に及ぼす影響について調査したところ,rolC 遺伝子導入により,舌状花長の減少が認められたものの,多分枝およびわい性といった鉢物に適した形質を付与できることが示された.また,葉片からの不定芽および不定根形成について調査したところ,rolC 遺伝子導入による不定根形成の抑制および不定芽形成の促進が認められた.これらの形態および生理的影響はサイトカイニンの作用に類似しており,rolC 遺伝子導入による内生サイトカイニン量の変化が示唆された.
  • 島田 有紀子, 森 源治郎, 片原 由美恵, 小田 雅行
    2006 年 75 巻 4 号 p. 318-322
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/27
    ジャーナル フリー
    種子繁殖した球根ベゴニア‘クリップス・イエロー’の若い展開葉を葉身基部から放射状に4分割し,種々の用土を詰めた育苗箱に挿した.ロックウールベッドでは,他の用土よりも葉片の生存率が高く,その約半数が不定芽を形成した.4 分割した葉片をさらに上下半分に切り分けると,不定芽形成率は上部葉片よりも下部葉片で高くなった.葉片挿しの時期を変えると,不定芽形成率は 4 月および10月に挿した葉片が 7 月挿しのものより高かった.不定芽形成のための適温は 15~20℃付近にあった.また,不定芽形成には日長よりもむしろ温度が大きな影響をもたらすものと考えられた.
  • 鳴海 貴子, 須藤 理絵, 佐藤 茂
    2006 年 75 巻 4 号 p. 323-327
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/27
    ジャーナル フリー
    カーネーションは花弁の萎れによって花の観賞価値を失う.花弁の萎れは,花弁細胞の構成物質―タンパク質,多糖,脂質,核酸―の分解を伴って起こる.本研究において,カーネーション花弁からヌクレアーゼ (DcNUC1) の cDNA を単離した.カーネーションの老化時に,花弁の DcNUC1 転写産物量は花のエチレン生成とほぼ一緒に増加し,完全に萎れた花弁で最大になった.この結果から DcNUC1 はカーネーション花弁の萎れに関与していることが推察された.
短報(英文)
  • 國賀 武, 津村 哲宏, 松尾 洋一, 松本 亮司
    2006 年 75 巻 4 号 p. 328-330
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/27
    ジャーナル フリー
    カンキツ類のファイトアレキシンであるスコパロン濃度の経時的変化を,8 月および12月に採取した葉と果実に紫外線を照射して比較した.葉でのスコパロン生成量は12月採取分が多かった.一方,‘ユーレカ’レモンを除く 8 月採取の葉においてスコパロン生成量は 100 μg·g−1FW 以下であった.果実では12月に採取した場合スコパロン生成能力が高く,これに対し,生成能力の低い‘ユーレカ’レモン以外のカンキツ類では照射後 2~6 日の間に 100 μg·g−1FW 以上のスコパロンが生成した.一方,8 月に採取するとすべてのカンキツで 30 μg·g−1FW 以下のわずかな生成となった.以上の結果から,カンキツ類の紫外線によるスコパロンの生成能力には品種間および生育時期による差異があり,その生成量の増減も大きく異なることが明らかとなった.
  • 平間 信夫, 水澤 秀雅, 小豆畑 二美夫, 松浦 誠司
    2006 年 75 巻 4 号 p. 331-333
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/27
    ジャーナル フリー
    キュウリのハウス栽培において,ハウスの換気回数を変えて午前中の気温と相対湿度を 29℃・70%と 25℃・55%に調節して,側枝の発生と果実の肥大との間の同化産物の競合を軽減した場合のキュウリの生育と品種間差異について調べた.その結果,開花から収穫までの日数は,いずれの品種においても,29℃・70%区が 25℃・55%区より短くなった.25℃・55%区においても‘パンデックス’は果実の肥大が早い品種であった.以上の結果,果実の肥大は品種の側枝の発生数の多少と関係なく,品種の持つ開花から収穫までの日数として表される果実肥大力が影響していることが明らかになった.
  • 辻田(小倉) 有紀, 大久保 敬
    2006 年 75 巻 4 号 p. 334-336
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/27
    ジャーナル フリー
    熱帯性と温帯性シンビジウムの雑種である Cymbidium Sleeping Beauty × Cym. sinense (Andr.) Willd. のプロトコーム様球体に,温帯性シンビジウムでシュート形成を促進する 3 種類の処理を行った.NH4NO3 と KNO3 をもとの濃度よりそれぞれ 25%と 50%減らした Murashige and Skoog 培地で培養すると PLB からのシュート形成が促進された.AgNO3 を 0.1 mg·L−1 の濃度で添加した MS 培地上で最も高い 77%のシュート形成率が得られた.シュート形成に最適な BA と NAA の組み合わせは BA 10 mg·L−1 と NAA 0.1 mg·L−1 であった.
原著論文(和文)
  • 伊藤 寿, 西川 豊, 前川 哲男, 輪田 健二
    2006 年 75 巻 4 号 p. 337-343
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/27
    ジャーナル フリー
    カキ‘前川次郎’の加温ハウス栽培における最低気温の最適値を明らかにするため,1997~2001年にわたって,10~20℃の範囲で最低温度を変えて生育および果実品質を比較した.暖房開始は 1 月上旬にビニルフィルムを被覆した時点とし,暖房終了は外気の最低気温が暖房機の設定温度を超える時期までとした.被覆ビニルフィルムは,6 月上旬~7 月上旬に除去した.本試験の結果,最低温度は,発芽期および満開期の早晩に影響を及ぼすが,収穫果の品質にはほとんど影響しないと推察された.被覆開始から発芽期までおよび発芽期から満開期までの日数とそれらの期間の最低気温の平均値との関係を,いずれも二次回帰式で表した.これらの回帰式により,最低気温が,被覆開始から発芽期までは 16.5℃,発芽期から満開期までは 16.7℃のときに,それぞれその期間が最も短くなるとの解が得られた.しかし,最低気温がこれらの値からそれぞれ 3℃および 2℃上昇または低下しても,発芽期や満開期の遅延は1日以内であることから,暖房に要するコストを考慮すると,カキ‘前川次郎’のハウス栽培における最低温度は,被覆開始から発芽期までは 13.5℃とし,発芽期以降は 14.7℃とするのが適当であると判断された.
  • 遠藤 昌伸, 切岩 祥和, 糠谷 明
    2006 年 75 巻 4 号 p. 344-349
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/27
    ジャーナル フリー
    ヤシ殻と混合ピート(ピートモス:バーミキュライト:パーライト=6 : 1 : 1)の混合比率を 3 : 7,5 : 5,7 : 3,10 : 0 とした培地を用いてイチゴを養液栽培し,生育,収量,水分生理特性について調査した.マトリックポテンシャルを −1.5 kPa とした培地の三相分布はヤシ殻混合比率と高い相関があり,ヤシ殻混合比率が高くなるにつれ液相率は減少し,気相率は増加した.実験期間を通じたイチゴの可販果収量は,ヤシ殻混合比率が高くなるにつれ減少する傾向が認められたが,この傾向は特に 2~3 月(2 月 3 日~3 月 29 日)における収量低下によるものであった.イチゴの可販果収量と培地の液相率との間には,2~3 月で r = 0.74,全期間で r = 0.69 と高い正の相関がみられた.また,1 月の可販果収量,吸水量,葉の水ポテンシャルは,ヤシ殻混合比率による差はなかったが,他の時期に比べ減少していた.一方,収量差が生じた 2~3 月において,吸水量および気孔コンダクタンスは,ヤシ殻混合比率が高い培地ほど低下していた.以上のことから,イチゴの収量は,着果負担によって根の生育が抑制され吸水能力が低下した場合に,液相率の低い培地で吸水・蒸散が抑制されたため低下したと考えられた.
  • 安 東赫, 池田 英男
    2006 年 75 巻 4 号 p. 350-354
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/07/27
    ジャーナル フリー
    ニラの葉の再生における同化産物の動態や各器官の役割を調べるため,13C をニラに同化させた後に地上部を刈り取った.その後暗条件と明条件で再生させ,葉,りん茎,底盤および根の 13C 含量や分配を調査した.13CO2 同化処理終了時から地上部刈り取りまで,葉での 13C 含量および分配率は減少したが,根では増加した.刈り取り後,葉の再生に伴って,葉での 13C 含量や分配率は増加したが,りん茎や根での 13C 含量は減少した.刈り取り後対照区では,暗黒区に比べて,根での 13C 含量や分配率の減少が小さくなった.特に刈り取り10日後から,13C 含量及び分配率における処理間の差が大きくなった.これらの結果から,葉の光合成によって生成された同化産物は,貯蔵器官であるりん茎と根に転流・蓄積される.また,刈り取り後の葉の再生に必要な同化産物は,りん茎や根から供給されるが,刈り取り約10日後以降からは,再生葉の同化能力の上昇によって,貯蔵器官に対する依存度は低下するものと考えられる.
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