培養液の電気伝導度 (EC) と培地の水ポテンシャル (Ψ
sub) の変動が, ピートバッグとロックウールスラブで生育する施設トマト植物の水関係に及ぼす影響を調査した. ピートバッグに供給した培養液のECを, 蒸発散要求 (PET) に応じて, 1~4dS•m-1の間で変動させた. また, 給液開始時のΨ
subを-5kPaあるいは-9kPaとした. ECの変動はコンピュータを用い, 日射と空気飽差から計算したPETに従って自動的に調節した. ロックウールで生育する植物に三段階 (2.5,4.0,5.5dS•m-1) のEC処理を行った.培地に集積した塩分を除去するために, ピートバッグとロックウールスラブを多量灌水で週一回洗った.多量灌水の前では, 高EC, 多変ECならびに低Ψ
subで生育するトマトの葉の水ポテンシャル (Ψ
L)は対照と比べ低かったが, 圧ポテンシャル (P) は対照のそれに近かった、これは, 溶質の能動的集積による浸透調整に基づくものと考えられた. 多量灌水の後,Ψ
Lは対照のレベルまで回復し, また, Pは, 浸透ポンテンシャル (π) が低かったため, 対照のそれより高くなった. ある任意のΨ
Lの時, 可変EC, 高ECならびに低Ψ
subで生育する植物は, より高い相対含水率を保った. このような条件下のトマトの葉は, 膨潤時水分含量, 細胞質 (浸透活性あり) 水分含量が高く,一方, 細胞間隙 (浸透活性なし) 水分含量ならびに零圧ポテンシャル (初発原形質分離) 時の相対含水率が低かった. 蒸発散要求に応じたピートバッグ内のEC変動は, 浸透調整と膨圧調節をわずかであはるが引き起こした. 多量灌水後の膨圧維持と気孔伝導度ならびに光合成活性の間には, 正の相関が見られた. 以上のことから, トマト植物は, 高ECならびに低Ψ
subに反応して, 内部の水分状態と細胞質, 細胞間隙の水の分配を調節するということと, ECの変動と週一回の多量灌水は塩類ストレスを軽減するだけでなく, 膨圧維持にも有利であることが明らかになった.
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