園芸学会雑誌
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66 巻, 2 号
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  • 伊藤 松雄, 真部 桂
    1997 年 66 巻 2 号 p. 221-228
    発行日: 1997年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    土壌処理除草剤であるDCMU(Diuron)の土中移動性が果樹の薬害に及ぼす影響を検討するために,ブドウ品種'巨峰'(VitisviniferaL.×V.labruscaL.)およびモモ品種'白鳳'(PrunuspersicaBatsch.var.vul-garis3Maxim.)の3年生実生幼木を用いて土壌組成の異なる8ケ所で試験を行なった.DCMUの土中移動性は,それぞれの試験地から採取した土壌サンプルを用いた生物検定によって推定した.除草活性および果樹に対する薬害は土中移動性と比較した.砂壌土におけるDCMUの除草活性は土中移動が増大するにつれて消失した.通常薬量(1.57kga.i./ha)のDCMUの連用ではブドウ,モモともに安全であった.果樹への薬害は4.71kga.i./haのDCMUの連用処理においてのみ顕著に現われた.その薬害は砂質土壌で高く,有機質含量の高い土壌では著しく軽減された.DCMUの土中移動パターンと果樹の薬害には密接な関係が認められた.薬害は,DCMUが緩やかに移動し土壌中に広く分布した場合に認められた.特に,溶脱したDCMUが1ケ月以上17cmを越える深度で分布する場合に顕著であった.従って,DCMUに代表されるような土壌処理除草剤によって生じる果樹の薬害は,一次的にはその土中移動性に起因し,二次的には溶脱した除草剤が果樹の根の周囲に一定期間以上存在することによって生起されるものと考えられた.
  • 尾形 凡生, 藤田 博之, 塩崎 修志, 堀内 昭作, 河瀬 憲次, 加藤 彰宏
    1997 年 66 巻 2 号 p. 229-234
    発行日: 1997年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    AVGがウンシュウミカンの生理落果に及ぼす影響について調査するとともに,果実からのエチレン発生量,エチレンの前駆物質であるACC含量,ならびに果実内ABA,工AA様物質含量を定量し,生理落果との関連を検討した.
    1.AVG処理は33年生'宮川早生'の生理落果の発生を抑制した.収穫果の果実品質には,AVG処理区と対照区の間で差は認められなかった.
    .AVG処理区では,処理後約2週間にわたり対照区に比べて果実からのエチレン発生が抑制され,また,果実内ACC含量は,処理後3週間にわたり対照区に比べて低く推移した.処理4週間後には,AVG処理区と対照区の果実からのエチレン発生量および果実内ACC含量に差はなくなった.
    3.対照区では1次落果発生期の果実内ABA様物質含量が増加したのに対して,AVG処理区のABA様物質含量は処理時と同じレベルに保たれた.果実内IAA様物質含量はAVG処理区では処理後増加し,調査期間を通して対照区に比べて高く推移した.
  • 渡辺 純子, Robert M Pool, 渡辺 和男
    1997 年 66 巻 2 号 p. 235-244
    発行日: 1997年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    LAI 2000 PLANT CANOPY ANALYZERを用い,光学的にブドウ樹の葉面積指数 (Leaf Area Index,LAI) を測定し, これを間接的な葉面積測定方法として評価を行い, 直接的な方法で測定したLAI値と比較した. 1993年度の研究には, 最大限に伸長した'Concord' (V. labrusca) を, 1994年度には, 'Con-cord'および 'Chardonnay' (V. vinifera) を供試し, しかも異なった生長過程で測定の比較を行った.
    ブドウ樹の樹冠は,ギャップフラクション分析を適応する際,葉が無作為に分布するとする仮定に適合しないことがあり,光学的方法を用いた測定には調節が不可欠であった.最も重要なことはレンズの視野の調節であり,葉が無作為に分布している際には,レンズの視野は最大限に拡張する方が正確であった.測定場所,測定の方向と方角,また,レンズの視野の広さの及ぼす正確さへの影響も同時に調べられた.
    アメリカ種の'Concord'では,生育旺盛で樹冠の葉がより無作為に分布するため,ギャップフラクション分析を適応させることが容易であった.これとは逆に,ヨーロッパ種の代表品種である'Chardonnay'は,生育虚弱で,また,毎年行われる強せん定の影響が大きく,葉の分布が非常に偏っており,レンズの視野がより限定されなければならないことがわかった.また,生長期の早い時期は,樹冠が小さく,そのため畝間に存在する広範囲なすきまのため,葉の分布が非常に偏っており,生長の中期または,後期よりも,光学的方法を用いた葉面積の正確な測定がむずかしいことがわかった.
  • マター メベロ, 冨永 茂人, 小崎 格
    1997 年 66 巻 2 号 p. 245-251
    発行日: 1997年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    3種類の植物生長調節剤, GA, 2,4-D, CPPUを単用および混用でポンカンに散布した場合の葉中の炭水化物組成に及ぼす影響について,特に散布時期との関係に注目して調査した.
    散布濃度はGAを200 ppm, 2,4-Dを10 ppm,CPPUを20 ppmとし, 散布時期は満開日と満開後30日とした.
    その結果, GAの満開30日後散布では処理後60日以降に葉汁液中の還元糖 (果糖とブドウ糖) に比較してショ糖の割合が増加し, 処理後120日に葉中の澱粉含量が減少した. GAの2回散布は葉中の炭水化物組成に影響しなかった. 2,4-Dの散布では葉中の糖組成はほとんど変化しなかったが, 結実率は僅かに減少した. CPPUの散布は, 単用および他剤との混用散布とも葉中の総糖含量を増加させたが, 結実率を減少させ, 葉のクロロシスと大幅な落葉を引き起こした.
  • 王 世平, 岡本 五郎, 平野 健
    1997 年 66 巻 2 号 p. 253-259
    発行日: 1997年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    ブドウ'ピオーネ'の根域制限栽培で,根域を地表下に埋め込む方式と,地上に盛土する方式について,地温,土壌水分および樹体の生長,果実の発育を比較した.なお,盛土方式では,盛土の下部をビニールシートで地面と隔離する区としない区を設けた.
    埋込み方式では,4~6月の地温が盛土方式より0.8~1.7°C高かった.また,土壌水分の変動が小さく,灌水回数は盛土•隔離区の約83%,盛土区の約76%と少なかった.埋込み区の樹では,1次および2次新根が盛土の2区より長く,新根のパーオキシダーゼ活性も高かった.開花結実期の葉の窒素含量とクロロフィル含量は埋込み区の方が高く,葉の光合成速度も高かった.その後成熟期までの新梢,副梢の生長は盛土区では不活発であったが,埋込み区では緩やかに持続した.結実は各区とも良好で,果粒の肥大,果皮の着色,果汁のTSSの蓄積と滴定酸の低下は,埋込み区の方が速く進行した.
    以上のように,盛土方式と比べ,埋込み方式の根域制限栽培では根域水分が安定で,かん水回数が少なくてすみ,樹体の生育や果実の成熟も良好である.従って,乾燥地域でのブドウの栽培により適合すると考えられる.
  • 岡本 五郎, 南 洋子, 平野 健
    1997 年 66 巻 2 号 p. 261-265
    発行日: 1997年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    ブドウ'マスカット•オブ•アレキサンドリア'の穂軸肥厚症は,穂軸の師部組織内での異常な細胞分裂によるものであるが,それらの細胞や周囲の組織細胞の中に直径0.1~2μmの顆粒が多数見られる.この顆粒状物質を同定するために,6種類の染色液を用いた組織化学的実験と電子顕微鏡観察を行った.
    直径1~2μmの顆粒のほとんどは,ヨード反応がなく,スダンブラックBによってオレンジ色に染色された.従って,この顆粒はデンプンではなく,ポリフェノールであると考えられる.また,直径0.1-0.5μmの顆粒も存在し,電子顕微鏡下で種々の形態および二重膜構造が見られた.これらは,内部が中空のものが多く,リボゾーム様の小球は確認されなかった.また,ヘマトキシリンなどのタンパク染色剤にも反応しなかった.従って,これらの小顆粒は微生物ではなく,細胞が強いストレスや感染を受けたときに現れる小胞(vesicles)であると考えられる.
  • 壽松木 章, 菊地 亨, 青葉 幸二
    1997 年 66 巻 2 号 p. 267-272
    発行日: 1997年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    ブルーベリー果実の開花期および成熟期におけるエチレン生成が結実および成熟に及ほす影響を検討するため, ハイブッシュブルーベリー'Jersey'の花らいと成熟前果実にACCおよびAOAを浸漬処理した. 開花10日前の花らいにACCを処理すると, エチレン生成は無処理区では生成しない花らい時から急激に高まり, 落花•果を促進した. 無処理区では満開5日後頃にエチレンを生成したが, 落花はほとんど生じなかったことから, あるいき値以上のエチレン生成量で落花•果が促進されることが認められた. 成熟前の果実にACCを処理すると, エチレン生成を高めるとともに成熟を促進した. その結果, 早期収穫率が高まり, 収穫期間が短縮された. エチレン生成抑制剤として処理したAOAは開花期および成熟期とも明確な抑制効果がみられなかった. 以上の結果はエチレン生成の制御により結実量および成熟時期を調節できる可能性を明らかにした.
  • 小原 均, 岡本 敏, 岸田 佳子, 大川 克哉, 松井 弘之, 平田 尚美, 高橋 英吉
    1997 年 66 巻 2 号 p. 273-281
    発行日: 1997年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    エセフォンをキウイフルーツ'ヘイワード'果実に浸漬処理し, 慣行の収穫適期に樹上で成熟果が得られるかどうかを調査した.
    1990年に, エセフォン (200ppm 50%エタノール溶液) の好適処理時期を決定するため, 収穫適期6週前から1週前まで約1週間間隔で処理を行ったところ,4週前および3週前処理で慣行の収穫適期に可食果(糖度約13%, 果肉硬度約0.6~1.2kg/cm2, 酸含量約1.1~1.2%) が得られた. なお, 50%エタノールが樹上成熟に及ぼす影響はほとんど認められなかった.またエセフォン (200ppm) の好適処理時期である収穫適期3週前にエセフォンの処理濃度の影響を検討したところ, 50および100ppm処理では可食果は得られず, 500ppm処理では200ppm処理よりも成熟が早まった.
    1991年にもエセフォン (200ppm 50%エタノール溶液) を同様に処理したところ, どの処理時期でも際立った成熟促進が認められず, 可食果は得られなかった. 両年の実験期間中の気象条件を比較したところ,1991年は気温が低く, 日照時間がかなり少なかったことから, エセフォン処理による樹上成熟は処理後の気温と日照時間に左右されるものと思われた.
  • 山内 直樹, 夏 暁明, 山内 直樹
    1997 年 66 巻 2 号 p. 283-288
    発行日: 1997年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    早生温州ミカン (品種興津早生) フラベドのクロロフィルペルオキシダーゼによるクロロフィル分解に関与するフラボノイドの影響について検討した.
    リン酸緩衝液を用いたフラベド抽出物とクロロフィルの混合物に過酸化水素を添加すると, クロロフィルの分解がみられたが, 加熱処理により酸素失活したものでは分解は認められなかった. フラベド抽出物に含まれるクロロフィラーゼにより形成されたクロロフィリッドも, 過酸化水素添加により分解された、HPLC分析によりフラベド抽出物には主要フラボノイドとしてヘスペリジンとナリルチンが含まれ, 過酸化水素添加によるクロロフィル分解に伴い, ヘスペリジンの減少がみられたが, ナリルチンの減少はほとんどみられなかった.
    エチレン処理 (120ppm, 12時間処理) を行い脱緑を促進した果実のフラベド組織におけるフラボノイド含量を調べたところ, ヘスペリジン含量が20°C貯蔵中脱緑に伴い減少し, 一方, ナリルチン含量はほとんど変化がみられなかった. クロロフィルペルオキシダーゼ活性の変化についてみたところ, エチレン処理による脱緑に伴い増加することがわかった.
    以上の結果から, 早生温州ミカンの脱緑に伴うクロロフィルの分解に, フラベド組織に含まれるヘスペリジンのクロロフィルペルオキシダーゼによる酸化反応が関与しているものと推察した.
  • 小森 貞男, 副島 淳一, 土屋 七郎, 増田 哲男, 別所 英男, 伊藤 祐司
    1997 年 66 巻 2 号 p. 289-295
    発行日: 1997年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    リンゴの交雑親和性については, 一部の品種•系統間で以前から不和合の例が報告されていたが (Einset,1930; Knightら, 1962;吉田ら, 1963;山田ら, 1971;Spiegel-Roy•Alston, 1982), 主要品種間での報告は少ない. しかし近年, 日本で育成されたいくつかの新品種で交雑不和合の報告があり (吉田ら, 1985;鈴木,1989;吉田ら, 1991), 育種を効率的に行う上でこの現象を遺伝的に解明する必要が生じている.
    本試験は, これまでの各種試験において結実率の極めて低かった'きざし'と'ゴールデン•デリシャス'の正逆交雑, および種子親に用いたときのみ結実率が極めて低かったパデュー大学育成の黒星病抵抗性系統HCR6T132について, その不結実の原因を検討した.
    なお, 'きざし'は果樹試験場リンゴ支場とニュージーランド科学産業研究所との共同研究によって育成された極早生品種である.
  • 田中 英樹, 水田 泰徳, 一井 隆夫
    1997 年 66 巻 2 号 p. 297-306
    発行日: 1997年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    耐凍性の弱いナツダイダイ (品種名'川野なつだいだい') および耐凍性の強いユズ (系統名'多田錦') の葉を用いて, 葉の脂質の分析を行い, その季節的変動を調べた.
    カンキツ葉において, 主な構成脂質は, 糖脂質ではモノガラクトシルジグリセリド (MGDG) とジガラクトシルジグリセリド (DGDG), リン脂質ではホスファチジルコリン (PC), ホスファチジルエタノールアミン (PE) およびホスファチジルグリセロール (PG)であった. カンキツ葉の構成脂肪酸は主にパルミチン酸 (16:0), ステアリン酸 (18:0), オレイン酸 (18:1), リノール酸 (18:2) およびリノレン酸 (18:3)であった. 3-トランスヘキサデセン酸 (16:1) はPGに特異的に存在した. MGDGはDGDGに比べて不飽和度 (D. B, I,) が高く, PGはPCおよびPEに比べてD. B. Iが低かった.
    リン脂質 (PCおよびPE) 含量はナツダイダイ, ユズとも, 冬期に高水準を維持した. 一方, 脂質を構成する脂肪酸の不飽和度みると, 糖脂質 (MGDG) においては, 冬期に18:3および18:2組成が上昇し, 高いD. B. I. を示した. また, リン脂質 (PC) においては, 冬期に1812および18:3組成が上昇し, D. B. I.が高まった. また, ユズのリン脂質含量, 糖脂質(MGDG) の18:3組成およびリン脂質 (PC) の18:3組成はナツダイダイよりも高い値を示した.
    ステロール含量はリン脂質と同様に, 冬期に増加した. β-シトステロール組成は冬期に上昇した. β-シトステロール組成はナッダイダイに比べてユズの方が高い値を示した.
  • 張 洪基, 糠谷 明
    1997 年 66 巻 2 号 p. 307-312
    発行日: 1997年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    養液栽培では, 培養液の無機成分の組成と濃度, 培養液施与量を把握することにより, 施与成分量が計算できるため, 作物の成分要求量に応じた肥培管理が可能となる. しかし, 温室メロンのロックウール栽培における成分吸収特性のデータはほとんどないため, 土耕における成分吸収特性 (増井ら, 1968) を参考にしているのが現状である. これまで湛液水耕における温室メロンの無機成分の吸収量や吸収速度, 吸収濃度などの吸収特性については, 籠橋ら (1978) や狩野ら(1981) の詳細な報告があり, メロンを湛液水耕すると果実が大きくなりすぎ, 糖度も上がらないなど, 栽培管理の難しさが指摘されている. これは生育ステージ別要求量に対応した培養液の組成と濃度の管理が確立していないことが一因と考えられる.
    本研究は, 温室メロンのロックウール栽培における生育ステージ別の好適培養液の組成と濃度を確立するための基礎資料を得る目的で, 園試処方の1,2/3,1/3単位の培養液を用い, 異なる生育ステージにおける成分の吸収量, 吸収濃度, 吸収速度の特性および生育を調査するために行った.
  • 王 秀峰, 伊東 正
    1997 年 66 巻 2 号 p. 313-319
    発行日: 1997年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    ホウレンソウ (Spinacia oleracea L. 品種'サンライト')を用い, 収穫前の6~18日に与える補給液のNO3-N濃度またはNO3-Nの欠除が生育, 収量ならびに体内NO3含量に及ぼす影響を検討した.
    収穫前14日間の補給液内NO3-N濃度が6me•liter-1と8me•liter-1の両区において, 地上部生体重, 収量に有意差はなかった. 可食部のNO3含量はこの期間のNO3-N濃度を6me•liter-1に管理した区で, 欧州の秋作の基準値3000ppm以下に低減できた. 栽培終了時のタンク内培養液のNO3-N残留濃度は8me•llter-1区の33.5ppmに対し, 6me•liter-1区で24.8ppmに低下した. 園試処方3/4単位を補給液とし, ある程度の生育を確保したあと, 収穫6日前から補給液のNO3-Nを欠除させた場合, 生育, 収量に評価できる結果が得られ, 体内のNO3含量が700ppm以下に低減できた. 栽培終了時のタンク内NO3-N残留濃度は, 収穫前に補給液のNO3-Nを欠除する期間が長くなるに従って, 著しく低減した.
  • 加納 恭卓, 山辺 守, 石本 兼治
    1997 年 66 巻 2 号 p. 321-329
    発行日: 1997年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    石川県における'加賀太'キュウリの栽培では果実に強い苦味を有するものが多発する.本報では, 苦味果の時期的な発生消長, 着果位置と苦味果発生との関係,葉•果実の加齢ならびに葉中の窒素含量と苦味果発生について調査し, 植物体の栄養生長の強弱と苦味果の発生について考察した.
    1.'加賀太'キュウリの半促成栽培では, 苦味果は4月22日前後に収穫した果実のなかに多発した.第一次側枝に着果した果実に苦味果が多発したが, 第二次側枝では苦味果はまったく認められなかった.
    2.主枝一本仕立て, あるいは第一次側枝一本仕立てとしたいずれの場合でも, 第一次側枝における苦味果発生率のほうが第二次側枝より高かった.第一次側枝の収穫開始時期は, 第二次側枝より約3週間早かった.
    3.本葉の苦味は, 自根の場合もクロダネカボチャに接ぎ木した場合も, 下位節では弱く上位節になるほど強かった.
    4.開花時の果実には苦味は全く認められなかったが, その後果長が25cmぐらいまで苦味果の発生率は高く, 25cm以上になるとほとんど認められなくなった.
    5.苦味系統のほうが無苦味系統より茎および葉の生長が旺盛であった.葉中の全窒素含量は両系統ともほほ伺じであったが, 硝酸イオン含量は苦味系統では無苦味系統の半分以下であった.
    以上より, 齢の進んでいない植物体 (果実が第一次側枝に着果し発育している植物体) あるいは栄養生長が盛んな植物体 (苦味系統) では, 齢の進んだ植物体(果実が第二次側枝に着果し発育している植物体) あるいは栄養生長が低い植物体 (無苦味系統) に比べ,窒素代謝がより活発に作動しているものと推察される.このことが苦味物質のククルビタシンCの植物体各器官における生合成を促進し, その結果苦味果が多発するのではないかと考えられる.
  • 郭 世栄, 橘 昌司
    1997 年 66 巻 2 号 p. 331-337
    発行日: 1997年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    栄養生長と生殖生長のバランスが崩れて過繁茂になりやすい果菜類の湛液水耕での生長調節をDOによって行うためには, 一定レベルの低DOに対する作物の生長および生理的反応を明らかにする必要がある. そこで, トマト'ハウス桃太郎'とキュウリ'シャープI'の幼植物を, DOを1,2,4,8ppmに調節した湛液水耕 (液温は, トマトでは22°Cと30°Cとし, キュウリでは25°Cと33°Cとした) で8日間栽培し, 生育と葉および根の無機成分濃度を調査した. その結果, トマトは, 液温にかかわらず2ppm以下で生育が不良になり, 葉身の含水量や無機成分濃度が低下した. キュウリでも液温が33°Cの場合は2ppm以下で生育が抑制されたが, 25°Cの場合は1ppmでもほぼ正常に生長し,葉身含水率や無機成分濃度も影響を受けなかった. 以上の結果から, 湛液水耕でDOによって栄養生長を調節する場合, トマトでは2ppm前後を目安にすればよいと思われるが, キュウリでは1ppm以下に下げる必要があると判断される.
  • 佐藤 裕, 永井 信
    1997 年 66 巻 2 号 p. 339-345
    発行日: 1997年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    北海道で栽培されている春播きタマネギは都府県で栽培されている秋播き品種と比較すると鱗茎の貯蔵性に優れているが, 硬質で辛味が強く, 用途によっては都府県の秋播き品種よりも劣る. そこで, 本研究では春播き品種の食味品質の改良を試みた.
    1.辛味の客観的評価は, 酵素的に生成されるピルビン酸 (EFPA) 含有量で表すことが可能であることが示された.
    2.春播き品種は, 秋播き品種と比べて, 甲高で硬く, 鱗片葉数が多くて薄かった. 加えてEFPA含有量が多く, 辛味も強かった. 球形指数, 球硬度,EFPA含有量, 鱗片葉数および辛味の強さと4か月貯蔵後の健全球率との間に有意な正の相関が認められ,鱗片葉の厚さと4か月貯蔵後の健全球率との間に有意な負の相関が認められた.
    3.秋播き品種'長生'を育種素材に用い, 数回の自殖と集団採種を経て春播き品種の高貯蔵性と, 秋播き品種の良食味を併せ持つ花粉親系統'CS-3'を育成した.
    4.'CS-3'と雄性不稔系統'2935A'との間のF1雑種は, 従来の春播き品種と同等の高貯蔵性と秋播き品種に近い食味品質をあわせもっていた.
  • 張 菌, 橋永 文男
    1997 年 66 巻 2 号 p. 347-352
    発行日: 1997年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    種子発芽を向上させることは農作物を生産する上で極めて重要である. 従来, 塩類溶液や親水性高分子化合物など高浸透圧液および植物生長調節剤による物理的あるいは化学的処理方法が種子の発芽を向上させるために用いられてきた. しかし, これらの方法は長時間を要し, なかには複雑な毒性評価試験等を必要とするものもあるので, より安全で有効, しかも簡便な処理方法の開発が望まれている.
    古くから, 高電圧環境が植物に及ぼす影響, 人為的な電気刺激が植物の生育や生理機能などに及ぼす影響あるいは植物の電気的特性に関する研究がある. そのほか, 植物に対する電場処理という方法も考えられるが, これに関する報告は少ない. Sidaway•Asprey(1968) は直流電場の下で植物の呼吸が印加電場の極性によって変化し, 特に正よりも負の電場の方が呼吸をより刺激する傾向が見られると報告した. またHart•Schottenfeld (1979) は電場処理中において植物先端からコロナが発生することや葉が枯れることを認め, 過度な刺激は生育にマイナスであると報告した.さらに水耕温室でトマトへ電気刺激を与えると早く収穫でき, しかも収穫量が増すとの報告もある(Yamaguchi•Krueger, 1983).
    最近, 種子の発芽に対する電場の影響に関する研究も見られる. Wheatonら (1971) はトウモロコシおよびダイズの種子を数秒問, 直流正電場あるいは交流電場で処理した結果, これらの種子の50%発芽に到るまでの時間と電場強度との間に負の直線的関係が存在することを指摘した. また近藤•桜内 (1983) はイネ種子の発芽率は印加電圧と付与回数に関係し, 種子に与える単位時間のエネルギー総量の影響を受けると述べている. さらに松尾•坂田 (1994) はニンジン種子を用いて各種電場処理が吸水種子の発芽と初期生育に及ぼす影響について検討した結果, 電場の種類, 強度および処理時間に関係なく, 処理区は対照区に比べて高い発芽率と発芽勢を示したと述べている. これらの研究から, 種子の発芽の向上に電場処理方法を利用できる可能性が十分あると考えられる. しかし, これまでの研究は, 数種類の種子に限られ, また用いられた電場強度の範囲も少なかった. 特に種子を長時間異なる電場強度下で暴露させながら, その発芽力を研究した報告はまだ見当たらない.
    本研究では高圧電場による野菜種子の発芽率を向上させるため, 周波数60Hzの高圧直流正負電場および高圧交流電場を使って, 電場強度18kV•m-1から105kV•m-1までの6段階の電場強度を作り, 断続的処理が数種類の野菜種子の発芽に与える影響を検討した.
  • 薛 恵民, 荒木 肇, 金澤 俊成, 原田 隆, 八鍬 利郎
    1997 年 66 巻 2 号 p. 353-358
    発行日: 1997年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    ニラ (Allium tuberosum Rottler) はネギ属植物であり, 香辛野菜として利用されている. ニラにおいては,アポミクシス性を有するため, 交雑育種による品種改良がほとんど行われておらず, 組織培養を利用した変異の拡大や生物工学的な手法を用いた育種法の導入が必要である.
    近年, ニラにおいてプロトプラストを利用した体細胞雑種の作出に関する研究が行われている (田代ら,1984;川崎ら, 1989;首藤ら, 1990b). プロトプラストの培養では, カルスからの植物体再生系の確立が重要であることが指摘されている. ニラのカルスからの個体再生について, Zeeら (1977) が最初にカルスからのシュート分化に成功した. その後, いくつかの研究成果が報告され, カルスからの不定芽形成には明条件が重要であることやカルスの形態によって再分化率が異なることなどが明らかにされている (首藤ら,1990a;松田•足立, 1993). また, カルスからの不定胚形成も観察されている (松田ら, 1991). しかし,これらの報告ではカルスからの再分化は認められたものの, 再分化率は低く, 安定した植物体再生の培養条件は確立していないのが現状である.そこで, 本研究ではニラの植物体再生系を確立するため, 発芽直後の実生および未熟胚を用いてカルスの誘導および再分化の条件について検討を行った.
  • 徐 会連, Laurent Gauthier, Pierre-Andre Dube, Andre Gosselin
    1997 年 66 巻 2 号 p. 359-370
    発行日: 1997年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    培養液の電気伝導度 (EC) と培地の水ポテンシャル (Ψsub) の変動が, ピートバッグとロックウールスラブで生育する施設トマト植物の水関係に及ぼす影響を調査した. ピートバッグに供給した培養液のECを, 蒸発散要求 (PET) に応じて, 1~4dS•m-1の間で変動させた. また, 給液開始時のΨsubを-5kPaあるいは-9kPaとした. ECの変動はコンピュータを用い, 日射と空気飽差から計算したPETに従って自動的に調節した. ロックウールで生育する植物に三段階 (2.5,4.0,5.5dS•m-1) のEC処理を行った.培地に集積した塩分を除去するために, ピートバッグとロックウールスラブを多量灌水で週一回洗った.多量灌水の前では, 高EC, 多変ECならびに低Ψsubで生育するトマトの葉の水ポテンシャル (ΨL)は対照と比べ低かったが, 圧ポテンシャル (P) は対照のそれに近かった、これは, 溶質の能動的集積による浸透調整に基づくものと考えられた. 多量灌水の後,ΨLは対照のレベルまで回復し, また, Pは, 浸透ポンテンシャル (π) が低かったため, 対照のそれより高くなった. ある任意のΨLの時, 可変EC, 高ECならびに低Ψsubで生育する植物は, より高い相対含水率を保った. このような条件下のトマトの葉は, 膨潤時水分含量, 細胞質 (浸透活性あり) 水分含量が高く,一方, 細胞間隙 (浸透活性なし) 水分含量ならびに零圧ポテンシャル (初発原形質分離) 時の相対含水率が低かった. 蒸発散要求に応じたピートバッグ内のEC変動は, 浸透調整と膨圧調節をわずかであはるが引き起こした. 多量灌水後の膨圧維持と気孔伝導度ならびに光合成活性の間には, 正の相関が見られた. 以上のことから, トマト植物は, 高ECならびに低Ψsubに反応して, 内部の水分状態と細胞質, 細胞間隙の水の分配を調節するということと, ECの変動と週一回の多量灌水は塩類ストレスを軽減するだけでなく, 膨圧維持にも有利であることが明らかになった.
  • 池田 幸弘
    1997 年 66 巻 2 号 p. 371-377
    発行日: 1997年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    ヒメサユリの暖地における周年栽培法を確立するため, 長期低温貯蔵による抑制栽培, 暖地で早掘りしたりん茎の冷蔵処理による早期促成栽培, および自然低温を利用した後期促成栽培について検討した.
    抑制栽培では, りん茎を12月下旬から0°Cで貯蔵し6月下旬から搬出•植え付けを開始して, 7月中旬から12月下旬まで順次に開花させることができた. 夏期の高温期には, 到花日数の短縮と, これに伴う植物体の矮小化やブラスチングの発生が多くなったっが, 昼温25°C夜温15°Cの冷房室で栽培することによりこのような高温による障害は防止され, 切り花の品質が向上した.
    早期促成栽培では9月中旬に早掘りしたりん茎を, 13°C2週間の予冷後0°C12週間の本冷を行うことにより, 2月上旬から開花させることができた. この場合は, 本冷開始時期の花芽分化段階は内花被形成期が適当で, 予冷は花芽分化を促進させる効果が高かった.
    後期促成栽培では, 植え付けたりん茎を2月下旬まで自然低温に遭遇させ, それ以降温室への搬入日を順次遅らせることにより, 4月上旬から自然開花期まで連続的に開花させることができた.
  • 寺田 幹彦, 景山 詳弘, 小西 国義
    1997 年 66 巻 2 号 p. 379-383
    発行日: 1997年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    養液栽培における培養液の窒素濃度がバラの生長と養分吸収に及ぼす影響を調べ, 適正な窒素濃度の範囲ならびに植物体の生長量と窒素吸収量の関係を検討した.
    'ソニア'の挿し木苗を用い, 培養液の窒素濃度を50,100,200ppmとし, 1週間ごとに窒素濃度を補正しながら, 約6ヵ月間にわたり切り花栽培を行った. 植物体を切り花, 整枝により摘除された茎葉と自然離脱した葉 (摘除部), およびその他の部分 (切り下部)の3つに分け, それらの重量を測定して全生長量を調査した.
    実験期間中の全生体重増加量は, 培養液の窒素濃度が50ppmのときに最も多く, 200ppmで少なかった. 切り花収量 (本数および重竜), 切り花の形質も低濃度区ほど優れていた. また, 生体重増加量100g当りの窒素吸収量は, 定濃度区で少なく, 窒素50ppm区では約0.7gであった.
    これらの結果から, バラは培地の窒素濃度を比較的低く維持しながら栽培するのがよいと考えられた.
    全生体重増加量に占める切り花重量の割合は, 最も生育がよかったは50ppm区で47%であった. 従って, 切り花1kg当りの全生体重増加量は2.1kg, そのときの窒素吸収量は15gであった.
  • 宮島 郁夫, 上本 俊平, 坂田 祐介, 有隅 健一
    1997 年 66 巻 2 号 p. 385-391
    発行日: 1997年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    野生ツツジ類のなかで最も花色が豊富な南九州産サタツツジ (Rhododendron sataense Nakai) の花色変異の要因について検討した.
    サタツツジの花色, 花径および花弁のブロッチの変異は, ミヤマキリシマとヤマツツジとの種間交雑と考えられている霧島山系のキリシマツツジのそれとほぼ同程度であった. しかしながら, サタツツジとキリシマツツジとの花弁内フラボノール構成は全く異なっていた. すなわち, 前者の花弁にはメチルフラボノールが含まれていないのに対し, 後者の花弁には高い割合でメチルフラボノールが含まれていた.
    従って, 高隈山系のサタツツジにみられる多彩な花色変異は, ミヤマキリシマとヤマツツジとの自然交雑の結果ではないものと思われた.
  • 細木 高志, 木村 大輔, 長谷川 隆一, 長廻 智美, 西本 香織, 太田 勝巳, 杉山 万里, 春木 和久
    1997 年 66 巻 2 号 p. 393-400
    発行日: 1997年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    RAPD法により14のボタン (Paeonia suffruticosa)品種, キボタン (P. lutea) およびシャクヤク (P. lac-tiflora) 品種および種間交雑5品種の識別を試みた.40種の10merのプライマーを試験した結果, 11種で多型マーカーとして有効な108本のDNAバンドを増幅した. これらのマーカーにより21種•品種が区別でき相互間の類似値が求められた.
    その結果, ボタン品種はシャクヤク品種やキボタンと明らかに区別できた. またボタンとキボタンとの種間交雑品種である'金閣', '金鶏', '金晃'およびシャクヤク×'金晃'の'オリエンタルゴールド'の類似値はボタン品種との中間の値を示した. ボタン品種の内, 江戸時代に静岡県から島根県に導入された獅子頭は, 明治時代に大阪府を起源とする他の品種と比べて類似値が低かった. 親子関係にあるボタン品種は両親または片親と高い類似値を示した. RAPDによる品種の類似関係は形態による分類と部分的に一致したが, 花弁のアントシアニジンによる分類とは一致しなかった.
  • 青山 幹男, 池田 廣, 鈴木 敦, 清水 明美
    1997 年 66 巻 2 号 p. 401-407
    発行日: 1997年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    シオギクとスプレーギクとの交雑実生の染色体数の変異を調査し, 染色体数と頂花径との関連について考察した.
    1.交雑に用いたシオギク3個体のうち1個体とスプレーギク16品種のうち12品種で異数体が観察された.
    2.F1雑種では2n=60+Bから2n=68の変異が見られ, その平均は2n=63.9で七倍性であった.BC1雑種では2n=53から2n=65の変異が見られ, その平均は2n-59.0でおよそ六倍体と七倍体の中間の倍数性であった.
    3.各交雑組み合わせでも染色体数の変異が観察され, その平均値は交雑親の平均染色体数とほぼ一致した.このことから異数性のスプレーギクや七倍性のF1雑種が比較的均等に染色体を配分し著しい不稔性を起こしていないことが推察された.
    4.シオギクの2個体 (保有率67%), スプレーギクの1品種 (同6%), F1雑種の13個体 (同33%)およびBC1雑種の12個体 (同18%) で一次狭窄をもたない小型のB染色体が観察された.B染色体の配分と次代での出現は常染色体と同様に比較的均等に起こり, また稀に新しく生じていた.
    5.スプレーギク品種群, F1雑種個体群およびBC1雑種個体群のいずれの群でも染色体数と頂花径との問で相関が認められなかった.
  • 小役丸 孝俊
    1997 年 66 巻 2 号 p. 409-418
    発行日: 1997年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    4品種 ('古城' '南高' '白王小梅' '白加賀') の青ウメについて, 空気下と3~5%O2•9~10%CO2のCA下25°Cで, 呼吸生理に及ぼすエチレン除去の影響と, さらに'白王小梅'については, 25°Cと10°Cとで, CA貯蔵温度の影響を調べた.
    1.いずれの品種の青ウメ果実も, 空気下ならびにCA下25°Cの貯蔵においては, エチレン除去剤使用時もclimacteric型の呼吸型を示したが, 不使用区に比べてclimacteric rise nsetの時期が遅くなり, onsetからmaximumに達するまでの所要時間も長くなった.この遅延や所要時間の延長は, 空気下よりもCA下で著しく, onset後に残存する最大エチレン濃度の対数値に反比例して大きくなった.
    2.既にclimacteric maximumに近い果実では, 低酸素高二酸化炭素濃度による呼吸の抑制な生じたが,エチレン除去剤の使用によるclimacteric riseの遅延はなかった.
    3.温度を25°Cから10°Cに下げると, '白王小梅'の酸素吸収速度は空気下で1/5に低下し, CA下ではさらに低下した. また10°Cでは, 高濃度二酸化炭素による酸素吸収速度の抑制作用が大きかった.
    4.常温では, 酸素濃度3~5%•二酸化炭素濃度10%前後のガス組成のCAに加えて, エチレン除去剤を使用すると鮮度保持効果が高く, 貯蔵3目間の呼吸量は空気区の2/10~4/10に, 同一ガス組成のエチレン除去剤不使用区の6/10~9/10に低減できることがわかった.
    5.果実の商品性を確実にするためには, 常温流通過程での保存期間な, 4日程度に限定すべきと考えられ, 果実がclimacteric riseを開始する以前に鮮度保持処置を行うべきであると思われた. さらに長期間の鮮度保持を行うには, 10°C, 4~5%O2•8-9%CO2の低温CA貯蔵が効果的と考えられた.
  • 浅尾 俊樹, 大谷 紀之, 遠藤 啓太, 太田 勝巳, 細木 高志
    1997 年 66 巻 2 号 p. 419-421
    発行日: 1997年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    茎頂培養により得たイチゴのin vitroにおける開花および結実の方法について検討した. イチゴを300mlフラスコで培養すると, クラウン径は3mm以上大きくならなかった. 一方, カルチャーボトルでイチゴを培養すると, クラウン径が5mmまで大きくなった.
    一季成り性品種'とよのか'および四季成り性品種'サマーベリー'ともクラウン径約3mmでは出蕾しなかったが, クラウン径約5mmでは出蕾および開花した. 出蕾率は'とよのか'の場合22.2%, 'サマーベリーの場合84.2%であった. 開花率は'とよのか'の場合11.1%, 'サマーベリー'の場合36.8%であった.
    以上より, カルチャーボトルを用いることでin vitroにおけるイチゴの茎頂培養からの開花が可能になり,人工授粉によって果実の結実もみられた.
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