園芸学会雑誌
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60 巻, 4 号
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  • 庄 東紅, 北島 宣, 石田 雅士
    1992 年 60 巻 4 号 p. 747-754
    発行日: 1992年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    本研究はカキ品種'宮崎無核','渡沢','清洲無核','無核次郎'および'無核'の種子形成と染色体数を調査し,種子の発育不全と染色体数との関連を明らかにしようとした.
    1.'宮崎無核','渡沢'の果実からは完全種子は得られなかったが,不完全種子が得られた.また,'清洲無核'の果実からは完全および不完全種子のいずれも得られなかった.一方,'無核次郎'と'無核'の果実には1果当たり平均3個程度の完全種子が含まれていた.
    2.'宮崎無核'の不完全種子には発育程度の異なった胚があり,それらの胚は培養後も発育に差異がみられ,発育不良のものが多かった.これに対し,'無核次郎'の未熟果から採取した胚は培養後の発育は良好であった.このことは,'宮崎無核'の胚の遺伝子型が'無核次郎'のそれとは異なっていることを示した.
    3.'宮崎無核'と'渡沢'の成木の染色体数は2n=135で,培養胚はすべて2n=107~114の範囲にある異数体であった.'無核次郎'と'無核'の成木の染色体数は不明であるが,自然受粉による胚は2n=90であった.これらのことから,'宮崎無核','渡沢'の両品種も,'平核無'と同様,カキの種内倍数体であることが示され,これら無核品種における種子の発育不全は倍数体に基づく染色体数行動の異常と密接に関連しているように思われる.これに対し,'清洲無核'は2n=90であるが種子を形成しない.その原因は倍数性以外によるものと思われる.
  • 尾崎 武, 一井 隆夫
    1992 年 60 巻 4 号 p. 755-761
    発行日: 1992年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    ブドウ'キャンベル•アーリー'を用いて,満開時にエチクロゼート,エセホンの各50ppmおよびNAC1,200ppmの水溶液を全面処理した.処理後,20~24日に果房の小穂切除を加え,摘粒効果および果実の諸形質について調べた.また,各薬剤による脱粒経過を比較した.
    1.エチクロゼート処理により正常果粒数および穂軸1cm当たりの正常果粒数が減少し,小穂切除を加えるとさらに減少した.穂軸1cm当たりの正常果粒数の減少は先端部2~3cmの切除より基部小穂の切除が大きかった.
    2.NACおよびエセホン処理においても明らかな摘粒効果を示した.その効果はエチクロゼートが最も大きく,次にNAC,エセホンの順であった.また,小穂切除により正常果粒数はさらに減少した.
    3.エチクロゼート処理は小穂切除の有無にかかわらず果粒の肥大を促進する傾向を示したが,NACおよびエセホン処理では肥大効果は認められなかった.また,エチクロゼート,NACおよびエセホン処理は糖度に影響を与えなかったが,酸度はNAC処理で増加し,小穗切除により減少する傾向であった.
    4.無処理区の脱粒は処理後9~10日にピークがみられたが,エセホン処理区では処理直後から脱粒が認められ,そのピークは処理後5~6日と最も早かった.NAC処理区は明らかなピークを示さず,処理後5~10日に脱粒がみられた.エチクロゼート処理区の脱粒のピークは処理後5~8日にみちれ,エセホン処理と無処理の中間であった.
    5.以上から,エチクロゼートおよびNACの全面散布を行い,年次により摘粒不足とみられる場合に小穂切除を加えることで着粒数をより安定化できるものと思われる.
  • 田村 文男, 田辺 賢二, 伴野 潔
    1992 年 60 巻 4 号 p. 763-769
    発行日: 1992年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    実験1においてニホンナシ'二十世紀'の葉芽に0時間から1,450時間までの連続した低温処理を行い,休眠の深さ,CO2排出量および内生生長調節物質を調査した.実験2において2年生の'二十世紀'を10月および11月にガラス室に搬入し加温した.これらと露地においたものの花芽を2月に採取し花芽原基とりん片中の遊離型ABAおよび結合型ABA含量を比較した.
    <実験1>1.葉芽の休眠は,低温処理800時間までは深い自発休眠期,800時間から1,350時間までが自発休眠の覚醒期にあたり低温処理1,400時間で自発休眠は打破された.
    2.ABA含量は低温処理800時間まで処理時間に比例して滅少した.低温処理1,200時間にジベレリン様物質含量が急激に増加し,その後サイトカイニン様物質,IAAの順に含量が増加した.CO2排出量は1,000時間から次第に,エチレン生成量は1,250時間に急激に増加した.
    <実験2>1.花芽原基の両タイプのABAとりん片の結合型ABAは露地区で著しく低かった.
    2.りん片の遊離型ABAはどの処理区でも変化はなかった.以上の結果は,ニホンナシの芽の休眠打破は低温に反応しABA含量が低下することが重要であることを示唆している.
  • 井上 宏, 片岡 郁雄
    1992 年 60 巻 4 号 p. 771-776
    発行日: 1992年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    ウンシュウミカンの花芽分化に及ぼす夏秋季の肥料3要素と温度の影響を観察するため,鉢植えのカラタチ台1年生苗木('興津早生')を環境制御室の15。,20.,25°C室および露地で砂耕栽培した.砂耕液のN,P2O5およびK2Oの施用濃度はそれぞれ0または40ppmnとして3要素区と各要素の欠除区を,さらに窒素の40および160ppm区にリン酸の0,40および160ppm区を組合せた区を設けた.12月11日に全供試樹を摘葉し,25°C室に搬入して以後の発芽,発蕾状況かち花芽分化の程度を判定した.
    40ppmの窒素を含んだ肥料処理区は低温区で花蕾発生数が多く,新梢発生数は少なかった.窒素を欠除させた区では発芽率が低下し,花蕾,新梢とも発生が少なかった.葉内P含量が欠乏値(0.1%以下)を示した樹では窒素含量のいかんにかかわらず,花蕾発生数は少なかった.窒素が適量施用された場合(葉内N含量:約3%)にはリン酸が多量に施用されるほど多くの花蕾を発生した.本実験ではカリの影響は明らかにできなかった.
  • 渡辺 慶一, 白戸 一士, 高橋 文次郎
    1992 年 60 巻 4 号 p. 777-784
    発行日: 1992年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    1.キウイフルーツ雌株,雄株品種の花粉形成過程における花粉退化およびタペート細胞の崩壊について比較観察した.
    2.雌株,雄株品種のやく発育の初期,すなわち胞原細胞の形成から花粉母細胞の減数分裂を経て花粉四分子となる過程までは同様に進み,タペートの発達についても特に差異は認められなかった.
    3.雌株品種'ブルーノ'の花粉は四分子直後より退化が始まり,タペート細胞は開花時期になつても退化しないで残存した.
    4.雄株品種'マツア'はほとんどが稔性花粉であった.タペート細胞は四分子から小胞子が遊離した直後より退化し始め,開花時期までに完全に退化消失した.
    5.キウイフルーツの雌株では,花粉発育過程のなかで花粉四分子直後がタペート細胞の崩壊および花粉不稔の発生に重要な時期と考えられた.
    謝辞本報告は佐賀大学教授岩政正男博士のこ校閲を賜った.また,本研究の一部は1987年文部省科学研究費(奨励研究)によって行われた.記して厚く謝意を表する.
  • 山本 雅史, 奥代 直巳, 松本 亮司
    1992 年 60 巻 4 号 p. 785-789
    発行日: 1992年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    カンキツにおけるやくの退化性は,ウンシュウミカンの細胞質を持つ品種を種子親にした場合にのみ出現するとされてきたが,'アンコール'を種子親にし,数品種を花粉親とした交雑実生群においてもやくの退化性を示す実生が出現することが明らかになった.
    'アンコール'を種子親に用いた場合,ポンカンを花粉親とするとやく退化性の実生は出現しなかったが,'ミネオラ','マーコット'および'セミノール'を花粉親にした時には,それぞれ61個体中8個体,43個体中10個体および26個体中7個体はやくが退化していた.清見'×'アンコールレの約半数の実生はやくが退化していた.これらの結果から,やく退化性の遺伝子に関して,ポンカンは優性ホモ,'アンコール','ミネオラ','マーコット'および'セミノール'は,ヘテロであると推定できた.また,'ミネオラ'の遺伝子型は分離比から見て他のヘテロ品種とは異なるのではないかと思われた.
    謝辞本稿のこ校閲をいただいた大阪府立大学教授河瀬憲次博士に感謝の意を表します.
  • 山本 雅史, 奥代 直巳, 松本 亮司
    1992 年 60 巻 4 号 p. 791-797
    発行日: 1992年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    カンキツ交雑実生群に現われるやくの退化については,比較的簡単な遺伝をすること,細胞質が関与している可能性があることなどが示唆されているが,その詳細については明らかでない.そこで,本報告ではやくの退化した5品種を種子親に用いた18組合せ418個体のやくの状態を調査し,やくの退化の遺伝様式について検討を加えた.併せて,着果したものについては含核数についても調査した.
    すべての組合せでやくの退化した実生が現われたが,出現率は組合せにより異なっていた.'ミネオラ'および'ロビンソンを花粉親とした組合せでは花粉が形成された実生が多かったが,それ以外の組合せでは約半数の実生のやくが退化していた.種子数についても組合せの違いにより実生個体での無核果の出現率は異なり,この場合には花粉親の影響も認められた.
    ほとんどの花粉親を用いた組合せでは,やくの退化と花粉形成の比が1:1の分離比に適合した.しかし,'ミネオラ'および'ロビンソンを花粉親とした組合せでは1:1より1:3の方が実際の分離に近かった.このことから,カンキツにおけるやくの退化に関する核内遺伝子について,本報告で用いた花粉親は,ヘテロであること,やくの退化は劣性ホモで発現すること,その遺伝には2遺伝子が関与している可能性が強いことが明らかとなった.
    謝辞本稿を取りまとめるに当たり,ご校閲を頂いた京都府立大学教授石田雅士博士に深謝の意を表します.
  • 高柳 りか, 日高 哲志, 大村 三男
    1992 年 60 巻 4 号 p. 799-804
    発行日: 1992年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    カンキツ交雑実生群に現われるやくの退化については,比較的簡単な遺伝をすること,細胞質が関与している可能性があることなどが示唆されているが,その詳細については明らかでない.そこで,本報告ではやくの退化した5品種を種子親に用いた18組合せ418個体のやくの状態を調査し,やくの退化の遺伝様式について検討を加えた.併せて,着果したものについては含核数についても調査した.
    すべての組合せでやくの退化した実生が現われたが,出現率は組合せにより異なっていた.'ミネオラ'および'ロビンソンを花粉親とした組合せでは花粉が形成された実生が多かったが,それ以外の組合せでは約半数の実生のやくが退化していた.種子数についても組合せの違いにより実生個体での無核果の出現率は異なり,この場合には花粉親の影響も認められた.
    ほとんどの花粉親を用いた組合せでは,やくの退化と花粉形成の比が1:1の分離比に適合した.しかし,'ミネオラ'および'ロビンソンを花粉親とした組合せでは1:1より1:3の方が実際の分離に近かった.このことから,カンキツにおけるやくの退化に関する核内遺伝子について,本報告で用いた花粉親は,ヘテロであること,やくの退化は劣性ホモで発現すること,その遺伝には2遺伝子が関与している可能性が強いことが明らかとなった.
    謝辞本稿を取りまとめるに当たり,ご校閲を頂いた京都府立大学教授石田雅士博士に深謝の意を表します.
  • 山本 末之, 岩崎 直人, 田中 実
    1992 年 60 巻 4 号 p. 805-810
    発行日: 1992年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    6系統の5~7年生の極早生ウンシュウミカンを供試して, 樹勢の強弱と光合成特性ならびに葉の形態との関係について調査し, 系統間における差異について検討した.
    1.葉の厚さおよびさく状組織の厚さは系統間で特に差はなかったが, '橋本早生'で若干薄かった. 気孔密度は田中早生'で多く, '橋本早生'で最も少なかった.
    2.6~7月における光合成速度は'市文早生'および'楠本早生'で高く, またこの間の減少率も小さかった.'田中早生'および'堂脇早生'では減少率が大きく, これらは高温条件下には適していない系統であると考えられた.
    3.光合成速度の季節変化における系統間差は明確ではなく, すべての系統間において9月に最大値を示した後徐々に減少した. しかしながら, 9月以後の減少傾向は'田中早生', '山川早生'および'楠本早生'で比較的緩やかであった. 光合成速度の最大値は'田中早生', '楠本早生', '市文早生'および'山川早生'で高く, '橋本早生'では最も低く推移した.
    4.夏期せん定後の新梢の伸長は'市文早生'および'楠本早生'で旺盛であった. また, '市文早生'では新梢長も長く, 総伸長量も優れていた. '堂脇早生'および'橋本早生'では, 新梢の発生数が少なく総伸長量も小さかった.この傾向は, 6~7月上旬における光合成速度から算出した葉1枚当たりの乾物生産量における差異と同様の傾向を示し, 圃場条件下における光合成速度の高低が樹勢の強弱と関係しているものと考えられた.
  • 田中 敬一, 壽 和夫
    1992 年 60 巻 4 号 p. 811-819
    発行日: 1992年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    ニホングリとチユウゴクグリとの種間雑種およびその後代約200系統の渋皮剥皮性について遺伝解析を行った. 多くの系統の果実はチュウゴクグリを交配すると渋皮剥皮は容易であるがニホングリを交配すると渋皮が剥がれにくくなった. しかし, '366-2' ('68-6' ('傍士360'×'豊多摩早生') ×'林甘栗') の果実はニホングリを交配しても渋皮剥皮が容易であった.帰無仮説を用いて渋皮剥皮性を6タイプに分類した.Eタイプは渋皮がチュウゴクグリと同程度に容易に剥皮できる系統, Dタイプはニホングリのように剥皮できない系統, 1タイプはEタイプとDタイプの中間の系統, S1, S2, S3タイプはキセニアの系統と分類した.交雑系統の渋皮剥皮性を調べた結果, F1間の兄弟交配 (F1×F1) とF1にチュウゴクグリを戻し交配 (F1×チュウゴクグリ) して育成した系統の中に剥皮性の優良な個体が多く認められ, それらはすべてEタイプと分類された.
    剥皮性が優良であったすべての系統の家系親にはチュウゴクグリの'傍士360'と'傍士480'が用いられていた.このことは将来の育種における母本選抜のために有用と考えられた.
  • 福井 博一, 西元 和男, 中村 三夫
    1992 年 60 巻 4 号 p. 821-825
    発行日: 1992年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    カキ95品種とマメガキ, アメリカガキ, リュウキュウマメガキを用い, in vitroでの発根能力を調査した.供試したシュートは, 茎頂培養後窒素成分を1/2にしたMS培地にzeatinを10-5M添加した. 培地で2年間継代培養したもので, 発根処理としてα-naphthylacetamide粉末 (0.4%含有) を処理した. 供試品種のうち, 25品種はまったく発根が認められず, 31品種が30%以下の低い発根性を示した. また, 23品種は40~60%の発根性を示し, 16品種は70%以上の高い発根能力がみられた. 樹勢が強い品種は発根能力が高いものが多かった. 完全渋ガキ (PCA) には発根能力の低いものが多かった. 発根数と根長との関係から供試品種を3群に分類することができた.
  • 塩崎 雄之輔, 菊池 卓郎
    1992 年 60 巻 4 号 p. 827-832
    発行日: 1992年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    リンゴ'ふじ'/マルバカイドウの開心形樹 (栽植距離9m×9m, 栽植密度123本/ha) 12樹について, 5年生から24年生までの20年間にわたって, 収量と葉面積指数, 新梢長等のいくつかの樹体特性について測定を行った. 10年生以降, 樹高は3.5~4.0mに維持され, 樹冠はもっぱら水平方向に拡大した. 樹冠占有面積率および葉面積指数 (LAI) は20年生まで増加を続け, 前者は約70% (1樹当たり約55m2), 後者は約2.0に達し, 以後ほぼ一定になった. 収量 (1ha当たり)は樹冠占有面積率およびLAIの増加に伴って増加した.LAIとそれに対応する収量 (1ha当たり) は, 1.0で約20t, 1.5で約35t, 2.0で55t以上であった. 樹冠占有面積の増加に伴い, 樹冠占有面積当たり収量と単位葉面積当たり収量の増加が認められた. これは樹冠が扁平で樹冠内部に光線がよく透入するように枝が配置されていることに加え, 樹冠占有面積当たりspur数の増加と平均shoot長の減少とが大きく寄与していることが示唆された.
  • 村井 泰広, 堀内 昭作, 松井 弘之, 黒岡 浩
    1992 年 60 巻 4 号 p. 833-837
    発行日: 1992年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    川野なつだいだい'の着果枝と無着果枝の葉および樹皮中の塩 (NaCl+緩衝液) 可溶性タンパク質ならびにアルカリ可溶性タンパク質含量と着花との関連を調査した, 葉および樹皮の塩可溶性タンパク質含量は調査期間中常に無着果枝が着果枝を上回っていた. 一方,アルカリ可溶性タンパク質は着果の有無による差はほとんど認められなかった. 塩可溶性タンパク質のポリアクリルアミド電気泳動のバンドパターンは葉, 樹皮とも, 無着果枝の方が着果枝よりバンド数が多く, また, バンドによっては濃く染色された. 特に, 無着果枝の葉, 樹皮において高分子領域のバンドが着果枝の葉, 樹皮より濃かった.
    着果枝, 無着果枝の樹皮中のジベレリン様活性は9月では着果の有無による差はほとんど認められず, 10月から11月にかけて両者の活性は少しずつ低下した.この間無着果枝の活性より着果枝の活性の方がかなり高かった.
  • 福田 博之, 粟村 光男, 瀧下 文孝, 西山 保直
    1992 年 60 巻 4 号 p. 839-844
    発行日: 1992年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    台木部を地上に高く出して栽植したため衰弱したM.26台'紅玉'樹について, 1980年に土盛り処理を行ったところ, 年とともに樹勢の回復が認められた. その回復状況と樹の乾物生産能を無処理樹と比較した.
    1.土盛り処理によって, 幹周の肥大および収量が高まった. 処理9年目に掘り上げた樹の乾物重量は無処理樹の2倍以上になっていた. また, 地上部では樹冠上部における新梢の生育に大きな差異が認められ,台木部では土盛りした部位から太い根が多数発生して新しい根系を形成し, 下部の古い根系発育はきわめて貧弱であった.
    2.土盛り処理樹では葉面積指数 (LAIα) が2.04であったのに対し, 無処理樹では0.90と著しく低かった.
    3.土盛り区における1樹当たり全乾物生産量 (DM)は無処理区の約2倍であった. 葉 (L), 新梢, 枝幹および根部の乾物生産量も土盛り区で有意に高かった.
    4.葉の乾物生産能 (DM/L) と着果程度 (F/L)との間には, 土盛り樹と無処理樹を込みにした場合も,高い正の相関関係 (r=0.95) が認められた. また, 1果当たり葉面積が大きいほど葉の乾物生産能 (DM/L)は低下した.
    5.穂木部への乾物分配率と着果程度 (F/L) との間には負の相関があり, 着果が多くなるほど枝幹の生育は抑制される傾向があった. この相関関係に対する樹勢の影響は明らかでなかった.
  • 山下 研介, 山口 和典
    1992 年 60 巻 4 号 p. 845-849
    発行日: 1992年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    4Xヒュウガナツにおける花粉形成,花粉管中の核の行動および雌ずい内における花粉管伸長について検鏡調査し,その特性を明らかにした.
    1.4Xヒュウガナツでは,花粉母細胞の約1/4が四倍体ヒュウガナツ花粉の組織学的ならびに生理学的異常 849退化し,減数分裂の異常から1~9分子の小胞子が生じた.その結果,成熟花粉の大きさには大小さまざまなバラツキが見られ,奇形花粉も多く,FDA染色で調べた花粉の稔性は2Xヒュウガナツの花粉に比べ低かった.
    2.人工培地上で花粉を発芽させた場合,4Xヒュウガナツでは,花粉管中に正常なmale germ unitが形成されにくく,調査した発芽花粉中でその44.6%が花粉管中に核が認められなかった.
    3.4Xヒュウガナツ花粉を2Xヒュウガナツ柱頭に受粉すると,受粉9日後には花粉管が花柱最下部から子房内へ侵入していた.
  • 荒木 肇, 石 嶺, 入鍬 利郎
    1992 年 60 巻 4 号 p. 851-857
    発行日: 1992年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    ナガイモ(Dioscorea opposita Thunb.)の茎頂培養において,カルス化による変異の出現を回避した個体再生法と大量増殖法を確立することを目的として,茎頂組織の形態形成に及ぼす培地中のオーキシン,サイトカイニン,窒素量および基本培地の影響について検討した.
    MS培地を基本として,0.1mg.liter-1以下の低濃度のBA添加培地において高い割合でシュート形成が認められた.この場合,NAA濃度が高くなるに従いカルス化が著しくなり,その後に再分化する傾向が認められた.NAA濃度が0.1mg•liter-1程度であれば,基本培地の窒素量を規定濃度の1/10に減じることで,約80%の茎頂がカルスを形成せずに直接シュートに発育した.窒素量を減少させると形成されたシュートの栄養生長が低下する傾向が認められた.基本培地の種類は直接的なシュート形成には大きな影響は認められなかった.BA濃度を高くするとmorphogenicなカルスが形成され,特に1~2mg•liter-1のBAと低濃度のNAAが添加された培地において顕者であった.このカルスは外観が苗条原基に類似し,表面に多数の不定芽が存在して大量増殖への利用が期待されたが,詳しい特性はさらに検討する必要がある.
    Morphogenicなカルスの形成は添加するサイトカイニンにより差異が認められ,BA,ゼアチンおよび2ipが効果的であった,MorphogenicなカルスをMS培地を基本として0.1mg•liter-似下の低濃度のBAとNAAが添加された培地に移植することでシュート形成が認められた.
  • 久保 省三, 嶋田 永生, 岡本 信行
    1992 年 60 巻 4 号 p. 859-867
    発行日: 1992年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    本研究では代表的な果菜類を対象として,窒素の施用量および形態が苗の生育に及ぼす影響を調査し,施用窒素の収支とあわせて適正な窒素施用量および施用形態を検討した.各作物は市販培土に一律に播種し,子葉展開時に3.5号ポリポットに鉢上げして試験を実施した.得られた結果は以下のとおりである.なお,窒素施用量は培土1 liter当たりの施用量で示した.
    1.キュウリ,メロン,スイカ,トマトは窒素250mg,ナス,ピーマンは500mgで最も良好な生育を示した.
    2.500mg以上の窒素多施用による生育の低下は果菜の種類によって異なり,メロン,キュウリ,ピーマンで大きく,スイカ,トマト,ナスで小さかった.
    3.施用窒素のうち,50~100mgの硝酸態窒素が初期から確保された場合に苗の生育は良好であった.また,生育良好な場合の培土飽和浸出液中の硝酸態窒素濃度は育苗期間中ほぼ200ppm前後で推移した.
    4.生育良好な場合の施用窒素の収支は,吸収率25~50%,残存率10~25%,未回収率45~50%であり,施用窒素の多くが溶脱などにより未回収となった.5.溶脱などによる施用窒素の損失は育苗開始1週間園芸用育苗培土に関する研究(第2報) 867の間に特に多く,その後の損失は緩やかであった.
    以上の結果,培土への窒素施用量は培土1 liter当たり200~300mgが適当であり,この範囲で多くの果菜類に適用できると考えられた.また,施用窒素のうち,スターターとして50~100mg程度の硝酸態窒素の施用が望ましいと考えられた.
  • 吉田 裕一, 藤目 幸擴, 中條 利明
    1992 年 60 巻 4 号 p. 869-879
    発行日: 1992年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    大果系イチゴ(Fragaria×ananassa Duch.)'愛ベリー'の花器,特に雌ずいの分化,発育と奇形果発生に対する窒素施与量(0,21,42,84,126mg-N/株•週)と施与開始時期(10月1,11,21,31日,11月10,20日:84mg.N/株•週)の影響について調査した.
    1.花芽発育段階の進行と1番花原基の直径の増加速度は,窒素施与量が21mg以上の処理区間に差は認められなかったが,0mg区ではきわめて遅かった.花芽形成開始後,窒素施与開始時期が早いほど,花床上で分化する雌ずい列数が増加し,花床基部の雌ずいと頂部の雌ずいとの分化時期の違いが大きくなった.その結果,開花時における花床頂部の子房幅,頂部と基部の子房幅の比(T/B比)は小さくなり,果実先端部に不稔種子を伴う奇形果が多発した.
    2.雌ずい分化初期(11月10日)を過ぎれば,多窒素施与の影響は特に小さく,雌ずい列数,T/B比は小さくなった.また,がく片分化期以後(10月21,31日)に窒素施与を開始した場合,奇形果発生は抑制されたことから,雄ずい分化期頃までの多窒素施肥が奇形果発生に強く影響すると考えられる.
    3.受精後の雌ずいの発育には光合成産物の競合も影響していると考えられるが,花床基部と頂部の雌ずいの分化時期の差が大きいことが多窒素施与区における奇形果発生の最も大きな原因であると考えられる.奇形果発生を抑制するためには,この分化時期の差を小さくするために,花芽発育期,特に雄ずい分化期頃までの葉柄中硝酸態窒素濃度を0.10~0.15%(乾物当たり)に制御することが望ましいと考えられる.
    謝辞本論文の作成に当たり,御指導,御助言を賜った元京都大学教授藤本幸平博士に深く感謝致します.
  • 福岡 信之, 加納 恭卓
    1992 年 60 巻 4 号 p. 881-887
    発行日: 1992年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    夏の高温期にダイコンを栽培すると,根部の中心部が縦に空洞となる空洞症が多発する.本研究では,空洞の発生しやすい時期と発生しにくい時期にダイコンを栽培した場合の,根部の生育,根部組織の発達と空洞の発生過程との関係について調査した.
    1.日最高地温は,早播き(7月14日播種)では播種後5日目の37°Cを最高に,50日間25°C以上と高く推移した.一方,遅播き(8月20日播種)は早播きに比べ生育期間中50~8°C低く推移した.
    2.播種時期が遅いと根部の生育,特に生育中期以降の生育が著しく悪かった.
    3.空洞発生根は早播きで多発し,遅播きではまったく認められなかった.
    4.根部中心部の組織を観察してみると,播種時期にかかわらず根部中心部の道管群は基本放射組織と直角方向に2分化したが,早播きでは遅播きに比べ道管の2分化が早くから引き起こされた.早播きでは2分化した道管群問に間隙が認められ,間隙内部にはいくつかの木部柔細胞より大きな突起状の細胞が形成されたが,その形成はごくわずかであった.一方,遅播きでは,間隙の大部分はこれらの大きな細胞で充填されており,間隙は根部の下部にだけ認められた.
    以上より,空洞発生の原因について以下のように推論することができる.早播きは遅播きに比べ,急激な根部の生育に伴う根部中央部の道管群の2分化が早くから引き起こされる.また,2分化した道管群間に形成された間隙は,遅播きでは木部柔細胞より大きな細胞により順次充填されるのに対し,早播きでは間隙内部への細胞増生が高地温により抑制される,その結果,早播きでは間隙が空洞へと発達するが,遅播きでは空洞へと発達しないものと思われる.
  • 柳 智博, 織田 弥三郎
    1992 年 60 巻 4 号 p. 889-895
    発行日: 1992年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    栽培イチゴの四季成り現象が起こる理由を解明する目的で,四季成り品種('Ostara'と'Rabunda'),一季成り品種('宝交早生'と'麗紅'),中間性品種('Aiko'と'Klet•ter Erdbeere Hummi')の夏季における花房とランナーの発生に及ぼす冬季の低温前歴ならびに夏季の温度条件の影響について検討した.すなわち,1986年11月から翌年3月上旬までの期間,供試株に低温処理(1°Cの株冷蔵)あるいは加温処理(10°C以上の温室内で栽培)を行い,大阪府立大学の露地条件下で栽培した後,1987年5月に高温地(大阪府立大学),中温地(大阪府能勢町)および涼温地(和歌山県護摩壇山)に移植して栽培を続けた.同年の5月から10月まで,現存花房数とランナー発生数について調査を行った.
    1.四季成り品種の'Ostara'と'Rabunda'は,冬季の温度処理および夏季の栽培地の違いによらず夏季におけるランナー発生が乏しく,また連続的に花房が発生した.
  • 宍戸 良洋, 湯橋 勤, 施山 紀男, 今田 成雄
    1992 年 60 巻 4 号 p. 897-903
    発行日: 1992年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    メロンにおいて,葉位および灌水量の違いが光合成産物の転流•分配に及ぼす影響を調査した.
    1.メロン果実の肥大は収穫期まで持続し,果実以外の部位の乾物重の増加はほとんど認められなかった.すなわち,これらの期間,果実は果実着生節葉に対するメイン•シンクとなっていた.
    2.果実への光合成産物の蓄積に対する各葉位葉の役割を見ると,交配後43日では,着果側枝上の葉の転流率および果実への分配率が最も高く,次いでその着果側枝着生節の葉で高くなっており,果実近辺の葉の果実肥大への寄与が高いものと推定された.また,果実から離れた葉でも光合成産物の分配は主に果実へ行われているが,根や茎などへも行われ,植物体各部位の生長および維持に対する葉位間の役割分担の存在が認められた.
    3.収穫前20日から,乾燥区ではpF2.3のときに300ml,標準区ではpF1.8のときに600mlおよび多湿区ではpF1.5のときに800mlずつ灌水してポットの水分状態を変えた場合,乾燥区と標準区では処理10日後に処理直前と比べ転流率の増加が認められ,その後低下した.多湿区では転流率の増加が他の2区より遅れることが認められた.これらの変化は必ずしも植物体の水分状態が直接的に転流に影響を及ぼすのではなく,水分ストレスによって果実の成熟が促進され,果実のシンクとしての活性が変化したことに対応したものと推定された.
    4.灌水処理は果実への光合成産物の分配には大きな影響は及ぼさず,果実への分配率は各区ともほぼ90%前後で推移していることが認められた。
  • 矢澤 進, 佐藤 隆徳, 並木 隆和
    1992 年 60 巻 4 号 p. 905-913
    発行日: 1992年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    トウガラシの品種'ししとう'の土耕育苗した苗を,れき耕用園試処方第一例培養液(園試培養液と省略)50%の多量要素と100%の微量要素を含む培養液で水耕栽培すると,移植直後に葉に褐変斑点が発生し,一部障害の激しい個体は落葉,枯死した.この生理障害は,
    園試培養液に6.5×10-5Mで含まれるNaFeEDTAによることが明らかとなった.断根茎ざしのトウガラシでは,NaFeEDTAによる生理障害は1.6×10-5M以上の濃度で発生した.
    水耕栽培へ移す前のトウガラシの土耕苗でかん水量が少ない場合に,水耕に移した直後にNaFeEDTAによる生理障害の発生が著しかった.2週間水耕栽培したトウガラシでは,NaFeEDTA濃度を20.8×10-4Mに高めても,落葉,枯死を伴うほどの障害の発生は認められなかった.土耕苗を水のみで2~4日間培養するとNaFeEDTA1.3×10-4Mで生理障害は発生しなかった.
    種々のキレート鉄の中で,FeEDDHAが生理障害を発生せず,その濃度を5.2×10-4Mに高めても,断根茎ざしのトウガラシで障害の発生は認められなかった.
    断根茎ざし法でNaFeEDTAを吸収させた場合,トウガラシの葉にはNaFeEDTAは認められなかったが,FeEDDHAを吸収させた場合には葉に多量のFeEDD-HAが認められた.
    謝辞 本実験の遂行にあたり,いろいろとご教示いただいた京都大学農学部高橋英一名誉教授および岡山大学農学部川崎利夫教授に慎んで感謝する.また,鉄の分析方法などをご指導いただいた京都大学農学部西村和雄助手ならびに実験の遂行上,終始ご助力いただいた京都府立大学農学部寺林敏講師および鉄の分析その他で助けていただいた山下悟氏に深く感謝する.
  • 竹能 清俊, 伊勢 博之, 蓑輪 久範, 堂ノ脇 孝志
    1992 年 60 巻 4 号 p. 915-920
    発行日: 1992年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    キュウリ,'長日落合2号'と'もがみ'の果実の生長に対するベンジルアデニン(BA)の作用を調べた.BAの生長促進作用は非単為結果性品種,'もがみ'の無受粉果において最も顕著であり,受粉または遺伝的な単為結果性('長日落合2号')によって結果した果実の生長がBAによってさらに促進されることはなかった.BAによる果実の生長促進は主に細胞数の増加によるものであった.果実の内生インドール-3-酢酸(IAA)の含量を酵素イムノアッセイによって測定したところ,BAによってIAA含量が高まることはなかった.これらの結果から,BAは,主に,それ自身の細胞分裂促進作用によって単為結果を誘導するものと考えられた.
  • モハメド アリ, 松添 直隆, 大久保 敬, 藤枝 國光
    1992 年 60 巻 4 号 p. 921-926
    発行日: 1992年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    ナスとその近縁野生種,種間雑種および複二倍体のネコブセンチュウ(Meloidogyne incognita)に対する抵抗性を,実生苗および非抵抗性ナスを穂木とした接ぎ木植物に接種して評価した.Solanum khasianum, S.torvumおよびS. toxicariumでは強度の抵抗性が観察された.S. sisymbriifoliumではセンチュウの侵入で根に小さな膨らみを生じたが,センチュウは成熟せず,卵形成には至らなかった.これらを台木とした接ぎ木植物は穂木(非抵抗性ナス)の影響を受けず,同様な抵抗性を示した.一方,ナス,S. integrifolium,両者の種間雑種とその複二倍体,およびS. indicumには抵抗性が認められず,またS. mammosumとS. surattenseはネコブセンチュウに特に弱いことが確かめられた.*現在:鹿児島大学農学部890鹿児島市郡元
  • Josue Jack F Malamug, 矢澤 進, 浅平 端
    1992 年 60 巻 4 号 p. 927-933
    発行日: 1992年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    修正Nitsch培地を用いたサトイモの茎頂培養において,カルス形成が認められた.修正Nitsch培地の組成はNitsch(1969)培地の多量要素およびRinge•Nitsch(1968)の微量要素と有機化合物からなる.また,この培地にショ糖2%,寒天018%,2,4-D 1mg•liter-1とBA 1mg•liter-1を添加した.同じ組成の培地はカルスの増殖にも有効であった.しかし,BAを加えない1mg•liter-12,4-Dおよび1mg•1iter-1NAAの2種類のオーキシンの組み合わせでもカルスの増殖に効果的だった.培地中の720mg•liter-1NH4NO3含量を200mg•1iter-1に減らすと,カルス形成程度およびカルス形成率は増加した.低濃度のNH4NO3はカルスの増殖も促進した.
    10%(V/V)のcoconutwaterはカルス形成に有効であったが,カルス増殖には抑制的な影響を及ぼし,根の形成を促進した.修正Nitsch培地の濃度(2,1および1/2倍)はカルス形成に有意な影響を及ぼさなかった.
  • Josue Jack F Malamug, 位田 晴久, 矢澤 進, 浅平 端
    1992 年 60 巻 4 号 p. 935-940
    発行日: 1992年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    キュウリ,'長日落合2号'と'PMR-142'の受粉しない子房の生長を連続的に測定した.一部の子房は開花後しばらく生長を続けた後に生長を停止したが,子房の長さが6cmを越えたものは,その後も引続き生長を続けて単為結果に至ることが見出された.'長日落合2号'では,早いものでは開花3日後にこの長さに達したので,開花3日後にはどの子房が単為結果するかを予測することができた.'PMR-142'では,高位の節に形成された子房の長い雌花は,低位の節に形成された子房の短い雌花よりも高い率で単為結果した.このことから,'PMR-142'では,どの子房が単為結果するかを開花した日に予測することができた.単為結果すると予測された子房と,単為結果しないと予測された子房の開花した日の内生インドール-3-酢酸(IAA)レベルを酵素イムノアッセイによって定量した.'PMR-142'では,単為結果すると予測された子房で単為結果しないと予測された子房より3.5倍高いIAA含量が検出された.一方,開花3日後の子房の長さに基づいて単為結果するかしないかを予測した'長日落合2号'の子房では,単為結果すると予測された子房で1.7倍高いIAA含量が検出された.これらの結果から,それぞれの品種において,開花時における内生IAAレベルの高い子房が単為結果するものと推測された.
  • 竹能 清俊, 伊勢 博之
    1992 年 60 巻 4 号 p. 941-946
    発行日: 1992年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    キュウリ, '長日落合2号'と'PMR-142'の受粉しない子房の生長を連続的に測定した. 一部の子房は開花後しばらく生長を続けた後に生長を停止したが, 子房の長さが6cmを越えたものは, その後も引続き生長を続けて単為結果に至ることが見出された. '長日落合2号'では, 早いものでは開花3日後にこの長さに達したので, 開花3日後にはどの子房が単為結果するかを予測することができた. 'PMR-142'では, 高位の節に形成された子房の長い雌花は, 低位の節に形成された子房の短い雌花よりも高い率で単為結果した. このことから,'PMR-142'では, どの子房が単為結果するかを開花した日に予測することができた. 単為結果すると予測された子房と, 単為結果しないと予測された子房の開花した日の内生インドール-3-酢酸 (IAA) レベルを酵素イムノアッセイによって定量した. 'PMR-142'では, 単為結果すると予測された子房で単為結果しないと予測された子房より3.5倍高いIAA含量が検出された. 一方, 開花3日後の子房の長さに基づいて単為結果するかしないかを予測した'長日落合2号'の子房では, 単為結果すると予測された子房で1.7倍高いIAA含量が検出された. これらの結果から, それぞれの品種において, 開花時における内生IAAレベルの高い子房が単為結果するものと推測された.
  • 金澤 俊成, 小林 佐代, 入鍬 利郎
    1992 年 60 巻 4 号 p. 947-953
    発行日: 1992年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    ギョウジャニンニク(Allium victorialis L. ssp. pla-typhyllum Hult.)の開花過程と花粉の発芽•貯蔵について調査を行った.
    1.ギョウジャニンニクの開花の過程は,ネギやタマネギと同様であることが明らかとなった.すなわち,内花糸の伸長に続いて外花糸が伸長し,やくも内やくの裂開後に外やくが裂開した.また,花柱はやくの裂開後に急激に伸長した.
    2.ネギ属植物の花粉は,いずれも中央部に膨らみのある楕円形であるが,ギョウジャニンニクの花粉の偏平度は0.67で,ネギ属植物の中ではほぼ中間であった.また,花粉の大きさは長径46.8μm,短径31.3μmで,他のネギ属植物に比べて大きいことが特徴であった.
    3.花粉の発芽にはショ糖15%を添加した寒天培地(寒天1%)を用い,20°~25°Cで培養を行うことが適するものと考えられた.
    4.花粉は,乾燥条件で-30°Cおよび-196°Cで貯蔵することにより,長期間の貯蔵が可能である.特に液体窒素中(-196°C)で貯蔵した花粉は,1年後においても発芽率は70%以上で,低下しなかった.
  • 黄 月江, 大久保 敬, 藤枝 國光
    1992 年 60 巻 4 号 p. 955-961
    発行日: 1992年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    ヤブツバキとキンカチャとの交雑不和合性の原因を明らかにするために授粉後の花粉管の伸長,受精および胚の発育過程を観察した.
    種間,種内交配のいずれにおいても花粉の発芽,花粉管の伸長および受精は正常に行われていた.種内交配における胚の発育は順調で,交配150日目には成熟胚に達した.一方,種間交雑においては交配100日目に観察された球状胚はその後発育が進まず,120日目には退化した.胚の退化後も胚珠は有胚の場合同様十分に肥大し,しいな種子となった.
  • 土井 元章, 小田 尚, 小笠原 宣好, 浅平 端
    1992 年 60 巻 4 号 p. 963-970
    発行日: 1992年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    順化準備段階(培養最終段階)にあるカラジウム(C3植物),サトウキビ(C4植物),ファレノプシス(CAM植物)を2%のショ糖を含む培地を用いて,全日長,16時間日長,8時間日長下で培養した.半数の培養器に対して,0.8±0.4%のCO2を含む空気を連続通気することでCO2施用を行った.残り半数の培養器では,気相をなりゆきとした。
    CO2施用を行わず気相をなりゆきとした場合,CO2施用を行った場合とも,日長が長いほど培養植物の生長は促進された.培養植物にCO2を供給することにより,全日長下で培養したカラジウムを除き,いずれの日長下でも乾物生産が増加した.このCO2による生育促進効果は,主として根に顕著に認められた。
    カラジウムとファレノプシスにおけるCO2施用下の培養では,葉身のクロロフィル含量が減少する傾向にあった.しかし,CO2飽和レベルで測定した明期中央におけるCO2の取り込み速度は,CO2無施用の場合に比べて,CO2施用区で大きくなった。
    培養器中のO2濃度もまた,培養植物の生長に影響を及ぼした。CO2施用下でO2濃度を37%に高めると,カラジウムおよびデンドロビウム•ファレノプシス(CAM植物)の生長が促進された。
    糖を含まない培地でCO2施用を行い培養して得たカラジウムのプラグ苗は,培養時に光独立栄養状態への移行が促されたことにより,慣行の培養方法で得られた苗に比べて,培養終了直後の順化期間中の生育がすぐれていた。
    謝 辞 本稿をとりまとめるにあたり,御校閲を賜った大阪府立大学今西英雄教授に謝意を表する。
  • 元岡 茂治, 小西 耕, 小西 昌子, 澤 慶子, 佐竹 美保, 小西 国義
    1992 年 60 巻 4 号 p. 971-979
    発行日: 1992年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    1.組織培養苗の生産コストを削減するために,苗生産の省力化が可能な固体支持材培地を用いた培養法を開発し,植物の生育に及ぼすその培地の特性を明らかにした。また最終培養の期間が植え出し後の植物の生長に及ぼす影響について調べた。
    2.固体支持材の材料として,パーライト,バーミキュライト,ピートモス,ロックウールを用意した.ロックウールはそのままで,その他の資材は単独または混合してセル成型トレーに充唄して用いた.植物支持材としては,粒径を2mm以下に調整したパーライトとバーミキュライトの等量(容積比)混合物を,セル成型トレーに充順した培地(以下PV培地)が適していた。PV培地における植物の容器内生長は,寒天培地のものより勝った。PV培地は,植物支持材に含まれている培養液を植え出し時に水洗することによって,そのまま植え出し後の育苗培地として使用することができた.そのためPV培地では,植え出し時に苗を移植する必要がなく,植え出しの作業能率が高かった。
    3.PV培地においては,培養液の量は寒天培地より少なくてよく,培養液の濃度は寒天培地よりも高い方が適していた。
    4.植物の最終的な生長量は,最終培養の期間を3週間として早く植え出した方が大きく,培養期間が長過ぎるとかえって劣った。3週間培養したのちに植え出した植物の生長は,植え出し直後の3~6週間はPV培地区の方が対照区よりも勝るか同じであった。しかしその後の3週間で土量の多い対照区の方がよくなった。PV培地の植物を植え出し後も良好に生育させるためには,植え出し後3~6週間のうちに移植または定植するか,あるいは育苗上の環境改善が必要であると思われた。
  • 今西 弘子, 米沢 富士雄, 今西 英雄
    1992 年 60 巻 4 号 p. 981-987
    発行日: 1992年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    1.花の消費拡大のための資料を得る目的で,花店利用者を対象に,ふだん花に感じていること,花に求めるもの,購入する花を決定する条件,花の種類ごとの好みについて,質問紙調査法により調べた。またこれを一般消費者を対象とした結果と比較した。
    2.ふだん花に感じていることでは,「花は生活に欠かせないものである」と「花には言葉やもの以上に心を動かす何かがある」で高い評定値が得られた。消費者の花の値段そのものへの不満は少なく,むしろ二級品の安価な花の提供をより強く望んでいることが示された.「野の雰囲気を感じさせる花」と「手をかけて作られた見事な花」では前者で評定値が高く,消費者の自然志向の強さが示された。
    3.花に求めるものでは,「花の色の美しさ」,「季節感」,「やさしい感じ」を求める度合が大きいのに対し,「はなやかで,はでな感じ」,「豪華で,リッチな感じ」は求める度合が低く,消費者はこれらをほとんど求めていないという結果が示された。
    4.購入する花を決定する条件では年齢層間に明らかな違いがあることがわかった。すなわち「第一印象で感覚的に」,「花もち,長く楽しめる」において,若い年齢層では前者を重視し,後者を軽視するのに対し,高年齢層では逆の結果になった。
    5.花の種類ごとの好みの度合の比較から,今,消費者が求めている花は季節感にあふれ,野の雰囲気の感じられる,淡い色の,軽い感じの,小型のやさしい花であることがわかった。
  • 土岐 健次郎, 川西 洋志
    1992 年 60 巻 4 号 p. 989-995
    発行日: 1992年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    1.ペオニジン3-ルチノシドを含む'フローラルカーペット•レッド'より選抜した1系統とシアニジン3-グルコシドを比較的多量に含む系統,Aとの交雑により得られた個体より4種類のアントシアニンを分離した.これらのうちの一つをTLCおよび吸収スペクトルを用いて,キンギョソウでは未報告のべオニジン3-グルコシドと同定した。
    2.蟻性系を中心に25品種のアントシアニンを調査し,3品種にペオニジン配糖体が含まれることが判明した。
    3.ペオニジン配糖体は必ずシアニジン配糖体を伴って微量色素として出現し,含有するのはいずれも簸性品種であった。
    4.花の発達に伴う4種類のアントシアニン,シアニジンおよびペオニジンの3-グルコシドと3-ルチノシドの消長を調べ,ペオニジン配糖体はシアニジン配糖体より遅れて蓄積し,量比は満開時に極大に達すること,またそれぞれの3-グルコシドは開花を境に減少し,3-ルチノシドは増大を続けることを明らかにした。
  • 岡崎 桂一, 馬田 雄史, 浦島 修, 川田 穣一, 国重 正昭, 村上 欣治
    1992 年 60 巻 4 号 p. 997-1002
    発行日: 1992年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    アントシアニン系花色のテッポウユリの育成を目的として,子房親としてテッポウユリおよびシンテッポウユリと花粉親としてオトメユリおよびササユリとのそれぞれの種間雑種の育成を試みた.
    1.胚培養法と花柱切断受粉法を用いることによってテッポウユリ×オトメユリ,シンテッポウユリ×オトメユリ,シンテッポウユリ×ササユリの組合せで種間雑種が得られた.花色は,テッポウユリ×オトメユリの雑種が濃いピン久シンテッポウユリ×オトメユリはやや淡いピンクとなった.シンテッポウユリ×ササユリの雑種は白花であった.
    2.テッポウユリ×オトメユリの交雑ではテッポウユリ2品種,2系統を用いたが,結実率に品種間差が見られ,'ジョージア'の結実率が最も高かった.
    3.シンテッポウユリは,テッポウユリに比べオトメユリ,ササユリとの交雑した時は高率で結実した.
    4.種間雑種の花粉稔性は,大部分の個体で低かったが,シンテッポウユリ×オトメユリの雑種の中で,95.2%と高い花粉稔性を持つ個体があった.この個体の染色体数は2n=48であり,この高花粉稔性は,複二倍体植物の特性によるものである.
    5.種間雑種に,オトメユリとテッポウユリの花粉を交配したところ,前者の交配では胚が得られたが,後者の交配では胚が得られなかった.謝辞本稿を草するにあたり,元農水省農業生物資源研究所所長,現全農営農対策部の鳥山国士博士,富山県農業技術センター野菜花き試験場場長の梅原吉廣博士にご校閲載いた.ここに記して感謝の意を表する.
  • 平 智, 佐藤 郁, 渡辺 俊三
    1992 年 60 巻 4 号 p. 1003-1009
    発行日: 1992年
    公開日: 2008/05/15
    ジャーナル フリー
    カキ5品種 (横野, 葉隠, 倉光, 紋平および平核無) を用いて, アルコール (EtOH) ならびに炭酸ガス(CO2) 処理を行い, 脱渋難易の品種間差異と果肉中のエタノールおよびアセトアルデヒド蓄積との関係を調査した.
    EtOH処理は小型プラスティック容器内で, 果重当たりのEtOH量を統一して果実1個ずつ行った. CO2処理は大型デシケータに果実を入れ, CO2を封入して行った. 処理温度はいずれも20°Cとした. また, 各品種の果汁のアセトアルデヒド (アルデヒド) 反応性を30°Cで調査した. EtOH処理中の果肉の軟化の程度は品種によって大きく異なり, なかでも'葉隠'は軟化しやすく,'倉光'は軟化しにくかった. 可溶性タンニン (タンニン)含量の減少パターンも品種によって差があり, EtOH処理では'横野'と'倉光'が'紋平'と'平核無'に比べると脱渋困難であった. CO2処理では'横野'と'葉隠'が脱渋しにくかった. 果汁のEtOH蓄積は, CO2処理では5品種ともほぼ同程度であったが, EtOH処理では'倉光'が明らかに少なかった. アルデヒドの蓄積は, CO2処理では脱渋しやすかった'紋平'と'平核無'で顕著に多く, EtOH処理では脱渋困難であった'横野'と'倉光'で明らかに少なかった. なお, '葉隠'で蓄積が多かったのは果肉の軟化が進んだためであると考えられた. 果汁のアルデヒド反応はむしろ, 脱渋しやすい品種で若干劣る傾向が認められた.
    以上のことから, EtOH, CO2処理ともに果肉のタンニン含量の減少とアルデヒドの蓄積が密度に関係していることが明らかであった. すなわち, '紋平'と'平核無がCO2で脱渋しやすかったのは, ほかの3品種に比べてアルデヒドの蓄積が早く, かつ量も多かったことによると考えられた. 一方, '横野'がEtOHで脱渋しにくかったのは, 果実内に取り込まれたEtOHがアルデヒドになりにくいためと思われた. また, '倉光'EtOHで脱渋困難であったのは, EtOHそのものが果実内に取り込まれにくいことに加えて, 果実内でアルデヒドになりにくいことが主な原因であると推察された,
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