園芸学会雑誌
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74 巻, 6 号
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原著論文(英文)
  • 馬 春暉, 田辺 賢二, 板井 章浩, 田村 文男, 千 種弼, 滕 元文
    2005 年 74 巻 6 号 p. 419-423
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/24
    ジャーナル フリー
    石灰質土壌条件下で誘発される鉄欠乏クロロシスに対するアジアナシ台木種の耐性を比較, 調査した. 実験には3種のアジアナシ台木種Pyrus xerophila Yü, P. betulaefolia BungeおよびP. calleryana Decneを用い, pHの異なる土壌を充填したポットに移植した後の変化を, 台木実生および‘豊水’を接木した場合のそれぞれについてハウス内で調査した. 鉄欠乏クロロシスに対する耐性は移植90日後以降, 上位葉のクロロフィル含量 (SPAD値), 鉄含有率および成長量を測定することで評価した. その結果, 石灰誘導性鉄欠乏クロロシスに対し, 実生および‘豊水’を接木した場合のいずれもP. xerophilaが他の2種よりも耐性を持ち, 上位葉のクロロフィル含量, 鉄含有率がともに高い値を示した. このように, P. xerophilaは原産地の土壌条件を反映して石灰誘導性鉄欠乏クロロシスに対し, 他の台木よりも耐性が強いことが示唆され, クロロシス耐性台木として中国西北部のような石灰過剩の土壌地帯で利用可能な有望な台木種とみなされたことから, その耐性機構を継続して調査する必要がある.
  • 守谷 友紀, 高井 良裕, 岡田 和馬, 伊藤 大雄, 塩崎 雄之輔, 中西 テツ, 高崎 剛志
    2005 年 74 巻 6 号 p. 424-430
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/24
    ジャーナル フリー
    セイヨウナシ (Pyrus communis L.) の自家および交雑不和合性は結実率や種子数により判定されてきたが, それらの評価は明確ではない. 本研究では交雑による不和合・和合の判定方法を確立するため, セイヨウナシ10品種を用いて1花そう1花の除雄無受粉, 自家受粉および他家受粉を行い, 各品種の単為結果性, 自家不和合性および品種間の交雑不和合性を調査した. ほぼすべての品種が単為結果性を有し, 結実率による不和合・和合の識別はできなかった. しかし, 新たに提案したself-incompatibility (SI) index ((評価対象の交配における交配花数当たりの充実種子数)/(和合交配における交配花数当たりの充実種子数)×100) により不和合・和合の判定が可能になった. その結果, ‘グランド・チャンピオン’は部分的自家和合性であり, 他の品種は自家不和合性であることが明らかになった. 有種子果実の品質は単為結果果実よりも優れており, 単為結果性を有するセイヨウナシでも安定的な良質果実の生産には和合花粉の受粉が必要でることが明らかになった. ‘フレミッシュ・ビューティー’と‘スタークリムソン’および‘バートレット’と‘セニョール・デスペラン’の二つの組み合わせが交雑不和合を示した.
  • 金山 喜則, 粉川 真紀, 山口 正己, 金浜 耕基
    2005 年 74 巻 6 号 p. 431-436
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/24
    ジャーナル フリー
    モモの生食用品種および在来品種の果実におけるフルクトース含量には明らかな差異がみられる. そこで, モモ果実においてフルクトース含量を制御する要因を明らかにするため, 生食用品種の‘あかつき’と‘川中島白桃’, および在来品種の‘長野野生桃早生’と‘能登在来桃No.2’におけるフルクトース関連酵素の活性を測定した. 生食用品種の果実におけるフルクトース含量は, 開花3ヶ月後から成熟期にかけて7から12mg・g-1FWの間を推移した. 在来品種の果実におけるフルクトース含量は極めて低く, 1mg・g-1FW以下であった. 果実におけるフルクトキナーゼ, フルクトース6リン酸ホスファターゼおよびホスホグルコースイソメラーゼ (PGI) の活性については, ‘能登在来桃No.2’で低かったものの, 生食用品種と在来品種の間での明確な差は認められなかった. またすべての品種の果実において, PGI活性は他の酵素の活性とくらべて非常に高かったことから, PGIの反応はフルクトース合成の律速段階ではないと考えられた. さらに果実におけるフルクトース6リン酸含量についても, 生食用品種と在来品種の間で明確な差は認められなかった. これらの結果から, 両品種間におけるフルクトース含量の差異は, フルクトースをフルクトース6リン酸, さらにはグルコース6リン酸に変換する能力の違いではなく, フルクトース合成能の違いに由来することが示唆された. 実際, NAD依存性ソルビトール脱水素酵素 (SDH) 活性は果実の成長期間を通して生食用品種において在来品種より高かった. したがって, ソルビトールからフルクトースの合成に寄与するSDHがモモ果実のフルクトース含量の調節に関与することが示唆された.
  • 池上 礼子, 佐藤 明彦, 山田 昌彦, 北島 宣, 米森 敬三
    2005 年 74 巻 6 号 p. 437-443
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/24
    ジャーナル フリー
    中国の完全甘ガキ (PCNA) 品種‘羅田甜柿’および日本のPCNA品種群の果実のタンニンの分子量分布をサイズ排除クロマトグラフィーによって調査した. サイズ排除クロマトグラフィーはAcetone-8 M urea (6:4; pH 2.0) を溶媒とし, TSK gel Toyopearl HW-55Fを充填したカラムにより行った. ‘羅田甜柿’と日本の完全甘ガキ‘太秋’との交雑後代, および‘富有’と275-13 (非完全甘ガキ‘会津身不知’と‘太秋’の後代) の交雑後代の果実のタンニン物質の分子量分布についても同様の調査を行った. 日本のPCNA品種のタンニン物質は比較的低分子領域に分布していたのに対し, non-PCNA品種では高分子領域に分布していた. さらに, ‘富有’と275-13の交雑により分離したPCNA個体のタンニン物質はすべて低分子領域に分布したのに対し, すべてのnon-PCNA個体のタンニン物質は高分子領域に分布し, PCNA個体とnon-PCNA個体で明確な差異が認められた. 一方, ‘羅田甜柿’のタンニン物質はnon-PCNA品種と同様に高分子領域に分布しており, ‘羅田甜柿’と‘太秋’の交雑第1世代で分離したPCNA個体とnon-PCNA個体はどちらのタンニン物質も高分子領域に分布していた. これらの結果は, 中国のPCNA‘羅田甜柿’が日本起源のPCNA品種とは明らかに異なることを示し, 中国のPCNAが日本のPCNAと異なる起源をもつというこれまでの仮説を明確に支持した.
  • 山下 謙一郎, 若生 忠幸, 小原 隆由, 塚崎 光, 小島 昭夫
    2005 年 74 巻 6 号 p. 444-450
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/24
    ジャーナル フリー
    ネギのさび病抵抗性を改良するため, ‘聖冬一本’, ‘岩井2号’, ‘長寿’, ‘せなみ’, ‘冬扇一本’, ‘豊川太’の6品種を育種素材 (C0) として循環選抜を行った. 循環選抜の1サイクルは2段階からなり, 最初の年に自殖および自殖系統選抜を行い, 2年目に相互交配および母系系統選抜を行った. 2サイクルの循環選抜により, 10母系系統からなる改良集団 (C2) を得た. さらに, 2世代の自殖と自殖系統選抜を行い, 13のC2S2系統を得た. 実施した循環選抜の効果を評価するために, 2回の接種検定により上記の選抜で得られた全世代のさび病抵抗性の程度を比較した. 春季および秋季の接種検定において, 発病程度の指標であるarea under the disease progress curve (AUDPC) の値は循環選抜が進むにともない明らかに減少し, 抵抗性の向上が認められた. C1からC2世代にかけて抵抗性の変化は小さかったものの, C2S2世代では大幅な向上が認められ, C2S2系統のAUDPCは素材品種の約38%となった. 以上の結果, ネギのさび病抵抗性の改良に循環選抜は有効であることが実証された.
  • 仮屋 博敬, 睦本 知美, 衛藤 威臣, 岩井 純夫
    2005 年 74 巻 6 号 p. 451-457
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/24
    ジャーナル フリー
    植物の性が減数分裂時の組換えに与える影響について, メロンを供試して調査した. F1を花粉親および種子親に用いることで, 雄性配偶子および雌性配偶子の組換えを検出する2組の戻し交配集団を育成し, 34のDNAマーカーから成る連鎖地図をそれぞれ作成した. 両地図の全体の地図距離に有意な差は認められなかった. 4つのマーカー区間については地図距離に有意な差が認められ, 雄性配偶子と雌性配偶子の間における組換え頻度に差があることが示された.
  • 小田 雅行, 丸山 昌也, 森 源治郎
    2005 年 74 巻 6 号 p. 458-463
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/24
    ジャーナル フリー
    接ぎ木した植物が長期間生育した後に突然萎れるようになり, その後枯死する現象は, 遅延型接ぎ木不親和の症状である. 矮性台木に接ぎ木した植物は根の通水性が低いことが明らかにされているが, 遅延型接ぎ木不親和において接ぎ木部の通水性が低いか否かは明らかにされていない. そこで, トマト, ナスおよびトルバム (Solanum torvum) に接ぎ木したトマトの生長, 茎の肥大, 水ポテンシャルおよび接ぎ木部の通水抵抗を調べるとともに, 接ぎ木部を組織観察した. その結果, 接ぎ木接合面直上の茎周長, 水ポテンシャルの絶対値, 通水抵抗および接ぎ木接合面直上の導管湾曲は, トルバム台で最も大きく, ナス台ではこれに続き, トマトの共台で最も小さかった. これらのことから, 接ぎ木部における通水性の低下が遅延型接ぎ木不親和の一因であることが示された.
  • 田中 孝幸, 水谷 高幸, 柴田 道夫, 谷川 奈津, Clifford R. Parks
    2005 年 74 巻 6 号 p. 464-468
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/24
    ジャーナル フリー
    これまでに, ハルサザンカCamellia × vernalis T. Tanaka et al. は, 形態, 染色体およびアイソザイム分析からサザンカとヤブツバキ間の交雑により成立したと報告されている. ツバキ属の葉緑体DNAは, 他の被子植物と同様に, 細胞質 (母系) 遺伝をすることが示されており, ハルサザンカにサザンカの葉緑体が存在すれば, サザンカがこれらの雑種の種子親であると考えられる. atpI-atpH遺伝子領域のPCR産物は, サザンカおよびハルサザンカではすべて約800bpの位置に, ヤブツバキでは約1200bpの位置に単一のバンドを示した. これらの結果は, 1) 一次雑種と推定されたハルサザンカ‘凱旋’の種子親はサザンカである, 2) ヤブツバキへの戻し交雑第一世代と考えられるハルサザンカ三倍体品種群の種子親は‘凱旋’と考えられる, さらに, 3) 戻し交雑第二世代と考えられる‘笑顔型’四倍体品種群の種子親はハルサザンカ三倍体品種群に由来する, ことを示唆している. ハルサザンカは, 平戸島にある古木の樹齢および1630年に出版された本の記録‘鷹の爪’などから判断して約400年前にその起源があると推定されている. したがって, 本研究の結果, ハルサザンカの種子親は400年前に遡ってサザンカであると示唆された.
  • 荘司 和明, 生方 信, 桃井 千巳, 辻 俊明, 森松 敬
    2005 年 74 巻 6 号 p. 469-475
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/24
    ジャーナル フリー
    チューリップの葯における水抽出物に強い抗菌活性を見出した. カラムクロマトグラフィーによる精製とLC-MSおよび1H-, 13C-NMRによる構造解析の結果, 活性本体は6-チューリッポシドB (6-O-((S)-4', 5'-dihydroxy-2'-methylenebutyryl)-D-glucopyranose) であることが明らかになった. 抗菌性の感受性検定の結果, 6-チューリッポシドBはグラム陽性およびグラム陰性とは無関係に細菌類に対して広く強い殺菌力を示し, 農薬耐性を持つ細菌類に対しても同様の効果を示したが, 酵母菌類には効果が見られなかった. チューリップ22品種とTulipa属15種の葯を用いて抗菌活性を比較したところ, 野生種に比べ栽培品種でより強い活性が示された. これらの活性は花粉稔性とは無関係であった. さらに, 葯の発達過程を球根の移植期から開花期まで10段階に分けて抗菌活性を調べた結果, チューリッポシドBの生成は, 開花12日前から始まり7日前には最大に達することが明らかになった. すなわち, 葯以外の組織ではチューリッポシドAとBの両方が作られるのに対し, 葯ではチューリッポシドBだけが組織特異的かつ生育時期特異的に生成され高濃度に蓄積していることが明らかになった. これらの結果から, チューリップは生殖過程においてチューリッポシドBを葯特異的に生産し, 細菌類の汚染から花粉を守るという独特の防御機構を発達させていることが示唆された.
短報(英文)
  • 山本 雅史, 久保 達也, 冨永 茂人
    2005 年 74 巻 6 号 p. 476-478
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/24
    ジャーナル フリー
    わが国における主要中晩生および香酸カンキツ染色体のクロモマイシンA3 (CMA) 染色を行った. 染色体はCMA(+) バンドの有無および位置から5種類に区分できた. すなわち, CMA(+) をA: 両端および動原体近傍に有する, B: 一方の端部と動原体近傍に有する, C: 両端に有する, D: 一方の端部に有する, E: CMA(+) がない, である. 各種はこれらのうち4, 5種類の染色体を有し, 独自のCMAバンドパターンを示した. ハッサクでは1A+1C+8D+8E, ヒュウガナツでは2A+2C+5D+9E, ‘川野なつだいだい’では1A+2C+7D+8E, ‘宮内伊予柑’では1A+1B+1C+8D+7E, タンカン‘垂水1号’では1A+1B+1C+8D+7E, カボスでは3B+2C+5D+8E, スダチでは1B+2C+9D+6Eおよびユズ‘山根’では2B+1C+11D+4Eであった. 以上の結果, 本研究においても近縁の種間では似通ったCMAバンドパターンが観察された.
  • 原田 正志, 小田 雅行, 森 源治郎, 池田 英男
    2005 年 74 巻 6 号 p. 479-481
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/24
    ジャーナル フリー
    トマト若齢母株から大量のシュートを再生させるために, 本葉の第10葉展開時に第7葉と第8葉との間で主枝を摘心し, 摘心後に発生したすべての側枝を第1葉直下で切断した. その結果, すべての株において側枝切断部でカルスが形成され, シュートへと発達した. 側枝を切断してから36日後の株当たりシュート再生数は76本であった. 各側枝切断部におけるシュート再成率は, 62.5%以上であり, シュート再生数は上葉位の側枝で多かった. これらのことから, トマトの若齢母株を用いた大量のシュート再生法が示された.
  • 立澤 文見, 安藤 敏夫
    2005 年 74 巻 6 号 p. 482-484
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/24
    ジャーナル フリー
    ペチュニア‘バカラレッド’の花から微量アントシアニンを単離し, クロマトグラフィーおよびスペクトル分析により, ペチュニア属では未報告のペチュニジン3-グルコシドとマルビジン3-グルコシドを同定した. これらのアントシアニンの蓄積は, ペチュニアのアントシアニン3'-および3', 5'-メチルトランスフェラーゼの不完全な基質特異性が一因と推定された.
短報(和文)
  • 稲葉 善太郎, 堀内 正美, 大城 美由紀
    2005 年 74 巻 6 号 p. 485-492
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/02/24
    ジャーナル フリー
    キンギョソウの品種特性を基に, 日本の暖地における無摘心栽培での新作型について検討した. 1年間播種を繰り返して, 開花時期を比較した. 到花日数は10月播種が最も長く, 6月播種で最も短くなった. 草丈は6月播種が最も低く, 9月播種で最も高くなった. 日本で育成された品種の多くは, I型またはII型に属するものと考えられた. 無摘心栽培で夏から秋に開花させる作型では, III型品種は6月中旬から7月下旬播種, IV型品種は6月中旬から7月中旬播種が適すると考えられた. 秋から冬に開花させる作型では, I型, II型品種の8月中旬から10月中旬播種が適すると考えられた. 春から夏に開花させる作型ではI型, II型品種は2月播種, III型, IV型品種は2月下旬から3月播種が適すると考えられた. これら3つの作型により, キンギョソウの周年生産の可能性が見出された.
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