1) わい性トマト‘Miniature’の花を供試して, 一連の合成ナフトキノン誘導体のトマトに対する単為結果誘起活性を検索した. その結果, 3-phenyl-4, 9-dihydro-naphth [2, 3-d] isoxazole-4, 9-dione, 2-benzimidoyl-3-hydroxy-1, 4-naphthoquinone, 2-(4-methoxy-benzimidoyl)-3-hydroxy-1, 4-naphthoquinone, 2-(3-pyridylcarbimidoyl)-3-hydroxy-1, 4-naphthoquinone, 2-(4-chlorobenzimidoyl)-3-hydroxy-6, 7-dimethyl-1, 4-naphthoquinone, 6-(or 7-) benzimidoyl-7 (or 6-)-hydroxy-5, 8-dihydroquinoline-5, 8-dione, 2-(N-methylbenzimidoyl) -3-hydroxy-1, 4-naphthoquinoline, 2-benzoyl-3-hydroxy-1, 4-naphthoquinoline, 3, 5′-diphenyl-4-oxo-4, 9-dihydronaphth [2, 3-d] isoxazole-4, 5-spiro-2′-(1′, 3′, 4′-dioxazole) 及び 3, 5′-diphenyl-4, 5-dihydro-naphtho [2, 1-d] isoxazole-5-spiro-2′-1, 3′, 4′-dioxazol-4-one において明らかな単為結果誘起作用が示されたことからこれらが従来の知見とは異なる化学構造をもった植物生長調節質群であることを認めた.
2) なかでも, 2-benzimidoyl-3-hydroxy-1, 4-naphthoquinone (bendroquinone) の単為結果誘起作用は強力であった. 普通トマト‘福寿2号’においても, 除雄花に bendroquinone を浸漬処理すると単為結果の誘起を示し, その後の果実肥大も花粉交配果実及び合成オーキシンHCPA並びに4CPAによる単為結果果実のそれと差を認めなかった.
3) Bendroquinone による単為結果誘起の過程を組織学的に観察した. 内皮細胞の分裂生長はHCPA処理と比較して, 開花後2週までは若干緩やかであったが, 開花後3週になると差はなく偽はいへと生長し, HCPA処理と類似していることを認めた.
4) Bendroquinone は水および溶媒に対し難溶であるので9%水和剤として製剤化し, 半促成ビニルハウス栽培で‘米寿’に着果剤として花房散布した. 第1花房における着果率並びに果実収量はHCPA及び4CPAに比べ若干劣ったが, 第2~第4花房においては逆に勝った. 1株当たりの平均着果率並びに総収量は, bendroquinone200ppm : 73.8%, 15.92kg, 300ppm; 78.8%,15.66kg, HCPA 200ppm ; 73.4%, 16.03kg及び4CPA 30ppm; 60.2%, 13.34kg であった. bendroquinone処理における果実の空胴程度は, HCPA並びに4CPA処理のそれより明らかに少なく, また他の植物部分への薬害症状は全く認められなかった.
5) Bendroquinone による単為結果の誘起には, HCPA及び4CPAに比べ, 花の発育段階の早い時期に処理することがより効果的であった. またがく上に付着する量及び時間と単為結果誘起との間に密接な関係を認めた. したがって, 散布助剤の添加などが, より一層単為結果誘起効果を安定させるための手法と考えられた.
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