園芸学会雑誌
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48 巻, 3 号
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  • ブドウ‘巨峰’果実の着色に及ぼす樹体及び果実の環境温度の影響
    苫名 孝, 宇都宮 直樹, 片岡 郁雄
    1979 年 48 巻 3 号 p. 261-266
    発行日: 1979年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    巨峰ブドウについて, 成熟期の樹体全体と果房周辺部への温度処理が果実の着色に及ぼす影響を調査した. すなわち, 20°C及び30°Cに保たれた制御温室内で結実樹を生育させ, さらに, 各温室内では果房周辺部の温度を15°, 20°, 25°及び30°Cにそれぞれ制御した. さらに別に自然条件下で生育させた結実樹において, 夜間の果房周辺部の温度を15°~20°Cおよび25°~30°Cに制御し, 着色に及ぼす影響を調べた.
    果実中のアントシアニン含量は, ブドウ樹を生育させている制御温室内の温度にかかわらず, 果房周辺部が30°Cから15°Cに低下するにしたがって増加した. さらに, 夜間の果房周辺部の低温もアントシアニン含量を増加させた. 果皮中の糖含量は果房周辺部の温度処理によってほとんど影響されなかったが, ABA含量は果房周辺部の低温で著しく増加した.
    以上の結果から, 巨峰果実では果実温度がアントシアニン生成に要重な役割を果しており, その生成過程には果皮中のABAレベルが関係している可能性が示唆された.
  • 葉の気孔開閉の機能鈍化について
    山本 隆儀, 渡部 俊三, 原田 久
    1979 年 48 巻 3 号 p. 267-278
    発行日: 1979年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    西洋ナシの葉やけ発生の主要な原因は気孔の機能鈍化である. 本報はこの鈍化の原因解明のため2, 3の実験を行った結果を取りまとめたものである.
    1. 水ざし枝着生葉の気孔の光能動反応を調査したところ, 主要落葉果樹葉(基部葉)の気孔運動の鋭敏度は程度の差こそあれ全般にごく若い葉では低く, 最大面積に達するころに最高になり, その後時間の経過とともに低くなった. すなわち, 最大葉到達後は光照射下における蒸散抵抗(RL)は徐々に上昇し(気孔がより開かなくなり), 暗黒下における蒸散抵抗(RD)は徐々に下降した(気孔がより閉じなくなった). なかでもこの傾向は西洋ナシで大であり, 葉やけ発生の著しいバートレット, 発生のみられるグランド•チャンピオン, 発生しないレッド•バートレットの順であった.
    2. 8月下旬の主要落葉果樹の葉の気孔閉鎖の水ポテンシャル(ψ)いき値を調査したところ, その値は基部葉, 中間部葉, 先端部葉の順に低く, たいていの果樹葉で-20bar前後であったが, バートレットとグランド•チャンピオンでは約-50barを下まわっていた.
    3. 同一葉内の気孔の機能鈍化は一様でなく, バートレット基部葉では, 気孔長の長いものほど暗黒下でも開孔の程度が著しく, RDの上昇を妨げていたが, 同先端部葉やレッド•バー•トレット葉では顕著に現れず, RD は, はるかに高くなった.
    4. レッド•バーレットに比較してバートレットではその着生葉のRLとψとの間のヒステリシスがより偏平で, RLとψは共に低かった.
    5. K+, Cl-, Ca2+を葉面に施与した場合, 気孔開閉の鋭敏度に違いは生じなかった. 高濃度のABA施与は全般に気孔を閉鎖させたが, 低濃度のABA施与は気孔の鋭敏度を増大させるように思われた.
    6. 各種のエネルギー代謝阻害剤を与えると鈍化の見られていない先端部葉などの気孔の暗黒下における閉鎖を妨げた.
    7. バートレット葉における気孔の開閉に伴う孔辺細胞内外へのK+移動は, 6月中旬では顕著であったが, 鈍化の著しくなった8月下旬では, 暗黒下において孔辺細胞内K+残存気孔が見られ, 特に大型の気孔に多かった. この種の気孔はTTC還元度やチトロクロムC酸化酵素活性が劣っているように思われた.
  • 根に含まれる生長抑制物質としての縮合性タンニンについて
    水谷 房雄, 板村 裕之, 杉浦 明, 苫名 孝
    1979 年 48 巻 3 号 p. 279-287
    発行日: 1979年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    これまでにモモのいや地に関与しているとされてきた青酸配糖体の加水分解関連物質以外にも, いや地に関与する生長抑制物質が存在するかどうかを調査した.
    (1) カラムクロマトグラフィーと生物検定を組み合わせて, モモの根, 葉, モモ園土壌の80%メタノール抽出物及び葉の漏出物について, 生長抑制物質の分離をおこなった.
    (2) 根抽出物中の最も強い生長抑制効果を示す分画には, 数個の縮合性タンニンが認められた. 異なる2, 3のカラムクロマトグラフィー及び溶媒抽出による分画法によっても, 生長抑制分画と縮合性タンニンが含まれる分画とは, 常に挙動を共にした.
    (3) 嫌気条件では好気条件下に比べて, モモの根から縮合性タンニンがより多く浸出した.
    (4) 数種の縮合性タンニンのうちの一つを精製, 結晶化し, 寒天培地にそれを加えて, モモ実生の根の生長に及ぼす効果をみたところ, 500ppm及び1,000ppm で著しい抑制効果が認められた.
    以上の結果から, 縮合性タンニンもまたモモのいや地に何らかの形で関与していることが推定された.
  • 平井 源一, 堀 勝
    1979 年 48 巻 3 号 p. 288-294
    発行日: 1979年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1. 温州ミカンの経済栽培が自然植生の中のある特定種あるいは種群を指標植物にして, 適地か不適地かの判定に利用できないだろうかと考え, この点を実証しようとした.
    2. 有田川下流域, 紀の川流域の社寺林の中で極相林 (climax forest) と考えられた社寺林を選び, その構成種の分布のパターンから5つに分類し, 各型の植物群並びにその優占度 (dominance) と温州ミカンの栽培面積の変動とを対応して考えた.
    3. その結果, ホルトノキ, タイミンタチバナ, ミミズバイ及び, ヒメユズリハ等の暖地沿海性植物群が分布する地域はミカン栽培の適地であると考えられ, これらの植物を温州ミカンの適地指標植物として用いられると考えた. なお, 温州ミカン(宮川早生)の品質の点からもこれを裏付けることができた.
  • 杉山 信男, 岩田 正利
    1979 年 48 巻 3 号 p. 295-300
    発行日: 1979年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    置換性カリ含量の異なる4種の土壌を用いて, 1/5,000aワグナーポットで, 種々のそ菜の幼植物について, 夏と冬にカリ施肥試験を行った. そして, 生育に対するカリ施肥の効果と置換性カリ含量との関係が, 夏と冬とで, どのように変化するのかを明らかにしようとした.
    1. ホウレンソウとカブの実験では, 置換性カリ含量75ppmと161ppmの土壌でカリを施肥すると, 夏, 冬ともに, 幼植物体重は有意に増加した.しかしながら, 置換性カリ含量254ppmと343ppmの土壌では, 夏, 冬ともに, カリ施肥による植物体重の有意な増加は認められなかった.
    2. レタスとハツカダイコンの実験では, 置換性カリ含量75ppmの土壌でカリを施肥すると, 夏, 冬ともに, 幼植物体重は有意に増加した. 置換性カリ含量161ppmの土壌でカリを施肥すると, 冬には, 幼植物体重が有意に増加したが, 夏には, 有意な増加は認められなかった. 置換性カリ含量254ppmと343ppmの土壌では, 夏, 冬ともに, カリ施肥による植物体重の有意な増加は認められなかった.
    3. キュウリの実験では, 置換性カリ含量75ppmの土壌でカリを施肥すると, 夏, 冬ともに, 幼植物体重が有意に増加したが, ニンジンの実験では, 冬にだけ, 有意な増加が認められた. 置換性カリ含量161ppm, 254ppm, 343ppmの土壌では, キュウリ, ニンジンのいずれにおいても, 夏, 冬とも, カリ施肥による植物体重の有意な増加は認められなかった.
  • 杉山 信男, 岩田 正利
    1979 年 48 巻 3 号 p. 301-308
    発行日: 1979年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ハツカダイコンの生育に対するカリ施肥の効果と置換性カリ含量との関係, 並びに, その関係に影響を及ぼす要因が, 幼植物の生育について見た場合と収穫時までの生育について見た場合とで同じか, どうかを確かめるために実験を行った. 置換性カリ含量の異なる4種の土壌で, カリ施用量とともに, 窒素, リン酸, 石灰, マグネシウム, ナトリウム, 土壌水分, 光要因のうちの1要因の水準を変えて, 第1本葉が見えるようになるまでハツカダイコンを栽培し, 得られた結果を収穫時まで栽培した既報の結果と比較した.
    1. 置換性カリ含量75ppmの土壌では, いずれの要因のいずれの水準でも, カリを施肥すると, 幼植物体重は有意に増加した.
    2. 置換性カリ含量254ppmと343ppmの土壌では, カリ施肥によって, 幼植物体重が有意に増加することは一度もなかった.
    3. 置換性カリ含量161ppmの土壌でカリを施肥すると, マグネシウムと土壌水分要因の実験では, 水準に関係なく, 幼植物体重は有意に増加した. しかしながら, リン酸, 石灰, ナトリウム, 光要因の実験では, いずれの水準でも, 幼植物体重に対するカリ施肥の効果は認められなかった. 窒素要因の実験では, 硫酸アンモニウムを1g施用した場合には, 幼植物体重に対するカリ施肥の効果が認められなかったが, 3g施用した場合には, カリ施肥の効果が認められた.
    4. 以上の幼植物での結果は, カリ施肥の効果が認められたり, 認められなかったりする土壌の置換性カリ含量が161ppmで, やや低いことを別にすれば, 収穫時まで栽培した既報の結果とよく一致した.
    5. ナトリウムを施用した場合を除き, 置換性カリ含量161ppmの土壌で幼植物体重に対するカリ施肥の効果が認められる場合には, 幼植物体内カリ濃度は3.5%以下であった.
  • トマトにおける単為結果誘起作用
    行永 寿二郎, 尾形 秀, 平林 征男, 高橋 哲也, 三木 信夫
    1979 年 48 巻 3 号 p. 309-321
    発行日: 1979年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1) わい性トマト‘Miniature’の花を供試して, 一連の合成ナフトキノン誘導体のトマトに対する単為結果誘起活性を検索した. その結果, 3-phenyl-4, 9-dihydro-naphth [2, 3-d] isoxazole-4, 9-dione, 2-benzimidoyl-3-hydroxy-1, 4-naphthoquinone, 2-(4-methoxy-benzimidoyl)-3-hydroxy-1, 4-naphthoquinone, 2-(3-pyridylcarbimidoyl)-3-hydroxy-1, 4-naphthoquinone, 2-(4-chlorobenzimidoyl)-3-hydroxy-6, 7-dimethyl-1, 4-naphthoquinone, 6-(or 7-) benzimidoyl-7 (or 6-)-hydroxy-5, 8-dihydroquinoline-5, 8-dione, 2-(N-methylbenzimidoyl) -3-hydroxy-1, 4-naphthoquinoline, 2-benzoyl-3-hydroxy-1, 4-naphthoquinoline, 3, 5′-diphenyl-4-oxo-4, 9-dihydronaphth [2, 3-d] isoxazole-4, 5-spiro-2′-(1′, 3′, 4′-dioxazole) 及び 3, 5′-diphenyl-4, 5-dihydro-naphtho [2, 1-d] isoxazole-5-spiro-2′-1, 3′, 4′-dioxazol-4-one において明らかな単為結果誘起作用が示されたことからこれらが従来の知見とは異なる化学構造をもった植物生長調節質群であることを認めた.
    2) なかでも, 2-benzimidoyl-3-hydroxy-1, 4-naphthoquinone (bendroquinone) の単為結果誘起作用は強力であった. 普通トマト‘福寿2号’においても, 除雄花に bendroquinone を浸漬処理すると単為結果の誘起を示し, その後の果実肥大も花粉交配果実及び合成オーキシンHCPA並びに4CPAによる単為結果果実のそれと差を認めなかった.
    3) Bendroquinone による単為結果誘起の過程を組織学的に観察した. 内皮細胞の分裂生長はHCPA処理と比較して, 開花後2週までは若干緩やかであったが, 開花後3週になると差はなく偽はいへと生長し, HCPA処理と類似していることを認めた.
    4) Bendroquinone は水および溶媒に対し難溶であるので9%水和剤として製剤化し, 半促成ビニルハウス栽培で‘米寿’に着果剤として花房散布した. 第1花房における着果率並びに果実収量はHCPA及び4CPAに比べ若干劣ったが, 第2~第4花房においては逆に勝った. 1株当たりの平均着果率並びに総収量は, bendroquinone200ppm : 73.8%, 15.92kg, 300ppm; 78.8%,15.66kg, HCPA 200ppm ; 73.4%, 16.03kg及び4CPA 30ppm; 60.2%, 13.34kg であった. bendroquinone処理における果実の空胴程度は, HCPA並びに4CPA処理のそれより明らかに少なく, また他の植物部分への薬害症状は全く認められなかった.
    5) Bendroquinone による単為結果の誘起には, HCPA及び4CPAに比べ, 花の発育段階の早い時期に処理することがより効果的であった. またがく上に付着する量及び時間と単為結果誘起との間に密接な関係を認めた. したがって, 散布助剤の添加などが, より一層単為結果誘起効果を安定させるための手法と考えられた.
  • 石田 明, 増井 正夫, 糠谷 明, 小倉 孝保
    1979 年 48 巻 3 号 p. 322-326
    発行日: 1979年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    希釈した海水がカーネーション‘コーラル’の生育と開花に及ぼす影響を明らかにするため実験を行った. 砂または土壌を詰めた木箱 (40×40×12cm) に9本植えとした. 海水を砂耕の場合はホーグランド液で, また, 土耕の場合は水道水で希釈した. 各溶液は0, 100, 250, 500 1,000, 2,000, 3,000ppmのClを含んでいた. 処理は4月10日から開花期まで続けた. 塩害は0と100ppm Cl においてはみられなかった. 砂耕と土耕における開花個体の草たけと地上部新鮮重は, 海水のCl濃度250ppm以上で減少した. また, 開花は500ppm Cl以上で遅れた. 塩害の程度は250ppmから3,000ppmへと高まるにつれて著しくなった. 葉の枯死は砂耕で500ppm以上, 土耕では1,000ppm以上で処理開始後45日頃からみられた. 一般に塩害は土耕より砂耕において著しく, 葉の Mg, Na及び葉, 茎, 花弁のCl含量と高い相関があった. 海水の処理濃度が高まるにつれて葉の全N,P,K含量は減少し, 砂と土壌中のCl, 置換性Mg, Na含量及びECは高まった.
  • 若齢期の低温処理が花芽分化, 開花に及ぼす影響
    藤田 政良
    1979 年 48 巻 3 号 p. 327-335
    発行日: 1979年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    コモンストックの若齢期における低温が花芽分化及び開花に及ぼす影響を検討した.
    1. 多数の実用品種を用いては種5日後から低温処理した時の着花節位は, 分枝系では早生の品種ほど低かった. 一方, 無分枝系では晩生種の安房の春の着花節位が最も高かったが, 極早生種, 早生種及び中生種の間には差が少なかった. 発らいまでの日数は着花節位が低いほど早まった.
    2. 子葉展開時から展開葉数10枚までの各段階から低温処理を行うと, 無分枝系及び分枝系の早生種, 中生種及び晩生種のほとんどの品種において, 着花節位は低温処理開始が早いほど低い傾向が認められた.
    3. 展開葉数10枚時から最低気温4°Cで10~40日間の低温処理を行った. 100%開花に必要な低温日数は, 無分枝系の早生種, 中生種及び分枝系中生種が10日, 分枝系晩生種が20日, 無分枝系晩生種が40日であった. 低温処理終了時に花芽分化していた処理区でのみ高い開花率が得られた.
  • 細谷 毅, 北村 一男, 石上 忠
    1979 年 48 巻 3 号 p. 336-344
    発行日: 1979年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    ポットマムの生育と開花に及ぼす土壌の種類の違いと三要素施肥の影響を知ろうとして, 沖積土と火山灰土を用い, 窒素は液肥で100, 250, 400ppm, りん酸は元肥で鉢当り1,3g, カリは液肥で200, 400, 600ppmとしこれらを組合せた区を設けた.
    1. 土壌の種類の違いによる差は大きく, 沖積土は火山灰土に比べて葉数, 葉長, 葉重, 花重などの生育量がまさった.
    2. 窒素高濃度 (400ppm) 施用は, 初期では生育を抑制し, 開花時では花重を大にした. 窒素施用濃度が高くなるにつれて開花日が早くなった. りん酸は増施により生育量が増大した. カリは生育初期の高濃度施用は生育を抑制したが, 開花時では高濃度がまさった. 窒素とカリは生育初期は低濃度とし, 中, 後期に濃度を高くするのがよい.
    3. 土壌の種類と三要素施肥との関連は大きく, 沖積土は火山灰土より窒素高濃度施用による初期の生育抑制の度合は少く, 後期の生育増は大きかった. りん酸増施効果は火山灰土で大きかった. 火山灰土ではりん酸増施により沖積土に対する開花日の遅れがなくなった. カリの施用効果は沖積土で大きかった.
    4. 三要素の交互作用は, 生育量といずれの二要素間でも概して正の相関がみられたが, 窒素とりん酸で最も大きかった.
    5. 土壌の種類と生育時期に応じて, 三要素のバランスのとれた施肥をすることが大切である.
  • 培地特性が実生の生育に及ぼす影響
    市橋 正一
    1979 年 48 巻 3 号 p. 345-352
    発行日: 1979年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    1. シランの実生の生育のために考案した7種類の培地の特性について調査した. 地上部の生育は各イオンのパーセント比率が, HN4+:K+:Ca++:Mg++=50:30:10:10, NO3-:H2PO4-:SO4--=50:30:20%, 総イオン濃度が60meq/l=∑Cn+=∑An- の時良好であった.また根の生育は, NH4+:K+:Ca++:Mg++=40:30:20:10, NO3-:H2PO4-:SO4--=60:30:10%, 40meq/l=∑Cn+=∑An-の時地上部の生育が損なわれることなく改善された. 根の生育は, NH4+:K+:Ca++:Mg++=20:60:10:10, NO3-:H2PO4-:SO4--=50:30:20%, 20meq/l=∑Cn+=∑An- の時良好であった. そして地上部の生育よ, NH4+:K+:Ca++:Mg++=20:40:30:10, NO3-:H2PO4-:SO4--=60:30:10%, 17meq/l=∑Cn+, 23 Mep/l=∑An- の時根の生育が損なわれることなく改善された. 茎葉と根の生育は比較的低イオン濃度, 低アンそニア濃度の時同時に良好となった.
    2. Knudson′s 培地, 修正 Vacin & Went′s 培地, 子野の培地, Thompson′s 培地, シランのために考案された培地7, 培地8の各培地上での Bletilla striata, Dendrobium nobile, Laelia anceps, Cymbidium ensation ′Purple Quee′×C. Orion, C. pumilum var. album, Paphiopedilum insigne var. sanderae, Dortaenopsis hybrid の各実生の生育について調査した.
    Bletilla は Knudson′s 培地以外の培地で良く生育した. しかし根と茎葉の生育の程度は培地によって異なった. 修正 Vacin & Went′s 培地, 培地7では根と茎葉の正常な生育を示した. しかし Thompson′s 培地では茎葉の, 狩野の培地では根の生育が良好であった.
    D. nobile, L. anceps は狩野の培地で正常にしかも均一に生育した. しかしその他の培地での生育は異常となり, カルス状の組織が発達した. Thompson′s 培地では生体重は大きかったが, 発芽は阻害された.
    CymbidiumD. nobile, L. anceps と多少異なる傾向を示した. Thompson′s 培地では発芽は阻害されず, 生育も良好であった. Knudson′s 培地では C.Sensation ×C.Orion, C.pumilum 両種とも生育は劣り, また C.pumilum の生育は培地7, 培地8でも著しく阻害された.
    Paphiopedilum の生育はすべての培地で劣った. その中では修正 Vacin & Went′s 培地での生育が多少良好であった. Dortaenopsis の生育は Thompson′s 培地で良好であり, 狩野の培地, 培地8で劣った.
  • 兵藤 宏, 長谷川 美典, 伊庭 慶昭, 真子 正史
    1979 年 48 巻 3 号 p. 353-358
    発行日: 1979年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    温州ミカン (Citrus unshiu Marc.) 果実によるCO2排出及び果実内のCO2濃度は果実を板上に46cm, 10回落下させることにより著しく増大した. 増加は非常に急速に起こり, ほとんど遅れ (誘導期) はなかった. 増加したCO2排出速度及びCO2濃度はやがて減少し, 前者では5時間後に,後者では3時間後に増加量は半分になった. 増加したCO2排出速度はもとの値まで戻らなかった. 多分それは果皮そのもののCO2排出速度が落下により高まっていることによるものと思われる. 酸素吸収も落下により促進された. 従って落下により呼吸が促進されていると言える.
    落下により果実内での, また果実外へのエチレンの生成, 放出は高められなかった. アセトアルデヒドの果実空隙内の濃度も落下後短時間では増大しなかった. まだ同定されていないが, Y成分と一時的に名づけられた揮発性物質が落下により急速に果実内空隙に現われた. しかしそれはやがて減少し, 20分以内にもとの低い値に戻った. これらの揮発性物質が落下衝撃による呼吸の増大の誘因物質として働いている可能性は非常に少ない.
  • 落下衝撃の許容限界と軟質ウレタンの緩衝効果
    山下 重良, 和田 年裕, 北野 欣信, 八田 茂嘉, 宇田 拡
    1979 年 48 巻 3 号 p. 359-366
    発行日: 1979年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    温州ミカン果実の砂じょう破壊を指標として, 落下衝撃の許容限界を検討し, 果実の取扱い過程や選果荷造工程における損傷防止に関して調査研究を行なった.
    1) 温州ミカンのM級果実について, 落下時の瞬間最大衝撃値 (以下衝撃値と略す) と砂じょう破壊について検討した.
    衝撃値が10kg 以上に達すると明らかに砂じょうの破壊がみられた.
    2) 落下高, 落下回数と砂じょう破壊の関係について調査した.
    固い材質上に果実を落下させた場合, 砂じょうの破壊は, 落下高 40cm のとき, 1回で起こったが, 落下高30cm では3回まで, 落下高20cm の場合は10回までは起こらなかった.
    落下高30cm での衝撃値はほぼ10kg であった.
    また, 他の果実上に落下させた果実の砂じょう破壊は比較的少ないが, 打撲を受けた下側の果実の砂じょう破壊は大きく, 落下高30cm 以上になると有意に増大した.
    ここで, M級果実の落下高の許容限界は30cm と考えられた.
    3) ミカン果実の落下衝撃を軽減し, 砂じょう破壊を防止するため, 軟質ウレタン(S.C) の緩衝効果について実験した.
    衝撃値を10kg以下に緩和できる厚みの軟質ウレタンは, 砂じょう破壊を確実に防止することができた. また, 70cm以下の落下高では, 20~30mm 厚の軟質ウレタンは衝撃値を最も軽減でき, 50mm 厚では20~30mm厚に比べ, 衝撃値はむしろ増大し, 落下果実の砂じょう破壊も増加した.
  • 果実に対する静圧荷重と堆積厚さの許容限界
    山下 重良, 森本 純平, 宇田 拡
    1979 年 48 巻 3 号 p. 367-373
    発行日: 1979年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    温州ミカン果実の砂じょう破壊を指標として, 果実に対する静圧荷重と堆積厚さの許容限界を見出すために実験を行なった.
    1) 温州ミカンの品種, 果実の大きさと静圧荷重による砂じょう破壊の難易について検討したところ, 普通温州に比べ早生温州の方が, また, 2L, 3L級の大きな果実に比べ, L及びそれ以下の階級の果実が砂じょう破壊を起こしやすかった.
    2) 早生温州のM級果実では1kg以上の荷重で1分間以内に砂じょう破壊が起こったが, 0.5kg では60時間, 0.3kgでは120時間経過しても砂じょう破壊は生じなかった. したがって, 荷重状態が長時間に及ぶ場合は0.5kg を越えないように配慮すべきである.
    3) 果実をばら積みした場合, 最下層のM級果実1個につき0.5kg の荷重が加わる堆積厚さは35cm 程度と計算され, 10日間にわたる堆積実験によってこれを確認したところ, 堆積厚さ33cm では, 砂じょう破壊を生ずることなく安全なことが実証され, 静圧荷重の実験から試算した堆積厚さの許容限界と一致した.
  • モモ果実の熟度, 大きさ, 果肉部位と受傷程度との関係について
    塚本 正秋
    1979 年 48 巻 3 号 p. 374-380
    発行日: 1979年
    公開日: 2007/07/05
    ジャーナル フリー
    モモを材料として, 果実の熟度, 大きさ, 果肉部位と受傷程度との関係を調査した.
    1. 衝撃の場合も圧縮の場合も, 受傷程度と熟度とは密接な関係を持っていた. 特に衝撃試験に於いては, 果実の受傷する限界硬度が見出され, 砂子早生を20cmの高さから厚さ2.7cmのまな板上に落下させた場合にはその限界硬度はφ5/12inchマグネステーラー硬度計で2lbであった.
    2. モモは通常, 果皮直下の果肉部は受傷しなかったが, 熟度が進むと果皮直下まで容易に受傷した. 傷の形状は大体船底型あるいは逆三角形であった.
    3. 果実の重量と受傷程度には関係が認められなかった. ただ, 圧縮した場合, 個詰パック用の小果実は受傷しやすかった.
    4. 果肉部位別では果底部が最も受傷しやすかったが, 調査果実の果肉部位別硬度差は認められなかった.
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