園芸学会雑誌
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71 巻, 6 号
選択された号の論文の18件中1~18を表示しています
  • 史 永忠, 山本 俊哉, 林 建樹
    2002 年 71 巻 6 号 p. 723-729
    発行日: 2002/11/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    ナシにおいて, 51種類のコピア型レトロトランスポゾンの部分配列をクローニングし解析した.塩基配列を基にした系統解析の結果, 得られたレトロトランスポゾンは15のクループに大別され, ナシのゲノム中で非常に多様性に富んでいることが明らかとなった.多くのクローンは他の植物で知られているレトロトランスポゾン様配列とともにグルーピングされたが, いくつかのクローンは既知のトランスポゾンと低い相同性を示した.各グループを代表する8種類のクローンをプローブにしてサザン分析を行った結果, レトロトランスポゾンはナシ属に広く分布していた.バンドの多型は, 種間のみならず種内でも見いだされ, 過去にレトロトランスポゾンの転移が起きたこと, 及び種や品種の分化の過程において多様化が起きたことを示している.サザン分析のバンドのシグナル強度を基にしてコピー数を推定したところ, 少なくとも1000コピーが存在すると考えられた.
  • 矢野 隆, 井上 久雄, 清水 康雄, 新開 志帆, 越智 政勝
    2002 年 71 巻 6 号 p. 730-737
    発行日: 2002/11/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    P. tomentosa台木(PT)とP. persica台木(PP)に接ぎ木したモモ6品種('日川白鳳', '白鳳', 'あかつき', 'よしひめ', 'まさひめ', '川中島白桃'), 7年生樹の収量, 乾物分配, 果実品質および主幹断面積を比較し, PT樹での品種ごとの特徴を検討した.単位面積当たり収量は試験期間を通して'川中島白桃'でPT樹がPP樹より高かった.総フェノール含量は'白鳳', 'よしひめ', 'まさひめ', '川中島白桃'でPT樹が高い傾向であった.PT樹の一樹当たり乾物重はPP樹の35.5∿45.4%程度であり, '白鳳', 'まさひめ'および特に'川中島白桃'のPT樹では1年生枝, 旧枝などの枝幹部への分配率が低く, 果実への分配率が高かった.PT樹では'日川白鳳'を除いて, 主幹部の断面積において樹皮部の占める割合がPP樹より有意に高かった.以上のことよりPT樹では1年生枝への乾物分配が少なくなるなどの物質分配の不均衡が起こりやすく, 特に果実のシンク力の強い'川中島白桃'のPT樹で顕著であった.
  • 山口 正己, 佐藤 功, 石黒 亮
    2002 年 71 巻 6 号 p. 738-746
    発行日: 2002/11/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    オウトウの裂果抵抗性品種・系統を明らかにするとともに, 裂果感受性に関係する要因を明らかにするために, 甘果オウトウ37, 酸果オウトウおよび酸果オウトウとPrunus pensylvanicaの雑種それぞれ1, 計39品種・系統について水浸漬法による裂果程度, 裂果率および水の吸収率と果実重, 果肉硬度, 果頂部, 赤道部, 梗あ部および縫合線部における表皮細胞の縦径および横径との関係について検討を行った.裂果程度および裂果率は水浸漬後時間の経過とともに上昇したが, 品種・系統による差異が認められた.すなわち, 'Turkey Black Heart', 'Jumbonishiki', 'Okitama-6', 'Ebony', 'Venus', 'Valera'などの品種・系統は裂果程度, 裂果率とも小さな値を示したが, 'Napoleon', 'Van', 'Compact Lambert', 'Vic'などの品種では著しい裂果が認められた.果実重, 果肉硬度, 果実の表皮細胞の縦径および横径にも大きな品種間差異が認められた.水浸漬12時間後の裂果程度と果実重, 果肉硬度, 果頂部の表皮細胞縦径および横径との間には, それぞれr=0.664, 0.515, 0.649, 0.515と有意な正の相関が認められた.また, 同じく12時間後の裂果率は果実重, 果肉硬度, 果頂部の表皮細胞縦径および横径との間でr=0.718, 0.503, 0.763, 0.669とそれぞれに有意な正の相関が認められた.このことから, 裂果感受性には果実重, 果肉硬度とともに表皮細胞の大きさ, 特に果頂部の細胞の大きさが強く関係していると考えられた.吸水率は, 果肉硬度, 果頂部表皮細胞の縦径との間で有意な正の相関が得られた.裂果率, 裂果程度と測定項目間の重相関係数を算定したところ, 全測定項目との間で78.8, 69.0%の高い寄与率が得られた.また, 果実重, 果肉硬度, 果頂部縦径との間でも70.7, 57.3%の高い寄与率が得られたことから, これら3つの測定項目により裂果の感受性を推定することが可能であると考えられた.また, 28品種系統について裂果程度, 裂果率, 吸水率の年次間の相関をみたところ, それぞれr=0.885, 0.880, 0.706と有意な高い相関が得られたことから, 本試験で行った水浸漬法による裂果程度の判定が有効であると考えられた.
  • 加納 恭卓, 間野 修一郎
    2002 年 71 巻 6 号 p. 747-751
    発行日: 2002/11/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    サツマイモ(Ipomoea batatas Poir.)を圃場と夜間の地温を低温, 高温および適温に制御した箱で栽培した.圃場のものは, 9月27日の5時, 11時, 17時および23時に掘り上げた.各時刻の植物体の総新鮮重は, 7250g, 7800g, 10650g, 7666gであった.茎中のスクロース含量は5時には44.5mg・g-1DWで, その後, 増加し23時には72.0mg・g-1DWと最大となった.塊根中でも5時に54.9mg・g-1DWと最も小さく, その後, 増加し23時には82.2mg・g-1DWと最大となった.塊根中のデンプン含量は, 5時に312.8mg・g-1DWと最大で, 11時に253.2mg・g-1DWと最小となった.これらの結果から, 塊根では夜間にスクロースよりデンプンが活発に合成されるものと考えられた.夜間の地温が茎および塊根中の糖およびデンプン含量に及ぼす影響を調査した結果, 茎中のスクロース含量は対照区, 低温区で大きく, 高温区で小さくなった.塊根中のスクロース含量は, 高温区で103.9mg・g-1DWと大きく低温区で76.4mg・g-1DWと小さかったのに対し, デンプン含量は低温区で251.2mg・g-1DWと大きく, 高温区で192.3mg・g-1DWと小さくなった.また, 塊根の皮色は低温区で最も鮮やかになった.これらの結果から, 夜間の地温を低温に保持することによりスクロースよりデンプンが活発に合成される結果, 塊根中のデンプン含量は高くなり, 皮色が鮮やかで紛質の高品質の塊根が形成されるものと考えられた.
  • 吉田 康徳, 高橋 春實, 神田 啓臣, 金浜 耕基
    2002 年 71 巻 6 号 p. 752-757
    発行日: 2002/11/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    'ナガイモ'の主枝, むかご, 新芋および花穂の発育に及ぼす日長とジベレリン100ppm(GA)またはウニコナゾールP25ppm(Uni)との組み合わせ処理の影響について調べた.その結果, 主枝の発育は対照とGAが同じ程度であったが, Uniでは対照より著しく抑制された.むかごの発育は, 日長に関係なく, GA処理で対照より著しく抑制された.新芋の発育は対照よりGA処理で促進され, 特に, 24時間日長との組み合わせ処理で著しく促進された.Uni処理は対照より新芋の発育を抑制した.むかごと新芋を加えた重さ(合計重)としてそれらの発育量をみると, 初期の発育量は24時間日長より8時間日長で促進され, 最終の発育量は主枝の発育が優れた24時間日長で8時間日長と同じ程度の大きさに達した.8時間日長, 24時間日長ともに, 花穂の発育は認められた.しかし, 花穂の発育した個体の割合は小さく, 特に, 24時間日長とGAとの組み合わせ処理で小さかった.第1花穂着生節位および1株当たり花穂数に及ぼす日長と植物生長調整物質との組み合わせ処理の影響は明らかでなかった.
  • / 土井 元章, 今西 英雄, Hideo Imanishi
    2002 年 71 巻 6 号 p. 758-764
    発行日: 2002/11/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    9種35系統のFreesia属についての形態および生理生態的特性に基づく分類と, RAPD法による類縁関係の解析を試みた.得られた形態および生理生態的特性のデータから9パラメータを選択してクラスター分析を行ったところ, 同種の系統は同じクラスターにグループ化される傾向にあった.100種類のプライマーのうち30のプライマーを用いて多型を示す86本のバンドを検出した.UPGMA分析法で類縁関係を推定したところ, Freesia属を構成する2つの節は区別されなかったものの, 0.9の距離で8つのグループを分けることができた.F. corymbosaは, F. occidentallisおよびF. refractaから明確に区別することができた.両手法による分類は, 将来Freesia属の種の同定に役に立つと考えられる.
  • 島井 弘男
    2002 年 71 巻 6 号 p. 765-769
    発行日: 2002/11/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    ペチュニアのシュート発達と開花反応を調べるため, 異なる日長と異なる光質を用いて処理した.ペチュニアを遠赤色光に富む白熱灯または赤色光に富む蛍光灯で延長した長日から短日へ, 或いはその逆へ移動する実験をおこなった.その結果, 不十分な光条件下で, 草丈が低く多数の花を咲かせる高品質のペチュニアを生産するためには, 15日間の長日処理(8時間の自然光に続いて8時間の白熱灯照射)を行ったのち, 短日へ移動したものが最も有効であった.しかし, 同じ長日処理を30日間おこなった場合はシュートが著しく伸長して商品価値を減じた.これらの結果から, ペチュニアの草姿は日長と光質を用いて改善されることが示唆された.
  • 杉本 和宏 /, Jonathan Lidbetter
    2002 年 71 巻 6 号 p. 770-776
    発行日: 2002/11/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    オーストラリアの野生植物Goodenia scaevolina F. Muell.の種子発芽が, オーストラリア固有の樹木, フォレストオーク(Allocasuarina torulosa)の葉から生じた煙の水溶液によって促進されることが明らかとなった.煙水溶液は, この樹種の落葉または新鮮葉25gを燃焼させて発生した煙を蒸留水1リットルに飽和させて作製した.煙水溶液の濃度を1/50に希釈して添加したMS培地で, 発芽率は最も高い値を示した.煙の効果には, 煙に含まれる成分と熱の2つの要因が考えられる.煙水溶液とともに, 種子に80℃で1∿10分間の熱処理をすることにより, 発芽率は有意に増加した.しかし, 熱処理の効果は長期間は持続せず, 処理後8週間を経た種子を用いた場合には, むしろ無処理よりも発芽率は低くなった.煙水溶液の発芽促進効果は, 発芽初期にはジベレリン酸1000ppmに類似し, 100日後には, 発芽率はジベレリン酸10ppmと100ppmとの中間の値を示した.1/50の濃度の煙培地での発芽率は, 煙水溶液作製後の8カ月間で日数が増すにしたがって高くなったことから, この間に煙水溶液に何らかの変化が生じたことが考えられた.
  • 山下 謙一郎, 高取 由佳, 田代 洋丞
    2002 年 71 巻 6 号 p. 777-779
    発行日: 2002/11/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    著者らはこれまでにネギ属Cepa節野生種Allium galanthum Kar. et Kir.とネギ(A. fistulosum L.)の戻し交雑後代に細胞質雄性不稔性が生じることを明らかにし, A. galanthum由来の稔性回復遺伝子(Rf)を報告した.本研究ではRfと連鎖するSCARマーカーを開発するため, 戻し交雑後代の雄性可稔個体および雄性不稔個体を供試して, 20種類のランダムプライマーを用いたRAPD分析を行った.A. galanthumとネギの種間で128本のRAPD断片が検出され, それらのうちOPJ-15を用いて検出された約700bpの断片(OPJ15700)がRf遺伝子座と密接な連鎖を示した.つまり, すべての雄性可稔個体はOPJ15700を有し, ほぼ全ての雄性不稔個体はこれを有していなかった.さらに, OPJ15700のクローニング, 塩基配列の決定, および新たなプライマーを用いたPCRの結果, RAPDマーカーOPJ15700をSCARマーカーへ変換することに成功した.本研究で開発したSCARマーカーOPJ15700は, A. galanthumの細胞質をもつネギの雄性可稔個体と雄性不稔個体の同定に有効であると考えられる.
  • 馬 彪, 樽本 勲
    2002 年 71 巻 6 号 p. 780-782
    発行日: 2002/11/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    Lycoris属における倍数性種の成立要因を解明するために, 6種で自殖後代を作出し, その染色体数を調査した.二倍性種の場合, 自殖後代の大部分の個体は親個体と同じ染色体数と核型を示したが, L. sprengeri (2n=22A)の自殖交代で2個体の3倍体(2n=33A)と1個体の3倍体に近い染色体数を有する異数体(2n=32=31A+1M)が, またL. aurea (2n=14=8M+6T)においては1個の四倍体(2n=28=16M+12T)が観察された.また, 三倍性種L. radiata (2n=33A)においては, 二倍体に近い染色体数を有する異数体(2n=24A, 25A)が観察された.これらの結果から, 可稔二倍性種の配偶子形成過程における非還元配偶子の形成とその受精への関与が, Lycoris属における倍数性種成立の要因の1つであると考察された.
  • 長谷川 耕二郎, 高山 典雄, 北島 宣
    2002 年 71 巻 6 号 p. 783-788
    発行日: 2002/11/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    カキ'西条'の15年生成木を供試し, 満開20日前と満開時に針金の被覆線で側枝に結縛処理を行い, 果実発育に及ぼす影響を調査した.また, 結果枝における炭水化物の蓄積量を測定し, 結縛処理が果実発育を促進する機構について検討した.結縛処理によって収穫果実の果皮色や糖度および果実重が優れ, とくに満開20日前結縛では果実重が顕著に増加した.満開20日前の側枝結縛はカキ'西条'の高品質化に有効であると考えられた.結縛処理により果実生長第I期の果実発育は促進された.結縛処理1∿2週間後に比葉重と葉の炭水化物蓄積量が増加した.このことから, 結縛処理によって果実生長第I期の果実発育が促進されるのは, 側枝に同化産物が蓄積されるためと考えられた.満開20日前結縛では, 果実生長第III期の果実発育が顕著に促進された.果実生長第III期には結縛処理部は癒合しており, 葉や枝の炭水化物蓄積量は対照区と同様であった.このことから, 満開20日前結縛による果実生長第III期の果実発育促進は, 果実生長第I期とは異なる機構によるものと考えられた.
  • 宮田 明義, 橋本 和光
    2002 年 71 巻 6 号 p. 789-795
    発行日: 2002/11/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    試験開始時の樹齢が5年生の'青島温州'を供試して, 枝別, 半樹別, 樹別結実および全面結実の4種類の結実方法を設定し, 果実収量, 品質および樹体生育の変化を12年間調査した.1.半樹別結実区における果実の総収量は, 樹別区, 枝別区および全面区に比べて8∿13%多かった.樹別結実区の総収量は, 全面区とほぼ同じであった.2.全面区と枝別結実区では2L級以上の大果が40%を超えたが, 樹別結実区では26%であった.樹別区では商品性の高いM・L級果実の割合が約70%に達した.3.隔年結果指数は, 全面区および枝別区で大きかった.これに対して, 樹別区と半樹別区の指数は小さく, 隔年結果性が小さかった.4.果汁糖度は樹別および半樹別結実区で高く, 全面区では低かった.着色は樹別区において最も促進された.5.樹冠容積の拡大は樹別結実区で最も大きく, 次いで半樹別区であった.15年生樹の樹別区における樹冠容積は, 全面区の1.6倍であった.6.以上の結果から, '青島温州'若齢樹における高品質果実の連年生産には, 半樹別および樹別の交互結実法が有効であり, 管理作業の容易さから判断すれば, 樹別交互結実法が適するといえる.
  • 藤原 隆広, 中山 真義, 菊地 直, 吉岡 宏, 佐藤 文生
    2002 年 71 巻 6 号 p. 796-804
    発行日: 2002/11/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    キャベツセル成型育苗において, 根鉢を乾燥させずに, 地上部に適度な水ストレスを与える方法として, 育苗後期にNaClを施用する方法を考案し, その実用性について検討した.NaCl処理により, 根鉢の浸透ポテンシャルを低くすることで, 灌水量を制限せずに育苗時の地上部水ポテンシャルを低く推移させることができた.NaCl処理によって, 乾物重を減少させずに草丈と葉面積を抑制し, 乾物率の高い苗を生産することができた.また, NaCl処理によって抑制された苗の葉面積は定植後1週間程度で対照区に追いつき, NaCl処理による収量の減少は認められなかった.NaCl処理によるNa含有率の増加に伴い減少したK, CaおよびMg含有率は定植後1週間程度で回復した.NaCl処理によって, クチクラ表面のワックス量が約20%増加し, 定植後の苗の水分損失が抑えられた.NaCl処理開始後2日目から気孔コンダクタンスの低下, 苗の蒸散量の抑制, 水利用効率の向上が認められた.以上の結果, キャベツセル成型育苗における育苗後期のNaCl施用は, 根鉢を乾燥させずに, 苗の徒長的生育を抑制でき, 乾燥ストレス耐性の付与も可能であることから, 実用的な技術になりうることを明らかにした.
  • 壇 和弘, 今田 成雄
    2002 年 71 巻 6 号 p. 805-811
    発行日: 2002/11/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    キュウリ催芽種子を用いて, TTCによる幼根部の染色程度と高温処理後30℃に2日間置いた後の幼根長を測定することにより, 高温耐性獲得のための前処理条件について調査した.催芽種子を30, 35, 37.5, 40, 42.5および45℃で2時間処理した.45℃・2時間処理した催芽種子では幼根部の染色および高温処理後30℃に2日間置いた後の幼根伸長が顕著に抑制され, 幼根が高温により著しくダメージを受けた.次に, 45℃・2時間処理を行う前にあらかじめ催芽種子を30, 35, 37.5, 40, 42.5および45℃で2時間前処理した.37.5および40℃の前処理を行った区では, 45℃・2時間処理によって受ける幼根のダメージが著しく軽減された.また, 37.5および40℃で30分以上の前処理を行うと45℃・2時間処理によって受ける幼根のダメージが軽減された.これらの結果より, あらかじめ37.5および40℃で30分間以上の前処理を行うことにより, その後の高温に対する耐性が獲得されることが明らかになった.また, TTCによる幼根の染色や高温遭遇後の幼根の伸長量測定は, 高温障害の判定に有効であると考えられた.
  • 香取 正人, 渡辺 慶一, 野村 和成, 米田 和夫
    2002 年 71 巻 6 号 p. 812-817
    発行日: 2002/11/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    アジアハス(Nelunbo nucifera), アメリカハス(N. lutea)ならびに種間雑種を含むハナハス23品種を供試して, 開花2日後の花弁について, アントシアニン色素を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分析し, 花色による品種分類との関係について考察した.赤色の花弁のアントシアニンとしてデルフィニジン3-グルコシド, シアニジン3-グルコシド, シアニジン3-アラビノシド, マルビジン3-ガラクトシドおよびマルビジン3-グルコシドが検出された.マルビジン3-グルコシドの占める割合が多かった.緑黄色品種の花弁では微量のキサントフィル類とβ-カロテンが検出された.アントシアニン組成からハナハスは4品種群に分類できた.アントシアニン色素の構成による分類と花色の関係はほぼ一致した.全アントシアニン濃度が高く5種類すべてが比較的高い濃度で含まれる場合は赤色に, 全アントシアニン濃度が比較的高いが, マルビジン3-グルコシドとマルビジン3-ガラクシド以外が検出限界以下の場合にはピンクに, また, 全アントシアニン濃度が低く, マルビジン3-グルコシドのみが検出可能の場合は爪紅に, さらに, これらの色素を全く含まない場合には白色から黄色となった.花弁のアントシアニン5種の量は明度(L*)との間に高い負の相関が認められ, a*値との間では正の相関が認められた.一方, b*値は, マルビジン3-ガラクトシドおよびマルビジン3-グルコシドとの間でのみ負の相関がみられた.以上の結果から, 花弁の色素組成により品種分類が可能であり, アントシアニンとくにマルビジン系色素の濃度は赤色系品種の赤色の濃さに反映していることが示唆された.
  • 劉 政安, 青木 宣明, 伊藤 憲弘, 坂田 祐介
    2002 年 71 巻 6 号 p. 818-825
    発行日: 2002/11/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    中国ボタン品種群の中原品種グループから9品種と, 対照品種として日本ボタン'連鶴'の合計10品種を供試し, 花芽分化・形成過程と促成能力について調査した.調査開始の6月下旬にはすべての品種においてがく片が観察され, 花芽分化の開始が確認された.その後の中国ボタンの花芽形成パターンは, (1) : 花芽分化スピードが早く, 夏季に花芽形成のスピードが鈍ることなく順調に進み, 10月上旬に雌ずい形成が完了するグループ('白鶴臥雪'など3品種), (2) : 花芽分化スピードが中程度で, 10月中旬に雌ずい形成が完了するグループ('珊瑚台'など3品種), (3)花芽分化スピードが遅く, 雌ずい形成は11月上旬にほぼ完了するグループ('錦綉球'など3品種)の3つに分類できた.促成栽培における中国ボタンの萌芽率は低温期間が4週間と短くても100%を示したが, 日本ボタン'連鶴'は極端に低下した.また, 中国ボタン'白鶴臥雪'は低温期間が短くても開花率は比較的高かった.開花の見られた中国ボタン品種における開花はすべての処理区で年内に終了した.年内促成には, 80%以上の開花率を示した'白鶴臥雪', '鳳丹', '淑女装'の3品種が適すると考えられる.
  • 福田 伸二, 長門 潤, 山本 俊哉, 稗圃 直史, 寺井 理治
    2002 年 71 巻 6 号 p. 826-828
    発行日: 2002/11/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    60種類のオペロンプライマーを用いて, RAPD法によりビワ69品種・系統の識別の可能性を検討した.再現性良く増幅がみられた28種類のプライマーから合計135本のバンドが得られた.そのうち, 多型バンドは108本で, E.japonica間では54本の多型バンドが得られた.供試した品種・系統すべてを1本以上のバンド差で識別することができた.
  • 山崎 博子, 濱野 惠, 大和 陽一, 三浦 周行
    2002 年 71 巻 6 号 p. 829-831
    発行日: 2002/11/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    FR透過抑制処理によるワケギのりん茎形成抑制効果は, 夏どり栽培に比べて春どり栽培で低い.春どり栽培での効果の低さがりん茎形成前の低温遭遇に起因することを実証するため, 5または25℃で70日間保存したワケギ'木原晩生1号'のりん茎をFR透過抑制および自然光条件で生育させた.りん茎を25℃で保存した場合, 自然光区ではりん茎が形成されたが, FR透過抑制区ではりん茎形成は完全に抑制された.りん茎を5℃で保存した場合には, 両光質処理区においてりん茎形成が促進され, FR透過抑制処理によってりん茎形成を完全に抑制することはできなかった.FR透過抑制区と自然光区のりん茎形成程度の差は, りん茎を25℃で保存した場合に比べて5℃で保存した場合の方が小さく, FR透過抑制処理によるりん茎形成の抑制効果は前歴の低温遭遇によって低下することが示された.
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