園芸学会雑誌
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72 巻, 5 号
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  • 崔 世茂, 陳 貴林, 新居 直祐
    2003 年 72 巻 5 号 p. 359-365
    発行日: 2003/09/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    1年生ビワ(品種茂木)の接ぎ木樹を用いて土壌乾燥処理が葉と根のソルビトール含量ならびに葉肉と根端分裂組織の細胞核の変化に及ぼす影響について検討した.細胞核は4'-6-diamidino-2-phenylindole (DAPI)染色後,蛍光顕微鏡によって観察した.土壌の乾燥処理はかん水区(対照区),20日間無かん水区(中乾燥区)と25日間無かん水区(強乾燥区)の3段階とし,乾燥程度は葉の飽和水分不足度(WSD)から判定した. WSDの上昇に伴い,葉と根のソルビトール含量は増加し,特に根における増加が顕著であった.強乾燥区のWSDは中乾燥区より高くなったが,葉と根のソルビトール含量には両処理区間で差が見られなかった.乾燥処理終了後かん水によって回復させた結果,葉と根のソルビトール含量は次第に低下した.中乾燥区では回復後の落葉はほとんど見られなかったが,強乾燥区では枯死した供試樹は少なかったものの大部分が落葉した.対照区では新根の発生が見られたのに対して,乾燥処理区では新根の発生は観察されなかった.乾燥処理によって,葉肉と根端組織の細胞核の崩壊が引き起こされるとともに,それらの細胞に蓄積していたデンプン粒が消失した.
  • / 加藤 薫子, 竹村 謙志, 堀 隆哉, 小原 均, 大川 克哉, 松井 弘之 /, Hiroyuki Matsui, Martin J. ...
    2003 年 72 巻 5 号 p. 366-371
    発行日: 2003/09/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    ブドウ'デラウェア'の満開期の前後に,ジベレリン酸(GA3)と硝酸アンモニウム(AMN)との混合液を2回浸漬処理し,無核果粒の着生と生長に及ぼすAMNの影響を1995年と1996年の2年間調査した.いずれの年度においても,またGA3の処理濃度が50ppmあるいは100ppmであっても,開花後の果粒の初期生長は,GA3単用処理区よりもAMNとの混用処理区の方が著しく促進され,特に満開12日後に両処理区間の差が最大となった.AMNの添加による果粒肥大の促進は細胞の肥大によっていたが,AMNの濃度が高いほど果粒肥大が促進される傾向がみられた.収穫期の果粒について,GA3単用処理区とAMNとの混用処理区間で比較すると無核果粒率や滴定酸度に差異は認められなかったが,総可溶性固形物含量は摘粒をしなかった1995年ではやや減少する傾向がみられた.また,果粒重に対するAMNの効果は,果房当たりの着粒数が多いほど高く,特に低濃度のGA3(50ppm)との混用処理区で高かった.本実験結果から,50ppm GA3と25mM AMNとの混用処理は,慣行的に使用されている100ppm GA3単用処理と果粒重において同等またはそれ以上の結果が得られることが明らかとなった.
  • 田村 文男, 千 種弼, 田辺 賢二, 森本 賢, 板井 章浩
    2003 年 72 巻 5 号 p. 372-377
    発行日: 2003/09/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    ニホンナシ'秋栄'果実の成熟,糖蓄積及びみつ症発生抑制に及ぼす夏季せん定及びジベレリン(GA)処理の影響を調査した.いずれの処理区においてもみつ症発生は果実の成熟にともたって増加したが,2000年度及び2001年度とも夏季せん定処理によりみつ症の程度と発生率は低下した.一方,GA処理によりみつ症発生は促進されたが,成熟過程においては夏季せん定によりGAの影響は低下した.しかし完熟期にはその効果は認められなくなった.GA処理によって成熟は促進され,また果実中に高濃度のジベレリン様物質(GAs) が検出されたが,夏季せん定区と対照区の間に内生GAs含量の差は認められなかった.'秋栄'果実中の主な糖は未熟期にはフルクトースとソルビトールであったが,成熟期にはスクロースが最も多くなった.夏季せん定は果実発育と果肉硬度と地色など成熟に関連する指標には影響を及ぼさなかったが,スクロース蓄積の進行を遅延させた.これらの結果から,夏季せん定による'秋栄'のみつ症発生低下の一因は,スクロース蓄積の遅延によるのではないかと考えられた.
  • 千 種弼, 田村 文男, 田辺 賢二, 板井 章浩
    2003 年 72 巻 5 号 p. 378-384
    発行日: 2003/09/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    ニホンナシ'秋栄'および'豊水'においてGA処理はみつ症発生を加速させる.本研究では'秋栄'と'豊水'の両品種を使い,GA処理によって誘導されたみつ症に伴う生理・化学的変化を調査した.GA処理に伴うみつ症の発生率は,'豊水'に比べて'秋栄'で高かった.また,'秋栄'の成熟に伴う糖蓄積は独特の様相を示し,成熟期には'豊水'に比べ2倍のスクロースを蓄積した.両品種ともみつ症の進行にともない果肉硬度の低下,脂質含量の低下,電解質漏出の増加がみられた.みつ症が発生した'秋栄'の組織のエタノール不溶性物質音量は,症状の進行にともない減少したのに対し,'豊水'では顕著な変化はなかった.水可溶性およびCDTA可溶性ペクチン含量は両品種でみつ症の進行にともない増加した,'秋栄'は'豊水'に比べ,2倍以上のヘミセルロースおよびセルロース含量を示し,みつ症の進行にともないそれらの含量は低下した.これらの結果から,'秋栄'のみつ症発症率が高かった原因として,スクロースの過剰な蓄積と,GA処理で誘導したみつ症に伴う組織の生理・化学的変化,特に細胞壁関連物質の品種間差が関係する可能性が示唆された.
  • 崔 永娥, 田尾 龍太郎, 米森 敬三, 杉浦 明
    2003 年 72 巻 5 号 p. 385-388
    発行日: 2003/09/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    Diospyros kakiと近緑野生種との類縁関係を調べるため,Digoxigenin(DIG)-11-UTPによりラベルした8種のカキ属植物の全DNAをプローブとしたgenomic in situ hybridization (GISH)をD. kakiの中期染色体を用いて行った.一連のGISH実験により,用いたゲノミックプローブの中で,D.glandulosaのプローブがD. kakiの染色体に最も強く,かつ染色体全体にかけてハイブリダイズすることが示された.ブロッキングDNAを用いたGISHにおいても,D. glandulosaのプローブのハイブリダイズを阻害するためには,他種より高い濃度のブロッキングDNAが必要であることが示された.今回の実験により,D. kakiおよびD. glandulosaのゲノム内には,共通配列が多数存在することが示唆された.
  • / 杉山 信男, 岩間 俊之, 赤木 博, Hiroshi Akagi
    2003 年 72 巻 5 号 p. 389-392
    発行日: 2003/09/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    腋芽の2次クラウン,ストロンヘの発達に対する頂芽優勢の役割を調べるため,一季成り性イチゴ'とちおとめ'の茎頂を切除した.葉腋に腋芽が見られる完全展開葉3枚,展開中の葉2枚を持つ苗を定植した.定植1日後に茎頂部を展開中の葉とともに除去した.植物体は6時から18時まで25℃,19時から5時までを19℃,15時間日長に制御した温室で栽培した.対照の植物体では,定植後数日のうちにクラウンから新しいストロンが発生した.茎頂部を切除しだ植物体では,切除後3週間目に2次クラウンから新しいストロンが発生した.茎頂部を切除した個体では2次クラウンが3つ形成されたが,対照の個体では第1花房の直下に1つしか形成されなかった.これらの結果は,1次クラウン下部の腋芽は頂芽優勢が破れると,長日,温暖な条件でも2次クラウンに発達することを示唆している.
  • 李 智軍, 名田 和義, 橘 昌司
    2003 年 72 巻 5 号 p. 393-401
    発行日: 2003/09/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    キュウリ(品種:南極2号)の葉の光合成器官の高温順化過程にABAとポリアミンが関与しているかどうかについて調べた.光合成活性は光下での酸素放出速度と光化学系IIのクロロフィル蛍光収率(Fv/Fm)で表した.植物を25/25℃ (昼/夜)から38/38℃に移すと,45℃遭遇による光合成活性の低下が次第に小さくなった.また,高温順化葉から単離したチラコイドは非順化葉から単離したチラコイドに比べて,40℃遭遇による光合成的電子伝達活性の低下や33kDaタンパク質およびマンガンの解離が少なく,高温順化処理によりチラコイドの熱安定性が高まることが示された.このような光合成器官の高温順化にはチラコイド膜の脂質不飽和度の低下が関係していると考えられた.植物を38℃に遭遇させると,葉のABA含量が顕著に低下した.このことは,ABAは光合成の高温順化過程には関与していないことを示している.一方,葉のスペルミジンおよびスペルミン含量は高温順化処理中に徐々に増加した.また,非順化葉に5mMのスペルミジンまたはスペルミンを葉面散布すると光合成器官の熱安定性が高まり,非順化葉から単離したチラコイドに5mMスペルミンを添加すると光化学系の熱失活が軽減された.これらのことは,ポリアミンが光合成器官の高温順化に何らかの役割を果たしていることを示唆する.
  • 宮島 大一郎, 狩戸 郁美, 藤澤 利枝子
    2003 年 72 巻 5 号 p. 402-408
    発行日: 2003/09/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    アサガオ(Ipomoea nil Roth・)における低い種子生産性の原因解明のため,種子形成に失敗した胚珠について調べた.'暁の紫','サンスマイルピンク'における着果率はそれぞれ31%,36%,果実あたり稔実種子数はそれぞれ3.9,2.7,推定した総胚珠数に対する種子稔実率はそれぞれ17%,16%であった.受粉後30日に採取した種子にならなかった胚珠は正常な種子に比べかなり小さかった低これらの多くは開花時の胚珠より大きかった.受精の成功は受粉後3日の胚珠あるいは生長中の種子の珠孔の花粉管により判定可能であった.一方,未受精の胚珠でも生長する果実内で生長したことより受精の成功は胚珠の大きさでは判別することができなかった.受粉後4日以後に採取した種子にならなかった胚珠においては胚のう内の構造物が消失していた.受粉後1-3日に採取した子房あるいは生長中の果実の組織切片においては正常に生長する種子と種子にならない胚珠が見られ,種子にならない胚珠には花粉管が存在するものとしないものがあった.組織切片の観察の結果,人工長粉した花において受精していない胚珠は'サンスマイルブルー','暁の紅'それぞれ64%,71%で,受精後生長を停止したものは'サンスマイルブルー','暁の紅'それぞれ5%,2%のみであった.いずれの品種においても珠心はあるが胚嚢の形成されない胚珠が約4%見られた.多くの胚珠が受精していないことと受精後生長が停止した胚珠が少ないことからアサガオにおける種子生産性が低い原因は主に受精の失敗によると考えられた.
  • 清水 圭一, 橋本 正行, 橋本 文雄, 坂田 祐介
    2003 年 72 巻 5 号 p. 409-414
    発行日: 2003/09/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    アサガオ(Ipomoea nil (L.) Roth.)の品種Violetの未熟胚をN6無機塩類,MS有機栄養素(ビタミン類,グリシン,ミオイノシトール),3mg・liter-1 NAA 及び60g・liter-1ショ糖を含む液体培地で回転培養することによって,効率的に懸濁培養系を確立することに成功した.懸濁培養細胞塊は1週間あたり圧縮細胞容積で1.5倍から2.5倍の増殖を示し,0-0.5mg・liter-1 NAA,60g・liter-1ショ糖および3.2g・liter-1ゲランガムを含むMS培地に移植すると,細胞塊あたり3.57-3.90個の体細胞胚が形成された.体細胞胚を0.2mg・liter-1IAA,2mg・liter-1 BA,30g・liter-1ショ糖および10g・liter-1寒天を含むMS培地にて培養し,形成されたシュートを発根のため,無機栄養素を1/2に減じ,30g・liter-1ショ糖および10g・liter-1寒天を含むMS培地に移植すると小植物体が再生した.懸濁培養細胞塊の圧縮細胞容積0.1mlあたりの小植物体再生数は40個体以上であった.再生した小植物体は順化させ,現在その特性を調査中である.今後,本培養系をプロトプラスト培養,遺伝子導入,変化アサガオの増殖などに適用し,アサガオの育種に利用したいと考える.
  • 濱渦 康範, 花川 卓子
    2003 年 72 巻 5 号 p. 415-421
    発行日: 2003/09/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    供試したセイヨウナシ果実の褐変潜在力は'Bartlett'(Ba),'Aurora'(Au),'Conference'(Co)および'La France'(LF)において低く,'General Leclerc'(GL), 'Grand Cham-pion'(GC),'Beurre Hardy'(BH)および'Josephine de Mal-ines'(JM)において高かった.Ba,Au,CoおよびLFにおいては含水アセトン抽出フェノール面分(AE)の含量は少なく,GL,BH,GCおよびJMでは多かった.後者4品種においては総フェノール物質含量中に占めるAEの比率が高かった.フラバン-3-オール化合物の含量は,Ba,Au,CoおよびLFにおいてはメタノーノレ抽出面分(ME)に多く,AEには少なかったが,GL,BH,GCおよびJMにおいてはAE中の含量がME中の含量と同等もしくは多かった.ブタノール-塩酸法とバニリン法の結果から,BaおよびAuのプロシアニジンの重合度はME,AE両画分中ともに比較的小さく,LF,GL,BH,GCおよびJMにおいては大きいと考えられた.8品種のポリフェノールオキシダーゼ(PPO)活性はそれぞれ異なり,LFで最も高く,GCにおいて低かった.JMより抽出したAEのプロシアニジン高重合体は粗PPOと反応しなかったが,クロロゲン酸の存在下では褐色の色調を強める作用を示した.以上より,プロシアニジン高重合体はセイヨウナシ果実の組織褐変に深く関係し,これらの成分を多く含む品種は褐変潜在力が高いものと考えられた.
  • 岡本 章秀, 須藤 憲一
    2003 年 72 巻 5 号 p. 422-424
    発行日: 2003/09/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    無側枝性キク'岩の白扇'の腋芽が形成されない葉腋の成立過程を明らかにするため,高温によって腋芽が形成されない節が出現する節位の調査と,腋生分裂組織の形態観察を行った.腋芽が形成されない葉腋は高温処理(30/20℃,昼/夜)前に分化していた葉腋から始まった.高温処理した植物体の腋生分裂組織では,貝状帯および分裂組織的細胞からなる丘状の形態が観察された.しかしながら,対照区(20/12℃)でみられる前葉および葉原基は観察されなかった.従って,30/20℃処理は腋生分裂組織における前葉および葉原基の分化の段階に影響し,主軸の頂端分裂組織における腋芽の発生開始には影響を及ぼさないと考えられる.
  • 田中 政信, 中島 寿亀, 森 欣也
    2003 年 72 巻 5 号 p. 425-431
    発行日: 2003/09/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    サトイモ葉柄における諸形質の遺伝特性を明らかにするため,日本の在来品種'水芋'とタイより導入した野生種'Tha-1' を用いて遺伝解析を行った.'水芋'と'Tha-1'の自殖第一世代は親品種よりシュウ酸カルシウム束晶細胞密度が低く,遺伝率は'水芋'で0.487,'Tha-1'で0.511と推定された.F1,F2世代の実生群の束晶細胞密度は連続した変異分布を示し,その平均値は両親のほぼ中間であった.F2の変異分布はF1よりも大きかった.したがって,サトイモ葉柄におけるシュウ酸カルシウム束晶細胞密度は,多因子遺伝形質と推定された.葉柄のアントシアニンの発現はS1およびF1, F2世代の分離比から,単一主動遺伝子によって制御されると推定され,'水芋'はヘテロ,'Tha-1'は劣性ホモの遺伝子型が想定された.また,アントシアニンの量は多因子遺伝形質と推定された.葉身中央部の着色はS1およびF1, F2世代の分離比から,単一主動遺伝子によって制御されると推定され,'水芋'はヘテロ,'Tha-1' は劣性ホモの遺伝子型が想定された.ストロンの発現はS1およびF1,F2世代の分離比から,単一主動遺伝子によって制御されると推定され,'水芋'で劣性ホモ,'Tha-1' で優性ホモの遺伝子型が想定された.
  • 草川 知行, 松丸 恒夫, 青柳 森一
    2003 年 72 巻 5 号 p. 432-439
    発行日: 2003/09/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    春夏どりニンジン栽培において,うね間部分の施肥を省略する減肥栽培(マルチ内施肥)を検討した.また,マルチ内施肥,播種およびマルチ張りのために,これらを一行程で行うことができるようにシーダマルチャと施肥機を組み合わせたマルチ内施肥機を作製した.マルチ内施肥では,1.0kg・a-1の窒素施肥量で,全面全層施肥(2.0kg・a-1)と同等の収量を得ることができた.また,マルチ内施肥によって施肥窒素利用率は全面全層施肥の35%に対して61%に向上し,収穫後にほ場に残存する乾上1kg当たりの硝酸態窒素は全面全層施肥の80mgに対して20mgと少なかった.これらのことから,本施肥法はより少ない肥料で収量を確保し,土壌中の残存窒素も少なくする有効な施肥法であると考えられた.
  • 佐藤 文生, 吉岡 宏, 藤原 隆広, 東尾 久雄, 浦上 敦子, 徳田 進一
    2003 年 72 巻 5 号 p. 440-445
    発行日: 2003/09/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    育苗日数がキャベツセル成型苗の移植後の初期生育と炭水化物の分配に及ぼす影響ついて検討した.容量9mlのセルで育苗したキャベツセル成型苗を播種後14,21および28日目に容量350mlのポットに移植した.苗に蓄積する可溶性糖とデンプンのほとんどは葉に存在した.葉のデンプン濃度は可溶性糖濃度より高く,育苗日数が長くなるにつれ高まった.移植後7日側の相対生長率は育苗日数の長い苗ほど低く,また,茎葉の相対生長率が根より低くなった.移植後の葉面積の増大は下位に位置する葉ほど遅かった.第1葉に蓄積したデンプンは移植後急速に減少した.播種後14日苗では,移植後の根の生育が,第1葉の遮光処理と摘葉処理で同程度抑制されたのに対し,播種後28日苗では,遮光処理による抑制程度が病葉処理より小さかった.播種後21日苗では,苗を移植すると第1葉より取り込まれた14C同化産物の根への分配率が増加した.これらの結果から,キャベツセル成型苗では,育苗日数の増加に伴い葉に蓄積したデンプンは,移植後速やかに分解され,根へ転流すると考えられた.
  • 趙 習コウ, 李 進才, 松井 鋳一郎, 前澤 重禮
    2003 年 72 巻 5 号 p. 446-450
    発行日: 2003/09/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    Cattleeya (SophrolaelioCattleya Estella Jewel 'Kazu-mura')とCymbidium (Cymbidium Sazanami 'Haruno-umi')をUV透過性の異なる2種類のビニールフィルム被覆下(強UV区および弱UV区)で8月1日から60日間栽培し,2年生葉の色素含量および抗酸化酵素活性の変化に及ぼす太陽光のUV放射照度の影響を検討した.葉中のクロロフィルとカロテノイド含量は,Cattleyaでは処理40日目以降,Cymbidiumでは処理20日目以降,強UV区において弱UV区より低い値で推移した.フラボノイド含量は,Cattleyaでは処理20日目以降,強UV区より弱UV区で高い傾向にあったが,Cymbidiumでは逆に処理20日目以降,強UV区の方が高い値を示した.Cattleyaでは弱UV区に比べて強UV区のアスコルビン酸ペルオキシダーゼ(APX)活性は処理10日目以降,カダラーゼ(CAT)活性は処理20~40日にかけて高い値で推移した.一方,CymbidiumではスーパーオキシドジスムターゼおよびCAT活性は弱UV区より強UV区で処理20日目以降低い値で推移し,APX活性も強UV区で低い値を示す傾向がみられた.以上の結果より,強UV条件が色素含量および抗酸化酵素活性に及ぼす影響は両植物種で異なり,UV放射照度に対する両植物種の抗酸化機能の応答性の違いが示唆された.
  • 細田 浩, 大見 和枝, 坂上 和之, 田中 健治
    2003 年 72 巻 5 号 p. 451-456
    発行日: 2003/09/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    タマネギオイルがカットレタスの褐変に及ぼす作用を調べ,褐変抑制作用を示す成分を検索した.タマネギオイルが褐変抑制作用を示すためにはオイルとカットレタスが接触する必要はなく,掲変抑制成分は揮発性成分であると判断した.GC-MS分析により,タマネギオイルの主成分はdipropyl trisulfide, dipropyl disulfide, methyl propyl trisulfide等であることが明らかとなった.HPLCでタマネギオイルを分画し,各画分の褐変抑制作用を調べた結果,活性はかなり分散していたが,dipropyl trisulfide画分は最も褐変抑制作用が強く,以下methyl propyl trisulfide画分, dipropyl disulfide画分, propyl propenyl disulfide画分の順であった.比較した成分の中では, dimethyl trisulfideの比活性が最も強かったが,この成分はタマネギオイル中の存在量が少なく,タマネギオイルの褐変抑制作用は上記主成分によるところが大きいと判断された.また,trisulfideがdisulfideより褐変抑副作用が強いと考えられた.
  • 田中 政信, 中島 寿亀, 森 欣也
    2003 年 72 巻 5 号 p. 457-459
    発行日: 2003/09/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    サトイモ葉柄中のシュウ酸カルシウム束晶細胞形成に及ぼす遮光および土壌水分の影響について検討した."えぐ味"の原因物質である針状結晶を含む束晶細胞の密度は,'水芋','えぐ芋'および'菊芋'のいずれの品種も遮光程度に比例して低くなった.すなわち,連続暗黒処理区では自然光区の30%程度,60%遮光処理区では64~78%まで減少した.一方,多水分で栽培した区は少水分で栽培した区より束晶細胞の密度が低かった.処理区間の束晶細胞密度の差は'筍菊芋','えぐ芋'で大きかったが'水芋'ではほとんど認められなかった.また,若い葉柄ほど束晶細胞の密度が高かった.これらの結果から,光の強さおよび土壌条件がサトイモ葉柄中に生成されるシュウ酸の量および球茎や根からサトイモ葉柄中に移行するカルシウムイオンの量に影響し,それらにより異形細胞内に形成されるシュウ酸カルシウム束晶は影響を受けると推察された.
  • 許 昌国, 中務 明, 加納 弘光, 板村 裕之
    2003 年 72 巻 5 号 p. 460-462
    発行日: 2003/09/15
    公開日: 2008/01/31
    ジャーナル フリー
    カキ'西条'果実の急速な軟化に伴うエチレン生成および3つの細胞壁分解酵素活性を調査した.成熟後期果実は幼果に比べて,エチレン生成量が1/100,ポリガラクツロナーゼ(PG)活性が1/10,β-D-ガラクトシダーゼ(GA-ase)活性が1/2であり,やや軟化が遅くなった.幼果および成熟後期果実ともに,急速な軟化に伴い,α -L-アラビノフラノシダーゼ(AF-ase)の活性が2倍に増加したことから,PG,GA-aseよりもAF-aseのほうが急速な軟化に対して重要な役割を果たしていると思われる.しかしAF-aseは採取時に既にある程度の活性をもつことから,急速な軟化には他の直接的な要因が関与していることも考えられる.以上のことから,カキ'西条'果実の急速な軟化には少なくともAF-aseによる非セルロース性中性多糖類の分解が関連することが示された.
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