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岩谷 文夫, 星野 俊一, 猪狩 次雄, 阿部 俊文, 高野 光太郎, 安藤 正樹, 萩原 賢一, 丹治 雅博, 渡辺 正明, 佐戸川 弘之 ...
1989 年18 巻2 号 p.
611-614
発行日: 1989/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
置換型完全人工心臓の循環制御を目的として, 最近我々は混合静脈血酸素飽和度(SVO
2)の連続モニターを行なっており, 循環諸値との関連, また運動負荷時の人工心臓駆動制御の一方法として, レート応答型ペースメーカーに使用されている圧電センサーの応用に関しても検討を加えた。SVO
2は術後急性期における管理上有用で, 駆動条件の設定及び人工呼吸器からの離脱時の呼吸条件の変更などの際, 良い指標になった。またSVO
2は心拍出量と良く相関し、それに伴って左房圧, 肺動脈圧も良好に推移した。成人男子に人工心臓駆動装置と接続した圧電センサー内臓のペースメーカーを装着し, 運動負荷を行なうと, センサーモードの選択により, 自己心拍数の推移に類似した人工心臓駆動数を得ることが出来, 本センサーの駆動制御への応用の可能性が示唆された。
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―運動負荷量変動時の追従制御―
鎮西 恒雄, 前田 潔, 井街 宏, 阿部 裕輔, 今西 薫, 満渕 邦彦, 米沢 卓実, 藤正 巌, 渥美 和彦
1989 年18 巻2 号 p.
615-618
発行日: 1989/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
日常生活では運動量が時々刻々と変化し、それに応じて心拍出量も変動している。本研究の目的は、一定の運動のみならず変動する運動に対しても追従し得る人工心臓制御方法を開発することにある。
変動する運動量と心拍出量の関係を検討するため、自然心臓ヤギを用い、トレッドミル速度をあらかじめ設定したプログラムに従って変化させながら運動負荷を与えた。自然心ヤギの運動時心拍出量は運動負荷量の増減にともない、増加、減少それぞれの時定数をもって反応した。また、加速度センサー信号の実時間処理により得られる身体活動度は、変動する運動負荷量に対しても良い相関を示し、身体活動度を入力、目標心拍出量を出力とする予測系が作成され、さらに人工心臓制御のための制御アルゴリズムが構築された。本自動制御法を用いることにより人工心臓ヤギのトレッドミル負荷時の血行動態は、変動する運動負荷に対しても自然心臓ヤギのそれとほぼ同一のパターンを示した。
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―拍動流人工心臓及び無拍動流人工心臓―
四津 良平, 井上 正, 下光 輝一, 森本 保, 杉田 洋一, 渡辺 孝, 石川 幹夫, G STACY, G JACOBS, 原崎 弘章 ...
1989 年18 巻2 号 p.
619-623
発行日: 1989/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
拍動流人工心臓(TAH)と無拍動流人工心臓(NPBVB)が同等の運動負荷テストで各々生体と血液ポンプにいかなる反応を与えるかを慢性動物を用いて検討した。【材料と方法】5頭(45-206日)のpusher-plate型TAHと5頭(34-99日)の遠心ポンプ(NP)が植え込まれた仔牛を材料とした。運動前のポンプ流量はTAH群平均92.1±8.1, NPBVB群平均94.8±9.1ml/kg/Minと両群に差はなかった。運動負荷量は1.5MPH 15分間とした。全テスト経過中AH駆動条件は一定とした。そして運動前, 中, 後30分間の各種血行動態と代謝における経時的な変化を検討した。【結論】1. 拍動流と無拍動流人工心臓の仔牛はともに, 1.5MPHの運動負荷に対し良好な耐容能を示した。2. 無拍動群の仔牛は, 運動中動静脈02較差をより増大する事で, O
2デマンドを代償していた。3. 無拍動群はより高いノルエピネフリンの反応がみられた。以上より機械的駆動による完全埋め込み型AHを考えるうえで, 無拍動流ポンプは小型, 効率, Compliance chamberの不必要な点などの利点を有し, 考慮されるべきポンプ型式と考える。
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高野 久輝
1989 年18 巻2 号 p.
624
発行日: 1989/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
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満渕 邦彦, 井街 宏, 阿部 裕輔, 鎮西 恒雄, 前田 潔, 米沢 卓実, 今西 薫, 浅野 雅広, 藤正 巌, 渥美 和彦
1989 年18 巻2 号 p.
625-628
発行日: 1989/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
近年、完全人工心臓動物の病態生理に対する心房性ナトリウム利尿ポリペプタイド(ANP)の関与が検討されているが、本研究では、完全人工心臓装着動物において急性に心房圧を変化させた時の血中ANPの変化を検討すると共に、完全人工心臓装着前後において合成ANPを経静脈的に投与し、組織のANPに対する感受性の変化、およびANPの治療薬としての可能性の検討を行った。その結果、1) 完全人工心臓装着後は急性の心房圧変化に対する血中ANPの変化の反応性は著明に減弱あるいは低下しており、2) 完全人工心臓装着前においてはANPの経静脈的投与に対して明らかなナトリウム利尿が認められ、症例によっては血圧、中心静脈圧の低下も認められたのに対し、装着後ではこれらが認められなかった。これらの原因に関しては現在検討中であるが、完全人工心臓装着動物においては、心房におけるANPの分泌能、および組織におけるANPに対する反応性が共に低下していることが示唆された。
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石川 幹夫, 内田 直樹, 渡辺 孝, 下光 輝一, 四津 良平, 小池 荘介, 那須 通寛, 江本 秀斗, 原崎 弘章, 能勢 之彦, 古 ...
1989 年18 巻2 号 p.
629-632
発行日: 1989/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
完全埋込型人工心臓開発にあたり, ただ一個のactuatorを用いて左右の血液ポンプを, 生体の需要に応じて変化する可変駆出回数で交互に駆動する方式(交互方式)は, 体内に埋め込む装置の容積を縮小する点で有用な方式である。しかし, 生体における必要心拍出量には10~15%の左右差があると言われている。交互方式人工心臓設計に際しこの点を考慮する必要があるか否かを検討した。2頭の牝子牛に気体駆動pusher-plate型血液ポンプを各々二個移植した。一頭には左右とも一回拍出量(SV)の等しいポンプを移植した(equal SV system)。他の一頭では左SVが右に比し10%大きいポンプを用いた(unequal SV system)。それぞれの動物に於て0.5~3, 5マイル/時の多段階運動負荷試験を, 三種類の駆出回数可変型制御方式を用いて行なった。多段階運動負荷試験から, LMAによる完全植込型人工心臓開発に際してはSVの異なる血液ポンプを考慮する心要は無い事が示唆された。
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―とくに低流量駆動補助人工心臓下での流れについて―
片平 美明, 仁田 新一, 山家 智之, 薗部 太郎, 本郷 忠敬, 佐藤 尚, 三浦 誠, 毛利 平, 依田 隆一郎
1989 年18 巻2 号 p.
633-636
発行日: 1989/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
臨床用補助入工心臓(VAD)の開発上, 抗血栓性を含めたVADの特性が, そのシステムに与える影響は極めて大きい。そこで, 傾斜型ディスク弁(Björk-Shiley, BS-21ABP)をVADの人工弁として使用した場合の流体力学的特性を検討するために, 流れの可視化法による定量的解析法を用い, 人工弁とその周囲の流れについて, 特に低流量での流れに焦点をあて, 流体力学的解析を行なつた。その結果, 高流量では比較的均一となる人工弁の流速の分布が, 低流量では人工弁のmajor orifice側に流速の高い領域が偏在し, そのためminor orifice側では流速が極端に低下し, minor orificeとその下流域に血栓形成が起こり易い状況となっていることが明らかとなった。したがって, 血栓形成を防止する上で, 弁機種およびサイズに応じて一回拍出量をある値以上に維持することが, 実際のVADの駆動の際に必要であると判断された。
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井街 宏, 鎮西 恒雄, 阿部 裕輔, 満渕 邦彦, 前田 潔, 今西 薫, 米沢 卓実, 浅野 雅広, 藤正 巌, 渥美 和彦
1989 年18 巻2 号 p.
637-640
発行日: 1989/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
血液ポンプと一体化できる高分子製人工心臓用弁を新しい発想に基づいて設計した。この弁は多数の円孔あるいはスリットを設けた弁座の中心部に薄い高分子膜を固定するという単純な構造で、従来努力されてきた中心流を得るための弁構造とは発想を変え、環状流にすることにより構造や製作方法の簡易化と高性能化を同時に実現し得た。
直径3mmと4mmの孔を4個づつ設けた直径16mmの真鍮製弁座の中心に厚さ0.2mmのCardiothane膜を固定した弁を試作し、サック型人工心臓ポンプの流入・流出口に挿入し、模擬循環装置によりその種々の特性を調べBjork-Shiley (B-S)弁と比較した結果、(1) ポンプの流最特性は、同径のB-S弁を用いた場合のポンプ特性とほぼ'同じである、(2) 逆流特性は同弁より優れている、(3) 弁の中心部や辺縁部は良く洗われ流れの淀みがないなど人工心臓用弁として優れた特性を示した。
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福増 廣幸
1989 年18 巻2 号 p.
641
発行日: 1989/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
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―模擬循環回路における検討―
関井 浩義, 高野 久輝, 妙中 義之, 高谷 節雄, 野田 裕幸, 木下 正之, 巽 英介, 矢倉 明彦, 阿久津 哲造
1989 年18 巻2 号 p.
642-645
発行日: 1989/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
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左心補助人工心臓(LVAD)駆動時、自己左室1回拍出量を動脈圧波形とLVAD拍出流速信号から連続的に推定することを目的に3種類の方法を考案し、模擬循環回路を使用して評価を行った。1法では動脈コンプライアンス、2法では末梢血管抵抗、3法ではインピーダンスをLVAD拍出毎に流量―圧関係として求め、自己左室拍出時の動脈圧波形を解析することにより、心拍毎に自己左室1回拍出量を推定した。実測拍出量と予測拍出量の間に各方法でr=0.84, y=1.13x+1.5 (ml), r=0.94, y=1.0x+4.0 (ml), r=0.94, y=1.0x+3.9 (ml)の良好な正の相関関係を得た。1法は他2法に較べやや相関性に劣ったが、この原因として、末梢動脈からの流出が考慮されていないことが挙げられる。また、3法では自己左室拍出による流速信号の予測も可能であり、本法により左心機能評価、不全心回復度判定等、LVAD使用中の循環管理がより向上するものと考える。
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三浦 誠, 佐藤 尚, 毛利 平, 山家 智之, 片平 美明, 仁田 新一, 吉澤 誠
1989 年18 巻2 号 p.
646-649
発行日: 1989/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
空気駆動式サック型人工心臓は生体の循環動態の変動に影響され, 拍出量が増減しやすく, センサとして利用することが考えられる。我々は, 左心補助心臓(LVAD)の収縮時間(SD)を操作量, 拍出流量を目標値とする定流量制御システム, およびLVAD装着下の自然心を含あた生体の血管系を一つのインピーダンスとしてモデル化してこれに自己相関・移動平均(ARMA)モデルを適用したオンライン同定システムを開発し, 駆動空気圧と流量を入出力とする時系列解析から血行動態のセンサとしての役割について検討した。山羊を使用した急性動物実験の結果, 定流量制御下のSDには末梢血管抵抗値が反映され, ARMAモデルから求められた周波数応答には, 末梢血管の状態の他, 自然心機能も反映され, その定量化には問題があるものの, LVAD施行下の循環管理には有用と考えられた。
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廣瀬 光, 荻野 均, 神野 君夫, 野本 慎一, 岡林 均, 西村 和修, 岡本 好史, 伴 敏彦, 福増 廣幸
1989 年18 巻2 号 p.
650-653
発行日: 1989/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
空気駆動型人工心臓の拍出量を知る為に、駆動ライン内を流れる排気流量を熱線型流量計で測定し一回拍出量を求める装置を開発、その有用性を模擬回路を使って検討した。ドノバン型模擬回路に装着したトーマス型人工心臓をLDP 180mmHg RDP 70mmHgで駆動、駆動数毎にセットを組み有効拍出量と本装置で測定した一回拍出量を直線回帰により解析した。各セット毎の相関係数はほぼ1.0で全データを合わせた直線回帰式は、左心がLSV
eff=1.09LSV
Air-12.3(ml)相関係数r=0.981、右心がRSV
eff=1.18RSV
Air-4.95(ml)相関係数r=0.989と測定装置として極めて有用と分かった。本装置は補助心臓にも適用可能な汎用性の高いすぐれた装置として期待出来る。また原理上得られる波形データはポンプの機械的トラブルを早期に検出する監視装置として高い有用性を持っており、知見の蓄積と装置の改良をすすめている。
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妙中 義之, 高野 久輝, 関井 浩義, 野田 裕幸, 矢倉 明彦, 木下 正之, 巽 英介, 佐々木 栄作, 阿久津 哲造, 池田 稔
1989 年18 巻2 号 p.
654-659
発行日: 1989/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
人工心臓システムに組み込んだ空気流量計の、非侵襲的かつ連続的な人工心臓機能の監視、自動完全駆出、完全充満(Full-fill・Full-empty)モードでの駆動、人工心臓拍出量の計測、への応用を目的に、モック回路と補助人工心臓装着慢性山羊を用いて検討を行なった。正常駆動時と人工心臓異常時に、特徴的な空気流量波形が検出され、人工心臓の駆動状態の監視と異常の診断への応用の可能性が示唆され、また、空気流量計からの信号を用いて、自動Full-fill・Full-emptyモードでの駆動が安定して行なわれた。人工心臓拍出量の計測は、拡張期の空気流量波形を、ポンプへの血液の流入による部分とそれに無関係な部分に分ける方法で行ない、電磁流量計による測定との間で高い相関と、ほぼ1:1の関係を示し、良好な結果を得た。これらの結果により、駆動ラインに組み込んだ空気流量計は、空気駆動式人工心臓システムの制御性と操縦性の向上に極めて有用であると考えられた。
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藤正 巖
1989 年18 巻2 号 p.
660
発行日: 1989/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
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田中 利明, 井上 紀雄, 杉本 智, 数井 暉久, 小松 作蔵
1989 年18 巻2 号 p.
661-664
発行日: 1989/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
20分間の常温下上行大動脈遮断により作成した重症不全心モデルに対する両心補助人工心臓(BVAD)の心補助効果について検討した。雑種成犬16頭を用い, 不全心作製後, I群(n=8)心補助を施行しないもの, II群(n=8)BVADを3時間施行し, 離脱したものの2群に分けて検討した。I群は, 全例1.5時間以内に死亡した。II群では, BVADにより全身循環を良好に維持することが可能であり, 心室の減圧および心仕事量軽減による心補助効果を示し, その効果は右心においてより著明であった。
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古賀 守, 長谷川 隆光, 塩野 元美, 折目由 紀彦, 畑 博明, 山本 知則, 八木 進也, 鈴木 修, 瀬在 幸安, 斉藤 敏三
1989 年18 巻2 号 p.
665-668
発行日: 1989/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
ブタを用いて右心優位の両心不全モデルを作成し, RVADを装着したものをI群, LVADも併用しBVADとしたものをII群とし, RVADのポンプ流量を増加させ, 経時的にLVADのポンプ流量, 総心拍出量, 右心機能, 左心機能を測定し, 両群を比較検討した。
I群では駆動陽圧が120mmHgを越えると, 補助率は50%以上となり, LAP, LVEDPの上昇, AoP, LVmax dp/dtの低下をきたし, 左心不全の増悪を認めた。これに対しII群では, LVADのポンプ流量はRVADのポンプ流量が増えるにつれ増加し, LVADによりPAPおよびLAPは低下し, 右室後負荷および左室前負荷を軽減させることで, 左心不全を改善し, 両心不全からの離脱も可能であった。両心不全例に対しRVADを装着した場合, その左心不全防止対策としてLVADを併用することは, 極めて有効であると思われた。
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金戸 善之, 清水 健, 会田 博, 坂本 滋, 白川 尚哉
1989 年18 巻2 号 p.
669-672
発行日: 1989/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
当教室において施行した右心補助人工心臓(RVAD)と大動脈内バルーンパンピング(IABP)による6例の両心補助症例からRVADの運用について検討した。両心補助を行った6症例共に補助循環から離脱し、3例(50%)の長期生存を得ることができた。RVADの適用には症例による適応基準を循環動態による適応基準と共に設け、二次的三尖弁閉鎖不全を伴う心疾患で病悩期間が長く著しい心拡大がある、心臓悪液質等の患者では右心不全優勢型両心不全と考え人工心肺の復温時に右心系にRVAD、左心系にIABPを装着し、人工心肺からの離脱を試みて困難と判断すれば直ちに補助循環を行った。RVADの離脱はcatecholamineが減量されていることを前提とし、ポンプのon/offテストによる循環動態の基準を満たすと共にon/off時の血液酸素分圧較差の減少、off時の混合静脈血酸素飽和度70%以上等の血液ガス分析値を参考とした、しかし離脱後も心不全が遷延する症例が多く離脱基準は更に検討する必要があると考えられた。
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入江 博之, 村上 泰治, 石野 幸三, 泉本 浩史, 菅原 英次, 名和 清人, 妹尾 嘉昌, 寺本 滋, 田中 隆, 高谷 節雄
1989 年18 巻2 号 p.
673-676
発行日: 1989/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
二種類の両心補助循環方法、pulsatile ECMO(V-Aバイパス)とBVADを重症両心不全モデルにおいて比較した。実験には24頭の山羊を用い2群にわけた。ECMO群は右房脱血、上行大動脈送血としBVAD群は右房―肺動脈、左房―下行大動脈間をバイパスした。ポンプは空気駆動式プッシャープレート型ポンプを使用した。ECMO群は人工肺に外部灌流型を用い、呼吸を停止させた。
バイパス時間はECMO群9~27時間、BVAD群13~24時間であった。BVAD群は術前心拍出量とほぼ等しいポンプ流量が得られたが、ECMO群は経時的に流量の低下がみられた。
循環補助と同時に呼吸補助も行なうべき症例ではpulsatile ECMOが有用であり、循環補助のみを強力に行なうべき症例ではBVADが有効であると考えられた。
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井街 宏
1989 年18 巻2 号 p.
677
発行日: 1989/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
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(慢性実験による左室不全回復過程の左室全体的及び局所心筋的検討)
中村 孝夫, 林紘 三郎, 関 淳二, 中谷 武嗣, 妙中 義之, 野田 裕幸, 木下 正之, 高野 久輝, 阿久津 哲造
1989 年18 巻2 号 p.
678-681
発行日: 1989/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
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重症心筋梗塞モデルを用いた慢性動物実験で、補助心臓駆動による心機能の回復過程を血行動態的のみならず、超音波センサで左室内変位を測定して、左室全体及び局所心筋のなす機械的仕事量を計算し、心力学的に検討した。この結果、1)ポンプ除去後の心拍数は正常より高い値で安定すること、2)ポンプ除去後の左房圧は除去前のポンプ停止時の値より低くなること、3)ポンプを駆動することによって左室拡張末期容積が小さくなり、従って一回拍出量が減少すること、4)ポンプ駆動時の左室仕事量は停止時よりも少ないこと、5)左室の心機能はポンプ除去後約10日で安定すること、6)虚血部位は補助心臓駆動によってある程度まで回復しうること、7)ポンプ除去後の左室機能のほとんどは健常部位の機能向上によること、等が示された。
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―新しい指標(Pmax/Ped)の妥当性に関する実験的検討―
麻生 俊英, 深町 清孝, 小江 雅弘, 岸崎 邦昭, 戸嶋 良博, 中村 祐一郎, 三谷 淳夫, 坂本 真人, 益田 宗孝, 真弓 久則, ...
1989 年18 巻2 号 p.
682-684
発行日: 1989/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
補助循環中の心機能を評価することは障害心の回復経過, 及びその程度を知り補助循環からの離脱時期を決定する上で重要である. 補助循環中に障害心に負荷をかけることなく測定でき, 心室固有の特性の変化に反応する新しい指標(Pmax/Ped)を考案しその妥当性を雑種成犬14頭を用いて実験的に検討した. ドパミン5μg/kg/minを静注(n=6), あるいは心膜を切開し(n=8), それぞれ収縮期特性と拡張期特性を変化させPmax/Pedを測定した. Pmax/Ped値はドパミン負荷で19.0±7.0より28.6±12.6(p<0.02), また心膜切開にて33.5±6.2より43.8±9.8(p<0.01)へ有意に増加し, Pmax/Pedは心室固有の特性の変化に反応することが示された. 心室内圧を測定すればPmax/Ped値を指標として補助循環中の心機能の推移を連続的にしかも負荷を加えることなく評価できると考える.
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―心臓置換時期の決定に関する検討―
木下 正之, 高野 久輝, 妙中 義之, 中谷 武嗣, 野田 裕幸, 巽 英介, 矢倉 明彦, 関井 浩義, 佐々木 栄作, 阿久津 哲造
1989 年18 巻2 号 p.
685-688
発行日: 1989/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
フリー
左心補助人工心臓(LVAD)を用いた動物実験及び臨床例の検討から、高度不全心め回復可能性の限界と心臓置換時期に関して考察した。動物実験は、左室自由壁の70-80%梗塞モデル(n=7)、80%以上の梗塞モデル(n=3)、常温下大動脈遮断30分モデル(n=3)、45分モデル(n=3)、臨床例は1982年から1987年の16例を対象とし、これらのWAD離脱可否、補助期間及び成績の検討から以下の結論を得た。(1)実験及び臨床例ともに左心補助人工心臓からの離脱時期は補助開始後およそ2週間までに集中しており、現時点で2週間以上補助を必要とする症例が回復する可能性は極めて低いと考えられる。(2)従って、長くとも2週間以上補助を必要とする症例は心臓置換の対象となり得ると考えられる。(3)しかし、主要臓器障害の進行が救命を左右する場合が多く、心臓置換の適応を考える上においても今後その原因と管理方法を動物実験との比較等から再検討する必要がある。
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松本 健郎, 三田村 好矩, 大滝 憲二, 三上 智久
1989 年18 巻2 号 p.
689-692
発行日: 1989/04/15
公開日: 2011/10/07
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補助心臓離脱時期決定のため、心機能の把握をポンプ駆動下に行う方法を検討した。即ち、左房脱血では、左室と補助心は干渉すると考え、その干渉の大きさが心機能を反映すると仮定した。そして、同期駆動時に遅れ時間Tdを変化させ、それによる血行動態の変動を観測した。実験には雑種成犬を用い、補助心臓を左房脱血で同期駆動した。Tdを心周期の10%づつ移動し、各位相での血行動態を健常心・冠動脈結紮による心不全で記録した。Tdの変化で、ポンプ流量は610ml/min/10kg(Td=0%;コパルセーション)から410(Td=50;カウンタパルセーション)の範囲で変動した。不全心では、ポンプ流量変動幅は540から470の範囲へ減少した。変動幅の減少は心拍出量・左房圧・動脈圧でも観察され両心の干渉の程度が心機能を反映することが示された。更に、非同期駆動時の波形を両心の位相差に応じ一心拍毎に処理することによっても同様な結果が得られた。本方式は補助心臓離脱時期を安全に決定する基礎になると考えられる。
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松田 暉
1989 年18 巻2 号 p.
693
発行日: 1989/04/15
公開日: 2011/10/07
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藤田 康雄, 林 純一, 諸 久永, 江口 昭治, 堀 潤一, 斉藤 義明
1989 年18 巻2 号 p.
694-697
発行日: 1989/04/15
公開日: 2011/10/07
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SJM弁閉鎖音周波数スペクトルをfast Fourier transform (FFT)法により検討した。閉鎖音の録音は第三肋間胸骨左縁で行い、A-Dコンバーターにてデジタル化した後、1KHz high pass filterを通過させFFT処理を行った。4例の正常と考えられた大動脈弁位SJM弁の閉鎖音は1.2KHz付近にピークを持ち、その後7.5KHzまで緩やかに減衰した。これに対し間歇的開放位固定をきたした肺動脈弁位SJM弁の1例と、1葉の開放角が低下した肺動脈弁位及び大動脈弁位SJM弁のそれぞれ1例では、2.5KHz付近に深いdipを認めた。血栓弁の早期発見の上でこの2.5KHz付近のdip形成は重要な意義を持つと考えられる。
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五味 昭彦, 竹内 靖夫, 岡村 吉隆, 横室 仁志, 森 秀暁, 服部 淳, 増田 宏
1989 年18 巻2 号 p.
698-701
発行日: 1989/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
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人工弁機能不全の早期診断には人工弁音分析は非常に有用である。我々は2, 4, 6KHzの高周波数フィルタを使用し、シグナルプロセッサ7T17(フーリエ変換)で人工弁音の波形・周波数分析を行った。波形分析は50~500msec間、周波数分析は0~10KHz間に行った。その結果、Björk-Shiley弁Medtronic-Hall弁、SJM弁とDuromedics弁、Starr-Edwards弁(silicone)とSmeloff-Cutter弁はそれぞれ波形・周波数分布とも同様のパターンを示した。本法により、disc弁の5KHz以上の高周波成分を容易に検出できた。50mm間の人工弁音波形を逆フーリエ変換と併用した波形分析は有用で特に複葉弁においては、二枚の弁葉の機能を各々判定でき、多弁置換例の分析を容易にした。しかしながらStarr-Eduwards弁の血栓弁症例では、波形上の変化より周波数分布の変化の方が著明であった。さらにシグナルプロセッサ7T17のプログラムを試作し、日常頻回に検査できるよう、簡便化迅速化をはかった。
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坪田 誠, 三崎 拓郎, 松永 康弘, 岩 喬, 船田 哲男
1989 年18 巻2 号 p.
702-705
発行日: 1989/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
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人工弁機能異常の早期発見を目的に、人工弁閉鎖音の波形分析及び周波数スペクトル分析の、基礎的検討を行った。対象弁は、SJM弁・Duromedics弁・Björk―Shiley弁とした。弁を人工心臓を含む水流回路に組み込み、空中に固定した音響用マイクロホンで、弁閉鎖音を集録した。その音を、マイクロコンピューターを用いて分析した。波形分析では、各弁に特徴的な波形パターンが認められた。周波数分析では、各弁に特徴的なパターンが認められたが、弁の駆動条件の変化により、周波数スペクトルが変化する弁もあった。具体的には、拍動数を増加させるにつれて、最初のピークをつくる周波数が高くなった。しかし、将来的には、駆動条件などを考慮した波形分析・周波数スペクトル分析を行えば、有力な人工弁機能異常の早期発見法になると考えられた。
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南谷 晴之, 谷下 一夫, 今村 洋二, 井上 正
1989 年18 巻2 号 p.
706-709
発行日: 1989/04/15
公開日: 2011/10/07
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本研究では、大動脈構造と関連して人工弁の装着方向(VO, Valve Orientation)に依存した血流動態と乱流特性の変化を検討すべく、きつい曲がりと3本の主要血管分枝を有する大動脈弓モデルを使用し、レーザードップラ流速計によって拍動流下での流速分布および乱流特性の計測を行った。BSS弁とSJM弁による乱流特性と、人工弁のエネルギー損失や有効開口面積を比較検討し、総合的に流路構i造とVOに依存する人工弁の流体力学的特性を評価するとBSS弁では弁のMajor Orificeが大動脈のOuter Curve側に位置するOCO、SJM弁では2葉が大動脈のOuter CurveとInner Curveに対して直角方向に開放するVOが最適装着方向である。BSS弁による最大乱流強度は弁直上部から大動脈弓頭頂部にかけて発生し、ICOで約58cm/s、SJM弁ではOR1で弁直上部に約43cm/sが観測された。
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青木 淳, 黒住 要, 今井 茂郎, 神野 禎次, 高田 耕二, 重信 雅春, 妹尾 嘉昌, 寺本 滋
1989 年18 巻2 号 p.
710-713
発行日: 1989/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
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僧帽弁置換術症例82例(St. Jude Medical弁(SJM弁)36例, Björk-Shiley弁(B・S弁)46例)を対象として, 超音波ドップラー法により, 人工弁機能を評価し弁機能不全を診断することを目的とし検討した。僧帽弁弁口面積(MVA)は, 超音波ドップラー法により測定したpressure half time(PHT)から220/PHTにて算出し, 左室機能, 人工弁の幾何学的弁口面積(Area), 体表面積(BSA), discの開放角度(Angle)との関係を検討した。SJM弁では, MVAとArea Index(Area/BSA)との間に有意の相関関係を認め, %Area Index(MVA/Area Index×100)は, 102.2±14.8%で, mean-2SDの73%以下の場合に弁機能不全と診断し得ると考えられた。B-S弁では, Angleが58度以下に低下した症例があり, これらの症例では, MVA, %Area Indexが低下していた。また, Angleと%Area Indexとの関係では, Angleが50度以下に低下した症例では%Area Indexが70%以下であり, 70%以下の場合に弁機能不全と診断し得ると考えられた。
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小松 作蔵
1989 年18 巻2 号 p.
714
発行日: 1989/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
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菊田 幸明, 勇田 敏夫, 三田村 好矩, 下岡 聡行
1989 年18 巻2 号 p.
715-718
発行日: 1989/04/15
公開日: 2011/10/07
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人工心臓弁開発における数値流体解析の有用性について検討した。弁の流体力学的特性は、血栓形成および溶血にも関係し、弁形状の設計の重要な要素の1つである。従来、人工弁の開発は、設計、試作、特性評価、改良などが経験的に行なわれており、時間的、経済的に非効率的であった。そこで、我々は人工弁開発に差分法を用いたコンピュータ・シミュレーションによる数値流体解析を導入し、弁形状設計の効率化を試みている。
円管内の層流、円柱まわりの流れにおけるシミュレーション結果は、流れの可視化などの報告とよく一致することが確認された。既存弁のシミュレーション結果では、流れのプロファイルおよび淀みの位置が臨床報告等の結果で裏付けられることが示された。これより、本数値流体解析は、人工弁設計において血栓形成の予測などに効果を示すものと期待できる。
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Mitsuo UMEZU, Allen NUGENT, Chung-Xiu YE, Victor P. CHANG
1989 年18 巻2 号 p.
719-722
発行日: 1989/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
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The hydrodynamic characteristics of four kinds of disk-type heart valves were evaluated using various types of in vitro test systems: a conventional steady flow test apparatus, static & transient regurgitation test systems, and pulse duplicator systems with pneumatically and hydraulically driven pumps. The valves tested were the Carbomedics bileaflet (CM), St. Vincent's delrin disk (SV), and Sorin pyrolitic carbon disk (SO). The Bjork-Shiley monostrut (MS) was used as a control valve. The results were as follows: (1) the hydrodynamics of the SO were slightly worse than the MS or SV in terms of both forward flow resistance and EOA (calculated from Gorlin's formula); (2) the CM had comparable performance to the St. Jude Medical; (3) the SV is recommended for use in mechanical hearts, particularly on the basis of water hammer measurements.
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土肥 健純, 堀内 孝, 鎮西 清行, 太田 裕治, 佐久 一郎, 松本 博志, 井手 博文
1989 年18 巻2 号 p.
723-726
発行日: 1989/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
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現在臨床で広く使われているディスク弁の置換術後の機能評価は、そのX線シネフィルム読影により行われているが、定性的判断に限られる。我々はX線シネフィルムから弁解放角、弁の相対運動などをパーソナルコンピュータにより定量測定する無侵襲運動解析システムを開発した。
本システムは、ディスク弁でもよく用いられるMedtronic-Hall弁、Björk-Shiley弁、St. Jude-Medical弁を対象としている。X線シネフィルム上に撮影されたディスク弁像を1コマづつ輪郭抽出し、その楕円の方程式を決定し、ディスクの法線ベクトル、画面上での中心位置を求め、記録する。得られたデータを、解放角の時間変化、弁と弁座の動画表示などとして表示する。
臨床より得られたシネフィルム数例につき解析を行った。その結果、弁の解放角の不全の他、中には不整脈を呈しているものも見られ、定量的運動評価の有効性を確認できた。
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山田 太郎, 長谷川 隆光, 北村 信三, 大平 政人, 進藤 正二, 陸川 秀智, 塩野 元美, 島田 亮, 今村 好孝, 折目由 紀彦, ...
1989 年18 巻2 号 p.
727-730
発行日: 1989/04/15
公開日: 2011/10/07
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現在三尖弁位の代用弁置換術に関しては、代用弁選択の面で問題の多いところであり、そこで今回、我々は三尖弁位に診ける代用弁の選択にあたり、代用弁の拍動流下水力学的特性を実験した。
拍動流下洞調律時では拍出量は各種代用弁に有意な差は認められなかったが圧較差は生体弁は機械弁に比べて高値を示し有効弁口面積に関してはSJM弁が最大となった。心房細動時では洞調律と比較してSJM弁は有効弁口面積で約10%以下の減少で最も少なく、最も優れた結果となった。
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今村 栄三郎
1989 年18 巻2 号 p.
731
発行日: 1989/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
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下野 高嗣, 高尾 仁二, 片山 芳彦, 小野田 幸治, 金森 由朗, 矢田 公, 草川 實
1989 年18 巻2 号 p.
732-735
発行日: 1989/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
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昭和62年1月より, 63年3月までの1年3ケ月間にMedtronic-Hall弁を用い39例に人工弁置換術を施行した。手術近接期死亡は1例(2.6%)で遠隔期死亡は認めなかった。人工弁に起因する合併症はPVEを1例(2.9%/pt-yr)に認め, 活動期の再弁置換術にて救命した。ドップラー心エコー法による僧帽弁位での弁機能の検討では, サイズ27mmでPHT 81.0±15.2msec, 最大弁圧較差7.82±2.11mmHg, 29mmにてPHT 72.9±12.3msec, 最大弁圧較差6.51±3.93mmHgと良好で, Björk-shiley monostrut弁とほぼ同等であった。Cineradiographyによる最大開放角度の測定では, 大動脈弁位70.7±3.8°, 僧帽弁位64.6±3.9°と理論値を下まわったが, 全例開放運動様式に異常は認めず平均10.8ケ月の観察期間中には血栓弁や血栓塞栓症は認めなかった。術後の血清LDH値はMVR245±78.8, AVR254±55.1, DVR322±90.9と比較的低値で, 弁による溶血は臨床上問題のないレベルであった。
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石原 和明, 原田 順和, 東舘 雅文, 河田 政明, 今井 康晴
1989 年18 巻2 号 p.
736-739
発行日: 1989/04/15
公開日: 2011/10/07
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同種大動脈弁の代用静脈弁の可能性について実験的に検討した。予備実験として冷凍保存した同種大動脈弁を上大静脈に縫合間置した。その後TRを作成し同種大動脈弁の代用静脈弁としての機能を心血管造影検査と心臓カテーテル検査により検討した。同種大動脈弁は拡張期に静脈還流により開放し、収縮期にTRによる逆流により閉鎖した。また圧測定では同種大動脈弁による圧較差は無く、同種大動脈弁はTRによる逆流を防止した。次に慢性実験では新鮮同種大動脈弁を冷凍保存せずに上大静脈に縫合間置し、TR非作成犬とTR作成犬を作成し、経時的に検査を行い検討した。新鮮同種大動脈弁は移植後約2カ月までは代用静脈弁として有効に機能したが3カ月以降は肥厚、短縮しその機能は低下した。しかしながら遠隔期においても僅かな圧較差を有する狭窄に留まるため臨床応用が可能と考えられた。
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村上 達哉, 奥出 潤, 大滝 憲二, 大場 淳一, 郷 一知, 松居 喜郎, 酒井 圭輔, 田辺 達三
1989 年18 巻2 号 p.
740-743
発行日: 1989/04/15
公開日: 2011/10/07
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肺動脈低形成疾患に対するextracardiac conduit repairに使用する目的で、グルタルアルデヒド処理馬心膜を用いたvalved conduitを作製しin vitroで特性評価を行なった。valved conduitの直径を10, 15, 20mmとし、それぞれ二尖弁、三尖弁を装着した。また、弁の縦横の長さの比や弁の形態を変えて比較した。valved conduitを人工弁試験回路に装着し流量圧較差(Lissajous)曲線により比較検討を行なった。二尖弁の場合速い心拍数で拡張期に逆流を生じたのに対し、三尖弁は各種条件下で安定であった。直径10mmのconduitはconduit自身の抵抗が強く、十分な流量が得られなかった。弁の縦横の長さの比では2:3の弁が最も安定した特性を示した。また、弁の形態を角形と丸形で比較したがin vitroでは差はなかった。したがって、conduitの直径は15mm以上が望ましく、装着する弁の形態としては三尖弁で弁の縦横の長さの比が2:3のものが最も適当であると考えられた。
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岩岡 聡, 宮本 魏, 村田 紘崇, 賀来 克彦, 前田 信証
1989 年18 巻2 号 p.
744-747
発行日: 1989/04/15
公開日: 2011/10/07
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1974年10月より1981年1月までにStarr-Edwards(S-E)弁を用いて大動脈弁置換術を行った27例のうち, 手術死亡2例(7.4%)を除く25例を対象に長期予後を検討した。追跡期間は3~13.6年(平均9.3年), 累積で233pt-yrsであり, 100%の追跡が可能であった。術後, 全例にワーファリンによる抗凝血薬療法が施行されていた。遠隔死亡は4例(1.7%/pt-yr)で, 術後10年におけるactuarial survival rateは82.8±7.8%であった。血栓塞栓症, および抗凝血薬療法による出血性合併症の発生は認めなかった。S-E弁に起因する合併症は3例(1.3%/pt-yr)のみで, 合併症の非発生率は10年で87.0±7.0%と良好であった。合併症の内訳はcloth wearによる溶血性貧血が2例(Model 2320, 2400各1例), 感染性心内膜炎が1例で, いずれも再弁置換術を施行した。本弁は耐久性, 抗血栓性に優れ, 遠隔期(平均10年)におけるNYHA心機能分類では88%がI~II度と良好であり, 臨床的にほぼ満足できるものであった。
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高木 啓之, 岡本 晃榿, 佐藤 元美
1989 年18 巻2 号 p.
748-751
発行日: 1989/04/15
公開日: 2011/10/07
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新しいleaflet-trypeの人工弁を開発した。この弁は、我々が10年以上前に開発したpocketless leaf valveの考え方の流れを汲むもので、弁機能の追求と抗血栓性の追求とを分離せしめるデザインから生まれたものである。この基本は、弁膜の自由縁と結合縁のどの部分も、自由縁の動きが制限されないように両者は充分に離れたデザインというものである。これには4種類の基本型があるが、その何れも弁機能としては我々が以前に開発したmodified duct ball valveにはかなわない。特に周波数特性で劣るのはleaflet valveの宿命であらう。しかし、外方固定縁型2枚弁は、その占有体積が極めて小さいからTAHの流入弁として非常に有望である。
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妹尾 嘉昌
1989 年18 巻2 号 p.
752
発行日: 1989/04/15
公開日: 2011/10/07
ジャーナル
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青柳 成明, 西 義勝, 平野 顕夫, 田中 攻, 柳 泉, 楊井 剛, 小須 賀健一, 大石 喜六
1989 年18 巻2 号 p.
753-756
発行日: 1989/04/15
公開日: 2011/10/07
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14年10カ月間に377個のBjork-Shiley弁(B-S弁)を用いて大動脈弁置換(AVR)を施行した。臨床所見及び検査所見から血栓弁等の人工弁機能不全がないと思われた30例について、Cineradiographyによりdiscの開閉運動を観察しdisc最大開放角を測定した。また6例の血栓弁についてCineradiogramによるdiscの運動を中心に診断と治療について検討を行った。開放角が60度のConvexo-Concavevalve (CC60)の生体内でのdisc最大開放角は58.8±1.9°で、開放角が70度のMonostrutvalveのそれは69.4±2.1°であった。血栓弁5例では、全例に26~58.9°の開放制限を、4例に9.2~41.8°の閉鎖制限を認めた。血栓溶解療法を行った2例の内、Cineradiogramでdiscの開放制限のみ示した例ではdisc運動の完全な改善をみたが、閉鎖制限を残した例では血栓弁のため再弁置換を要した。以上よりCineradiographyは大動脈弁位B-S弁の血栓弁の診断及び治療法の選択に有用と考えられた。
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矢尾 善英, 長田 一仁, 長田 鉄也, 末定 弘行, 箱島 明, 石川 幹夫, 石丸 新, 古川 欽一
1989 年18 巻2 号 p.
757-760
発行日: 1989/04/15
公開日: 2011/10/07
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Björk Shilly C-C弁をもちいた僧帽弁置換術患者20例にたいしてX線シネ撮影を用いた直視下の弁機能の観察を行った。最大解放角度, 弁座動揺角度, 解放時間, 閉鎖時間は経時的変動は少なく良好な結果を示した。弁座動揺角度は症例による変動が大きく, 10度以上の症例は11例で, これらの弁サイズは全例31mmであり, 左房, 左室の拡大, 肺高血圧が見られた。
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浅井 康文, 山岸 真理, 数井 暉久, 安倍 十三夫, 小松 作蔵
1989 年18 巻2 号 p.
761-764
発行日: 1989/04/15
公開日: 2011/10/07
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教室では1966年より1977年にかけて, 61例の大動脈弁置換にSmeloff-Cutter弁を使用し, 最長観察例は21年1ヵ月を経過した。
早期死亡12例を除く49例のactuarial survival rateは, 1年で98.0%, 10年・84.6%, 15年・84.6%, 22年32.900であった。外来で経過観察し得た30例は, 403 patient year (pt. yr. )で, mirorの血栓・塞栓症2例, 0.5%/pt.yr., majorは4例, 1.0%/pt.yr. であった。また, ワーファリン投与後の亜急性硬膜下血腫を1例経験したが, 血腫除去術により救命し得た。
長期経過に従って, 合併他弁疾患に対する外科治療の機会も多くなるため, UCGを含む慎重な経過観察が必要となる。Smeloff-Cutter弁は耐久性の面では問題はなく, 抗凝血薬および抗血小板薬のコントロールのもと, さらなる長期予後が期待できる。
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平松 健司, 石原 茂樹, 清野 隆吉, 林 和秀
1989 年18 巻2 号 p.
765-767
発行日: 1989/04/15
公開日: 2011/10/07
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1980年10月より1988年4月までの9年間に, 268例に対しSt. Jude Medical (SJM)弁による弁置換手術を行った。内訳は大動脈弁置換術(AVR)101例, 僧帽弁置換術(MVR)121例, 二弁置換術(DVR)46例である。全経過観察期間は1169pt-yrであった。術後30日以内の急性期死亡率はAVR 4.9%, MVR 7.4%, DVR 2.2%であった。急性期死亡を除く実測生存率はAVR 9年91.8%, MVR 9年91.5%, DVR 9年94.6%であった。血栓塞栓症はAVR2例(0.4%/pt-yr), MVR 3例(0.6%/pt-yr), DVR 2例(0.9%/pt-yr)であった。人工弁感染はAVR1例, MVR 1例。perivalvular leakはAVRで2例認められ, いずれも再手術を行った。明らかなleakのない溶血はDVRで1例みられたが, 臨床的には問題とならなかった。9年間のSJM弁による手術成績, 遠隔成績は良好で, 合併症も少なかった。
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関自 昭彦, 松永 仁, 幕内 晴朗, 岡部 英男, 川内 基裕, 田中 公啓, 進藤 剛毅, 古瀬 彰
1989 年18 巻2 号 p.
768-771
発行日: 1989/04/15
公開日: 2011/10/07
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1983年9月から1988年3月までに、教室においてSt. Jude Medical弁にて僧帽弁置換術を施行した99例を対象として、その成績を検討した。対象症例には、合併手術を同時施行した症例をすべて含めた。再手術症例は33例(33%)であった。術後30日以内の直接死亡例は7例(7%)であり、遠隔期の死亡は5例であった。1986年6月を境に弁固定方向をantianatomical positionからanatomical pnsitionへ変更している。この2群間で、血清LDH値を比較検討したが、術後早期には差がなく、遠隔期においては、anatomical positionで軽度ではあるが、有意な高値を認めた。しかし、この数値も、臨床的には充分満足出来る値にとどまっており、経過観察中に輸血を要した経験もない。従って、弁組織温存術式の割合が増加している今日、温存弁下組織による弁葉の可動制限が、危惧される場合には、いずれの弁固定方向でも、問題はないと判断された。
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土岡 弘通
1989 年18 巻2 号 p.
772
発行日: 1989/04/15
公開日: 2011/10/07
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渡辺 祝安, 安倍 十三夫, 山田 修, 伊藤 敏行, 木村 希望, 山本 直樹, 浜谷 秀宏, 道井 洋吏, 中村 雅則, 数井 暉久, ...
1989 年18 巻2 号 p.
773-776
発行日: 1989/04/15
公開日: 2011/10/07
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1980年12月より1984年12月末日までに施行したOmniscience (O-S)弁による大動脈弁置換術(AVR)100例(O-S群)と1985年3月より1988年7月末日までに施行したOmnicarbon (O-C)弁によるAVR88例(O-C群)の累積追跡期間145pt-yr., 135pt-yrの遠隔成績を比較検討した。遠隔死は0-S群8例(5.5%/pt-yr), 0-C群6例(4.4%/pt-yr)で,弁由来の死因は0-S群5例(3.4%/pt-yr), O-C群2例(1,5%/pt-yr)であった。早期死を除く生存率は,術後4年で0-S群87.5%, O-C群91.7%であり有意差はみられなかった。弁由来の合併症のevent free rateは, 術後4年でO-S群64.6%, O-C群91.6%で有意差(p<0.05)がみられた。血栓塞栓症の発生率は, 0-S群9例(6.2%/pt-yr), O-C群1例(0.7%/Pt*yr)で, event free rateはO-S群84.5%, 0-C群97.8%で有意差(p<0.025)がみられた。O-C弁は0-S弁の改良型であり, 弁機構材質の改良が抗血栓性を向上させうる要因であると考えられた。
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―機械弁と生体弁の比較―
川内 義人, 麻生 俊英, 益田 宗孝, 木下 和彦, 真弓 久則, 戸嶋 良博, 中村 祐一郎, 小江 雅弘, 三谷 淳夫, 深町 清孝, ...
1989 年18 巻2 号 p.
777-780
発行日: 1989/04/15
公開日: 2011/10/07
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1968年から1987年12月までに大動脈弁単弁置換術を施行した168例(機械M弁82・生体B弁86)の遠隔成績を検討した。追跡期間は0.6~20年(平均5.9)年、累積でM弁478P-Y、B弁424P-Yであった。遠隔死は機械弁8例(1.7%/P-Y)、生体弁10例(2.4%/P-Y)であり、早期死を含む実測生存率は10年目でM弁72.3±7%、B弁77.6±8%であった。血栓塞栓症はM弁で9例に12回(2.5%/P-Y)、B弁で2例に2回(0.47%/P-Y)発生し、7年目のTE非発生率はM弁89.2±5%、B弁100%であった(P<0.05)。PVEを伴わない弁機能不全はM弁1例(0.21%/P-Y)、B弁5例(1.2%/P-Y)に発生し、11年目の非発生率はM弁98.7±1%、B弁70.9±14%であった(p<0.05)。再弁置換はM弁3例(0.63%/P-Y)、B弁10例(2.4%/P-Y)におこなわれ、10年目の非発生率はM弁95.4±3%、B弁72.7±9%であった(P<0.05)。遠隔期の薬物療法はM弁で2.9%、B弁で37.7%が不用であった(P<0.0001)。この結果から、大動脈弁位生体弁では特に抗血栓性が優れていることが明らかになった。
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大石 喜六
1989 年18 巻2 号 p.
781
発行日: 1989/04/15
公開日: 2011/10/07
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