日本消化器がん検診学会雑誌
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巻頭言
総説
  • 立道 昌幸, 深井 航太, 古屋 佑子, 中澤 祥子
    2024 年 62 巻 3 号 p. 231-239
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/15
    [早期公開] 公開日: 2024/04/26
    ジャーナル 認証あり

    在職者死亡の第一位は悪性新生物であり, 本来ならがん対策は労働者における最重要の健康課題である。一方で, 労働者の健康管理に関する法体系は, 労働安全衛生法に根拠法をもつことから, 業務に関連する疾病が対象となり, 基本がんは私傷病の範囲として対象外となっている。しかし, 近年治療と仕事の両立支援のガイドラインが発出され, 又, 医療保険者に課せられたデータヘルス計画の中で, 保険者と事業者が協同して社員の健康管理を行うという文脈にて, がん検診も職域での健康施策として議論されるようになった。一方で, 従来より職域でのがん検診は福利厚生の一環として実施され, 基本的には機会の提供としてのみであり, 「検診プログラム」として事業評価しようとする意図は全くない。又, がん検診は法定外健診項目として取り扱われることから社内で健康情報, 特にがん検診の判定結果(がんの疑い)などの機微な健康情報の扱いは, 労働法と個人保護法の観点から敬遠され, 精度管理に対して最大の阻害要因となっている。本論文では, 職域でのがん検診の現状と課題を抽出し, がん検診の事業評価としての精度管理ができる仕組みが職域で構築できる可能性について論じる。

原著
  • 盛一 健太郎, 田中 一之, 野村 好紀, 小林 裕, 杉山 雄哉, 佐々木 貴弘, 坂谷 慧, 高橋 慶太郎, 安藤 勝祥, 上野 伸展, ...
    2024 年 62 巻 3 号 p. 240-249
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/15
    [早期公開] 公開日: 2024/04/26
    ジャーナル 認証あり

    【目的】全大腸内視鏡検査(TCS)による大腸がん検診実施にむけ, 適切な検査間隔や大腸腫瘍の取り扱いを検討する。

    【方法】当院と関連施設でTCSを複数施行し大腸癌を認めた120例について, 1)癌進行度別のTCS間隔とROC解析によるcut-off値, 得られたcut-off値による他病死は除外した疾患特異的生存期間(以下, 生存期間), 2)大腸腫瘍のマネージメントと生存期間, について検討した。

    【結果】1-1)早期69例, 進行大腸癌51例のTCS間隔は47.0±33.1ヵ月, 78.2±45.5ヵ月で有意に進行群が長く, cut-off値は54ヵ月であった。1-2)転移なし群99例, 転移群21例のTCS間隔は54.5±38.6ヵ月, 87.5±45.8ヵ月で転移群が有意に長く, cut-off値は56ヵ月であった。1-3)TCS間隔5年未満群(66例)と5年以上群(54例)で癌発見後の生存期間を比較すると5年未満群が有意に長かった。2)TCSで6mm以上の腫瘍が3個以上遺残した場合, 有意に生存期間が短かった。

    【結論】大腸癌ハイリスク群のTCS間隔は5年が妥当であり, 6mm以上の腫瘍を複数認める場合は積極的に切除することが妥当である可能性が示唆された。

  • 馬嶋 健一郎, 村木 洋介
    2024 年 62 巻 3 号 p. 250-259
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/15
    [早期公開] 公開日: 2024/04/26
    ジャーナル 認証あり

    【背景】プロトンポンプ阻害剤(Proton Pump Inhibitor:PPI)は有効な薬剤であるが, 過剰処方について注意が必要な薬剤である。本研究は上部消化管内視鏡検診がPPI過剰処方の原因となっているかを調査した。

    【対象と方法】任意型か職域における上部内視鏡検診受診者のうち, 胃食道逆流症(Gastroesophageal reflux disease:GERD)に対しPPI内服中の者にアンケート調査を行った。聴取内容は, PPIの内服状況(頻度や用量), 内服の契機や期間, 胸やけ症状などを聴取した。過剰PPI処方がなされている者の定義は以下の①~④を全て満たすものとした。①当院の上部消化管内視鏡検診において逆流性食道炎(Reflux esophagitis:RE)の診断結果を受けた。②このREの検診判定は要薬物治療ではなかったが, REの診断を受けたことをきっかけにPPIの投与が開始された。③PPIの投与契機が自覚症状からではない。④現在の症状が1年以上良好であるが毎日の投与が継続されている。

    【結果】148名から回答を得, 過剰処方の定義にあてはまる者は16名(10.8%, 95%信頼区間6.3-17.0%)であった。投与契機となった時期のLos Angeles分類はM6, A6, B4名, PPI継続年中央値は4.5年だった。

    【結語】上部消化管内視鏡検診がPPI過剰処方の契機となりえる事が示唆される。

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