日本小児アレルギー学会誌
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28 巻, 1 号
選択された号の論文の24件中1~24を表示しています
第50回日本小児アレルギー学会 Presidential Plenary 3(会長講演)
Presidential Plenary 1
Presidential Plenary 2
シンポジウム1 沙清さん追悼シンポジウム
シンポジウム3 Hot topics in 食物アレルギー
  • 福冨 友馬
    2014 年 28 巻 1 号 p. 18-24
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/20
    ジャーナル 認証あり
    近年,"(旧)茶のしずく石鹸"(悠香)に含有されていたグルパール19S(片山化学工業研究所)という加水分解コムギ(Hydrolyzed wheat protein, HWP)への経皮経粘膜感作が原因で,経口コムギアレルギー患者が多く発症し社会問題になっている.HWPによるアレルギーの報告は,文献上は2000年頃から主に欧州の医師から報告され始めており,決して日本に固有の問題ではない.本邦では2009年ごろからグルパール19Sにより本疾患の流行が始まり,2010-2011年に自己回収・社会問題化して現在に至る.なぜグルパール19Sを含有する洗顔石鹸でこのように多くの患者が出てしまったのかを明らかにするため,現在様々な研究が進行中である.本稿では,欧州,本邦からPublishされた加水分解コムギアレルギーに関する報告をレビューし最新の知見まで含めて概説したい.
  • 穐山 浩, 海老澤 元宏
    2014 年 28 巻 1 号 p. 25-30
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/20
    ジャーナル 認証あり
    コチニール色素とはサボテンに寄生するカイガラムシ科エンジムシの雌の乾燥虫体を,水あるいはエタノールで抽出して得られる天然の赤色色素である.また,コチニール色素の主色素成分であるカルミン酸のアルミニウム結合物やアルミニウム・カルシウム結合物等による不溶化したものをカルミンという.コチニール色素・カルミンが使われている食品による症例が報告されている.
    エリスリトールは,ブドウ糖を原料とし酵母によって発酵させる事により作られる四炭酸の糖アルコールである.全国調査から甘味料等による即時型アレルギーと確定したケースがこれまで15例あることが報告され,そのうち8例がエリスリトールであった.上記低分子化合物のアレルギーに関して最近の知見を含めて概説する.
  • 佐藤 さくら, 柳田 紀之, 小倉 聖剛, 海老澤 元宏
    2014 年 28 巻 1 号 p. 31-37
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/20
    ジャーナル 認証あり
    経口免疫療法(Oral immunotherapy:OIT)は食物アレルギーの治療として注目されている.OITの効果は食物抗原に対する反応閾値を上昇させ,脱感作状態を誘導することである.しかし,以下のような問題点も明らかになってきた.1)症例多くは治療中に何らかの誘発症状を経験し,時にはアドレナリン筋肉注射を必要とする場合もある,2)重症例へのOITは中等症以下の症例へのそれと比較し,誘発症状の頻度が高く,アドレナリン筋肉注射の使用も多い,3)OITによる脱感作状態は短い治療中止期間で失われる,4)OITで得られた耐性化は自然経過による耐性化とは異なる,5)適切な治療抗原量や必要な治療期間が確立していない.ゆえに我が国ではOITは研究的診療として広く行われているが,いまだ研究段階の治療であり専門施設で臨床研究として行うべきである.
教育講演1
教育講演2
教育講演3
  • 浦島 充佳
    2014 年 28 巻 1 号 p. 42-49
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/20
    ジャーナル 認証あり
    研究目的:STATAという統計ソフトを紹介するとともに,学会時具体例として示した多重代入法について概説する.
    方法:1,271人の妊婦さんにアンケートをとる形で開始した前向きコホート研究.3歳時のChild behavior check list(CBCL)のスコアをアウトカムとした.欠損値については,多重代入法で補正した.
    成績:多重代入法を用いることにより,母親の教育年数が長いと児の行動異常は改善される傾向にあった.一方,妊娠中の喫煙は後の児の行動異常につながることが示唆された.
    新知見:STATAは臨床研究を解析するにあたって非常に有用である.
    『Stataによる医療系データ分析入門』が2014年6月頃に発行される予定である.
教育講演4
  • 黒坂 文武, 清水 一太, 岡 勝巳, 清水 滋太, 高橋 宏暢, 中谷 裕司, 西川 実徳, 藤原 克彦, 水守 康之, 最上 朗, 山田 ...
    2014 年 28 巻 1 号 p. 50-57
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/20
    ジャーナル 認証あり
    姫路市ではアレルギー調査を米国胸部疾患学会の問診票(ATS-DLD)の改訂版を用いて,小学新入生を対象に平成7年より毎年約5,000名に実施してきている.その結果アトピー性皮膚炎は平成7年では17.5%の有症率が平成22年には9.4%と著明に減少していた(P<0.001).気管支喘息は4.8%から4.4%にとやや減少し(P=0.016),アレルギー性鼻炎は8.6%から11.1%に(P<0.001),アレルギー性結膜炎は3.6%から4.5%に,スギ花粉症の疑いは6.7%から8.2%に(P<0.001),いずれも有意に増加した.アトピー性皮膚炎有症率の減少は絨毯の減少,畳の減少と構造の変化による家屋におけるダニの減少が,またアレルギー性鼻炎,アレルギー性結膜炎,スギ花粉症の疑いの有症率の増加はスギ花粉の飛散増大が疑われた.
プロ・コンディベート1
  • 赤澤 晃
    2014 年 28 巻 1 号 p. 58-65
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/20
    ジャーナル 認証あり
    アレルギー疾患の治療の原則は,そのアレルゲンを回避する事である.動物のアレルギーのある人がペットを飼うことは時に喘息発作死やアナフィラキシーショックをおこすことがある.それでも近年は,薬物療法が進歩し症状をコントロールすることができるようになった.ペットを飼いたいという気持ちは人それぞれでありアレルギー治療より優先されることがある.どうしたら飼えるのか.ペットの種類,大きさ,管理のしかた,さらに免疫療法や薬物療法の可能性について考えてみた.
  • 大矢 幸弘
    2014 年 28 巻 1 号 p. 66-70
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/20
    ジャーナル 認証あり
    本題はペットアレルギーの子どもはペットを飼ってよいか,という命題ではなく,ペットアレルギー以外のアレルギー疾患である気管支喘息やアトピー性皮膚炎の子どもはペットを飼ってよいか,ということであろう.しかし,現実にはペットアレルギーを合併している喘息児やアトピー性皮膚炎児がペットを飼っている,あるいは飼いたがる,ということは現実にある.また,ペットアレルギーの発症前の乳児期早期ならば発症抑制効果があるという出生コホート研究の報告もあり,事態は複雑である.アトピー性皮膚炎に関しては乳児期の犬の飼育が発症に悪影響を及ぼさない可能性もあるが,現時点では手放しでペットを飼うことに賛成できる状況にはない.
プロ・コンディベート2
  • 勝沼 俊雄
    2014 年 28 巻 1 号 p. 71-74
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/20
    ジャーナル 認証あり
    小児の喘息管理において吸入ステロイド(ICS)は主要な長期管理薬である.近年,連日吸入に対して,間欠吸入に注目と期待が高まっている.いくつかの重要なエビデンスがある.MIST trialにおいては,乳幼児喘息,軽症持続型相当(ステップ2)の長期管理治療としてブデソニド連日吸入は間欠吸入に対し優越性を示せなかった.TREXA studyにおいては,学童齢の軽症持続型喘息児におけるベクロメタゾン間欠吸入の有効性が示唆されている.さらに連日吸入群において有意な成長抑制が認められたことも示された.気道炎症が沈静化した後の症状コントロール,あるいは薬剤中止に向けた中間的ステップとして,ステロイド間欠吸入は有用な選択肢となりうる.
  • 足立 雄一
    2014 年 28 巻 1 号 p. 75-80
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/20
    ジャーナル 認証あり
    好酸球性炎症を基本病態とする気管支喘息においては,吸入ステロイド薬(ICS)の定期吸入が基本治療となる.しかし,最近の大規模臨床研究において,軽症喘息児ではICSの間欠投与が定期吸入と同等な臨床効果があり,さらに定期吸入によって身長の伸びに有意な影響を与えると報告され,ICSの間欠投与が注目されている.
    身長の伸びはICS開始当初の1-2年で約1 cmの差ができるが,それ以降には大きな変化がない.一方,間欠投与の効果は喘息発作の有無でみると定期吸入と差がないが,喘息無症状期間などいくつかの点で定期吸入に劣っており,その差が長期予後にどのように影響するかは明らかでない.また,間欠投与と言ってもどのようなタイミングでどの程度の期間吸入するかについて統一されたものはなく,実際の指導においては困難が予想される.さらに,間欠投与の適応とされる間欠型の喘息と定期吸入の適応となる持続型の喘息を単に喘息発作の程度や頻度で的確に判断できるかについては明らかでない.
    以上のことから,喘息の長期管理におけるICSの間欠投与の位置付けは不明瞭であり,現時点では推奨される治療法とはならないと考える.
プロ・コンディベート3
  • 長門(伊藤) 直香
    2014 年 28 巻 1 号 p. 81-86
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/20
    ジャーナル 認証あり
    近年,食物アレルギーに対して試みられている経口免疫療法には,主に病院で増量する急速法と主に自宅で増量する緩徐法がある.急速法は緩徐法と比べ,科学的根拠に基づいた様々な利点を持っている.
    免疫療法の有効性を決める因子として,抗原投与の頻度,量,期間などがある.急速法は,抗原投与の頻度が多く(頻度),不応期の利用により目標維持量への到達率も高く(量),到達する速度も速いため,有効な治療期間をより早く開始できる(期間)という利点を持つ.そのため,急速法は,緩徐法よりも有効性・安全性が高い可能性がある.特に,症状誘発閾値が低く,症状重症度が高い患者ほど,自宅で増量する緩徐法は危険であり,病院内で医師が患者に付添い,万全な体制下で漸増する急速法にて治療を行う必要性がある.実際に我々は,最重症と思われる患者を対象に急速法のランダム化比較試験を行い,その有効性とともにQOLの改善も確認している.
    これらの理由から,急速経口免疫療法は,重症食物アレルギー患者においても有効な予後を変え得る治療法として,必要な選択肢のひとつであると考える.
  • 柳田 紀之, 佐藤 さくら, 小倉 聖剛, 海老澤 元宏
    2014 年 28 巻 1 号 p. 87-96
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/20
    ジャーナル 認証あり
    近年,食物アレルギーの治療法として経口免疫療法の有効性が報告されている.
    当院ではこれまでに少量で重篤な症状が誘発される鶏卵76例,牛乳109例,小麦37例に対して急速法を施行した.5日間の入院後に目標量を摂取できるようになった(脱感作状態)のは鶏卵63.0%,牛乳61.3%,小麦71.0%であった.1年後は,鶏卵97.2%,牛乳60.1%,小麦93.3%が脱感作状態にあったが,臨床的耐性獲得率は,鶏卵40.5%,牛乳10.8%,小麦46.7%にとどまった.
    OITは,長期的には多くの症例で脱感作状態へ誘導可能であり,アナフィラキシー対策の観点からは有効な治療と考えられるが耐性化に関してはさらに長期的な治療が必要であると考えられる.一方で,急速法は急速期のみならず維持期にも時には強い全身症状が誘発されることがあり,現在のところ治療反応性の予見因子も不明である.治療効果および安全面から考えると短期の入院期間に摂取量を増量することよりむしろ長期間の治療継続の方が重要であると考えられ,今後はより安全かつ治療効果が高い急速法に代わる治療が求められる.
プロ・コンディベート4
  • 栗原 和幸
    2014 年 28 巻 1 号 p. 97-104
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/20
    ジャーナル 認証あり
    ここ数十年の気管支喘息の薬物療法の進歩には目覚ましいものがあり,発作のコントロールは極めて容易になった.しかし,薬物療法の効果は一時的で,中止とともに速やかにその効果は失われ,遠隔的な予後の改善や発症予防の効果はない.
    アレルゲン免疫療法はIgEが介在して引き起こされる症状を緩和する治療法で,花粉症やハチ毒アレルギーでその有用性は確立している.治療中止後も長期間,効果が持続する.喘息は,アレルゲンの他,ウイルス感染,運動,気象条件,ストレスなどが複雑に影響しながら病状を形成するが,精度の高い多くの研究によって免疫療法の効果は確認されている.短期間の症状抑制の程度は弱いが,吸入ステロイド減量効果や,季節性鼻炎からの喘息の発症に対する予防効果は,特に小児の領域において注目すべき事象である.免疫療法は,アレルギー反応誘発の危険性のために敬遠されがちで,特に我が国ではあまり関心が払われていないが,アレルギー疾患の根治療法として関心を持ち続けるべきである.
  • 大嶋 勇成
    2014 年 28 巻 1 号 p. 105-110
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/20
    ジャーナル 認証あり
    アレルゲン特異的免疫療法はアレルギー疾患の自然歴を変える可能性がある唯一の治療法と位置づけられているが,小児気管支喘息に関しては,適応患者が限定され,長期管理薬使用下ではその効果はあっても限定的と考えられる.また,喘息発症予防効果を目的とする場合,低年齢からの開始が必要である.皮下免疫療法に伴う重篤な副作用も考慮すると,現行のアレルゲン特異的免疫療法は花粉症には有用かもしれないが,小児気管支喘息の治療には必要とはいえない.
原著
  • 磯崎 淳, 小張 真吾, 田中 晶, 安藤 枝里子, 中村 陽一
    2014 年 28 巻 1 号 p. 111-118
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/20
    ジャーナル 認証あり
    【背景】本邦でも強制オッシレーション法による呼吸抵抗検査が可能になりつつある.近年,国産機器であるMostGraph(Chest社)が開発された.小児では正常値の報告が散見されるが,個々の測定結果に幅がある.また,小児では周波数依存性もあることから,個々の患児での変化を観察することが重要と考える. 【目的】気管支喘息にて治療・管理を行う患児における,MostGraphの各パラメーターと呼吸機能検査の変化の関連を検討する. 【対象と方法】気管支喘息で通院中の6歳から17歳の患児で,MostGraphによる呼吸抵抗検査,呼吸機能検査を施行した63例を対象に,検査項目ごとの差,ならびに変化率の相関を後方視的に検討した. 【結果】実測値の差では,平均R5と⩒50(ρ=-0.501, p<0.001),FEF25-75(ρ=-0.472, p<0.001)との間に逆相関を認めた.吸気時R5は⩒50(ρ=-0.524, p<0.001)との間に最も強く逆相関していた.変化の割合では,吸気時R5は⩒50と逆相関していた(ρ=-0.515, p<0.001).しかし,呼気,吸気でのMostGraph測定値の変化と呼吸機能検査の変化の相関には大きな差を認めなかった. 【結語】MostGraphは呼吸機能検査ではとらえられない異なる変化を見出す可能性があり,気管支喘息患児での管理・治療への反映も期待される.しかし,これらパラメーターを具体的にどのように利用していくかについては,今後の検討を要する.
  • 小泉 宗光, 楠目 和代
    2014 年 28 巻 1 号 p. 119-125
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/20
    ジャーナル 認証あり
    アトピー性皮膚炎(Atopic dermatitis;以下ADと略す)は増悪・寛解を繰り返す湿疹病変である.客観的な評価指標はSeverity Scoring of Atopic Dermatitis(SCORAD)がよく知られているが評価手段が煩雑である.ADの病勢と血清Thymus and activation-regulated chemokine/CCL17(以下TARCと略す)値が相関することが報告されている.アトピー性皮膚炎の乳児7症例に対して各医師のつけたSCORADの違いとTARC, IgE,好酸球,LDHについて検討した.各医師のつけたSCORADにはばらつきが認められTARCとSCORADは経験年数の多い医師ほど相関する傾向がありアレルギー専門医では有意に相関した.血清TARCはアトピー性皮膚炎の評価の一助となると考えられた.
  • 井上 壽茂, 岡藤 郁夫, 亀田 誠, 末廣 豊, 南部 光彦, 野々村 和男, 廣田 常夫, 三好 麻里, 山岡 孝司, 吉田 晃
    2014 年 28 巻 1 号 p. 126-134
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/20
    ジャーナル 認証あり
    喘息のために入院治療を必要とする小児の実態を明らかにすることを目的に,2011年10, 11月の2か月間に急性増悪発作で入院治療を受けた15歳以下の患児の情報を,近畿2府4県の調査に協力の得られた49医療機関から集計し解析した.対象患者は397例で,5歳以下の乳幼児が66.9%を占めた(中央値は4歳).初回発作による入院と考えられる児が17.7%含まれていた.48.1%の患者が37.5℃以上の発熱を伴い,年齢が低いほど発熱を認める頻度が高かった.入院期間は6.0±3.0日で発熱を伴うと長期化する傾向が見られた.過去1年間に入院の既往のある患者は全体の27.0%を占め,入院を繰り返している例も少数見られた.自院管理中の患者は38.8%に過ぎず,長期管理薬の投与が行われていない児が49.7%を占めていた.小児喘息の管理状況の更なる改善を図るには,早期の喘息診断,的確なコントロール状態の把握に基づいた適切な介入を図るとともに地域における医療連携を深める必要性が示唆される結果であった.
アナフィラキシー対応ワーキンググループ報告
疫学委員会報告
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