Papers in Meteorology and Geophysics
Online ISSN : 1880-6643
Print ISSN : 0031-126X
ISSN-L : 0031-126X
51 巻, 3+4 号
選択された号の論文の2件中1~2を表示しています
原著論文
  • 海洋化学物質循環モデルによる見積もり
    小畑 淳
    2001 年 51 巻 3+4 号 p. 125-145
    発行日: 2001年
    公開日: 2006/07/25
    ジャーナル フリー
     産業革命以後の人間活動で大気中に放出された二酸化炭素の海洋による吸収と蓄積を、気象研開発の海洋化学物質循環モデルを使って調べた。モデルにおける海洋内部の物質混合過程については、従来の水平鉛直拡散に比べてより現実に近い物質分布が得られる等密度面拡散を使用した。海洋モデルの上には一箱の一様な大気が付いており、二酸化炭素を海洋と交換する。産業革命以前の状態に調整したモデルの大気に人為起源二酸化炭素を放出して現代まで計算したところ、1990年には大気二酸化炭素濃度は354μatmに達し、人為起源二酸化炭素放出6GtCのうち2.1GtCを海洋が吸収している。人間活動の影響を受けた新しい大気になじんでいない深い所の水が主に海上風の分布による湧昇でよく供給される亜寒帯域・南極環海・赤道域の海面では吸収量が大きい。海面で吸収された後の海洋内部での分布については、海上風の分布により南北から流れが集まる低中緯度の表面付近、また、北大西洋深層水による南への輸送の影響を受ける西部北大西洋が人為起源二酸化炭素を多く蓄積している。以上の結果は今までの観測やモデルによる見積もりと良く合う。吸収と蓄積については等密度面拡散の役割も大きい。
     計算を未来へ継続した結果、数百年規模での人為起源二酸化炭素の海洋による吸収と蓄積については、北大西洋深層水による海洋内部への輸送の果たす役割の最も大きいことが示唆された。
  • 植田 宏昭
    2001 年 51 巻 3+4 号 p. 147-154
    発行日: 2001年
    公開日: 2006/07/25
    ジャーナル フリー
     1982年から1999年までのNCEP/NCAR再解析データ、外向き長波放射量 (OLR) および海面水温 (SST) データを用いて、赤道でのモンスーンによる季節サイクルとインド洋での双極子モードとの関係を調べた。
     赤道インド洋の西側では半年周期が卓越するが、東インド洋では年周期が顕著であり、この位相差のため季節サイクルの中で秋に西高東低のSSTコントラストが生み出される。年々変動偏差としてみられる双極子モードは、このSSTコントラストがさらに強化されたものとして理解出来る。また、双極子モードの終焉は気候学的に赤道インド洋全域で2月から3月にかけて対流活動が抑制される事と関係している。
     ENSOに伴う反転したウオーカー循環のインド洋への影響は季節によって異なり、夏に出現する場合に効果的に気候学的な西 (東) インド洋での西風を弱 (強) め、大気海洋相互作用を通して引き続く秋に西高東低のSSTコントラストが形成されるものと考えられる。
     このように双極子モードの季節位相固定性の理解においては、モンスーンとENSOの季節による結合過程の違いが重要である。
feedback
Top