要旨: 本研究では日本における自治体等ベースの新生児聴覚スクリーニング検査後の早期診断と早期療育の効果に関する最近の研究レビューを米国等の結果と比較し, わが国における療育研究の経緯を検討することを目的とした。
医学中央雑誌とCiNiiの和文データベースにより, (小児難聴OR難聴OR聴覚障害OR耳鼻咽喉科) AND療育の検索式を用いて, 聴覚障害児の療育に関する研究を検索した。期間は1900年 ~ 2013年の原著・総説とし, 243件検出した。その間の主な研究テーマは, 順に小児難聴診断, 重複障害児療育, 人工内耳と新生児聴覚スクリーニング検査 (NHS) と変化し, 言語リハビリテーションに拡大した。
わが国では2006年に約60%の産科参院施設で新生児にNHSが実施され, 早期診断が進められており, 早期診断により早期療育が開始されていたことは明らかであった。しかし, NHSの受検が非受検児と比べて, 言語発達に良い影響を及ぼすかについて明らかなエビデンスは乏しいといえる。既にわが国では母子保健法による乳幼児期の健診システムが実施されているので, NHS後の追跡率は米国と比べて高く, 今後, 全幼児を対象とした聴覚ヘルスケアシステムの地域事業と, NHS後の経過観察プログラムを同時的に実施することの重要性が示唆された。
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