日本作物学会紀事
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85 巻 , 4 号
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研究論文
栽培
  • 長田 健二, 大角 壮弘, 吉永 悟志, 中野 洋
    2016 年 85 巻 4 号 p. 367-372
    発行日: 2016/10/05
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル フリー

    水稲多収品種における登熟期気象条件と収量との関係とその品種間差異を明らかにする目的で,異なる栽培地における圃場試験データを収集し,出穂後40日間における単位日射量当たり収量(Y/R)と平均気温(T)の関係を整理した.多収品種「べこあおば」,「モミロマン」,「タカナリ」,「北陸193号」と対照品種(「日本晴」,「アキヒカリ」)についてTがおおむね22~29℃の条件で得られた東北~四国での栽培試験データを品種ごとに収集し,Tの各温度階層におけるY/Rの最大値を抽出して解析すると,両者の関係は2次式で近似できることが確認された.この2次式を品種間で比較したところ,2次式の最大値は対照品種と比較して「べこあおば」,「タカナリ」,「北陸193号」では高く,「モミロマン」では対照品種とほぼ同等であった.一方,その最大値が得られるT値については「べこあおば」は21.1と対照品種で得られた値21.2とほぼ一致したのに対し,インド型品種「タカナリ」,「北陸193号」および日印交雑型品種「モミロマン」では23.9~24.7と,対照品種より高い値が得られた.以上の結果より,Tに対するY/Rの反応には多収品種間で差があり,特に「タカナリ」,「北陸193号」,「モミロマン」では従来の日本型品種と比較して登熟適温が3℃程度高いものと考えられた.


  • 渡邊 和洋, 中園 江, 中村 大輔, 西谷 友寛, 西村 奈月, 松島 弘明, 谷尾 昌彦, 江原 宏
    2016 年 85 巻 4 号 p. 373-384
    発行日: 2016/10/05
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル フリー

    コムギの多収栽培技術の開発を目的に,耐倒伏性品種「さとのそら」を供試し,慣行の基肥重点型の施肥体系に対して,基肥を減らし追肥で窒素を増施用する生育後期重点施肥の効果を2カ年にわたって検証した.その結果,生育後期重点施肥により,茎立期以降の乾物成長量の大きくなる時期にLAIが高まったこと,登熟期後半まで葉色,NARが高く維持されたことでCGRが高く経過し,成熟期の総乾物重が大きくなった.一方で,茎立期の茎数が少なくなったことに加えて,この時期に窒素を増肥したことで,茎間の同化産物および窒素の競合が緩和され,茎の生存率が高まり,穂数が増加するとともに,シンク容量の大きな穂が形成されて1穂粒数も増加したものと考えられた.さらに登熟期後半までNARが高く維持されたことで1000粒重も増加した.以上の乾物成長経過および収量構成要素の形成の結果,生育後期重点施肥により,収量を15~50%増加させることが可能であった.一方で,成熟期が遅れること,外観品質の低下や子実タンパクの過剰,土壌の酸性化の助長などの普及技術化に向けて改善すべき課題も明らかとなった.


  • 石丸 知道, 荒木 雅登, 荒木 卓哉, 山本 富三
    2016 年 85 巻 4 号 p. 385-390
    発行日: 2016/10/05
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル フリー

    中華めん用コムギ「ちくしW2号」の子実タンパク質含有率が高位安定化する効率的な施肥体系を構築するために,重窒素標識硫安(以下,15N標識硫安)を用いて,コムギ植物体中の窒素動態ならびに子実窒素含有量における施肥窒素の利用率および施肥窒素と地力窒素の寄与率を明らかにした.コムギ植物体中の窒素構成比は,登熟初期には茎葉で78~83%,穂で17~22%であったが,茎葉に蓄積された窒素が登熟期間中に子実へ転流し,登熟後期には87~89%の窒素が子実へ集積した.施肥ごとの窒素利用率は,基肥が15~20%と最も低く,分げつ肥は37~56%と年次間差が認められ,穂肥および穂揃期追肥は67~74%と高かった.子実窒素含有量における施肥および地力の窒素寄与率は,基肥が4~7%と最も低く,分げつ肥および穂肥が9~14%,穂揃期追肥が24~30%,地力が41~49%で最も高かった.子実タンパク質含有率を高位安定化するための今後の課題として,窒素利用率の低い基肥量の削減,窒素吸収量に年次間で差が認められた分げつ肥の窒素利用率の向上,施肥窒素利用率の高い穂肥の施肥時期および施肥量の見直し,地力の向上による窒素吸収量の増加が挙げられる.

  • 前川 富也, 島田 信二, 浜口 秀生, 加藤 雅康, 藤森 新作
    2016 年 85 巻 4 号 p. 391-402
    発行日: 2016/10/05
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル フリー

    日本のダイズ作は約80%が水田転換畑で栽培され,土壌水分の乾湿がダイズ生産に大きな問題を生じさせている.近年,地下水位をコントロールするシステムが開発され,栽培方法との組み合わせの効果についての情報が求められている.そこで,地下水位制御システム(FOEAS)のメリットを生かした関東地域におけるダイズ栽培方法の確立を目的として,FOEAS圃場において,不耕起狭畦栽培,ロータリ狭畦栽培,慣行ロータリ栽培の3つの栽培法による生育,収量,作業性等への影響を解析した.不耕起狭畦栽培においてFOEAS圃場は対照圃場より,2011,2012年平均で収量が25%,窒素固定量が24%増加しており,FOEAS導入の効果が認められた.FOEAS圃場における不耕起狭畦栽培では,苗立率,生育量,莢数,粒数,百粒重の増加によって,ロータリ狭畦栽培よりも12%の増収( 2010-2012年平均),慣行ロータリ栽培より69%の増収( 2011,2012年平均)となった.また,刈り損じなどを含む実際の収穫量であるコンバイン収量は,倒伏指数が低いことにより,2010,2011年平均で不耕起狭畦栽培はロータリ狭畦栽培に比べ15%,慣行ロータリ栽培に比べて40%増収した.増収のほかに,不耕起狭畦栽培は,ロータリ耕起の栽培方法と比べて,地耐力が高く,降雨後も速やかに作業ができること,播種スピードが速いこと,雑草発生量が少ないこと,中耕培土を省略できることなど,作業性や圃場管理の点で多くの利点を有する.よって,FOEAS圃場と不耕起狭畦栽培の組み合わせは,ダイズの安定生産に大きく貢献できる栽培法であると考えられる.


品質・加工
  • 谷中 美貴子, 高田 兼則, 石川 直幸, 高橋 肇
    2016 年 85 巻 4 号 p. 403-410
    発行日: 2016/10/05
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル フリー

    本研究は,Glu-A1座およびGlu-D1座の遺伝子に支配される高分子量グルテニンサブユニットの構成が異なる4種類の日本麺用コムギの準同質遺伝子系統を,異なる開花期窒素施肥量で栽培し,得られた小麦粉を用いて小麦粉タンパク質含有率の違いがタンパク質組成に及ぼす影響について解析したものである.サイズ排除高速液体クロマトグラフィーにより分画された可溶性ポリマー(EPP),可溶性モノマー(EMP),不溶性ポリマー(UPP)の全タンパク質に占める割合(EPP(%),EMP(%),UPP(%))は,準同質遺伝子系統間で異なり,Glu-D1座サブユニット2+12を持つ場合,Glu-A1座サブユニットの有無でUPP(%)に有意な差はなかったが,Glu-D1座サブユニット2.2+12を持つ場合,Glu-A1座サブユニットが欠失すると,EPP(%),EMP(%)が高く,UPP(%)が低くなった.タンパク質含有率の増加に対し,EPP, EMP, UPPの含有率の増加程度(回帰直線の傾き)は系統間で有意な差はなかったが,Glu-D1座サブユニット2.2+12を持つ場合,Glu-A1座サブユニットが欠失すると,EPP含有率の増加程度が大きく,UPP含有率の増加程度が小さい傾向にあった.Glu-D1サブユニット2.2+12を持つ場合,Glu-A1座サブユニットが欠失すると,タンパク質含有率の増加に対するSDS沈降量の増加程度は有意に小さくなった.この結果はタンパク質含有率の増加に対するEPPやUPPの増加程度の違いに由来すると考えられた.以上の結果より,Glu-D1座サブユニット2.2+12を持つ場合,Glu-A1座サブユニットを導入することで生地物性の向上が期待できると考えられた.


作物生理・細胞工学
  • 西澤 優, 仲村 一郎, 玉城 政信, 伊村 嘉美, アムザド ホサイン モハメド, 鄭 紹輝
    2016 年 85 巻 4 号 p. 411-420
    発行日: 2016/10/05
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル フリー

    野生稲Oryza officinalis Wall ex Wattについて,葉身のO2放出速度およびタンパク質の塩応答性を調査した.21日間のNaCl処理 (50 mM,100 mM) を行ない,耐塩性の高いO. latifolia Desv.,O. sativa L. cv. Pokkaliおよび感受性野生稲のO. rufipogon Griff.と比較した.塩ストレスを受けたO. officinalisのクロロフィル (Chl) 含量は上位葉で対照区より増加する傾向があった.ChlあたりのO2放出速度では,上位葉で対照区より増加する傾向を示したことから,O. officinalisのChl含量および活性は塩ストレスによって増加することが示唆された.葉位別のNa+含有率では,O. officinalisおよびO. latifoliaは,下位葉からNa+を蓄積し,PokkaliおよびO. rufipogonとは異なる挙動を示した.葉身Na+含有率とChlあたりのO2放出速度の関係は,どの種も上位葉では高い相関は認められなかった.葉身タンパク質を二次元電気泳動で解析した結果,O. officinalisの塩処理区で過剰発現したスポット数は53個,葉緑体に局在すると推定されたタンパク質は24個であり他種より多かった.また,塩ストレスによって発現量が高まるタンパク質が認められ,これらはChl合成,光化学系,water-water cycle関連タンパク質と推定された.以上の結果,塩ストレス下のO. officinalisは,Na+の蓄積に関係なく,上位葉の葉面積当たりのO2放出速度を増加させることが明らかになった.その要因の一つとしてChl合成,光化学系,活性酸素除去関連タンパク質の発現の増加が関係していると示唆された.


研究・技術ノート
  • 中元 朋実, 堀元 栄枝
    2016 年 85 巻 4 号 p. 421-426
    発行日: 2016/10/05
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル フリー

    作付体系の多様化の一手段として,油料アマの秋播き栽培の可能性について検討した.2013~2014年と2014~2015年に,京都において,油料アマの代表的な品種であるLirina(春播き用の品種)を栽培した.秋播き栽培として10月中旬,下旬,および11月上旬に播種した際の生育と収量構成要素を調査し,3月中旬と下旬播種の春播き栽培の結果との比較を行った.秋播きしたアマはいずれも翌年の4月に開花し,収穫適期は6月中旬であった.秋播きしたアマの種子収量は2013年次は310~420 g m–2,2014年次は270~350 g m–2であり,収量には3つの播種時期の間に有意な差がみられなかったが,収量構成要素についてみると,播種時期が晩いほど,花序分枝あたりの蒴数が少なく,種子一粒重が大きかった.秋播きは,春播きと同程度あるいはやや高い種子収量を示したが,茎葉部の乾物重が大きく,収穫指数は春播き(31~40%)に比べて小さかった(24~32%).秋播きでは,春播きに比べて,子葉節からの一次分枝の発生数が多く,種子一粒重が大きかった(秋播き5.9~6.5 mg,春播き5.3~6.0 mg).ここで用いた品種では春播きと同等の収量がえられたことから,温暖地ではアマの秋播き栽培による利用が可能と考えられた.


  • 松波 寿典, 片山 勝之
    2016 年 85 巻 4 号 p. 427-434
    発行日: 2016/10/05
    公開日: 2016/10/25
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    東北地域において近年育成された中生で耐倒伏性に優れるダイズ品種あきみやびを秋田県大仙市と岩手県盛岡市において栽植密度を26.9 本/m2の一定とし,条間を24 cm,36 cm,48 cm,株間をそれぞれ15.6 cm,10.4 cm,7.8 cmとした試験区(以下,24 cm区,36 cm区,48 cm区)を設け,一本立てとして晩播狭畦密植栽培し,栽植様式の違いが群落遮蔽程度,生育,収量,品質に及ぼす影響について調査した.両試験地とも48 cm区で群落遮蔽程度が劣り,特に畦間の遮蔽程度が劣る傾向がみられた.開花期において,両試験地とも24 cm区は主茎節数が多かったのに対して,48 cm区は分枝数が少なく,LAIが低い傾向がみられた.成熟期では,24 cm区は48 cm区に比べ,主茎長が長く,主茎節数も多い傾向がみられた.また,24 cm区,36 cm区は48 cm区よりも,成熟期の地上部乾物重が重く,24 cm区では稔実莢数も多く,収量性も優れていた.また,収量は稔実莢数,百粒重,成熟期の地上部乾物重と密接に関係していた.粗タンパク質含有率,外観品質,大粒比率に関して,両試験地とも有意な試験区間差は認められなかった.以上のことから,あきみやびを東北地域において晩播狭畦密植栽培する場合,条間を48 cmにすると群落の遮蔽程度や生育,収量性が劣ることから,条間は24 cmから36 cmとして株間を調整することで,群落は早期に遮蔽され,生育量と莢数が確保され,高収量が得られることが明らかとなった.


  • 阿部 珠代, 小宮山 誠一, 小林 聡, 西村 努, 神野 裕信
    2016 年 85 巻 4 号 p. 435-442
    発行日: 2016/10/05
    公開日: 2016/10/25
    ジャーナル フリー

    吸水率(Water absorption)は,小麦粉の加工適性として重要視される項目の一つである.筆者らは,4gの試料で吸水率が計測できるマイクロドウラボで得られた計測値を,標準法であるファリノグラフでの吸水率と比較し,特性評価における実用性を検討した.ビューラーテストミルで製粉した小麦粉(ビューラー粉)について両機器での吸水率を比較した結果,極めて高い正の相関が認められ,マイクロドウラボはファリノグラフに代替して利用できると判断された.さらに,マイクロドウラボでは生地混捏中に加水する‘オートドリップ’機能を利用して,より簡易・迅速な測定が可能である.また,育種選抜での活用を想定し,少量製粉に対応したブラベンダーテストミルの小麦粉(ブラベンダー粉)で吸水率を測定し,ビューラー粉での結果と比較した.その結果,マイクロドウラボによるブラベンダー粉の吸水率は,常法で測定したビューラー粉の吸水率と相関が高く,マイクロドウラボを用いることでブラベンダー粉での吸水率比較が可能と考えられた.一方,秋まきコムギではブラベンダー粉とビューラー粉の吸水率はほぼ一致したが,春まきコムギでは大きな乖離が認められたため,測定値の一致性を重視する場合は留意が必要である.吸水率以外では,安定度,軟化度においてファリノグラフ測定値との間に正の相関が認められた.以上の結果から,マイクロドウラボは少量の小麦粉を使用した吸水率の迅速な測定に有効であり,ブラベンダー粉での生地特性比較にも利用可能である.


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