表面科学
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17 巻, 5 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 泉 康雄, 倉片 洋, 秋鹿 研一
    1996 年 17 巻 5 号 p. 242-248
    発行日: 1996/05/10
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    Seを含んだ金属クラスターの構造,電子状態を制御し,効率よく選択的な触媒作用が進行する系を開発した。Se原子をRh原子10個の骨格内に包蔵した[Rh10Se(CO)22]2-クラスターをTiO2に担持した触媒は,CO2をエタノールに高活性(8.0mol・cluster-1min-1)かつ高選択的(~83%)に転換した。触媒反応前の真空処理温度とエタノール合成活性との関係をみると,623Kで真空処理した場合に活性最大となった。Rh,SeK吸収端EXAFS解析より,Se-Rh結合距離は623K真空処理のとき2.41Åで極小値をとり,活性最大温度と対応した。包蔵Seを取り囲む[Rh10]クラスター骨格は真空処理温度を上昇させていくに従って,目玉焼きの白味のように中心のSeを覆ったまま徐々にTiO2表面に2次元的に広がったと考えた。XPSおよびSeK吸収端XANES測定より,包蔵Seはelectron acceptorとして働いていることが分かった。以上から,バルク内部Seからのコントロールにより,Rh表面でのメタン生成が抑制された(ロジウム金属的からロジウムカルコゲナイド的になった)と考えられる。 一方,[Rh10Se(CO)22]2-の代わりに炭素を包蔵する[Rh6C(CO)15]2-や何も包蔵しないRh6(CO)16クラスターを用いた場合,あるいは[Rh10Se(CO)22]2-をSiO2,Al2O3またはMgOに担持した場合はいずれもエタノールへの転換の効率が非常に悪いかゼロだった。エタノール合成に必要な因子として,上記の包蔵SeによるRh表面のコントロールのほかに,[Rh10Se]とTiO2との界面にCHyOz種ができる必要があると考えられる。このCHyOZ種が,素早くRh上のCHxと反応することにより,エタノールが選択的に合成されたものと推定した。[Rh10Se]クラスターをTiO2表面への吸着分子と考え,その構造変換,電子状態の変化と触媒作用との関わりについて述べる。
  • 射水 雄三
    1996 年 17 巻 5 号 p. 249-253
    発行日: 1996/05/10
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    固体触媒の活性・選択性を向上させる目的で,しばしば無機物質が添加され,構造・結合修飾剤あるいは選択毒物として触媒表面の反応サイトのアンサンブル構造や電子状態が制御されるが,有機分子を修飾剤とした例は少ない。有機分子はその機能の多様性と調製の容易さから,固体表面の機能化には優れた修飾分子であり,無機物質では得られない柔軟な活性構造の構築と新規な触媒機能発現が期待できる。本稿では,オレフィンメタセシス触媒への金属アルキル化合物からのカルベン中間体の供給,Pt表面上でのPt錯体からのアルキル中間体の合成,担時Rh触媒上での有機Snの修飾効果,ZnO触媒の1,3-ジエン類水素化に対する表面アルキル基の修飾効果など,金属アルキル化合物を吸着分子として,反応中間体の効率的合成や触媒機能の向上および制御を試みた研究例について紹介する。
  • 岩澤 康裕
    1996 年 17 巻 5 号 p. 254-261
    発行日: 1996/05/10
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
     触媒反応はいくつかの表面反応過程から構成されるが, この時生成される反応中間体がどのように活性化され, 反応の選択性がどのように決まるのかなど, 反応機構に対する理解は依然として明確でない。本稿では, 弱い吸着分子が(あるいは吸着が観察されない場合でも)表面反応過程に著しい影響を与え, 触媒反応の速度や選択性を大きく変化させる反応機構についての最近の話題を概説した。この反応機構により触媒作用が支配されるなら, 新しい触媒設計の指針が生まれることになる。
  • 岡本 康昭
    1996 年 17 巻 5 号 p. 262-269
    発行日: 1996/05/10
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    触媒最外表面構造および活性サイトのキャラクタリゼーション法として,プローブ分子を用いる化学的手法の特長,問題点,最近の進展をまとめた。プローブ分子の利用により表面官能基,活性種の分散性,表面化学種,活性サイトの構造に関する情報を得ることができる。プローブ分子は複雑な組成,構造を持つ実用触媒系,活性サイト濃度の非常に低い触媒系について特に有用である。適度な吸着力と吸着サイト選択性を持つプローブ分子の開発が重要であることを指摘した。
  • 山下 弘巳, 安保 正一
    1996 年 17 巻 5 号 p. 270-275
    発行日: 1996/05/10
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    ゼオライトの細孔は,分子の配向と配列が制御され異方性を有するミクロ空間環境場であり,しかもイオン交換能を有する。ゼオライト種や交換カチオン種を選択することで,細孔内の静電場や空間体積などの分子環境場を任意に制御できる。このゼオライト細孔の持つユニークな特徴を利用して細孔内の吸着分子の光化学反応場の制御と光触媒の設計が試みられている。
  • 森本 恵造, 河村 裕一, 井上 直久
    1996 年 17 巻 5 号 p. 276-281
    発行日: 1996/05/10
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    Nitrogen-doped ZnSe layers have been grown using dimethylzinc and H2Se as precursors and N2 or N2+3H2 plasma as a dopant. With decreasing the VI/II flow ratio, N acceptors are incorporated more effectively. In the case of N2 plasma doping, the intensity of N acceptor-bound exciton emission is much higher than that of donor-bound exciton emission, but the layers exhibit n-type conductivity and the free-electron concentration increases with decreasing the VI/ II ratio. In the case of N2+3H2 plasma doping, on the other hand, the layers exhibit high resistivity and, after subsequent rapid thermal annealing at 700°C, some layers show p-type conductivity with hole concentration of∼1×1015 cm-3. This indicates that hydrogen causes not only passivation of the N acceptors but also suppression of the generation of donors. Methyl radicals play an important role in producing donor species. Prior to plasma doping, it is needed to prepare Zn-rich surface without methyl radicals in order to obtain p-type N-doped ZnSe layers.
  • Masayasu NAGOSHI, Atsusi MIYAMOTO
    1996 年 17 巻 5 号 p. 282-285
    発行日: 1996/05/10
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    An electrodeposited Zn-Ni alloy coating (Ni 15.3 at.%) has been investigated by ultraviolet and x-ray photoelectron spectroscopies in order to elucidate the electronic structure. The Ni 3d band of the alloy coating has 1-eV-higher binding energy and narrower width compared with that in Ni metal. The Ni 2p main line in the alloy coating is also narrower and less asymmetric. The Ni 2p two-hole satellite in the alloy coating locates at 7.5 eV below the main line and is weak in relative intensity. These results suggest that the Ni 3d band is filled by a charge transfer from Zn and pulled down below the Fermi level, leading to low density of states of the band at the Fermi level. It is also found that a 9-eV-energy-loss peak of Zn is weaker in the alloy coating than Zn metal.
  • 試作と実験のノウハウ(I)
    富取 正彦
    1996 年 17 巻 5 号 p. 286-289
    発行日: 1996/05/10
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    大学の研究室レベルの技術で構築した超高真空STMの勘所を紹介する。経験談,失敗談を交えながらの実験装置製作ノートである(2回連続掲載)。
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