表面科学
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15 巻, 9 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 柳田 和彦
    1994 年 15 巻 9 号 p. 560-565
    発行日: 1994/11/10
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    物質の表面が関与する現象のひとつに接触帯電がある。高分子の帯電は電子が関与し,その振舞いは接触する二つの物質の仕事関数と関連しているといわれている。このモデルでは,高分子のイオン化ポテンシャルよりも浅いレベルに電子の受入や放出のサイトとして何らかの電子レベルが存在することが仮定されている。この電子レベルについて,不純物など外因的なレベルとする考えと,高分子の化学構造と関係した内因的な電子レベルとする考えがあったが,これまでそうしたレベルを直接明らかにした研究は行われていなかった。最近,大気中での光電子放出や仕事関数の測定により,3.4から6.2eV付近の高分子の電子レベルが調べられ,化学構造や帯電との関係が検討された。その結果,高分子の低エネルギー側の電子状態は,その化学構造と相関があり,かつ帯電ともよい相関をもつことが明らかになってきた。
  • 江草 俊
    1994 年 15 巻 9 号 p. 566-572
    発行日: 1994/11/10
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    1987年に,実川レベルの輝度を示す有機電界発光(EL)素子が発表されて以来,有機薄膜素子の研究が活発化してきている。このEL素子の成功は,有機材料で高性能な電子デバイスの実現が可能であることを示したという実用的な意味だけではなく,有機材料の電気物性解析という基礎的分野に対しても大きな刺激を与えている。このEL素子は有機薄膜でできた発光ダイオードと考えられ,その電気特性やEL特性の理解には,素子を構成する金属/有機界面および有機/有機界面における接合電子状態を明らかにすることが重要である。このため,われわれは新たにMOS素子構造を利用した変位電流評価法を開発し,電極から有機薄膜中に注入するキャリヤーの挙動を解析した。この方法によりまだ定性的ではあるが,有機接合界面のバンド構造を描くことができるようになってきた。本報告ではこの変位電流評価法を使って,有機EL素子の接合状態と発光機構を中心に有機界面の接合特性を明らかにした結果について述べる。
  • 長谷川 真史, 石井 久夫, 上野 信雄
    1994 年 15 巻 9 号 p. 573-578
    発行日: 1994/11/10
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    機能性有機分子薄膜など有機固体の電気・光物性は,価電子帯のエネルギーバンド構造に深くかかわる。シンクロトロン放射光を用いて紫外光の波長を連続的に変化させながら角度分解紫外光電子分光(ARUPS)スペクトルを測定すると,エネルギーバンド構造を直接測定することができる。本稿では,分子間の強い相互作用にもとづく分子間エネルギーバンド分散や,高分子に特有な分子内エネルギーバンド分散などの実測例を紹介する。また,光電子強度の角度依存性の定量的解析から,有機薄膜中の分子配向角を求めた結果について述べる。
  • 平本 昌宏, 横山 正明
    1994 年 15 巻 9 号 p. 579-584
    発行日: 1994/11/10
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    光電導性有機顔料薄膜を用いた光電変換に関する最近の二つの研究,(1)有機顔料薄膜において初めて観測された1万倍に達する光電流増倍現象,(2)有機系としては初めてpin接合型のエネルギー構造をもった3層構造太陽電池,を紹介する。これらのデバイスの特性は,有機薄膜接合界面の電子物性によって支配されているといっても過言ではない。
  • 山中 俊朗, 井野 正三
    1994 年 15 巻 9 号 p. 585-590
    発行日: 1994/11/10
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    RHEED-TRAXS(Total Reflection Angle X-ray Spectroscopy)とはRHEED観察中に表面から放出されるX線を検出する際に,検出角をX線の全反射の臨界角に設定することにより,表面に対する感度をあげる方法である。この条件では数十分の一原子層程度の量の吸着原子を検出することが可能になり,今まで困難であったX線による表面の元素分析を簡単に行うことができる。われわれは最近この方法で電子線の視射角を変化させながらX線強度を測定することにより表面元素の深さ分布を測定する方法を発見した。この方法の深さに対する感度は表面近傍では非常に高く,1原子層以下の分解能が得られる。これは最も手軽に精度よく表面元素の深さを知ることのできる方法であり,エピタクシャル成長や表面・界面の拡散過程における深さ方向の組成変化の研究に非常に有効であると考えられる。われわれはSi表面に2種の金属を逐次蒸着した場合のエピタクシー過程の研究にこの方法を適用し,さまざまな新しい成長モードを発見した。本稿ではまずRHEED-TRAXSの原理について簡単に説明し,つぎにこれを用いた深さ分布解析法について解説する。さらにこの方法を適用したエピタクシー過程の元素分析や種々の成長モードの研究結果について説明する。
  • 三浦 喜直, 藤枝 信次, 廣瀬 和之
    1994 年 15 巻 9 号 p. 591-597
    発行日: 1994/11/10
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
     Al/Si界面は,Siデバイスのコンタクトに用いられる工学的に重要な界面であるが, ショットキー障壁の形成機構など基礎的な理解は十分ではない。著者らは, Si基板上にエピタキシャルおよび非エピタキシャルのAl薄膜を, 低温MBEを用いて形成し,両者のショットキー障壁高さ (SBH) を比較した。その結果, Si(111), Si(100)どちらの基板を用いた場合でも, エピタキシャル界面でのフェルミ準位のピニング位置が, 非エピタキシャル界面のそれに比べて高くなることが明らかとなった。このピニング位置の違いは, エピタキシャル界面のほうがエネルギー的に安定であることを示唆しており, 熱処理によるSBHの変化の様子においても, この予想を支持する結果が得られた。本解説では, これまでのAl/Siショットキー界面の研究を概観した後, AlとSiの結晶方位関係とSBHとの相関に関する著者らの研究について紹介する。
  • 神谷 格
    1994 年 15 巻 9 号 p. 598-603
    発行日: 1994/11/10
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    近年,大気圧中での固体表面の原子配列の原子レベルでの解明が純科学的な興味のみならず,工業的にも重要となってきた。ここではその一例として大気圧中での半導体結晶成長時の表面の構造とその解析について概説をおこなう。
  • 荻津 格, 藤田 光孝, 宮崎 剛英, 岡崎 誠
    1994 年 15 巻 9 号 p. 604-609
    発行日: 1994/11/10
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    ダイヤモンドの気相成長法による合成では,本来グラファイトが安定に存在するはずの環境に原子状水素を導入することで,ダイヤモンドの成長がなぜ可能となるのかを理解することが,重要かつ興味深い問題である。そこでわれわれは,局所密度汎関数法に基づく数値シミュレーションによって水素化ダイヤモンド表面の構造を求め,さらにこの基板への炭素単原子の吸着過程を追ってみた。また平行して,水素化シリコン表面に対するシリコン単原子の吸着シミュレーションも実行し,ダイヤモンドとの比較を行った。その結果,ダイヤモンドとシリコンでは,電気陰性度で表わされる水素原子との電荷移動の方向と,自由度の高い表面での結合形態のとり方の二つの点で,大きな違いがあり,それらが水素化表面の電子状態と吸着プロセスの大きな違いを生じうることがわかった。特に水素化ダイヤモンド表面での水素原子の,サーファークタント的な役割について,ミクロな観点から議論する。
  • 三宅 晃司, 相磯 良明, 小宮 山真, 原田 明, 蒲池 幹治, 重川 秀実
    1994 年 15 巻 9 号 p. 610-614
    発行日: 1994/11/10
    公開日: 2010/02/05
    ジャーナル フリー
    Structure of α-cyclodextrin (α-CyD) inclusion complex with polyethylene glycol (PEG) was studied by scanning tunneling microscopy, which was in good agreement with the previously proposed structural model of molecular necklace. Conformations of α-CyDs threaded on PEG were determined on the basis of lattice matching between an α-CyD and the MoS2 substrate.
  • 高村 巧, 松下 賢, 下山 雄平, 武笠 幸一
    1994 年 15 巻 9 号 p. 615-620
    発行日: 1994/11/10
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    In order to develop organic magnetic thin films, we carried out a structure study of the Langmuir-Blodgett (LB) multilayers of transition metal ion-fatty acid salts using X-ray diffraction. We found that the LB films of manganese n-eicosanate exhibit a most feasible system for the magnetic thin film due to their stability and reproducibility. The LB film with the multiplicity less than three layers shows that fatty acid molecules align perpendicular to the substrate surface. On the other hand, layers more than four exhibit the tilt orientation of ca. 30 degrees along the layer normal to the substrate. Uniformity of the crystalline size in the LB film plane was found to be high so that the well-defined precision of molecular arrangement holds along the film normal to the substrate. We concluded that the structure presented here coincides well with the findings obtained from electron paramagnetic resonance and other spectroscopies.
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