北極域、北半球温帯域、熱帯域の3つの帯域、および全球に関して、地上測定によるオゾン全量値、ならびに北極域、北半球温帯域の対流圏と成層圏のオゾン量を、長期変動 (トレンド) と短期変動 (QBO、ENSO、それに長周期の太陽活動に関連したもの) の検出を目的として解析した。大気オゾンの人為的変動を明らかにするために、各種の多重回帰モデル (トレンド、年々の準周期的変動、また連続相関に関する) について調べた。
1970年から1990年の期間の各季節に対し、北半球の中高緯度帯、熱帯域、さらに全球について、明らかなオゾン全量の下降トレンドが見られた。オゾン消失の割合は、熱帯外の地域では季節に依存し、緯度が高くなるにつれ増加している。
中高緯度帯の層毎の平均オゾンのトレンドは、高度により一様ではない。すなわち対流圏オゾンは増加を示し、成層圏オゾンは減少を示している。北半球の熱帯域外のオゾン全量についての負のトレンドは下部成層圏 (16-24km層) でのオゾン破壊によって起こされていることが示された。
QBO、ENSO、そして太陽活動に関係した自然要因のオゾンの年々変動の緯度変化を論じた。オゾン全量の自然変動の大きさは、QBO (東風と西風)、ENSO (warmとcold) の位相、およびQBO、ENSO、そして長周期太陽活動の強さの両者に依存している可能性が見いだされた。大気力学の長期変動が大気オゾンのトレンドに影響を与えていることの可能性については、わずかであることがわかった。
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