順天堂医学
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53 巻, 1 号
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Contents
目次
特集 医学研究のUP-TO-DATE
  • --乳幼児の各種認知発達検査法を中心に--
    佐藤 弥生
    2007 年 53 巻 1 号 p. 2-10
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    ドコサヘキサエン酸docosahexaenoic acid (DHA) やアラキドン酸arachidonic acid (AA) などの長鎖多価不飽和脂肪酸long-chain polyunsaturated fatty acids (LCPUFA) は中枢神経や網膜の主要構成成分であり, 乳幼児の脳神経発達において重要な役割をもつ. 特にn-3系多価不飽和脂肪酸であるDHAが神経発達により密接に関連すると考えられ, その作用が注目されている. そのため胎児期から生後早期におけるLCPUFA補充の認知発達に及ぼす影響を無作為化比較試験にて検討する研究が数多く行われ, 児の注意能力や問題解決能力などの特異的認知機能の検討からその有効性が支持されている. 今回ダンディー大学発達心理学講座Peter Willatts博士のもとで乳幼児認知発達におけるLCP-UFAの役割を検討する研究プロジェクトに参加し, 各種の乳幼児発達検査法を学ぶという貴重な機会を得た. LCPUFAが乳幼児の神経発達に及ぼす影響を最近の発達検査法を踏まえて紹介したい.
  • 淺沼 克彦
    2007 年 53 巻 1 号 p. 11-19
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    腎臓の糸球体上皮細胞glomerular visceral epithelial cellは高度に分化した細胞であり, 糸球体基底膜 (GBM) を外側から覆い, その外観から最近はタコ足細胞podocyteと呼ばれている. 糸球体上皮細胞は血中蛋白質の最終的な濾過障壁であり, 糸球体上皮細胞障害は著明な蛋白尿を引き起こす. 糸球体上皮細胞障害は, 多くの腎疾患や様々な実験腎炎モデルにおいて認められている. 糸球体上皮細胞障害の早期には, まずスリット膜の分子構造の変化が認められ, 足突起の細胞骨格の分布が変化し, 足突起は消失foot process effacementして, その噛み合わせを失う. 足突起消失と蛋白尿の出現に関わる糸球体上皮細胞障害の原因として主に, (1) スリット膜複合体の障害, (2) 足突起内のアクチン骨格の障害, (3) GBMや糸球体上皮細胞-GBM接合部の障害, (4) 糸球体上皮細胞の陰性荷電障害の4つが考えられている. 近年, スリット膜の多くの構成分子が発見され, それぞれの構成蛋白間の相互作用も判明してきている. スリット膜を構成する蛋白のノックアウトマウスの多くは, 蛋白尿を生じ糸球体硬化を引き起こすことから, スリット膜複合体分子は, それぞれ透過性の制御に重要な機能をもっていることが考えられている. 足突起の複雑な構造は主に太いアクチン束によって支持されており, 足突起消失のメカニズムの解明のためには, そのアクチン線維束に焦点をあてた研究も必要である.
  • 相川 眞範
    2007 年 53 巻 1 号 p. 20-30
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    血管の炎症は動脈硬化の病態のさまざまな局面に重要な役割を果たす. 特にマクロファージの活性化は動脈硬化病変の破綻や血栓形成を誘導することにより, 急性心筋梗塞の発症に寄与すると考えられる. 従って, マクロファージの生物学は動脈硬化の病態理解の鍵である一方, 診断と治療のターゲットとして重要である. 高コレステロール血症はマクロファージの活性化の原因となり, 急性心筋梗塞の危険因子である. 近年, 脂質低下療法は抗炎症作用を有し, 急性心筋梗塞の発症を低下させることが明らかになった. 一方, 分子イメージングは血管のマクロファージ活性化を描出でき, 従来から知られている危険因子の有無に関わらず, 将来の冠事故の予知・予防に有用であることが示唆される.
日本学士院賞受賞記念講演
総説
  • 中西 淳
    2007 年 53 巻 1 号 p. 47-53
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    マルチスライスCT (MSCT) は検出器を多列化することで, 従来のヘリカルCTと比べ数倍の速度で撮影を可能とし, 同時に高速撮影で高分解能CTによる画像表示が実現された. このMSCTによる高速撮影は小児例, 救急症例をはじめあらゆる状況でのCT検査を可能とし, 患者の苦痛緩和, 負担軽減をもたらしている. また, 1回呼吸停止下での高速撮影は広い範囲の撮影を可能とし, 体軸方向の分解能を向上させ, 三次元画像, 再構成画像multiplanar reconstruction (MPR) の画質を向上させた. この高分解能画質は画像診断を専門にしている放射線科医だけではなく, 全ての医師さらに患者自身にとって, 画像を通じて人体の解剖学的形態把握を容易にした. 高速撮影は時間分解能の向上にも貢献し, 心臓同期撮像における高分解能画質, 多時相撮影の実現, 造影剤の減量などをもたらした. 最近では脳動静脈奇形など時系列を含む4D-CTAが臨床応用されているが, 心臓同期撮像などに用いる薬剤負荷による前処置の危険性, 多時相撮影における患者への医療被曝増大, 造影剤注入後の撮像タイミングの画一化, 撮像された大量データの処理, 保存, 利用など残された課題もある. スクリーニング検査から4D-CTAにおける精査まで, MSCTの利用法は多岐にわたり, 放射線科医はその有益性を最大限に発揮させる能力を修得し, 患者や各科臨床医に還元する能力も持ち合わせていることを付け加えたい.
  • 高田 維茂
    2007 年 53 巻 1 号 p. 54-60
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    MSCT (multislice computed tomography) が1998年に登場して以来, その発展は目覚ましく, 2004年には64列の検出器を有する機器が臨床現場で稼動する時代となっている. MSCTの発展で超高速撮影, 広範囲撮影, 高分解能の容積データ収集が可能となっている. 特に体軸 (Z軸) 方向の時間分解能, 空間分解能が向上したことで, 等方向性ボクセル (isotropic voxel) のデータが収集可能となり, ワークステーションの画像処理機能と処理速度の進歩とあいまって詳細な三次元画像の作成が可能となっている. 体幹部の画像診断でもその恩恵を預かる領域は広く, 大動脈や上下肢の末梢動脈などの血管性病変, 腹部実質臓器や胸膜・縦隔などの腫瘍性病変, 気道や消化管などの管腔病変, 先天性疾患など多岐にわたっている.
  • 白石 昭彦
    2007 年 53 巻 1 号 p. 61-66
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    乳房画像診断において, マンモグラフィは超音波検査とともに第一選択の検査であり, 乳がんのスクリーニングから術前精査において重要な役割を果たしてきている. 数ある医療画像のなかでマンモグラフィはデジタル化が最も遅れていたが, 近年マンモグラフィ撮影装置の目覚ましい進歩により, フィルムレス環境およびデジタル化への移行は急速に進んでいる. 本稿では, デジタルマンモグラフィシステムに関する基本的事項からモニタ診断, コンピュータ支援診断システムさらにデジタルマンモグラフィの新技術 (断層撮影) まで解説する.
  • 京極 伸介, 小川 正一, 天野 真紀
    2007 年 53 巻 1 号 p. 67-72
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    CTやMRIなど, 従来からの画像診断の機器・技術・撮影法の進歩には目まぐるしいものがあるが, 一方でそれらの形態画像診断に限界を感じる場合も少なくない. リンパ節転移の有無を大きさのみで診断することの難しさは, 多くの画像診断医や臨床医が感じているところである. がん検診の新たな担い手として, 機能画像検査としての位置づけになるPET検査は鳴り物入りで登場し, 過熱気味の報道で多くの患者や市民に知れ渡った. さらにFDG (fluorodeoxyglucose) が保険適応となり, デリバリーでの使用が認可されたことが拍車をかけて, 本邦においてPET装置は急速に普及しつつある. 本稿ではPETに関して, その簡単な原理とPET製剤について示した. 特に本邦で唯一保険適応となるFDG-PETについては適応疾患を示し, 前処置や検査の流れを示すとともにいくつかの自験例を呈示し, その有用性を示した.
原著
  • 川久保 嘉昭, 竹井 謙之, 泉 光輔, 山科 俊平, 今 一義, 榎本 信行, 鈴木 聡子, 池嶋 健一, 大久保 裕直, 佐藤 信紘
    2007 年 53 巻 1 号 p. 73-81
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    目的: 肝星細胞は肝障害が継続すると筋線維芽細胞様細胞に形質転換し, コラーゲンをはじめ, 細胞外マトリクスを過剰産生し, 肝線維化機序の中心的な役割を果たす. このため, 活性化した星細胞に細胞死を誘導することができれば, 肝線維化抑制につながると期待される. グリオトキシンは活性化した星細胞にアポトーシスを引き起こすことが知られているが, その分子機序は明らかではない. 一方, inverse genomicsの手法は, ランダムな切断配列をもつリボザイムライブラリーを導入し, 細胞の表現型・性質を変化させる刺激を与えた際, 変化が起こらなかった細胞からリボザイムを単離し, その塩基配列を知ることで表現型変化に関わる機能遺伝子を同定することが可能である. われわれはこの手法を用いてグリオトキシンによる星細胞のアポトーシスに関わる遺伝子の探索を行った. 対象・方法: 株化星細胞であるHSC-T6にリボザイムライブラリーを搭載したプラスミドをトランスフェクションし, 48時間後にグリオトキシン (1.5μM) を培養液に添加して24時間培養後, 生存細胞からプラスミドを回収した. このグリオトキシンによるセレクションを3回繰り返した後にリボザイムを単離してシークエンス解析を行い, その配列情報をもとにアポトーシス関連遺伝子の検索をデータベース上にて行った. 結果: われわれは20の星細胞アポトーシスに関わる候補遺伝子の配列を得た. その中の1配列は, カスパーゼ7に相補性を有していた. 同配列を持つリボザイムをHSC-T6に導入したところ細胞はグリオトキシンによるアポトーシスの誘導に抵抗性を示した. 結論: 以上の結果によりグリオトキシンによるアポトーシスの誘導にはカスパーゼ7が関与していることが示唆された. またinverse genomicsによるアプローチは, 肝星細胞のアポトーシスに関わる機能遺伝子の探索に有用であることが示唆された.
  • 小泉 和夫
    2007 年 53 巻 1 号 p. 82-88
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    目的: 前立腺肥大症の患者にα1-blocker治療を施行し, どの治療前パラメーターがα1-blockerによる前立腺肥大症の治療効果を予測することにおいて有効か検討をした. 対象および方法: 2003年7月から2004年3月までの間に, 順天堂大学医学部附属順天堂浦安病院を受診した前立腺肥大症患者33例を対象とした. α1-blockerとしてはタムスロシンを6例, ナフトピジルを27例に投与した. パラメーターの観察は, 治療前1ヵ月以内に年齢, PSA, 国際前立腺症状スコアInternational Prostate Symptom Score (I-PSS), QOL score, 前立腺体積 (PV), 前立腺移行領域部体積 (TZV), TZ index (TZV/PV), 前立腺の膀胱内への突出長 (h), 前立腺水平断の縦横比 (H/W), 最大尿流量 (Qmax), 残尿量を測定した. 治療効果の判定には, α1-blocker投与1ヵ月後にI-PSS, QOL score, Q maxの項目を測定した. 統計解析は, ロジスティック回帰分析を用いた. また, 各パラメーターのROC曲線 (Receiver Operation Characteristic: 受信者操作特性) を作成し, 至適cutoff値を決定した. 結果: ロジスティック回帰分析でh, H/W, TZ indexが治療効果予測に有意な結果が得られた. ROC曲線から求めたh, H/W, TZ indexの至適cut off値は, それぞれ5.4, 0.66, 0.41であった. 結論: 前立腺肥大症のα1-blockerの治療効果予測にh, H/W, TZ indexは有効であると考えられた.
  • 市田 祐之, 林 礼人, 小室 裕造, 梁井 皎
    2007 年 53 巻 1 号 p. 89-96
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    目的: 端側神経縫合によって二つのルートからの再生神経を促すモデルにおいて, 二重神経支配の可能性について検討した. 対象: 体重350-450gのウイスター系ラット雄を10匹用いた. また今回の実験の実験動物は『順天堂大学医学部動物実験に関する指針』に従った. 方法: ラットの坐骨神経を採取し, 右正中神経から左正中神経に交叉神経移植を行なった. 左右の正中神経とは端側縫合を行い, 左正中神経は端側縫合部より近位で切断した. ここで, 左正中神経を切断したままの群 (I群) と直ちに再縫合を行う群 (II群) に分けた. 乾燥筋重量の比較, 電気生理学的検査, 組織学的検査, 神経トレーサーを用いた縫合部の観察等を行い検討した. 結果: 乾燥筋重量, 左正中神経遠位部の神経線維数は両群に有意差を認めなかった. 電気生理学的検査ではII群における二重神経支配が示唆された. また, 縫合部における両ルートからの再生神経を観察しえた. 考察: 個々の筋線維においては未だ検討を要するが, 神経移植による, 筋肉への二重神経支配の存在が示唆された.
  • 加納 達也, 鈴木 祐介, 鈴木 仁, 柘植 俊直, 堀越 哲, 富野 康日己
    2007 年 53 巻 1 号 p. 97-105
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    目的: 近年, 扁桃摘出術とステロイドパルス療法の併用 (扁摘・パルス療法) により, IgA腎症の臨床および組織所見の改善を認める報告が相次ぎ, 患者の扁桃における免疫反応の特殊性が示唆されている. 扁桃の病態への関与を検討する目的で自然免疫について重要な働きをするToll-like receptor (TLR) の発現パターンおよび程度と扁摘・パルス療法の治療効果との相関を解析した. 対象: IgA腎症と診断され, 順天堂大学医学部附属順天堂医院 (当院) 耳鼻咽喉科で扁摘を受けた16症例を対象とした. そのうち, パルス療法3クールを完了したのは7例であった. 方法: 摘出した扁桃よりRNAを抽出してReal-time RT-PCRを行い, TLRや種々サイトカインの発現を観察した. 扁桃におけるTLR発現の局在を免疫染色で確認し, その程度により2群に分類した. この2群間で臨床効果 (蛋白尿, 血尿, 血清IgA値, 血清IgA/C3比) を比較検討した. 結果: 16症例中3例にTLR9の強い発現を認めた (High group). これらの症例はIFN-α・IFN-γの発現も強く, TLR9との間に有意な相関を認めた. 残りの症例 (Low group) では, 相関性を認めなかった. また, TLR9の発現は形質細胞様樹状細胞にほぼ一致していた. High groupでは, 明らかにTLR9陽性細胞数の増加を認めた. パルス療法完了の7例の内訳は, High group3例, Lowg roup4例であった. High groupでは治療後早期より効果を認め, 治療前後で比較すると, 蛋白尿・血尿が有意に改善した. また, 血清IgA値, 血清IgA/C3比も有意に低下した. 一方, Low groupでは改善・低下傾向が認められたが, 有意差は認めなかった. 結論: IgA腎症の発症. 進展には, 扁桃の形質細胞様樹状細胞に発現するTLR9を介した免疫機序が関与している可能性が示唆された.
  • 日高 輝夫, 鈴木 祐介, 山下 倫史, 田中 裕一, 堀越 哲, 富野 康日己
    2007 年 53 巻 1 号 p. 106-112
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    目的: 半月体形成は, 糸球体腎炎の予後因子として極めて重要な病理学的所見であり, 足細胞の障害がその形成に深く関っていることが報告されている. 一方, Small GTPaseは, 主に細胞骨格の調節を担っているだけでなく, 細胞間の接着・遊走などにも関与している. Small GTPaseの一つであるRhoAに対する抑制薬は, 血管攣縮の抑制薬として脳血管や循環器領域で研究・臨床応用がなされている. 近年, 足細胞とRhoAの関係が注目され, この抑制薬が糸球体腎炎の改善薬として期待されている. われわれは以前にFc receptor γ chain knock out [γ (-/-) ] マウスに対して異種性抗糸球体基底膜抗体を投与し, 馬杉腎炎を惹起することで, アンジオテンシンII (Ang II) 依存性の半月体形成性腎炎を誘導できることを示した. 今回, この腎炎モデルを用いて, RhoA kinase inhibitor“fasudil”の半月体形成に及ぼす効果を検討した. 対象と方法: γ (-/-) に無作為にfasudil治療群 (10mg/kgi. p. ) と未治療群の2群間に分けた. 両群にウサギより得た馬杉腎炎抗血清を静注し, 馬杉腎炎を惹起した. 2群間において尿検査 (蛋白, 潜血) を連日14日間測定し, 14日後に屠殺し腎臓および血清を採取した. また, 培養足細胞を用いAng II刺激下でのfasudilの治療効果を検証した. 結果: fasudil治療群では蛋白尿 (p<0.01), 血尿 (p<0.01) が有意に低値を示した. それと一致し, 糸球体半月体形成や硬化性病変は抑制され, さらにWT-1陽性足細胞数の減少も軽度であった (p<0.03). 培養足細胞では, 足細胞nephrinのmRNA発現がAng II濃度依存性に低下することが判明した. fasudilの治療は, それらの発現低下を有意に抑制していた. 結論: fasudilは, Ang II/RhoA kinase活性の抑制を介して足細胞障害を保護し, 半月体形成に対する治療効果を示すことが考えられた.
  • 山田 耕嗣, 小林 則善, 池田 智美, 鈴木 祐介, 柘植 俊直, 堀越 哲, 富野 康日己
    2007 年 53 巻 1 号 p. 113-120
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    目的: IgA腎症の発症・進展の一因として, ヒンジ部の糖鎖に異常をもつIgA1の関与が示唆されている. また, このIgA1ヒンジ部糖鎖異常の誘導に, Th2サイトカインが影響していると考えられているが, 十分に解明されていない. 本研究では不死化したヒトIgA1産生B細胞を用いて, T細胞 (Th1, Th2) サイトカインとIgA1ヒンジ部糖鎖異常誘導との関連性を検討した. さらに, 近年クローニングされ, ヒンジ部糖鎖修飾に直接関わるとされるcore1β1, 3-galactosyltransferase (C1β3Gal-T) とその分子シャペロンであるCosmcのサイトカイン存在下での発現動態を解析し, これらの分子のIgA1糖鎖異常誘導への関与を検討した. 対象・方法: ヒトIgA1産生B細胞を, T細胞サイトカイン (Th1: IFN-γ, Th2: IL-4, IL-5) 存在下で培養し, 培養上清中のIgA1の糖鎖修飾の相違を, N-アセチルガラクトサミン (GalNAc) を認識する特異的レクチン (V\icia Villosa) を用いたELISAにより解析した. また, T細胞サイトカイン (IFN-γ, IL-4) 刺激下での経時的なC1β3Gal-TとCosmcのmRNA発現動態をrea1-time PCRを用いて解析した. 結果: IL-4・IL-5刺激は, IFN-γ刺激と対照群と比較して有意に細胞増殖を誘導した. また, IL-4存在下では, 培養上清中のIgA1量とGalNAcを表出したIgA1の有意な増加を認めた. さらに, IL-4刺激では, C1β3Gal-TとCosmc mRNAの経時的な発現低下が確認された. 結語: Th2サイトカインの一つであるIL-4は, B細胞におけるC1β3Gal-TとCosmc mRNAの発現低下を誘導し, その結果IgA1ヒンジ部の糖鎖異常誘導に関与している可能性が示唆された.
  • 坂本 慶子, 鈴木 祐介, 田中 裕一, 峯木 礼子, 藤村 務, 高 ひかり, 堀越 哲, 村山 季美枝, 上野 隆, 富野 康日己
    2007 年 53 巻 1 号 p. 121-130
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    目的: IgA腎症の病因にIgA免疫複合体 (IgA-IC) の関与が議論されているが, いまだその抗原は同定されていない. 今回われわれはMSを用いて, 血清中のIgA結合蛋白を解析することで, 抗原の有無を検討した. 対象: IgA腎症患者6名, 扁桃摘出術とステロイドパルスの併用療法3クールを完了したIgA腎症患者5名と健常人8名を解析した. 方法: 血清400μlとジャカリンを混合結合させた後, 0.8Mガラクトースで溶出した. 溶出した蛋白はSuperdex 200 10/300GLカラムで分画し, 各分画より蛋白を抽出し, 電気泳動後, liquid chromatography-electron spray ionization mass spectrometry (LC-ESI MS) で解析した. さらに, 治療前後の血清から得たジャカリン結合蛋白をWestern blottingにて定量的に比較した. 結果: IgA1/IgA1結合蛋白は, 170kDa, 340kDa, 680kDa, 680kDa以上の4つのピークに分画化された. それぞれの分画において, MSの解析ではapolipoprotein, immunoglobulin (Ig) heavy chain (α, μ, γ), light chain, Ig J chain, fibronectin, C1INH, C4bp, α1MGなどの内因性物質が認められた. 特に, C4bpは患者群で高頻度に認められた. 治療後では, 170kDaと680kDa以上の蛋白濃度が上昇し, 340kDaの蛋白濃度が低下する傾向にあった. また, IgA1結合IgG, C4bp, C3の発現量は, 治療後に減少していた. 結論: 今回の検討では, IgA1結合蛋白中に明らかな外来性抗原を確認することはできなかったが, IgGやC4bpはIgA腎症の病因に重要な役割を果たしている可能性が考えられた.
  • 須曽 淳麿
    2007 年 53 巻 1 号 p. 131-137
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    目的: 日本の診断基準に基づくメタボリック・シンドローム (MS) と冠動脈病変の重症度との相関を検討する. 対象: 2005年12月から2006年6月に順天堂大学で初回冠動脈造影を実施した連続379名を対象とした. 方法: 対象症例をMS, 非MSに [日本およびアメリカ心臓病学会 (AHA) の診断基準を小修正] 分類し, 冠動脈造影上の重症度 (Gensini Score) を比較した. またMSの診断基準各項目の集積数と冠動脈重症度との相関を検討した. 成績: MSと診断された患者は日本の基準では35.4%, AHAの基準では39.8%であった. Gensini Scoreは日本基準で非MSで25.8に対しMSで37.1と有意 (P=0.. 0027) に重症であった. AHAの基準でもそれぞれ25.4対36.3とMSで有意に高い (P=0.003). また日本基準のMS診断基準項目の該当数 (0項目-5項目) ごとのGensini Scoreの平均値はそれぞれ12.7, 21.6, 31.4, 36.0, 39.9, 42.0と項目集積が多い程重症化した (P=0.0004). 結論: MSの各評価項目は冠動脈疾患の重症度評価に対する効率の良い指標である.
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