高濃度コバルト触媒の存在下,シクロヘキサンを酢酸溶媒中で酸素酸化してアジピン酸を合成する反応に関して,触媒の活性低下現象,その原因,再生法について検討した。
この反応において,活性な触媒状態は酢酸コバルト(III)で,征ジュオに反応が行われている状態では,触媒ではシクロヘキサンと反応して連鎖反応を開始させるとともに,自身は還元される。還元失活した触媒は,反応中間体として生成する過酸化物により再酸化され,再生される。しかし,反応がくり返されるにしたがって,生成した副生物によるシクロヘキサンとの反応に寄与しない触媒の分解(還元),および連鎖妨害作用があらわれ,還元された触媒の再生率が低下することとあいまって,酸化速度の急激な低下がおこる。究極的には活性触媒(Co(III))がすべて還元されるとともに反応は停止するという触媒の失活機構を推定,実証した。この酸化抑制物質は,構造的にはケトン,水酸基,不飽和結合をもつC
4~C
6の炭素鎖をもった有機酸で,反応生成液を冷却後,遠心沈降等により触媒液からアジピン酸とともに大部分除去される。また,エステル,ケトン,ニトリル等の極性溶媒により容易に抽出分離されることがわかり,この原理を用いた触媒再生法を確立した。
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