β, β-ジメチルアクリル酸は一般的には酸化メシチルを次亜塩素酸塩で酸化する方法により合成されているが, 収率はそれ程良好ではない。一方, Kharashらはイソブチレンとbuブロモトリクロロメタンのラジカル的1 : 1付加体である1, 1, 1-トリクロロ-3-ブロモ-3-メチルブタンをエタノール中ナトリウムエトキシドで処理することによって, β, β-ジメチルアクリル酸を得ているが, 原料の一成分にブロモトリクロロメタンを用いることは一般的な合成法として適当とは考えられない。しかし, ブロモトリクロロメタンの代わりに四塩化炭素を利用し, イソブチレンとの反応により収率良く, 1 : 1付加体 (1, 1, 1, 3-テトラクロロ-3-メチルブタン) が得られ, さらに, 適当な加水分解法が考えられるならば, β, β-ジメチルアクリル酸の合成法として, 原料的に興味ある反応と考えられる。そこで, イソブチレンと四塩化炭素のテロメリゼーションを詳細に検討し, 1 : 1付加体が90モル%以上の好収率で得られることを見い出した。また, 加水分解試剤として濃硫酸を用いると, 比較的温和な条件下で収率良く, 上述の1 : 1付加体をβ, β-ジメチルアクリル酸に誘導できることを見い出したので, それらの結果について報告する。全反応は形式的に次のように示される。
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