トリアルキルオキソニウム塩 (1) は強力なアルキル化三剤であり, 弱い有機塩基をも緩和な条件下アルキル化することができる。アルキル基 (R) としてはメチル, エチ
R
1-+O-R
3-R
2X- (1)
ル, 矩プロピル, ルブチル等が知られているが, イソプロピルは知られていない。また, 混合アルキル体も合成されている。アニオンとしては, BF
4-SbC1
6-, FeC1
4--AIC1
4-等が知られているが有機酸のアニオンも用いられている。一般に比較的安定な白色結晶として得られ, エーテル, ベンゼンに不溶, 塩化メチレン, ジクロルエタン, ニトロメタン, ニトロベンゼン, 液体亜硫酸などに溶ける。また, 最近, 温度可変NMRの研究から (2) に関しては (2a) と (2b) の問に速い平衡があり, したがって中央の酸素がtetrahedra1な構造を持っているこ
(2a) -+O-
iC
3H
7〓 (2b) -+O-
iC
3H
7とが証明された。環を形成していないオキソニウム塩も同じtetrahedra1な構造を持つものと予測し得るが, 疸接的な証明が待たれる。次にアルキル化に際し, アルキルカチオン (R
+) をへるかどうかという問題であるが, i) メチルカチオンの存在は知られていないにもかかわらず7) トリメチルオキソニウム塩は強力なアルキル化剤として働くii) エチルカチオンは一たん生成すればプロトン源となりうるし, また縮合, 転位がおこって遂には安定なtヴチルカチオンとなることが知ら
R-+O-R-
-B-CH
2-R'
れているが, トリエチルオキソニウム塩を用いる反応で, このようなspeciesにもとづいた成績体は得られていないiii) 立体障害のあるような系のアルキル化にはトリメチル体の方が有利である9) 等の理由からアルキルカチオンは生成せず, 反応はSN-2的に進行するものと考えられる。以下, 本試薬と種々の弱塩基との反応について述べるが, 個々の反応に関しては言葉での説明は最小限にとどめて反応のパターンのみを示すことにする。
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