幾何異性の関係にあるクロトン酸 (トランス型) とイソクロトン酸 (シス型) とを, アクリルアミドおよび2-メチル-N-ビニルイミダゾールにそれぞれラジカル共重合させて, その反応性を比較した。
両異性体はいずれも共重合性はきわめて低く, また単独重合性はほとんどないことが知られた。その共重合性はいずれも, アクリルアミドに対してよりも2-メチル-N-ビニルイミダゾールに対して反応しやすく, またいずれの場合もクロトン酸よりもイソクロトン酸のほうが共重合性が高いことが見出された。
単量体の相対反応性比は, イソクロトン酸 (1) -アクリルアミド (2) 系ではr
1=0.11, r
2=4.72, クロトン酸 (1) -アクリルアミド (2) 系ではr
1=0.12, r
2=5.32, またイソクロトン酸 (1) -2-メチル-N-ビニルイミダゾール (2) 系ではr
1=0.60, r
2=0.09, クロトン酸 (1) -2-メチル-N-ビニルイミダゾール (2) 系ではr
1=0.47, r
2-0.19の各値が求められた。
これらの実験結果を既報の研究とも比較して, β-置換アクリル酸の幾何異性体の共重合性を検討した。これらの反応性は分子の熱力学的な安定性のみからは定めることはできず, 置換基の極性, 共鳴, 立体効果の各項を含めて考察すべきものであることを確めた。そしてたとえば置換基の極性置換基定数から異性体の反応性を予測できる可能性などを検討した。
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