α-アミノ酸N-カルボン酸無水物 (NCA) の合成法として, 現在まで最も広く行なわれてきているFuchs-Farthing法 (ホスゲン化法) におけるホスゲンの替りにTrichloromethyl chloroformate (TCF) を用いる新しいNCAの合成法 (TCF法) を発見した。
α-アミノ酸としては, 多くのホスゲンによるNCA化反応が行なわれている L-グルタミン酸γ-メチルエステル (MLG) を選び反応条件を検討した。その結果, ホスゲン法の場合と, ほぼ同様に反応は進行し, 高純度のNCAが高収率で得られることがわかった。しかしながら, 反応終了後, 反応系に残った過剰のTCFを除くために, 反応系にカーボンを添加し, TCFをホスゲンガスに分解して系外に除去する操作が必要であることがわかった。カーボンの種類によって分解に要する時間は著るしく変化し, 分解が不十分であると, 得られたNCA中にTCFが混入し, 重合反応が著るしく阻害された。
NCA化反応溶媒としては, 1, 2-ジクロルエタン-テトラハイドロフラン, 1, 2-ジクロルエタン-ジオキサン, 1, 2-ジクロルエタン-酢酸エチルおよび1, 2-ジクロルエタン-酢酸メチル混合溶媒系が, 反応時間およびNCAの純度の点から有利であり, 1, 2-ジクロルエタン-ジオキサン (容積比15 : 1) の場合, 溶媒使用量は, MLG1gに対して8m
lの割合まで減らすことが可能であることが明らかとなった。
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