環境汚染と公害問題が今日の重大な社会問題となってから, 汚染物質の分析の重要性がますます高くなっている。汚染物質にはいろいろなものがあるが, ここでは有害重金属に限定して記すことにする。環境試料中に存在する有害重金属は一般に極微量であることが多く, その分析はいわゆるこん跡分析 (トレースアナリシス) の範畴に入る。今日では環境試料のこん跡分析データがおびただしい数に達しており, 今後ますます増大する一方である。これらおびただしい数にのぼる分析データをわれわれはどのように評価したらよいであろうか, それらはどの程度に信頼してよいものであろうか, ということはおそらく世間一般の人々の最も関心の高いところと考えられる。そこでこの点について以下に少し考察してみる。
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