30年間における乳幼児の補聴器装用開始年齢の変化について検討した。1979年から2008年を6年ごとにI期からV期の5つに分け, 6歳未満の393例を対象に, 各期の装用開始年齢を難聴程度別に調査した。軽・中等度難聴児は, 比較的変化が大きく, 3歳台までの装用開始例がI期 (1979-1984) で僅か15%であったのが, その後, しだいに低年齢化し, V期 (2003-2008) では87%が3歳台まで, 55%が1歳台までの開始となった。また, 期の推移により例数が増加した。高度難聴児は, IV期 (1997-2002) 以前は大きな変化はなく, 最多の開始年齢は1歳台であった。V期 (2003-2008) になると0歳台の開始例が急増し約半数を占めた。各期の例数は変化が無かった。装用開始の低年齢化には, 近年, 新生児聴覚スクリーニング検査の普及が大きく影響した。また, 乳幼児健診担当者への啓蒙活動も有効であると考えられた。
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