AUDIOLOGY JAPAN
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53 巻, 1 号
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総説
  • —診断・治療の問題点とそれに対する対応—
    朝隈 真一郎, 村井 和夫
    2010 年 53 巻 1 号 p. 46-53
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    原因も, また内耳に起こっている病態についても全くわかっていない突発性難聴の診断と治療をいかに行うか, そのことを考える上での問題点とそれへの対応について述べた。1989年から2006年までの18年間に報告された論文をみると治癒率の向上はなく治療成績に変化はなかった。治療成績を調べるために検討された症例数が少ないと得られた治癒率のばらつきが大きく, 症例数が増えるにつれてそのばらつきは小さくなる。症例数が200例以上になると治癒率は30数%に集まる。また治療法が違っても症例を増やして検討すれば同じ治癒率が出ることが分かった。このことから, この治癒は治療によるものではなく自然治癒の可能性が高いことを述べた。治療に当たっては, この疾患について十分に説明することが重要である。治療法の選択については身体的にまた経済的にも負担の少ない方法を選択することが望ましい。
原著
  • —茨城県メディカルセンターの30年間のデータから—
    岡田 慎一, 姫野 まどか, 新井 峻, 小室 久美子, 阿瀬 雄治, 高橋 邦明, 宇佐神 正海
    2010 年 53 巻 1 号 p. 54-61
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    30年間における乳幼児の補聴器装用開始年齢の変化について検討した。1979年から2008年を6年ごとにI期からV期の5つに分け, 6歳未満の393例を対象に, 各期の装用開始年齢を難聴程度別に調査した。軽・中等度難聴児は, 比較的変化が大きく, 3歳台までの装用開始例がI期 (1979-1984) で僅か15%であったのが, その後, しだいに低年齢化し, V期 (2003-2008) では87%が3歳台まで, 55%が1歳台までの開始となった。また, 期の推移により例数が増加した。高度難聴児は, IV期 (1997-2002) 以前は大きな変化はなく, 最多の開始年齢は1歳台であった。V期 (2003-2008) になると0歳台の開始例が急増し約半数を占めた。各期の例数は変化が無かった。装用開始の低年齢化には, 近年, 新生児聴覚スクリーニング検査の普及が大きく影響した。また, 乳幼児健診担当者への啓蒙活動も有効であると考えられた。
  • 宮本 由起子, 増田 佐和子, 臼井 智子, 竹内 万彦
    2010 年 53 巻 1 号 p. 62-68
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    当院のNICU入院児において過去2年間にABRとASSR検査を施行した60例について検討した。ABRのV波閾値とASSRの閾値はいずれの周波数も良く相関し, 2000Hzで最もよく相関していた。42例はABRでV波閾値が35dBnHL以内で正常聴力と診断した。初回検査で18例に難聴が疑われたが, 最終的には11例18.3%が難聴で, NICU入院児の2.4%に相当した。両側中等度以上の難聴は6例であった。再検査で正常と診断した7例中6例において初回検査が修正月齢1カ月以内に行われており, 水頭症や高ビリルビン血症合併例もあった。NICU入院児の難聴発生率は一般の新生児に比べ高いが, 初回検査は少なくとも修正月齢1カ月以上が妥当であり, 診断には全身的な病態の把握を含め慎重であるべきと考えられた。遅発性難聴や進行性難聴にも留意した聴覚言語発達への注意の喚起も大切であると考えられた。
  • 赤坂 咲恵, 西村 忠己, 岡安 唯, 細井 裕司
    2010 年 53 巻 1 号 p. 69-75
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    75名144耳の補聴外来受診患者を対象に, 57-S語表を用いた語音弁別検査を行い得られた明瞭度別に明瞭度70~100%の群, 明瞭度50~68%の群, 明瞭度0~48%の群の3群に分類し, それらの各群での各単音節別正答率を求めた。明瞭度別の各単音節の正答率を, 全症例の正答率の高い順にプロットした場合のグラフは, 明瞭度の悪化とともに正答率の低い単音節から順に正答率が悪化していた。また, 明瞭度が高い群でも正答率が低い単音節や, 明瞭度が低い群でも正答率の高い単音節があった。これらの結果は, 聴能訓練などの際の明瞭度別指導に役立つ可能性が示唆された。
  • 泰地 秀信, 守本 倫子, 松永 達雄
    2010 年 53 巻 1 号 p. 76-83
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
    Auditory neuropathyは2008年の国際会議からANSDと呼称されており, 今回はその定義に従って診断されたANSDの乳幼児9例について検討した。後にABRが正常化していくようなみかけ上の難聴例 (auditory immaturity) は除外した。経過をみていくうちにDPOAEが消失した5例はANSDとみなした。ASSRの閾値にはかなり大きなばらつきがあり, ANSDの病態が多彩であることが推定された。良聴耳のASSR閾値とCOR閾値を比較したところ, 500~4000Hzでは有意な相関が認められた。ANSDの場合も補聴器装用効果をASSRでとらえることができ, 推測された利得は平均でみてCORとの差は10dB以下であった。3例はASSRの3分法平均の閾値が70dBHL未満で, その場合CORの平均閾値も88dBHL以下と他症例より良好であったが, これらはすべて基礎疾患を伴っていた。ASSRおよびCOR閾値が100dBHL以上の重度難聴の例のうち2例にOTOF遺伝子変異が認められた。ASSRはANSDで行動聴力検査が不確実な場合に聴力および補聴器装用効果を評価する方法になりうるものと考えられた。
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