日本作物学会紀事
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研究論文
栽培
  • 津田 昌吾, 辻 博之, 田宮 誠司, 森 元幸
    2019 年 88 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2019/01/05
    公開日: 2019/02/13
    ジャーナル フリー

    バレイショの生産現場では,全粒種いもや2つ切りサイズの小粒規格の種いもに対する要望が高まっている.小粒塊茎の生産方法として密植栽培やヒートショック処理の利用があげられるが,コストや効果の安定性の面において問題がある.そこで,本研究では,バレイショ品種の男爵薯とトヨシロを用い,種いものジベレリン処理によるバレイショの小粒塊茎増収効果の品種間差異を検討した.いずれの品種においてもジベレリン処理によって種いもの芽数および茎数が増加し,収穫期の小粒塊茎数が増加した.しかし,芽数や茎数を含む様々な生育形質においてジベレリン処理と品種の間に有意な交互作用が認められ,種いものジベレリン処理に対する感受性に品種間差異があることが示唆された.ジベレリンは塊茎形成を阻害することが知られており,トヨシロでは無処理区に比べ処理区の塊茎肥大早期の塊茎重が少なく,植え付け前のジベレリン処理の影響が塊茎形成の時期まで続くことが示唆された.しかし,トヨシロではジベレリン処理区において塊茎肥大早期以降の塊茎間の養分競合が緩和されたことにより,その後の塊茎数の減少が抑制され,結果的に男爵薯同様,収穫期の小粒塊茎数が増加した.本研究により,異なるジベレリン感受性を示した2つのバレイショ品種において,種いものジベレリン処理により小粒塊茎が増収することを明らかにした.

品質・加工
  • 田中 一生, 尾﨑 洋人, 平山 裕治, 菅原 彰
    2019 年 88 巻 1 号 p. 9-17
    発行日: 2019/01/05
    公開日: 2019/02/13
    ジャーナル フリー

    北海道の酒造好適米品種 「吟風」 と 「彗星」 における酒造適性の関連指標の年次変動について最高気温との関係を検討した.データ解析について,酒造適性の関連指標は2005~2013年の水稲奨励品種決定基本調査のサンプルを用いた醸造用原料米全国統一分析法による分析結果を用いた.気象データは出穂期前後80日間の毎日の最高気温を用いた.調査した形質の中では心白発現率の年次変動が最も大きく,次に粗タンパク質含有率の年次変動が大きく,これらの形質に比べて千粒重,20分吸水率および蒸米吸水率の年次変動は小さかった.出穂期−19~−10日 (−Ⅱ期) の最高気温が上昇すると,両品種の千粒重と 「彗星」 の心白発現率は増加し,「吟風」 の粗タンパク質含有率は低下する傾向を示した.このことから,−Ⅱ期の最高気温の年次変動は,両品種の千粒重,「吟風」 の粗タンパク質含有率および 「彗星」 の心白発現率の年次変動に大きく影響したと考えられた.出穂期+1~+10日 (+Ⅰ期) の最高気温が上昇すると,「吟風」 の心白発現率は低下し,出穂期+11~+20日 (+Ⅱ期) の最高気温が上昇すると,両品種の千粒重は増加し,20分吸水率は低下し,出穂期+21~+30日 (+Ⅲ期) の最高気温が上昇すると,「彗星」 の蒸米吸水率は低下する傾向を示した.以上から,+Ⅰ期の最高気温の年次変動は 「吟風」 の心白発現率の年次変動に,+Ⅱ期の最高気温の年次変動は両品種の千粒重と20分吸水率の年次変動に,+Ⅲ期の最高気温の年次変動は 「彗星」 の蒸米吸水率の年次変動に,それぞれ大きく影響したと考えられた.

品種・遺伝資源
  • 服部 太一朗, 樽本 祐助, 寺内 方克, 境垣内 岳雄, 早野 美智子, 安達 克樹, 伊禮 信
    2019 年 88 巻 1 号 p. 18-26
    発行日: 2019/01/05
    公開日: 2019/02/13
    ジャーナル フリー

    サトウキビ育種では風折抵抗性が重要な評価項目のひとつであるが,台風の規模やサトウキビの生育状況など不確定要因が多く,より精度の高い評価手法が求められている.我々は,これまでに,最上位肥厚帯から50~60 cm下部に位置する生長帯の挫折時モーメントが,梢頭部で生じる折損に対する抵抗性の指標となり得る可能性を示唆した.本研究では,挫折時モーメントについて,春植えしたサトウキビ8品種系統の生育旺盛期における変動実態や品種間差異を調査し,育種情報としての利用可能性を検証した.8月5日と8月26日に,最上位肥厚帯から約55 cm下方の生長帯を,9月26日には同位置の生長帯とその一つ上位の生長帯を,それぞれ対象として,挫折時モーメント,断面係数および曲げ強度を調査した.その結果,いずれの特性値も,測定の時期や対象とする肥厚帯の位置によって測定値が増減することが明らかとなり,生長帯の成熟度が関与している可能性が考えられた.一方で,個々の品種系統の測定値の大小には各測定時期間で正の相関関係またはその傾向が認められ,各品種系統の相対的な強度は一貫した傾向を示すことが明らかとなった.また,断面係数と曲げ強度の測定結果から,挫折時モーメントを増大させる主要因は品種系統ごとに異なり,品種系統に固有の特性として,異なる時期においても安定して発現していることが示された.以上から,挫折時モーメントは折損抵抗性に関する有用な育種情報となり得ることが示唆された.

研究・技術ノート
  • 澤本 和徳, 伊勢村 浩司, 佛田 利弘, 濱田 栄治, 八木 亜沙美, 宇野 史生
    2019 年 88 巻 1 号 p. 27-40
    発行日: 2019/01/05
    公開日: 2019/02/13
    ジャーナル フリー

    水稲稚苗移植栽培において,石川県をはじめとして北陸地域の育苗箱当たりの播種量は乾籾120~140 gと日本の他地域に比べて少ない.これは水田10 a当たりに使用する育苗箱数を多く必要とすることに繋がっている.本研究では,育苗箱数の低減を目指して,育苗箱当たり乾籾250 gおよび300 gの高密度播種が稚苗の苗質および本田での生育・収量・玄米品質に及ぼす影響を検討した.2水準の高密度で播種し15日または24~25日育苗した稚苗を,小面積を掻き取ることができるように改良した田植機を用いて1株当たり3~4本で移植した.移植時の苗の葉齢は3.0~3.6,草丈は8~12 cmで,欠株率は0.0~6.3%で連続欠株は無かった.10 a当たりの移植に使用した育苗箱数は250 g播種区で6.0~7.2箱,300 g播種区で4.7~6.0箱であった.2つの高密度播種区の出穂期および成熟期は移植時の葉齢差を反映して,慣行区の箱当たり100 gで播種した稚苗より1~2日遅かったが,最高茎数,穂数,精玄米重,整粒歩合および玄米タンパク含有率は100 g播種区と同等であった.高密度播種は,その育苗期の苗丈伸長や移植後の茎数の動態特性から,育苗期間および移植期が温暖な晩期移植作型に適していると考えられた.高密度に播種した水稲苗を用いる本法は,その苗に対応した田植機の導入が必要となるが,新たな育苗資材や特別な栽培管理を必要とせずに慣行稚苗栽培と同等の収量・品質を得ることが可能であることが示唆された.

情報
速報
  • 田中 明男, 若松 謙一, 田之頭 拓
    2019 年 88 巻 1 号 p. 44-45
    発行日: 2019/01/05
    公開日: 2019/02/13
    ジャーナル フリー

    西南暖地において,インド型品種由来の 「北陸193号」,「オオナリ」,「ミズホチカラ」 の収量性が最大限発揮できる移植時期やその環境要因について解析を行った.いずれの品種についても5月移植および6月移植で多収となり,「北陸193号」,「オオナリ」 はシンク容量を1000 kg/10 a程度確保することにより900 kg/10 a以上の多収を可能とした.4月移植では,シンク充填率は高いがシンク容量が他の移植時期に比べて少なくなり,また,7月移植では,シンク容量の確保は容易であったが,シンク充填率が低く,収量が低下した.

  • 長南 友也, 村上 則幸, 辻 博之, 林 怜史, 中村 卓司
    2019 年 88 巻 1 号 p. 46-47
    発行日: 2019/01/05
    公開日: 2019/02/13
    ジャーナル フリー

    近年,水稲やコムギ,牧草などの幅広い作物栽培において携帯型のNDVIセンサーであるGreenSeeker Handheld Crop Sensorを用いた生育量の推定や収量予測が注目されている.このセンサーは反射光の届く範囲であればどの高さからでも測定可能で,1回の測定時間についても測定者が任意に決めることができるが,これらの条件やセンサーの動かし方等がセンサー値へ及ぼす影響について言及した報告は極めて少ない.そこで,条間を4水準設定したダイズ圃場において,3パターンの測定方法をセンサー値の安定性と測定の容易さの観点から比較した.その結果,畝間を歩きながら測定者の肩を中心とした半円状にセンサーを動かすワイパー法が最も優れた測定方法だと結論づけられた.また,1回の測定にかける時間と地上からのセンサー高による影響を比較・検討したところ,これらの条件はセンサー値に大きな影響を及ぼさないことが明らかとなった.

  • 山本 修平, 本間 香貴, 橋本 直之, 牧 雅康
    2019 年 88 巻 1 号 p. 48-49
    発行日: 2019/01/05
    公開日: 2019/02/13
    ジャーナル フリー

    UAV(Unmanned Aerial Vehicle,通称ドローン) を用いてダイズ農家圃場を観測し,湿害評価を試みた.2017年は7月末から8月末にかけて天候不順となり,土壌体積含水率の高い地点では葉色(SPAD値)が低下し,収量が低下する湿害が観察された.UAVによるマルチスペクトル画像を解析したところ,GNDVI(Green Normalized Difference Vegetation Index)を説明変数とすることにより,SPAD値および収量に対して有意な回帰式が得られた.以上のことよりUAVを用いたリモートセンシングにより湿害の把握が可能と考えられたが,量的な評価のためには閾値の設定や,経時的な推移に基づく指標化が必要と考えられた.

  • 吉藤 昭紀, Bagjain Rajen, 米田 真悟, 満田 幸司, 川崎 洋平, 河村 久紀, 白岩 立彦
    2019 年 88 巻 1 号 p. 50-51
    発行日: 2019/01/05
    公開日: 2019/02/13
    ジャーナル フリー

    日本のダイズ栽培では湿害が収量を下げる主要因の一つであり,その発生回避とともに発生後の成長回復を促進することが重要である.そこで,生育初期に過湿処理を行った過去の圃場実験の結果を用い,乾物生産の回復過程の一般的傾向とその変異を解析した.過湿処理後の対照区に対する成長速度比に着目すると,回復過程は過湿後およそ14日の回復停滞期とその後の回復進行期からなり,栽培条件による変動は後者における方がやや大きかった.回復は,根粒着生品種が非着生品種よりも,または窒素施肥条件下の方が無施肥条件下よりも早く,窒素供給が回復に影響を与えることが示唆された.

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