以上報告してきたことを要約すると以下のようになる.
1) 男子学生は家庭科の学習は, 小学校までが多く, また, 女子はほとんどの場合, 高校まで学習している.
2) 住まいの学習歴は, 男子では56%が小学校でしたと回答している.また, 女子は中学では82%, 高校では, 60%と低減するものの高学年へ進んでも多くの者が「学習している」と回答している.
3) よく知っている語彙は, 全体傾向として, 日常会話でも使用されるものが多く, また, 他教科との関連性や社会生活との関係も深いため, 生活上の知識としてこなされていると考えられる.したがってよく知っている語彙は, 学習歴の差にかかわりなく男女ともに同じように知っており, 両者の問に明確な差はみられない.
4) 知らない語彙は, 全体傾向として, 建築計画, 歴史, 構造をはじめ, 住宅問題を含む専門用語である.これを男女別に比較すると女子が知らない率よりも, 男子の知らない率が高い傾向をみることができる.なかでも, その男女差の大きいものは, 家庭科の中での住まいの学習に多く使用されている語彙であることから, 男女の理解度の差と学習歴とは, 関連が深いといえる.
5) 60%の女子は, 住まいの学習を高校まで行ったとしているが, その過程での教科書に必ず記載され, くり返し学習されていると考えられる語彙の理解度が低い.さらに, 過去において学習したという記憶と照らし合わせた語彙の知識の定着実態は, 予想にたがわず低調であることが明らかになった.このことは, 教育現場での住居領域への取り組み方が不十分であり, 住まいに関する知識や, 考え方を生徒に定着させるという点で, 授業方法や授業内容が学習効果を十分あげるまでに至っていないことを示している.
以上の調査結果から住居領域は多くの問題をかかえている.家庭科の中での住居領域の分量の割合は, 小, 中, 高校ともに1割前後にすぎず, これでは必然的にその密度は薄いものとなり学習経験も豊かになりえず, 生徒の印象も弱いものとなるのは当然である.したがって住教育の充実のためには, 住居領域の質的, 量的検討と同時に, 教師の指導性や, 教材開発にもわたっての見直しが重要課題であり, さらに他教科との関連を密にしながら家庭科の総合的な整備が必要とされる.
本研究では, 学習歴と語彙の理解度との関係を学生の記憶をもとに調査分析を行ったが, 引き続き正確な理解が行われているかを判断するために記述回答による調査を行い, 語彙理解の実態について, さらに検討を進めている.
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