色の良い赤飯用小豆汁を得るにはどのような調理手法をとればよいかを知る為に次の実験を行った。
小豆種皮の色素をエタノール抽出して、カラムクロマトにより分離し、それぞれ可視域吸収を測定した。又、小豆茄汁の色をペーパークロマトによって検索した。次に従来行われている小豆汁のとり方、及びその他の方法、合計6通りによって得た赤飯炊水について色の溶出量と色調を調べ、併せて小豆の加熱過程に於けるそれらの経時的変化も調べた。又《色ねり》効果の有無を知る為に、小豆汁への通気及び光の影響を検討した。結果を要約すると次の様になる。
(1) 小豆汁の色は黄褐色。青紫色・緑色・黄色等から構成される。
(2) 小豆汁への色素溶出量は黄褐色部が多くを占め、青紫色部がそれにつぐ。
(3) いわゆる《小豆色》は小豆汁の濁り物質に黄褐色と青紫色が吸着されて発現する。この時、黄褐色より青紫色の方が吸着率が大きい為にコロイドの色は、透明な茄汁の色より紫色が濃い。
(4) 6種の方法によって得た赤飯炊水の内、最も色が濃かったのは、小豆に加水して沸騰時間15分、及び10分の二回に分けて茄汁をとり、これらを合せて炊水としたものであった。(A-1)
又、炊水の色調が最も小豆らしいのは、上述の沸騰時間15分の汁のみを使った場合である。(A-2)
全体を総合すればA法(中でもA-2)が最もよく、C法、B法の順となる。
(5) 小豆を加熱して行く過程で、初期の茄汁は黄褐色味が強いが、時間の経過と共に紫色の割合が増して、汁は小豆色らしい色調となる。
又、色素溶出量の点では初期の茄汁も無視は出来ず、ある程度加熱時間を経た所に溶出のピークがあり、その後は減少してくる。
(6) 小豆汁は通気によって色の変化はなく、むしろその紫色は光によって褪色するので《色ねり》によって色が濃くなる事実は認められない。
赤飯用小豆汁のとり方として如何なる調理法が望ましいかは、色の面だけでなく汁のあく味・小豆の腹切・煮え加減についても併せ考えなくてはならないので、これらの点について研究を継続中である。
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