chl.は普通顕微鏡(可視光)で緑色~淡緑色を呈するが, 蛍顕(UV)では顕著な赤色を発する.このことはchl.の検索の一法となる.
しかし, chl.は多くの種類があるので, 今回はホウレンソウの葉からchl.
a, bを分離, 抽出しchl.
aの石油エーテル溶液とchl.
bのメタノール溶液について分光蛍光光度計および落射蛍光測光顕微鏡による励起・蛍光スペクトルの測定を行い, chl.
a, bについて検討した.その結果は次のとおりである.
1) chl,
aの石油エーテル溶液の分光蛍光光度計によるEm.λ
maxは660nmと670nmであり, Ex.λ
maxは、370nmと420nm(Em.λを660, 670, 675nmに固定) であった.
次にchl.
bのメタノール溶液の分光蛍光光度計によるEm.λ
maxは640, 660, 700nmで, Ex.λ
maxは330, 340, 350nm(Em.λを660, 675, 700nmに固定)であった.落射蛍光測光顕微鏡ではEm.λ
maxは675nmで, 690nmでは下降曲線中での小ピークにすぎなかった.Ex.λ
maxは370nmと383nmであった.
分光蛍光光度計と落射蛍光測光顕微鏡によるEm.λ
max, Ex.λ
maxには若干の近似または差異があるが, これは機種が異なるためと思われる.なお, 落射蛍光測光顕微鏡では, 顕微鏡のレンズによる影響があるため, 分光蛍光光度計の測定結果のほうが正確と思われる.また反面, ミクロレベルでの測定では, 落射蛍光測光顕微鏡によるほかに適当な方法はない.
2) ハツカネズミに経口投与したchl.
aは60分後, 腸間膜, 胸管, 胸腺などの毛細管および組織などに存在するが, 蛍顕により明瞭に観察できた.
3) 一般に蛍光物質の組織化学では蛍顕による観察と関連して既述のように分光蛍光光度計, および蛍光測光顕微鏡による励起・蛍光スペクトル測定による検討が望ましいと思われる.
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