家政学雑誌
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32 巻, 10 号
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  • 馬鈴薯澱粉に対する影響の要因
    立屋敷 かおる, 小林 祐子, 寺元 芳子
    1981 年 32 巻 10 号 p. 733-738
    発行日: 1981/12/20
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    澱粉の糊化特性におよぼす清酒の影響が清酒中のいかなる成分によりもたらされるのかを検討した.まず馬鈴薯澱粉とコーンスターチについて清酒, 煮切酒, アルコール添加の効果をアミログラムで確認した.次に清酒と煮切酒の差を知るために, 加熱による清酒の成分変化を燗酒, 点火の煮切酒, 煮つめの煮切酒について調べた.さらに馬鈴薯澱粉の糊化特性に対して影響をもつと考えられる酸, pH, 塩濃度についてそれらの影響を検討した.その結果, 以下の知見が得られた.
    1) 清酒の加熱による成分変化は, 燗程度の加熱では観察されなかった, 点火および煮つめの煮切酒では清酒に比してアルコール分が減少したが, 他の成分変化はほとんどみられなかった.
    2) アミログラフにより測定した清酒の澱粉に対する影響は, 馬鈴薯澱粉に顕著であった, 清酒および煮切酒の添加により粘度は著しく低下した.両者の粘度曲線には差異が認められたが, これはアルコールによるものであることがわかった.コーンスターチへの影響は, 前報同様にアミログラムにおいてもほとんど認められなかった.
    3) 清酒と煮切酒は, 馬鈴薯澱粉粒子の膨潤を抑制することがわかった.エタノールは80℃付近での膨潤を抑制した.
    4) 清酒に含まれる有機酸と有機酸塩濃度に相当する量の酢酸-酢酸ナトリウムおよびコハク酸-コハク酸ナトリウム溶液と, それにアルコールを加えた溶液では, おのおの煮切酒と清酒にほぼ対応したアミログラムが得られた.pHとナトリウムイオン濃度はともに粘度に影響を与え, 前者は正の相関, 後者は負の相関を示した. 清酒, 煮切酒の示すpH域では, 馬鈴薯澱粉の粘性に対する清酒の影響は主として清酒中のナトリウム等の塩濃度によるものと思われる.
  • 川端 晶子, 澤山 茂, 永島 伸浩, 内村 佳子
    1981 年 32 巻 10 号 p. 739-744
    発行日: 1981/12/20
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    脱メチル化を異にする低メトキシルペクチン分子の特性およびゲルの動的粘弾性を検討した結果を要約するとつぎのようである.
    1) メトキシル基含量のほぼ等しいアンモニア (ALM), 酵素 (ELM) および酸 (CLM) 脱メチルペクチンの重量平均分子量 (Mw) は, (22~36) ×104, Z 平均慣性半径 (RG) は650~780Åであり, ALMおよびELMペクチンは, Mw, RGともに近似しているが, CLMペクチンは, Mwは最も小さく, RGは最も大であった.
    2) 赤外線吸収スペクトル分析により, ペクチン分子特有の官能基としてのカルボキシル基, メトキシル基およびアミド基の検索を行うことができた.
    3) 1%ペクチンゾルのCa2+によるゲル化過程の貯蔵弾性率 (E′) は, ALM>ELM>CLMペクチンの順に大きく, 損失弾性率 (E″) はALM>CLM>ELMペクチンの順に大きかった.また, tanδ (E″/E′) を求めたところ, CLMペクチンが最も大きい値を示した.
    4) 2%ペクチンゲルの動的粘弾性定数は, 総体的にALM>ELM>CLMペクチンの順に大きく, 温度依存性はCLMペクチンが最も大であらた.pH依存性は, ALM>CLM>ELMペクチンの順に大きくなっているが, これは, ペクチンの分子量と分子の広がりおよび, 官能基の種類と量が, pHの変化に敏感に対応するためである.
    以上, ペクチン分子の特性が, ゲル化過程およびゲルの動的粘弾性に大きな影響をおよぼすことが認められた.
  • 乳幼児の食べ物に関する研究 (第3報)
    伊東 清枝, 植草 純子
    1981 年 32 巻 10 号 p. 745-751
    発行日: 1981/12/20
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    歯がため用菓子の水分とテクスチャーについて検討した.
    1) 焼き菓子の水分定温吸脱着曲線は, 履歴現象を示した.
    2) 焼き菓子の吸湿させた水分と力学的物性の間に相関があった.硬さは, 水分約10%を境に, 増減するものと水分の増加に伴い減少するものとがあった.凝集性は, 水分の増加に伴い増加し, もち米使用のものを除いては, 水分約20%を境にして減少する傾向があった.また, 硬さと剪断エネルギー特性値の間に相関が認められた.
    3) 試料とした焼き菓子のなかでは, 硬さ, 形, 大きさそして口の中での溶けにくさの点から, とうもろこし粉使用の市販ビスケットが最も適していた.
  • 坂口 りつ子, 北村 祥子, 渡辺 忠雄
    1981 年 32 巻 10 号 p. 752-756
    発行日: 1981/12/20
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    ベビーフードのなかでも利用価値が高いレバーペーストの保存について, 食品衛生学的検討を試み, 次の結果を得た.
    1) 缶内面スズのレバーペーストへの溶出は10ppm以下であった.
    2) 開缶直後のレバーペーストの生菌数は10/g以下であった.
    冷蔵庫内保存では, 庫内温度10℃で6日目までは生菌数2.0×102/g以下に維持された.しかし, 20℃, 30℃と保存温度条件が悪くなるとその増殖速度は著しく速くなった.
    3) 電子レンジを用いての加熱処理によって, レバーペーストの殺菌効果が認められ, 20℃保存ではとくに顕著であった.加熱時間は30秒のほうが60秒加熱より, 菌の増殖抑制効果は大きく, かつ官能的評価も好ましかった.
    冷蔵庫内保存の場合における電子レンジによる加熱処理効果はさらに有効で, 開缶後6日以内に行うことによって, 好ましい状態でかなりの保存効果が認められた.
    4) 冷凍レバーペーストと凍結乾燥による粉末レバーは両者の保存性および官能的評価ともに優れていた.
    以上の実験はいずれも衛生的配慮のもとに行われたものであるが, 一般家庭での処理を考えると生菌数はさらに増加することが予測されるので, これら食品の衛生的取扱いと保存の必要性の再認識および実施にさいしての十分な配慮が要望される.
  • 女子中学生, 女子学生の比較
    桑畑 美沙子
    1981 年 32 巻 10 号 p. 757-763
    発行日: 1981/12/20
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    流体をスプーンでかきまわすという非経口的評価における粘性相対弁別閾を二点識別試験法で求めた.
    試料は馬鈴薯でん粉糊状液である.でん粉濃度は日常の調理名で示せば, うすくず汁 (60rpmにおけるみかけの粘性率η60, 約1.09×102cP), うすくずあん (η60, 約1.44×103cP), 溜菜 (η60, 約4.47×103cP) に相当する.
    被験者は中学生と大学生で, いずれも女子である.
    非経口的評価における, 中学生の粘性相対弁別閾は, うすくず汁で28.0%, うすくずあんで13.6%, 溜菜で14.4%であった.大学生の粘性相対弁別閾は, うすくず汁で12.9%, うすくずあんで8.3%, 溜菜で12.4%であった.
    これらの結果より, 非経口的評価においても, 経口的評価と同じく, 粘性相対弁別閾は, 試料の粘性率が異なれば変化し, 弁別しやすい粘性域 (約η60, 1.44×103cP) が存在することが示された.
    さらに, 大学生のほうが, 中学生よりもすぐれた弁別能力を有すること, 非経口的評価のほうが, 経口的評価よりも, 大きな差がないと弁別できないことが明らかになった.
  • 現代主婦のファッション意識の構造
    中川 早苗
    1981 年 32 巻 10 号 p. 764-771
    発行日: 1981/12/20
    公開日: 2010/03/12
    ジャーナル フリー
    今回の主婦のファッション意識調査結果から, 次のようなことが明らかになった.
    1) 現代の主婦にとって, 衣服が本来の実用性や社会性にもまして, 生活に変化を与え, 豊かにしてくれるもの, 美しさや個性を引き出してくれるものとして高く評価されており, ファッション性が衣服にとって欠くことのできない要素になっているといえる.
    2) ファッション性の評価においても, 同じように気分の一新, 別の自分への変身, 好奇心の満足といった変身効果が高く評価されており, 80%以上が中流意識といわれる大衆消費社会においては, かつて流行の採用動機として有力な説明力をもっていた威信効果がそれほど重視されなくなっているといえる.
    3) ファッション行動においては, 身だしなみや全体の調和に気をくばり, 服装の規範を当然のこととして重視する一方, 衣服をいろいろ着替えて楽しむ, 服装によって気分が左右されると答えた人が圧倒的に多く, ファッションが人びとの生活や意識と深くかかわりあっていることがうかがえる.
    4) ファッション性を高く評価し, おしゃれや流行に積極的なファッション重視型, ファッション追随型が70%を占めるという結果は, ファッションがもはや若い女性のみのものではないこと, まさにファッションの大衆化を物語っているといえる.
  • へらじるしの強さの評価法について
    永井 房子, 平山 順之
    1981 年 32 巻 10 号 p. 772-776
    発行日: 1981/12/20
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    縫い直しで縫い込みの位置をかえたりする和服において, へらじるしの強さは和服地との関連において縫製上きわめて重要である.
    へらじるしの強弱を判断するのは困難で, 弱くつけるとへらじるしが見えず作業能率が劣り, 強くつけると布地が痛むなどの問題がある.
    そこで, へらじるしの強さを数量的にとらえることを試みた.まず和服地, へら台, へら圧の条件を組み合わせてへらじるしを行い, へらじるしによって生じた布地の表面のへこみを触針法でとらえ計量化し, 数値化した.
    一方, 視覚的なへらじるしの強さの妥当性を検討するため一級和裁技能士5名により視覚判定してもらった.
    試料布の厚さに対してのへこみ量の割合をへこみ率と定義して, へこみ率とへらじるしの官能量の関係について検討した結果, 相関係数0.931と高度な相関関係が認められた.
    これよりへらじるしの程度は, へこみ率によって定量的に表せると考えられる.このことはまた, 従来判断が困難であったへらじるしの強さを定量的, 客観的基準によってとらえることができ, 和服地と好ましいへらじるしの強さの関係が判明できると考える.
    なお, これらへらじるしに対する布地やへらつけ条件などの影響については引きつづき研究報告するつもりである.
  • 三田村 陽子, 磯谷 藤枝, 増田 順子
    1981 年 32 巻 10 号 p. 777-782
    発行日: 1981/12/20
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    適合度の高い股高の推定式を得るために, 身長・胴高・腸骨棘高・膝高・下体高の5項目を用い, 1項目推定および2項目推定について, 性別・年齢別に検討し, 項目の選定を試みた.
    おもな結果は次のとおりである.
    1) 1項目推定では, 男女とも, 膝高を用いた場合の重相関係数が最も低い値を示し, 股高の推定には膝高1項目のみでは不適当である.
    2) 2項目推定では, 性別・年齢別に重相関係数の値が最も大きい組合せのうち, 男子では1年齢, 女子では3年齢において, 1項目推定より優位な有意差が認められた.また, 女子では下体高あるいは下体高を含む項目の組合せで精度のよい推定式が得られた.
    3) 股下寸法の許容量を±1.5cmとした場合, 実側値と推定値の差より, 最も適合度の高い推定式を得た (Table7).
    この推定式に用いる項目には, 男女とも, ほぼ全年齢において, 腸骨棘高が含まれている.またこの式による適合度は, 女子では85~90%であるが, 男子はこれより約10%低い値を示す.
  • ポーラログラフ法による界面活性剤の定量
    木下 英明, 古林 美恵, 大塚 みよ子
    1981 年 32 巻 10 号 p. 783-786
    発行日: 1981/12/20
    公開日: 2010/03/10
    ジャーナル フリー
    界面活性剤がポーラログラフ酸素極大波を抑制することを利用して, ポーラログラフ法による界面活性剤の定量法を検討した.
    1) 10mM塩化カリウム溶液中で, -0.3Vの極大電流値を測定することで, きわめて簡便, 迅速にどのような界面活性剤も定量できることを示した.
    2) すすぎの研究における洗剤の定量に本測定法の応用例を示し, 今後のすすぎ研究における基礎を確立した.
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