脱メチル化を異にする低メトキシルペクチン分子の特性およびゲルの動的粘弾性を検討した結果を要約するとつぎのようである.
1) メトキシル基含量のほぼ等しいアンモニア (ALM), 酵素 (ELM) および酸 (CLM) 脱メチルペクチンの重量平均分子量 (
Mw) は, (22~36) ×10
4, Z 平均慣性半径 (
RG) は650~780Åであり, ALMおよびELMペクチンは,
Mw,
RGともに近似しているが, CLMペクチンは,
Mwは最も小さく,
RGは最も大であった.
2) 赤外線吸収スペクトル分析により, ペクチン分子特有の官能基としてのカルボキシル基, メトキシル基およびアミド基の検索を行うことができた.
3) 1%ペクチンゾルのCa
2+によるゲル化過程の貯蔵弾性率 (
E′) は, ALM>ELM>CLMペクチンの順に大きく, 損失弾性率 (
E″) はALM>CLM>ELMペクチンの順に大きかった.また, tanδ (
E″/E′) を求めたところ, CLMペクチンが最も大きい値を示した.
4) 2%ペクチンゲルの動的粘弾性定数は, 総体的にALM>ELM>CLMペクチンの順に大きく, 温度依存性はCLMペクチンが最も大であらた.pH依存性は, ALM>CLM>ELMペクチンの順に大きくなっているが, これは, ペクチンの分子量と分子の広がりおよび, 官能基の種類と量が, pHの変化に敏感に対応するためである.
以上, ペクチン分子の特性が, ゲル化過程およびゲルの動的粘弾性に大きな影響をおよぼすことが認められた.
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