するめ煮出汁のとり方について、乾物類は或る程度浸水を行つてから用いることが多いが、浸水時間と旨味成分浸出の関係を定量的に測定した結果は、するめの場合は長時間浸水を行わせることはかえつて旨味が減少することが認められた。又、煮出汁としての旨味を充分に浸出させるためにはするめを幅2cmで繊維に平行に切つた場合には1時間~2時間の加熱が必要である。
浸水時間と加熱時間を合せて考えるとこの場合は浸水1時間、加熱1時間位が望ましいのではないかと思われる。
筋肉の中でもよく運動する筋は、牛脛肉のように堅いがよいエキス分を出すことが知られている。するめの場合も各部位(胴、足、ひれ)に分けて旨味成分の浸出状態を比較した結果は、足、ひれの部分は胴部分よりもかなり多くの旨味を浸出することが定量的に認められた。そこで味覚テストを行い実際に汁を味つた。その結果は足の部分は大部分の人が胴部分よりもおいしいと評価したが、ひれの部分は味が濃厚でいか臭いというであまり好まれなかつた。
煮出汁中の旨味を構成する遊離アミノ酸を二次元Paper Chromatographyを用いて検出した。それにより、煮出汁中には甘味の原因となるGlyeine, Alanine及びProlineが含まれ又旨味を持つAlanineやGlutamic acidもかなり多く認められた。
軟体動物の旨味は、これらアミノ酸の他に特有の旨味成分であるBetaineが知られている。このBetaineを検出するためにイオン交換樹脂を用いて煮出汁中の多くのアミノ酸を吸着除去し、流出液を試料として一次元Paper Chromatographyを行つた。純Betaine-HClのRf値との比較によつて煮出汁中のBetaineの存在を認めた。又試料の定量的添附によつて煮出汁(50gのするめを用いて5%の煮出汁をとる。)中に約550mgのBetaineが浸出されているのではないかと考えられた。
本実験によつて、するめの煮出汁は多くの旨味を持つていることが定量的にも感覚的にも認められた。
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