下肢動作に伴う胴下部および大腿部体表面の変化を石膏包帯法を用いて採取, 不織布により展開, 測定し, 展開図の形態変化, 面積変化について検討を加えた. 動作は静止, 股関節両側30°外転, 股関節右側30°屈曲, 股関節膝関節両側90°屈曲, 被検者は女子学生7名, 結果は次のとおりである.
1) 静止時に対する各動作時展開図の形状変化例は, 図4-a~cのとおりである.
2) 各動作時体表部位別面積の静止時に対する平均変化率は図5-a~cのとおりである.
3) 体表部位別動作時変形挙動特性を検討すると,
i) 胴下部皮膚面の変化は, 下肢の動作方向, 動作量を直接反映し, 下肢の動作方向 (屈側) の皮膚面は収縮を, 反対側 (伸側) の皮膚面は伸展を示す. いずれの伸縮率も屈曲角度が大となるほど顕著である.
ii) いずれの動作においても, 最大伸縮率を示すピースは前面好はそけい部, 側面好は転子部を含み, 後面好は殿溝・殿裂に接するピースであった. すなわち, 下肢動作に伴う伸縮は, 下肢の付け根 (股関節部) に最も強く現れ, しだいにその周辺にも影響を及ぼす. これら変形量には, 皮膚自身の弾性変形のみならず, 機構的しわが関与していると思われる.
iii) 屈曲動作における変形量は, 正中側FM・FL・BM・BL列に顕著, 外側FL'・BL'列では比較的僅少であり, 胴上部変形とは対照的な変化傾向を示した.
iv) 大腿部では, 形状的には変化も見られるが, 面積の変化は僅少である.
胴下部皮膚変形に関する研究のうち表面積を測定したものに山崎らの例が見られる. これと本研究とは設定動作, 基準線の入れ方等を異にするため, 量的に比較することは困難であるが, 近似した設定動作時についてみるとほぼ近似性が得られている. 本研究は, 従来定性的に把握されてきた体表面変化について, ある程度数量的な評価を付加するものと考える. 次報では, 被服設計に当たって, より直接的に必要な体表長の伸縮性について検討を加えたい.
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