電界電子放出(FE)の原理を用いた電子源は,高輝度,点電子源などの優れた特長を有しているが電子放出が不安定であり,かつ10
-8Paの超高真空を必要とすることから,近年まで実用化されていなかった。これに対して,筆者の属する日立製作所では,1968年からこのFE電子銃の研究を始め,その実用化に目途を得た1969年の暮より,これの走査型電子顕微鏡(SEM)への適用を図った。そして1973年には,3nmの高分解能を有する2次電子FE-SEMの製品化に成功した。 その後,1980年代のハイテク産業の台頭によりFE-SEMの需要は急増し,1985年には,遂に,その分解能は1nmを切るに至った。また低加速電圧でも高分解能が維持できることから,特に半導体工業において,プロセスモニタとしても使用されるようになった。 しかし,FEは原理的に不安定であり,その実用化には多くの技術的な困難を伴った。以下の本文は,筆者らの日立におけるFE技術の開発と,それを用いたFE-SEM開発の歴史を,物語り風に述べたものである。
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