心電図
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30 巻, 5 号
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Editorial
原著
  • 牧元 久樹, 里見 和浩, 中島 育太郎, 横山 光樹, 土井 淳史, 河田 宏, 山形 研一郎, 山田 優子, 岡村 英夫, 野田 崇, ...
    2010 年 30 巻 5 号 p. 385-394
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/04
    ジャーナル フリー
    心機能の比較的保たれた器質的心疾患における心室頻拍(VT)患者の予後は十分には明らかにされていない.今回われわれは,器質的心疾患患者における持続性単形性VT(SMVT)に対して,抗不整脈薬内服ないしカテーテルアブレーション(CA)治療後の電気生理学的検査(EPS)と予後に関する検討を行った.すなわち,SMVTの既往があり左室駆出率が35%以上の65例(虚血性心筋症21例,拡張型心筋症13例,肥大型心筋症3例,心サルコイドーシス6例,催不整脈性右室心筋症17例,ファロー四徴症術後5例)を対象にEPSを施行し,VT誘発性と全死亡,心臓突然死,VT再発との関連について調査した.その結果,43ヵ月の平均フォローアップ期間中,死亡例は認められなかったものの,VTの再発が18例(28%)に認められた.他方でVT誘発群は,非誘発群と比較し,有意にVTの再発率が高かった.また,CAを施行された44例の分析においても,手技終了時VT誘発群でのVT再発率が有意に高かった.結論として,心機能が比較的保たれた器質的心疾患患者のVTは高い再発率を認めるものの生命予後は良好であること,VT誘発性はVT再発の予測因子となりうることが示された.
症例
  • 古荘 浩司, 渡邊 剛, 高村 雅之, 加藤 武史, 黒川 佳祐, 高島 伸一郎, 薄井 荘一郎, 金子 周一, 山口 聖次郎, 山岸 正和
    2010 年 30 巻 5 号 p. 395-400
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/04
    ジャーナル フリー
    症例は70歳,男性.25年前に心筋梗塞を発症し,保存的に加療された.心拍数170回/分の心室頻拍(VT)を生じたため精密検査を行った結果,左前下行枝完全閉塞を含む2枝病変,左室心尖部瘤と瘤内多発血栓が認められた.外科的血栓除去,瘤切除および冠動脈バイパス手術の適応と診断し,VT治療を併用することとした.オフポンプ冠動脈バイパス術後,人工心肺下に心尖部を切開し血栓を除去,電気的除細動にて心拍を再開させた.常温下で期外刺激にてVTが誘発された.心尖部の切開口から20極円周状カテーテルで心内膜側をマッピングし,最早期興奮部位と周囲の拡張期電位を参考にマーキングを行った.誘発されたVTの最早期興奮部位は,いずれも瘤周囲の中隔側であった.マーキングを参考に,単極型高周波アブレーションデバイスにて70℃設定で60秒間のアブレーションを3回施行した.この後VTが誘発されないことを確認し,引き続き左室形成術を行い手術終了とした.以後20ヵ月VTの再発は認めていない.
Editorial Comment
症例
  • 杉山 裕章, 今井 靖, 藤生 克仁, 鈴木 健樹, 縄田 寛, 小野 稔, 絹川 弘一郎, 平田 恭信, 永井 良三
    2010 年 30 巻 5 号 p. 402-409
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/04
    ジャーナル フリー
    症例は31歳,男性.24歳時より心筋炎後の心機能低下による難治性心不全をくり返し,左心補助装置などを経て29歳時に心臓移植が施行された.2010年4月,移植2年後の各種検査施行目的にて入院.心臓カテーテル検査では左室壁運動異常なく,有意な冠動脈狭窄病変も認めなかった.一方,入院時より徐脈が遷延しており,一過性に「完全房室ブロック」と思われる心電図波形を示した.電気生理学的検査(EPS)では,移植されたドナー心および残存するレシピエント心由来と思われる2種類の心房電位を認め,後者はドナー心から電気的に隔離されていた.ドナー心の房室伝導能は正常ながら,著明な洞結節機能不全が示唆された.心房高頻度刺激後には洞停止のため房室接合部補充調律を示し,レシピエント心由来のP波が存在するため,体表心電図上は「完全房室ブロック」様の所見を呈したものと考えられた.
    本症例は心移植後に合併する徐脈性不整脈にEPSを行い,その主病態が房室ブロックではなく洞結節機能不全と診断でき,貴重と考えられたため報告する.
心電学マイルストーン
心電図講義
第18回 頻拍症カンファランス
  • ―特発性心室頻拍を中心に―
    清水 渉, 野田 崇
    2010 年 30 巻 5 号 p. 445-452
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/04
    ジャーナル フリー
    心室頻拍(VT)の多くは何らかの器質的心疾患に合併して発症するが,明らかな器質的心疾患を有さない特発性VTの存在も知られている.特発性VTのなかで頻度の高い右室流出路起源の特発性VTは左脚ブロック型+下方軸を呈し,一般に良性のVTと考えられているが,一部には悪性の特発性VTと同形の心室期外収縮(PVC)から多形性VTや心室細動に移行する良性とはいえないグループもある.これらの悪性グループを見つけ出す心電図学的指標として,VT第1拍目のPVCの比較的短い連結期や比較的長いQRS幅が報告されている.また,多形性もしくは単形性VT中の短い平均周期(Cycle length)や失神の既往は,悪性グループ患者を予測する指標となる可能性が示唆されている.
  • 夛田 浩
    2010 年 30 巻 5 号 p. 453-465
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/04
    ジャーナル フリー
    特発性心室不整脈の多くは流出路領域〔右室流出路,肺動脈,右室流出路低位のHis束近傍,左室流出路(心内膜側),大動脈冠尖(左冠尖,右冠尖),および左室心外膜側領域〕にその起源を有するが,僧帽弁輪,三尖弁輪,左室後下壁(左脚後枝領域),および左室前側壁(左脚前枝領域)などに起源を有する特発性心室不整脈も報告されている.特発性心室不整脈時のQRS波形はその起源からの心室内の興奮伝播をほぼ正確に反映し,頻拍の起源に特徴的な心電図所見を呈すると考えられる.高周波カテーテルアブレーションを施行した特発性心室不整脈症例を対象にアブレーション成功部位(左室心外膜側起源不整脈の場合は最早期興奮記録部位)を頻拍の起源と定義して,頻拍の起源ごとに症例を分類して,頻拍時の12誘導心電図の解析を施行した.その結果,頻拍時のQRS波形の解析によって詳細,かつ正確な頻拍起源の診断が可能であることがわかった.本稿では流出路領域,僧帽弁輪,および三尖弁輪起源特発性心室不整脈の12誘導心電図所見の特徴について述べる.
  • 井川 修
    2010 年 30 巻 5 号 p. 466-471
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/04
    ジャーナル フリー
    心外に頻拍起源の存在する心室頻拍が成立するためには,少なくとも(1)心外心筋(頻拍起源)の存在と(2)心外心筋と心室筋を構造的・電気的に結ぶ心筋(伝導路)の存在が必要である.この心室頻拍の存在を肯定し,その機序を大血管への心筋迷入と推測する報告が散見される.しかしながら,解剖学的に大動脈壁あるいは肺動脈壁に頻拍起源あるいは伝導路となる心筋の迷入は観察されない.確かに,大動脈洞あるいは肺動脈洞内でアブレーション治療可能な心室頻拍は存在するが,頻拍機序を大動脈壁あるいは肺動脈壁内への心筋迷入としなくても,通常の大血管基部・流出路接合部構造の特殊性で十分に説明が可能である.大動脈洞あるいは肺動脈洞周囲には,流出路心筋が伸展し複雑な様相を呈している.本項では,大血管基部構造を詳細に観察することにより,心外起源心室頻拍成立の可能性について提示する.
  • 小林 義典
    2010 年 30 巻 5 号 p. 472-479
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/04
    ジャーナル フリー
    脚やPurkinje線維などの下位刺激伝導系組織が,様々な病態に合併する心室頻拍(VT)や心室細動(VF)の発生,あるいはその持続にも関与していることがわかってきたのは,カテーテル・アブレーションが行われるようになってからである.1980年代以前は,動物実験,とりわけ心筋梗塞モデルにおいてPurkinje線維の役割がさかんに研究されてきたが,臨床ではあまり注目されずもっぱら梗塞心筋あるいは瘢痕部周囲でのリエントリー性頻拍に研究の矛先が向いていた.
    臨床でPurkinje線維の役割が再認識されたのは,特発性左側心室頻拍(ILVT)に対するアブレーションが行われるようになってからである.いわゆるBelhassenVTあるいはVerapamil感受性VTとも呼ばれる頻拍に対してアブレーションの標的組織を検索するために,心内電位を詳細に検討したところ,Purkinje線維由来と考えられるPurkinje(P)電位の記録可能な領域からのアブレーションに成功することから,Purkinje線維が関与する頻拍と考えられた1)~3).現在は,本頻拍の機序は束枝内リエントリー性頻拍(fascicular VT:束枝VTともよばれる)とされているが,実は本頻拍回路の全貌はいまだ解明されていない.その後,梗塞急性期や虚血性心筋症患者にしばしば出現する反復性多形性VT4)~6)や,Brugada症候群7)など特発性VFの誘因となる心室期外収縮(PVC)がPurkinje線維起源であることが報告されアブレーションの標的となった.特に前者はstormを形成することがあるものの,Purkinje線維がVTの持続にも関与する可能性が指摘されている.
    以上の頻拍のほかに,下位刺激伝導系が関与する不整脈に脚間リエントリー,脚枝間リエントリー性頻拍,刺激伝導系からの自動能亢進などがあげられるが,これら下位刺激伝導系が関与する頻拍,いいかえればP電位や脚電位が記録しうる場所からアブレーションが成功する頻拍をPurkinje不整脈と総称する.本稿ではこれらのPurkinje不整脈の機序,アブレーション法,さらには基礎疾患の多様性について解説する.
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